月読調の華麗なる日常   作:黄金馬鹿

100 / 100
よし、百話記念+調ちゃん誕生日に間に合った!!

という事で今回は去年からやるやる詐欺して終わっていた笑ってはいけないをやります!

百話記念という事で上下分割もせず、ついでに調ちゃんの誕生日までには間に合うようにと思って書いていたのですが、滅茶苦茶ギリギリまでもつれ込みました。

と、言うのも横のシークバーをご覧になった方はお分かりでしょうけども……はい。

今回の話、これだけで約三万五千文字あります。幾つもの笑ってはいけないの中から自分が印象に残った物をピックアップしつつ書いて行ったら三万五千文字かかりました。しかもこれ、一月中旬あたりからずっと書いてました。


で、最後にちょっとだけ注意の方をば。

今回の話は例の歌を使っているのでPDF保存ができません。それと、もしかしたら例の歌のせいで下ネタ判定くらって非公開にされる可能性があるかもしれません。その場合はどうにかします。
それと、時折自分が書いているゆゆゆ二次とのクロスとかどう? って言われていたのですが、流石にそれで一本書くのも……と思っていたのですが、今回はとりあえず色んなキャラ出すし、こっちからちょっと引っ張ってくるかぁと唐突に思ったので、自分の他の二次創作のオリキャラが一人出てきます。不評が多かったら書き直します。ご容赦を。

それでは長くなりましたが、発案執筆まで一年以上かかった笑ってはいけないをどうぞ!


月読調の笑ってはいけない新米装者

 とある日、わたし達SONGの装者は平行世界……奏さんの並行世界の二課から謎のお誘いをいただいた。どうやらSONGと合同で何かをしようとしているらしいんだけど、それのお披露目的な何かに是非とも来てほしいとの事。

 なんでか奏さんはその後セレナの世界に向かって、それからグレ響さんの世界にも行ってから自分の世界に大急ぎで戻っていったけど。一体何をがしたかったんだろう? あと未来さんも連れて行っちゃったし。

 で、そんなわたし達、SONGの装者六人は何故かヤケにいい笑顔なSONGの方々と、特別いい笑顔なエルフナインに見送られ、二課へと向かう事に。

 なんでそんな風にほぼ個別で行くのかが分からないけど……まぁ、お誘いを貰って、更にSONGから許可を貰ったのなら行かざるを得ないだろうという事で、とりあえず集合場所であるゲートの近くの公園で待機する事に。

 

「まったく、奏はいつも急に……本当に困った性格だ」

「まぁいいじゃない。何かの催し物に誘ってもらえたんだから」

「でも、詳細は聞いてないですよね。未来だけは連れて行っちゃいましたし」

「なんでかすっげぇいい笑顔で引っ張られて行ったよな」

「なんか嫌な予感がするデスよ……」

「き、気のせいだと思いたいけど……」

 

 奏さんも結構いい笑顔だったからなぁ……セレナもチラッと見たけどかなりいい笑顔だったし。

 まぁ、それだけ楽しいイベントがあるって事だよね。確か迎えは藤尭さんって話だったけど……あっ、来た。

 来たけど……あれ? 二課の制服とはちょっと違う感じの制服のような気がしないでもない……? 分かんないや。

 

「おぉ、よう来てくれたな、お前達」

 

 えっ、何で関西弁? しかもなんかカメラ持った人が横に居るし。

 

「なんで関西弁なんですか」

「……今日はな、お前達にとある企画に参加してもらう」

 

 いや、無視ですか。

 

「企画? それが今日ここに誘われた理由かしら?」

「せや。お前達には今日から二課の新人装者として研修を行ってもらう。題して、笑ってはいけない装者体験や!」

 

 その瞬間、わたしと切ちゃん以外の四人が悲鳴のような笑い声を上げながらリアクションを取った。

 響さんはうわ~、と言いながら顔を抑えて翼さんは崩れ落ち、クリス先輩は笑いながら下を向いて、マリアは額に手を当てて笑いながらどうして……と軽い悲鳴みたいなのを上げている。

 笑ってはいけないって……そんなテレビ番組があったような気がするけど。

 

「えっ、どういう事デス?」

「テレビでそんなのがやってたような……」

「つまり笑ったらお尻をシバかれるんだよ。そっかー、だから藤尭さんが関西弁なのかぁ……」

 

 えっ……

 お尻をシバかれるって……マジですか?

 

「これから二課の新人装者となるお前達のために、制服を用意した。そこの更衣室で着替えてくるんや」

 

 あっ、特にこっちのリアクションについては何も言ってくれないんですね。

 で、藤尭さんが指をさしたのは、なんかわたし達の名前が扉に書いてある小屋以下の部屋。えっ、屋外で着替えろと? というかアレが更衣室?

 でも周りに人がいないし、部屋に鍵もかけられるし隙間も無いから覗かれる心配はないと思うけど……

 

「俺はあっちの方で待っとるから、はよ着替えるんや」

 

 で、藤尭さんはなんか全力でダッシュしてわたし達から距離を取った。カメラも一緒に距離を取って、ついでにこっちの方を映さないようにしてくれた。

 えぇ……マジですか?

 

「多分逃げようとしても連れ戻されるだろうし、やるしかないわよね……」

「一応、野外で着替えるための配慮はされているみたいだしな……何気に防音だぞ、この更衣室」

「着替えてバス乗ったらぜってぇ笑わねぇ……!!」

 

 逃げ帰っても無駄なのかも、と何となく察したマリアと翼さんが先に部屋の中に入って、その後にクリス先輩と響さんも入っていった。

 こうなるとわたし達も入らざるを得ないよね……? なんか不安だけど、着替えに最大の配慮をしてもらえているのなら別にいいかな……覗かれたら覗いた人をころころするけど……

 なるべく早めに着替えて更衣室の中にあった着替えが終わったら押してくださいって書いてあったボタンを押した。思いっきり扉に着替え終わっても合図があるまで待っててね、って書いてあったから結構狭い更衣室で待つ事数分。

 

『それじゃあ、出て来てくれ』

 

 という藤尭さんの声が更衣室内に聞こえたから、更衣室から出る。

 着ている服は特に変哲もない二課の制服。友里さんと同じデザインの物だって言ったら分かりやすいかな? ちょっと着てみたかったから役得、なのかな?

 で、横を見てみると。

 

「着替えは普通で良かったわね。ここでネタにされたら溜った物じゃないわ」

「全くだ。っつかちょっと胸元がきっちぃ」

「流石規格外デスね」

 

 普通に同じデザインの制服を着ている切ちゃん達と。

 

「えっと、響さんと翼さんは……ぶっ!?」

 

 ちょっ、翼さん、なんて格好……!!

 

「おい月読。私を見て笑った理由を教えてもらおうか」

 

 だ、だって翼さん……!!

 黒スーツなのはまだいいですけど! まだ十分に似合ってますけど! 

 なんでアフロのカツラ被ってるんですか!?

 

「いや、あったから……」

 

 あったからじゃなくて! ほら、他の四人も笑ってるじゃないですか!

 あと響さん!

 

「一人だけなんでチャイナドレスなんですか!? 一応下にズボン履いてるみたいですけど!」

「…………我们学习武术是帮助弱点。您永远不会为伤害别人而战。您总是在帮助别人」

 

 えっ、なんて!?

 

「よし、しっかりと着替え終わったようやな」

「まさかのスルー!? ってかセンパイそれでいいんすか!?」

「いや、案外快適でな。ほら、アフロの中に菓子も入ってる」

「なんでそんなのがアフロの中に入ってるのよ!」

「憑自我 硬漢子 拼出一身癡」

「響さんはさっきから何語を喋ってるんデス!?」

 

 駄目だあの翼さん、腹筋への破壊力が高すぎる! ついでに響さんがさっきからわたし達を笑わせようと何語か分からない……いや、多分中国語当たりなんだろうけど、映画で齧ったソレを適当に話してる! 

 あまり直視せずマトモに聞かないようにしよう……響さんの言葉曰く、笑うとお尻をシバかれるらしいし……

 

「ほな、あっちに送迎用のバスがとまっとるから、それに乗って二課の本部まで移動するで」

名字(メンチ)!」

「メンチじゃなくて普通に返事してくださいよ……」

「次からそうする」

 

 ホント、そうしてください。急に中国語みたいな言葉が聞こえてくるとビックリするんですから。

 そんな感じで着替えフェイズは無事に終わって、わたし達は藤尭さんに連れられて公園の外に。どうやらわたし達が着替えている間にバスが着ていたようで、結構大きい普通のバスがそこには止まってた。貸し切りにしたのかな?

 

「ほな、このバスに乗ったら笑ってはいけない装者の開始や。乗ったらもう後戻りしても笑った時点でキツいお仕置きが待っとるで」

「いつものアレか……まさか自分でそれを受けるかもしれない身になるとはな……」

 

 クリス先輩がボヤキながらバスに乗った。

 けどわたし達は乗らない。なんかマリアにそっと乗らないように肩を掴まれたから

 

「……おい。そういうお約束要らねぇから」

「クリス」

「んだよマリア」

「翼をよく見てみなさい。あの胸、盛ってるわよ」

 

 えっ?

 ……あっ、ホントだ。よく見てみるとサラッと響さんくらいにまで盛ってる。

 けどそんな事を言ったら翼さんキレるんじゃ……

 

「あぁ、盛ってるぞ」

『ふっ、ふふふ……!!』

 

 う、受け入れるの!? 思わず笑っちゃったけど!?

 

「っ……! だははは!! 駄目だろその暴露!! んでもって何でセンパイは誇らしげなんだよ!!」

 

 何故かドヤ顔の翼さんと笑ってしまったクリス先輩。

 その結果。

 

『クリスさん、アウト~!』

 

 と、どこからかエルフナインの声が聞こえた。

 えっ、なんでエルフナインの声?

 

「いや、ちょっ、ハメやがったなセンパイとマリア!!」

 

 俯いて笑っているマリアと翼さんに叫ぶクリス先輩だったけど、どこからか出てきた黒服の女性に無理矢理お尻を突き出すポーズをさせられると、そのまましばき棒で思いっきりお尻を叩かれた。

 スパーンっ! っていい音が響いた。うっわ、痛そう……

 

「いっでぇ!!?」

 

 ご愁傷さまです。

 

「ちなみにだな」

 

 と思っていたらなんか翼さんが。

 

「今の私のバストは84cmだ」

「いや、センパイ?」

「84cmだ!!」

「だから」

「具体的には立花と同じだ!! これで私だって盾の擬人化とか防盛とか壁とか言われなくても済むんだ!!」

『ぶっふ!』

『クリスさん、アウト~!』

 

 自虐ネタで無理矢理笑わせてくるの止めてもらえません!?

 翼さん渾身の貧乳ネタで笑わされたクリス先輩は哀れもう一撃をお尻に見舞われる事になった。

 いい音が鳴ってクリス先輩が小さく悲鳴をあげつつお尻を抑えた。

 あーあ、後で座ると痛くなりそう……

 

「だぁもうとっとと乗るぞ! じゃないと終わんねぇからな!」

「それもそうだね。クリスちゃんばかりシバかれるのも見てて心苦しいし」

「の割には笑顔だなオイ?」

「大丈夫。乗る時には真顔になるから」

 

 そ、そっか。ニヤニヤしてるとそれだけで笑ってる判定になるかもしれないから、極力笑顔は作らない方がいいね。

 うんわたしなら大丈夫。だってわたしは一時期表情筋完全に死んでたから。今みたいな笑顔なんて全然作れなかったクールっ子だったから平気平気。笑顔のプラクティスを一時的に忘れようそうしよう。

 

「あっ、月読。これをやる」

 

 はい? あぁ、どうも。

 えっと……なんですかこの白いの? なんか仄かに温かいし……

 

「今外した、私が詰めていたパッドだ。お前も付けるといい。立花の気分を味わえるぞ」

『響さん、クリスさん、マリアさん、切歌さん、調さん、アウト~!』

 

 駄目だって!! そういうの真顔でやられるとダメだって!

 えっ、ちょ、マジでシバかれるんですか? いや、わたし女の子ですよ!?

 

「いったぁ!?」

 

 お、思いっきりシバかれた……

 け、結構痛い……

 こういうイベントでノリノリなのは響さんだと思っていたけど、案外この人もそういうイベントにはノリノリなのを忘れていた……! 一応最重要人物としてマークしておこう……

 翼さんは満足げに頷いた後に横一列の席の響さんの隣に陣取って、全員が座ったところでバスが発車した。あっ、後ろの方に一般人が乗ってる。多分今回のために雇ったエキストラさんかな? あの人達は多分笑わせてこないだろうし、とりあえずあっちの方は気を付けなくていいかな。

 いつもならバスの中で駄弁って笑いながら移動するのに、笑ったらお尻をシバかれるから全員無言。何かをトリガーに仲間割れが発生しないように気を付けている。

 ……で、この受け取ったパッドはどうしよう。流石に更衣室の外で付けるわけにも……

 あれ? 裏に何か書いてある。えっと……

 

――もるもるもるね! 盛れば盛る程バストが大きく!――

 

『調さん、アウト~!』

「へ、変なパロをしてからに……!! ふっ、くくくく……!!」

 

 誰でも笑うでしょこんなの!

 もう笑ってしまったらどうする事もできず、わたしはお尻をシバかれました。いったい……

 今日のせいでスリーサイズが変わったらどうしてくれようか……労災とか降りるのかな……

 パッドを懐にしまって封印してからバスに揺られる事数分。バスが停留所らしき場所で止まった。誰か乗ってくるのかな?

 

「危なかった! する所だったよ、遅刻を!」

 

 え?

 この声、喋り方……アダム?

 まさか今回の企画、パヴァリアまで噛んでるの? あの人達暇なのか――

 

「ふぅ。よかったよ、間に合って。忘れてきてしまったけどね、服と下着を」

『全員、アウト~!』

「いてっ」

「ぬっ!」

「ってぇ!?」

「いっつ……!」

「あうっ!」

「いたっ!」

 

 あのさあ!!

 アダムが全裸になるだけで普通にシリアスな場面でも笑っちゃうくらいシュールなんだからこういう場でぶっこまないでくれないかな!? っていうかセクハラでしょこれ! マジで全裸だよ!!? 汚いダインスレイブ見えてるんだけど!?

 

「おや、お嬢さん達。どうしたんだい? こっちを見て」

 

 全裸だからだよ! とは言えず。

 わたし達全員でそっとアダムから視線を逸らすけど、アダムは汚いダインスレイブを揺らしながらこっちに来る。

 やめてよ! エキストラも笑ってるじゃん! というか年頃の女の子からしたら普通に目に毒!

 

「ほら、いいんだよ、遠慮しないでも。見たまえ、存分に」

 

 見たくないです!

 

「ほら、ほら」

 

 あっ、わたしの前から居なくなった……けど代わりに響さんの目の前に立ってる! しかも響さんは座ってるから汚いダインスレイブが顔から結構近い所に。

 うっわぁ……わたしなら絶対に蹴り飛ばしてる……

 でも、響さんは意を決したのかそっと前を見た。

 

「それでいいんだよ。見ることだね、ぞんぶ」

「サンジェルマンさんから聞いてましたけど、随分とお粗末ですね」

『翼さん、クリスさん、マリアさん、調さん、アウト~!』

「た、たちばな……!! ぬぅんっふふ……!」

「マジかよこの馬鹿……! はいいってぇ!」

「や、やるわね……! アウチっ!」

「えっ? どういう意味デス?」

「いたいっ!」

 

 ひ、響さんが普段じゃ到底ありえない切り返し方でアダムを……!

 とりあえず切ちゃんはそのまま純粋でいてね。このネタが分かるのはちょっと汚れてる証拠だから。

 アダムがマジでショックを受けた表情で一歩退き、わたし達はお尻をシバかれる。なんだろうこの状況。なんでわざわざ平行世界に来てまでお尻をシバかれるのかよく分からなくなってきたよ。

 

「……い、いや、こう見えてもだね、肉体には自信が」

「自信が……? ふっ」

『クリスさん、マリアさん、アウト~!』

『いったい!』

 

 鼻で笑わないであげてよ!

 今度は耐えたけど、クリス先輩とマリアは笑っちゃってもう一度お尻をシバかれる羽目になった。切ちゃんはよく分かってない様子だし、翼さんとわたしは口を抑えてなんとか耐えているけど。

 まさか響さんが下ネタに下ネタで返すなんて思ってもいなかった。しかも男性にはクリティカルな感じの下ネタだし。アダムが今までで見たこと無い程傷ついた感じの表情でこっち見てるし。

 

「そ、粗末なものか! この僕の肉体が! ほら、思うだろう! そっちの乗客も!」

 

 あっ、アダムが一般人の方へ。わたし達よりも年下な感じの子も数人乗ってるのにいいの? マジで訴えられるんじゃ……ってよく見たらそういう子は目隠しさせられている。よかった、猥褻物陳列罪で檻にぶち込まれるアダムなんて居なかったんだね。

 

「ほら、君、そうだろう! 同じ男なら分かるだろう!」

 

 とか思ってたら中学生くらいの男の子に掴みかかった。

 あれ放っておいて大丈夫なの? 助けないと。

 

「えっ、打ち合わせと違っ……」

「そんな粗末じゃないだろう、僕の体は! ほら、見てくれ、ちゃんと!」

「ちょっと待って落ち着いてください! 俺達エキストラだから何もしなくていいって……」

「ええい、つべこべ言わずに言ってくれたまえ! ほら、早く!!」

 

 あーあー、アダムが錯乱して男の子の肩を掴んでがくがくと揺らしてる。

 これは強制退場……かな? わたし達のお尻をシバいてた人がアダムを捕縛しようと動き出したし。

 なんだろうこの光景。わたし達、お尻をシバかれ損だったりする?

 

「コレか! 素直に物を言えない頭は! このっ、このぉ!」

「マジで止めっ! ってかそろそろお前らも目隠しとって俺の事助けてくれても……!」

 

 男の子が結構マジでうろたえながら顔を掴むアダムから離れようとしたその瞬間だった。

 男の子から何か黒い物が取れた。

 えっ? とアダムがその瞬間に声を出し、シバき隊の皆さんも停止した。

 頭部から取れた黒い物。ふさふさとした黒い物。

 わたし達も思わず笑いそうになったけど、多分アレは笑っちゃいけないやつ。男の子の頭が黒から肌色に変わったけど、笑っちゃいけないやつ……!!

 

「あっ……いや、その……これはだね……」

 

 そりゃあ困惑もするよ。

 だってあの男の子の髪の毛がアダムの手でスポンと抜けちゃったんだもん! 男の子の頭部が年若いのに焼け野原になっちゃったんだもん! こんなの当人は困惑するし周りは笑うって!

 

「……もういいんでズラ返してもらえません?」

「あぁ、うん……その、すまない。本当に、すまない……」

 

 そしてアダムは男の子の頭の上に取れた髪の毛を乗せると、シバき隊の手によってドナドナされていった。

 ……どこからどこまでが台本だったんだろう。

 

「災難だったね、ハゲ丸くん」

「身内全員にはハゲバレするし知らない全裸のオッサンにハゲバレさせられるし……俺何か悪い事した……? なんかの撮影のエキストラしただけなんだけど……?」

「今回ばかりはとりあえず同情しておいてあげるわ……」

 

 なんか周りの女の子から慰められているけど、わたし達は無視で大丈夫なのかな……?

 そもそもかける言葉も見つからないし。わたし達は男の子の事を無視して笑わないように何とか表情を固めながらバスに揺らされ、そのまま二課へと向かうのでした。

 ……今度アダムに会ったら汚いダインスレイブ見せてきた罪で処しておこう。そうしよう。

 

 

****

 

 

 どうやらバスに乗っている間の刺客は一人だけだったらしく、わたし達は無事二課へと到着した……んだけど、二課ってリディアンの地下にあるんだよね? ここ、リディアンじゃないんだけど……

 

「着いたで。ここが新設された特異災害対策機動部二課の本部や」

「……まぁ、どうやって用意したのか深堀はすべきではないだろう」

「そうね。多分今回の企画のために借りただけだとは思うけど」

 

 で、なんか「ボクが主犯者です」とでも言わんばかりのいい笑顔でダブルピースしたエルフナイン(初代二課司令って書いてある)の額縁に入った写真をスルーして新設二課本部を歩く。

 

「このまま現司令の所へ挨拶しに行くで」

 

 現司令って……それ風鳴司令が出てくるだけなんじゃ……

 

「司令はとても厳しい人やからな。くれぐれも失礼が無いようにするんやで」

「……なんかわたし、エルフナインちゃんの写真があった時点で察したんだけど」

「いや、ンな訳ないだろ。アレも暇じゃないだろうしな」

 

 なんか響さんが察していたけど、エルフナインの写真で何か察せる所ってあるかな……? わたしは帰ったらエルフナインを一発ぶん殴るくらいしか思いつかないんだけど。

 無駄に複雑な建物の中を歩く事数分。ようやくわたし達は司令室って書かれた部屋の前に立った。

 

「それじゃあ、入るで。何度も言うけど、くれぐれも失礼が無いようにな」

 

 まぁ、多分中に居るのは身内だろうし、そんなに緊張とかはしなくても大丈夫だとは思うけ――

 

「よく来たな。オレが得意災害対策起動部二課の現司令、キャロル・マールス・ディーンハイムだ」

 

 いや、どうしてキャロル!?

 完全にこっちの事敵視する側のキャロルがどうして司令なんかやってるの……? 流石にビックリの方が勝って笑うことは無かったんだけど、どうして何のつながりもないキャロルが司令をしているんだろう。

 ……って、エルフナインか! エルフナインが初代だからそれに関連のあるキャロルが引っ張られてきたんだ! だから響さんもクリス先輩も察してたし、翼さんとマリアも無言で察してたんだ!

 

「司令、こちらが新しく着任した装者です」

「ご苦労だった。よく来たな、新たなシンフォギア装者達よ」

 

 そう言ってキャロルはやけに豪勢な椅子から立ち上がってこっちに寄ってきた。

 

「不躾だが、貴様達の情報は予め調べておいた。こちとら国家機密だらけの機関だからな」

「知ってるっての」

 

 クリス先輩のツッコミが入ったけど、特にキャロルは動じず。

 

「そして装者にはコードネームも必要だ。故に、オレが自らお前達のコードネームを考えた」

「いや、それって聖遺物名とかシンフォギアの番号じゃ……」

 

 響さんのツッコミが入ったけど、キャロルは特に動じず。

 けど、なんかニヤニヤしてない? アレもアウトにしてお尻をシバいた方がいいんじゃない?

 とかなんとか思ったけど、キャロルはそのまま響さんと距離を詰める。響さんも特に退く事無くキャロルと目線を合わせる。

 

「お前のコードネームは『おっぱいの付いたイケメン』だ」

『翼さん、クリスさん、マリアさん、切歌さん、調さん、アウト~!』

 

 反則! それは反則だしみんな思ってる事だから!

 

「えっ!? いや、わたしは今を生きる可愛い女子高生だよ!? イケメンとかじゃないんだけど!?」

「いや、イケメンだな」

「センパイの言う通りだ、女誑し」

「この子、時折下手なイケメンよりもイケメンになるものね」

「そうデスよ。まごう事無き真実デスよ」

「否定材料がありません」

「これマジ?」

 

 マジです。

 響さんがそんな筈じゃ……と頭を抱えるけど、そんな響さんには目もくれず、キャロルは翼さんの方へと。

 さぁ、どんな爆弾が落ちてくるか。

 

「お前は『無乳ライダー』だ」

「ぶっ殺してやろうか貴様ァ!!」

『響さん、クリスさん、マリアさん、切歌さん、調さん、アウト~!』

 

 ごめんなさいこれだけは耐えられません! そしてお尻がいったい!!

 でもお尻の痛みに悶絶している間に翼さんがマジでキャロルを襲いかねないから全員で半笑い状態で翼さんを取り押さえる。

 

「離せ貴様等! 私はこの阿呆を殺さねばならない!!」

「お、落ち着いてくださいよセンパ……ぷっ、くく……!」

『クリスさん、アウト~!』

「雪音ァ!」

「そうだぞ、落ち着け無乳ライダー」

『響さん、マリアさん、切歌さん、調さん、アウト~!』

 

 笑ってしまったものは仕方ないので一旦翼さんから離れてお尻をシバかれます。

 この企画が終わった頃、スリーサイズが変動していないといいなぁ……で、わたし達がシバかれている間に翼さんは何とか落ち着いたみたいで息を荒げながら拳を握りつつではあるけど、キャロルを襲おうと言う気は無くしたみたい。

 で、次はクリス先輩。

 

「そこの銀髪。お前は『愛されマスコット』だ」

「はぁ!? 愛されマスコットって……アタシはそんな柄じゃねぇ!!」

 

 えっ?

 

「気付いてないの? クリスちゃんって結構庇護欲引く感じだよ?」

「寧ろ的を得たコードネームじゃないか」

「そうね。口は乱暴だけど可愛い所の方がもっと多いもの」

「だからこそ学校でも人気爆発中デスし」

「クリス先輩の可愛さはマスコット級」

「いや、もっとこう、先輩としての威厳とかがあるだろ!?」

『え?』

「お前らこの企画終わったら覚えておけよ……!!」

 

 だってクリス先輩に先輩としての威厳が無いって最早いつもの事と言うか、ただの愛されキャラというか、そんなイメージが強すぎて。

 先輩としての顔もそりゃああるんだけど、それ以上に可愛い場面が多すぎるから装者のマスコットって感じになってきてるし。本当に今更過ぎるけどネ。

 で、クリス先輩がこっちを睨んでくるのをスルーしていると、今度はマリアの番。けど、なんかキャロルが結構ニヤニヤして……

 

「よろしくな、『アイドル大統領』」

「出てきなさいガリィ!! ぶっ壊してやるッ!!」

『響さん、翼さん、クリスさん、アウト~!』

 

 あっ……マリアの黒歴史が……

 い、いや、わたしは笑わない、よ? 一応我慢はしておくから、ね? なんやかんやでその頃からの身内だからね?

 マリアがガリィを壊すために動こうとしているけど、響さん一人に羽交い絞めにされて動きを封じられている。流石生身最強格。ギアを使わない限りはどうにもならないね。

 で、今度は切ちゃんなんだけど……あれ? なんかキャロルがまだニヤニヤしてるんだけど……

 

「頑張れよ、『てがみ』?」

「ヒェッ……」

 

 ……うん、笑いはしないけど。笑わないけど、どこでその情報漏れたんだろうね……?

 ま、まさかわたしのメールの下書きまで見られているとか……いや、別にあれは見られても恥ずかしい物じゃないから。だからどしっと構えておこう。

 顔を青くしている切ちゃんを置いてキャロルがこっちに。

 さぁ来い。わたしは笑わないぞ。

 

「お前のコードネームはな」

 

 コードネームは?

 

「『日和山』だ」

 

 ふーん、日和山かぁ。

 あの標高6mの日本一低い山ねぇ……なるほど…………

 こいつぶっ殺してやるッ!!

 

『響さん、翼さん、クリスさん、マリアさん、アウト~!』

 

 あと笑ったそこの四人も後でぶっ殺してやる!! その前にまずはキャロル!! 覚悟ッ!!

 

「ま、待って調ちゃん!」

「そ、そうだぞ! ここは甘んじて受け入れ……ふっ、くく……!!」

「笑うな無乳ライダーッ!!」

「んだと日和山!! そっ首叩き落してやるッ!!」

「上等!! 無乳どころか陥没するまでえぐり取る!!」

『響さん、クリスさん、マリアさん、アウト~!』

 

 くっ、なんか響さん達が腹を抱えてうずくまっているけど、今はこの無乳ライダーを陥没ライダーにする方が!!

 ……あれ? なんかキャロルがこっちに。

 そんでもって……あの、何でわたしの胸を触ってるんですか。しかも翼さんの方も触ってるし。で、自分のも触って……?

 

「……ふっ」

 

 鼻で笑いやがった!!

 

「オレの方がデカいな!!」

『殺す!!』

『響さん、クリスさん、マリアさん、アウト~!』

「っっっ……!! し、しぬ……!! わらいでころされる……!!」

「せ、せんぱいのかお……!! ひっしすぎんだろ……!!」

「ご、ごめんなさいしらべ……ふふふふふふ……!!」

「あ、あたしは笑わないデス……! 笑わないデスよ……!!」

 

 この後滅茶苦茶ドックファイトした。

 

 

****

 

 

 キャロルも巻き込んだドックファイトは痛み分けという結果で終わってしまった。

 髪も掴んで殴ってのドックファイトをしたせいで髪型が乱れたし、翼さんのアフロはどっかに行ったけど、とりあえず簡単に髪型だけ戻してわたし達は控室に連れてこられた。

 でもわたしは忘れない。あのドックファイトを見ている藤尭さんが大層笑顔だったことを。企画が終わったら絶対に折檻する。

 で、控室なんだけど、机が人数分の六つある。勿論笑っちゃいけないし、ついでに色々と設備もある。お湯とかお水とかあるから、飲み物には困らないね。食事は……どうするんだろう? 後で出るのかな?

 

「机かぁ……」

「アレだよね」

「引き出しネタね。間違いなく」

 

 引き出しネタ? 何の事だろう?

 とりあえず引き出しを開けばいいのかな? それっ。

 

「あっ、調ちゃん!?」

「無知故にやりやがった!」

 

 はい? 何かマズい事でも?

 あっ、なんか入ってた。大きな封筒? 中に何か入ってる気がする。

 

「封筒、か……何かありそうだな」

「確実に何かあるわよ」

「およ? 何があるんデスか?」

 

 何かあるって……まさか爆発するわけでもないし。

 いや、中にわたし達を笑わせるための何かが入ってるのかも。そう思うとあまり開けたくないけど、でも折角用意したんだし……ってちょっとは思っちゃう。

 ……まぁ、中を見ても笑わなきゃいいだけだよね。断じて中が気になったとかじゃないからね?

 という事でオープン。

 

「あっ、写真みたいなのが入ってますね」

「写真? 嫌な予感が……」

 

 まだ裏を向いてるから見えないけど、とりあえず皆にも見えるように表を向け――

 

『私、ナスターシャ十四歳!』

 

 見なきゃよかったぁ!!

 魔法少女の格好したマムのコスプレ写真なんて笑うに決まってるじゃん!!

 

『全員、アウト~!』

「キッツっ……!! 痛いマン!!」

「しかもノリノリ……ヌッ!!」

「歳考えろっての! っでぇ!!」

「ま、マムのイメージが……っづぁぁ!!」

「なんで引き受けたんデスか! いったぁい!!」

「ふ、ふっきんが……ひゃんっ!」

 

 わ、笑い死ぬところだった……!

 マムの腹筋破壊写真はちょっと引き出しの中に封印しておこう。じゃないと何度腹筋を壊される事になるか分かった物じゃない。

 ……あっ、なんかもう一枚入ってた。

 

「もう一枚ありますね……見てみましょうか」

「そ、そうだね。流石にナスターシャ教授レベルの破壊力は早々出ないだろうし」

 

 という事でオープン。

 

『私、魔法少女セレナ・カデンツァヴナ・イヴ!』

 

 あっ、普通に可愛い写真だ。

 

「セレナの写真ね。似合ってるじゃない」

「マリア、あげる」

「よっしゃ!」

 

 マリアが思いっきりガッツポーズしてからセレナの写真を受け取った。

 流石シスコン。セレナの写真への食いつきは凄いね。

 

「あっ……」

 

 と思ってたらクリス先輩が何かに気が付いて、入口の方を指さした。

 わたし達がそれに気づいてそっちを見ると……

 

「……じーっ」

 

 ……あれっ、セレナご本人?

 どうしてドアの隙間からこっちを覗いてるの?

 

「……笑ってくれないかなぁ」

 

 あっ。

 

「……頑張ったんだけどなぁ。誰か笑ってくれないかなぁ」

 

 ろ、露骨! めちゃくちゃ露骨!

 すっごい悲しそうな表情でこっち見ながらわたし達の誰かが笑う事を期待している! で、でも駄目だ。ここは心を鬼にしないと、わたし達のお尻が大変な事になっちゃう。

 同情でもここで笑うわけには!

 

「……は、ははは」

『マリアさん、ガリィ~!』

「やった!」

 

 マリア!?

 

「セレナが喜ぶのなら、こんな尻、幾らでも差し出してやるわ!!」

 

 さ、流石マリア……セレナの事に関しては抜け目ない……

 ……あれ? アウトになったのにシバき隊が来ない? いつもは迅速にこっち来るのに。っていうか、さっきアウトの代わりにガリィって聞こえたのがとんでもなく不穏なんだけど……

 あっ、来た……

 

「はぁい、アイドル大統領」

 

 やっぱりガリィだ! ガリィがシバき隊としてやってきた!!

 しかもその手に持ってるドデカイ氷柱は……ひえっ。あれで叩かれたら死ぬんだけど……

 

「常人なら死ぬわよ!? でも、今のわたしはセレナの写真で無敵! その程度の攻撃で死ぬほど柔じゃないわ! さぁ来なさい!」

「それじゃあ遠慮なく。オルルァァッ!!」

「ン゛オ゛オ゛オ゛オオオオォォォォォォォォ!!?」

 

 いつものスパァン! じゃなくてゴッシャァ! って音が響いてマリアが数メートル吹っ飛んだ。マリアを吹っ飛ばしたガリィは物凄い笑顔で氷柱を抱えたまま部屋を出て行った。

 ……その、大丈夫?

 

「こ、この程度の痛み……セレナの笑顔の対価と思えば……」

 

 マリアは死にそうでフラフラしながらもなんとか立ち上がって、自分の席に座った……けど、すぐに痛かったのか立ち上がって自分のお尻を押さえながら壁に手を付いた。

 アレは暫く座れないだろうね……あとついでに、後でガリィぶっ壊すって念仏のように呟いているマリアがちょっと怖いです。

 セレナもいつの間にか居なくなった事だし、痛みに悶えながらも何とか立っているマリアを他所に今度は切ちゃんが自分の引き出しを開けた。

 

「あっ、なんかあったデス」

 

 どうやら、何かあったみたい。

 取り出したのは……ボタン?

 

「ぼ、ボタンかぁ……」

「嫌な予感しかしねぇなぁ……」

 

 そうですか? 特に変哲のないボタンですけど。

 

「ボタンがあったら押してみたい! という事でポチっとデス」

 

 あっ、切ちゃんがボタンを押した。

 

『切歌さん、アウト~!』

「は? …………は?」

 

 そして切ちゃんが真顔になった。

 うわ~……あのボタン、そういうやつ? 響さん達信号機トリオが頷いている中、シバき隊が入ってきて切ちゃんのお尻をシバいて帰っていった。

 

「いっつぅ……な、なんデスか、このボタン」

 

 お尻を押さえながら切ちゃんがボタンを忌々しそうに睨んだ。

 まぁ、そうなるよね。まさか押したら自分のお尻が叩かれるなんて思わないよね。で、そのボタンは事故が起きて誰かが押しちゃわないようにしておかないと危険だけど……

 

「さぁな。おい、それ寄越せ。封印しておいてやるから」

「お願いするデス」

 

 クリス先輩がボタンを切ちゃんから受け取ってどこかに封印する事に。

 よかった、これで事故でお尻を叩かれ続ける切ちゃんっていう可哀想な図は無くなるんだね。でも、なんかクリス先輩、ボタンを貰った瞬間、すっごい悪い顔してない? その横で響さん達もなんか悪い顔してるし。

 ……なんか察したけど、いい先輩であるあの人達やマリアがそんな事するわけないよね? 大丈夫だよね?

 

「あっ、テガスベッター」

 

 あっ。

 

『切歌さん、アウト~!』

「ちょっとおおおおおおお!!?」

「わりっ、テガスベッタ」

 

 ほ、本当にそんな事やる人居る……? しかも半笑いで。

 半笑いだからギリギリカウントはされていないけど、切ちゃんは理不尽に叩かれることに。抵抗も空しく切ちゃんはシバき隊にお尻を叩かれてしまった。

 もう何度も叩かれているから慣れただろって思う人がいるかもしれないけど、そんな事無いからね。普通に痛いからね。しっぺされた所の上から更にしっぺされるようなモンだからね。普通に何度も痛いからね。

 

「それ返すデス!!」

「これやるよ、馬鹿」

「ありがと。あっ、テガスベッチャッタ」

『切歌さん、アウト~!』

「アンタ等後で覚えていろデス!! いったいデス!!」

 

 そして今度は響さんの手によって切ちゃんのお尻が叩かれてしまった。

 これは酷い。しかも切ちゃんはボタンを押される限りシバかれ続けて動けないからボタンを回収する事ができない。

 酷い先輩達だ……

 

「もう満足したデスよね!? それをとっととこっちに戻すデス!」

「翼さん、どーぞ」

「うむ。ではここは私も一つ」

 

 あぁ、無常な現実が……今度は翼さんが切ちゃんのお尻叩きボタンを押して……

 

『翼さん、ガングニールキック~!』

「ん? ……ん? …………おい? おい!?」

『響さん、クリスさん、マリアさん、切歌さん、調さん、アウト~!』

 

 ま、まさか切ちゃんだけが叩かれるボタンじゃないとは思わなかった……!

 不意打ちのアウト宣言と翼さんのうろたえっぷりに思わず笑ってしまったわたし達はお尻をシバかれたけど、その直後に部屋の中に入ってきた人と、ガングニールキックの意味を知って思わず翼さんに同情してしまった。

 だって入ってきたの、グレ響さんなんだもん。普通にガングニールを纏ったグレ響さんなんだもん。

 

「待て!! 死ぬ!! グレ立花のソレは普通に死ぬ!!」

「面倒だから早くケツをこっちに向けて。一応手加減するから」

「ふざけるな! ふっざけんな!! 死ぬわ!! 手加減されても死ぬわ!!」

「早くしないと顔面殴るよ」

「しかも物騒だなお前!? おい掴むな、私は先輩だぞ! 国民的歌手だぞ! わかった、蹴ってもいいからソフトタッチだ! 赤子の肌を撫でるようにそっと触るだけの蹴りだけで済ませろ! そうしたら私の尻は守られ――」

「フンッ!!」

「あああああああああああっっっっはっはうぐああああぁぁぁぁぁ!!?」

『響さん、クリスさん、マリアさん、切歌さん、調さん、アウト~!』

 

 ちょっ、悲鳴が迫真過ぎて笑っちゃったじゃん……!!

 蹴られた瞬間射出されるように翼さんの体が飛んで、そのまま翼さんはお尻を抑えたまま地面に転がって悶え始めた。しかも痛すぎてバラルの呪詛でも発生したのか分からないけど、よく分からない言葉を口にしながらずっと悶えている。

 こんな情けない国民的スターは見たくなかったなぁ、とか思いながらもやっぱり面白いから笑っちゃって、結果的にわたし達全員のお尻はシバき隊によってシバかれました。

 でも翼さんの様子が面白過ぎて見ているだけで笑っちゃいそう。

 マリアのガリィと翼さんのガングニールキックのどっちが痛いかと聞かれたら微妙だけど、シスコン補正の乗ったマリアと特に何の補正も無かった翼さんのどっちが辛いかと言われたら後者だと思う。

 翼さんは半泣き状態で悶えているし、グレ響さんは結構申し訳なさそうな顔をしてから退場していった。

 

「いたい……いたいよぉ……かなでぇ……」

 

 しかもなんか精神が若干退行しちゃってるし。

 痛そうだなぁ。でも、見ていると笑っちゃうから無視無視。響さんとクリス先輩は大分我慢しているようだけど。

 

「かなで……どこ、かなで……」

『…………』

「かなでぇ…………かなで、かなでぇ……」

『………………』

「かにゃでええええええええええええええええ!!」

『ふふっ……』

『響さん、クリスさん、アウト~!』

「よし」

「いい加減にしてくださいよズバババン!!」

「情けねぇ声出すなや!!」

 

 もう恥も外聞も知らずに思いっきり情けなく叫んだ翼さんによって響さんとクリス先輩のお尻がシバかれた。

 で、翼さんはと言うと、ちょっとお尻を庇いながらもすまし顔で普通に自分の机の上にあるもうどういう事が起こるのか分からないボタンを適当な場所に置いてから戻ってきた。

 うん、そうするのが一番いいと思う。じゃないと次は誰が犠牲になるか分からないからね。

 なんか部屋の中の空気がちょっと悪くなったけど、気にする事無く全員が引き出しの中を見たけど、中に何かあったのはわたし達だけらしく、その後は誰も喋らずにただの休憩時間となった。もしボタンを押して自分がガングニールキックになったら嫌だしね。

 

 

****

 

 

 休憩時間を思い思いに無言で過ごす事数十分。音を立ててドアが開いてそこから藤尭さんが入ってきた。

 

「おいお前ら、訓練の時間や。早速やけど、表に出るで」

「急に来たかと思ったら……こんな企画中にも訓練ですか?」

「ぜってぇロクでもねぇだろうけどな」

 

 という事でわたし達は文句をグチグチ言いながらも建物の外へと出た。

 で、外には……あれ? 特に何も無い? てっきり何か漫才でも見せられるかと思っていたのに。でも、なんか変な台がある。あと、檻みたいなのも。アレなんなんだろ。

 

「あー……これかぁ……」

「いてぇやつじゃん……」

「しかも中に入っても辛いやつだな……」

「通気性とか悪いって聞いたけど……」

 

 え? なんでこの四人は知って……

 そう言えばこの企画、四人は元から知ってるみたいだったし、多分元ネタがあるのかな? で、この四人はそれを知っていると。

 でもわたしと切ちゃんは特に知らないから首を傾げるだけ。

 多分テレビ番組の企画なんだろうけど、わたし達、あんまりテレビ見ないから。基本的に携帯見てたりゲームしてたり。年末なんて気が付いたら年明けてたしね。

 で、一体何をさせられるんだろう。

 

「ってか、あの中には誰が……おい、なんか黒子がアタシの方に来てんだけど。マジかよ、アタシがあん中入んのか!? やめっ、やめろぉ!! あたしはあんな事されたくねぇ!! 離せ! はっなっせっ!!」

 

 あっ、クリス先輩が攫われて檻の中に閉じ込められた。

 あのままクリス先輩を放置して帰っていいですか? 駄目? そう……

 

「それじゃあこれから、お前らには訓練をしてもらうで。あっ、この訓練の間、つまり今から終わりまでは笑っても大丈夫や」

「ホントですか? あはははは…………あっ、ホントだ。アウトにならない」

 

 なんだ、それじゃあヌルゲーじゃん。

 楽勝楽勝。で、何をするんですか?

 

「お前らには、あの装者が閉じ込められている檻の鍵が入った宝箱を探してもらう。でも、それじゃあただの宝探しゲームだからちょっとした障害もあるで」

「ただの宝探しゲームでいいんですけど」

「……障害ってのはな、一定時間毎にあの台の中から鬼が放出されるんや。その鬼に捕まるとキツイお仕置きが待っとるで」

「またお尻をシバかれるんですか?」

「それは捕まってからのお楽しみや」

 

 えぇ……いや、捕まりたくないんですけどそれは……

 けど藤尭さんは台本を読み上げるマシーンになりきっているせいか、特にわたし達の反論には答えてくれず、結局わたし達はこの鬼のような企画に参加させられる事となった。

 

「ほな、頑張るんやで」

 

 そんな藤尭さんの声と同時にクリス先輩が閉じ込められている檻からちょっと離れた所にある台から煙が発射されて、全身タイツな上に顔を同じような感じで見えないように覆った人が出てきた。

 うわっ、変態だ。

 そう思ったのも束の間。その黒タイツが手に持っているのがスリッパで、体にはスリッパって書いてある時点で何となく察した。

 間違いない。捕まったらあのスリッパで叩かれる!

 

『散!!』

 

 それを察したわたし達全員が一斉に散らばった。

 これで自分が終われなければあのスリッパによる一撃を受けずに済むから。

 で、狙われたのは。

 

「わたしぃ!?」

 

 響さんだった。

 だからわたし達は響さんを追う鬼を傍観しつつ集まって響さんの行く末を見守る。

 響さんは逃げるけど、相手も結構鍛えている人なのか分からないけど、巧みに響さんとの距離を詰めていき、そのまま響さんを見事掴まえた。

 掴まった響さんは無理矢理首を垂れさせられて。

 

「いっだぁ!!」

 

 思いっきりスリッパで頭を叩かれた。

 あーあー、痛そう。

 

「アレは痛いな」

「痛いわね。しかも相当」

 

 で、叩かれた響さんは頭を抑えながらこっちに来た。鬼はどっかに行った。

 一回お仕置きしたらどこかに行って待つっていう制約でもあるのかな? それなら暫くはお仕置きを気にしなくていいから楽かも。

 

「女の子の頭を思いっきりスリッパで叩くなんてひどいと思わない……?」

「別に大丈夫だろ。立花の頭なら」

「これ以上馬鹿にはならないから大丈夫デス」

「今度の訓練で必要以上にボコるから覚えとけよそこの二人」

 

 なんか響さんの荒い口調、初めて聞いたかも。

 でも、割とマジで痛い事をされるのは分かった。これは全力で逃げないとお尻以外の部分にも深刻なダメージが残ってしまう可能性が……

 ……ん?

 あっ。やべっ。

 

「あれ? どうしたの、調ちゃん。そんな全力で後ろに向かって走って……はっ、殺気!!」

「ヤバイ、何か来てるわ!!」

「薄情だぞ月読!!」

「あたしには教えてもらってもいいじゃないデスか!」

「わたしはどこも叩かれたくないから!」

 

 でも、これであの五人のうちの誰かにお仕置き内容もよく分からない黒タイツが行くはずだから……あれ? こっち来てない? あの五人じゃなくて先に逃げたわたしに思いっきりロックオンしてない?

 あっ、ヤバイ! ホントにこっち来てる! しかも速い! なんなのアレ! わたし、一応結構鍛えている部類の人だよ!? 普通に追いつかれるんだけど!?

 

「うわぁ。調ちゃんが今まで見たこと無い表情で逃げてる」

「自業自得だ。仲間を見捨てた罰だな」

「しかも書いてあるのって……うわぁ、ハリセン。痛そう」

 

 痛そうじゃなくて!

 あっ、ヤバイ気配が真後ろに! 捕まる捕まる! 誰か助け……あっ。

 

「掴まったみたいデスね」

「無念……」

 

 は、ハリセンって……しかも結構巨大だし……

 その、わたし女の子だよ? こんなか弱い女の子の頭をそんなドデカイハリセンでシバくなんて事しないよね? ね? ちょっ、ホントに手加減し……

 

「いったぁい!!」

 

 思いっきり叩かれたぁ! しかもいい音が鳴ったぁ!

 しかもあのハリセン、何気に厚紙製だから滅茶苦茶重かったし滅茶苦茶痛いし……あー……耳がキーンってする……頭の中で音が反響しているみたい……ハリセンって、あんなに痛いんだね……

 頭を押さえて皆の元に戻ると、みんなはニヤニヤしながらわたしを出迎えてくれた。

 くそっ、今度こそ絶対に擦り付けてやる。

 

「まぁ、なんだ。早く雪音を助けようか。私もハリセンでシバかれたくないからな」

「そうね。スリッパでも叩かれたくないし」

 

 絶対にこの二人にはお仕置きにあってもらわないと。

 

 

****

 

 

 ……あっちぃなぁ。

 なんだよこの檻。檻って言うか見世物小屋か? 外からの日差しがガンガン入ってくるから普通にあっちぃ……

 でもジュース置いてあるから何気に気は楽だな。ヒマだけど。

 

「おっ、あの馬鹿がスリッパで頭叩かれてやがる。おもしれ」

 

 ……流石にアタシみたいな女子がトンデモないキスとかされるとかはねぇと思うけど……

 ……あれ? なんか後ろの方がちょっと騒がしく。やべっ、逃げた方が……ってぇ!?

 

「なんだこれワイヤー!? おいこれやってるのキャロルだろ! 離しやがれ!!」

 

 ワイヤーで拘束されちまった!

 くそっ、あまり痛くはないけど逃げ出せないし壁際まで引きずられて……あっ、なんか壁から手が。

 おいやめろ! 触んな、今のアタシに触んな!

 

「ぎゃははははははははははは!! ちょっ、それはだっはははははははははは!!」

 

 くすぐんなぁ!!

 

 

****

 

 

 鍵を探し出すまでわたし達は何度もシバかれた。

 翼さんはケツバットされるし、マリアはスリッパとハリセンのコンボをくらうし、切ちゃんは仲間を売ろうとしてケツバットされたし。

 わたしと響さんも何度かスリッパとハリセンとケツバットを貰った。もう頭とお尻が限界だよ……

 

「ま、まだか……まだ鍵は見つからんのか……」

「そろそろこっちの肉体の方が限界よ……クリスもクリスで多分キッツイお仕置きを受けてるだろうし……」

「そういうものなの……?」

「あっち側も見てると結構辛い感じだよね……さっきチラッと見てきたけど、思いっきりくすぐられてたよ……」

「どっちにしろ辛いデス……」

 

 全員満身創痍。だけど時間をかければ絶対にロクな事にならない。だから全員でとりあえず纏まって鍵を探す事に。

 でも、中々見つからない。本当に鍵が置いてあるのか不安になるレベルで見つからない。

 これで不正発覚とかしたら今度この世界の二課を攻撃してやる……!!

 

「こうなったら二手に分かれた方がいいかもね。それじゃあわたしは……翼さんと! 行きましょう!」

「そうだな!」

 

 え?

 なんかこっちが何か言う前に響さんと翼さんが全力で走っていった。

 ……いや、もしかしてこのパターンって!

 

「後ろに居るわよ!」

「あの先輩達今度処すデス!!」

「同じく!」

 

 あの先輩共、わたし達に鬼を擦り付けやがった!

 絶対に今度の訓練で必要以上にボコボコにする! と思いながら逃げていると、最後尾になった切ちゃんがそのまま鬼に捕まった。 

 えっと、罰は……び、ビンタ……

 

「いや、女の子の顔にビンタとか冗談デスよね!? やるならボディにしないと女の子の顔に紅葉がぶへっ!」

 

 あー……痛そう。

 思いっきりビンタされた切ちゃんはそのまま顔を押さえながら崩れ落ちた。

 痛みよりも精神的な痛みの方が大きいらしく、なんか顔を押さえたまま下を見つめている。

 可哀想だけど……ただ、わたしとマリアはそっと距離を取った。だって傷心の切ちゃんに鬼がそっと近づいて来てるんだもん。

 

「うぅ……もう嫌デス……え? あっ、鬼デスか。ハネムーン……? これ付けろって事デスか? 嫌なんデスけど……あっ、はい。拒否権無しデスね……」

 

 そして切ちゃんは腰に大量の缶が括り付けられたベルトを取り付けられた。

 で、切ちゃんはガラガラと音を出しながらこっちに来たけど、わたし達はそれと同じスピードで切ちゃんから距離を取る。

 

「なんで逃げるんデスか!」

「位置がバレるからよ! 切歌だけは単独行動しなさい!」

「切ちゃんなら一人でも大丈夫だから、ね!」

「ふざけんなデス!! 二人も道ずれデス!!」

 

 この後、何故かわたし達同士で鬼ごっこしながら時折鬼にシバかれました。

 ちなみにわたしがくらったお仕置きの中で一番痛かったのは自転車通勤。板の下敷きにされた後にその上を自転車の通路にされた。

 めっちゃくちゃ痛かった。特に最後のデブ。

 

 

****

 

 

「……暇だなぁ。あっ、くすぐりもう一回? いや、勘弁してひゃははははははははは!!」

 

 

****

 

 

 満身創痍のわたし達はなんとか宝箱を三つ、発見する事ができた。 

 その内二つは外れで、開けた瞬間煙が吹いて主にわたしが攻撃をくらったけど、三つ目の宝箱でなんとか鍵をゲットする事に成功した。

 

「やっと終わりか……」

「そうですね……さっきのエルビスで描かれた所が全然落ちない……」

「でも、これでこの地獄からおさらばよ!」

「代わりに来るのは笑ってはいけない地獄デスよ」

「どっちも嫌だぁ……」

 

 でも、クリス先輩を解放しない限りこの地獄は終わらない。

 という事で、皆でクリス先輩の所へ。

 

「クリスちゃーん。迎えに来たよー……ってあれ? 息絶え絶え?」

「ご、五分ごとに擽られりゃこうなるわ!!」

 

 あー……そんなハイペースで擽られてたんだ……ご愁傷様です。

 で、響さんが見つけた鍵を刺して……あっ。

 退散!!

 

「あれ? みんなどこに逃げ……っ!?」

「アレはヤバイ!! なんだ全部って!!」

「全身に色々と括り付けてますよ!!?」

「文字通りって事デスか!?」

「ヤバいわよ!!」

 

 くっ、後はクリス先輩を解放したら終わりなのに!!

 ……ん? クリス先輩?

 ……よし、やろう!!

 

「どうした月読! 雪音の檻の前になんて行って!」

「まだ鍵は刺さったまま! なら、これをサッと開けてドアを開いて!!」

「おい何考えてんだお前!! やめろ、まだ開けんな!! お前なんつー事考えてやがんだ!! おいやめろ!!」

 

 クリス先輩の檻のドアを開けてそのまま中へと襲撃。その後にクリス先輩をわたしの盾にして、檻の中に入ってきた鬼に対する盾にする。

 これがわたしの最後の作戦! クリス先輩ガード!! クリス先輩は死ぬけどわたしは生き残る!

 

「ざっけんな! おい、アタシを掴むな! ふざけんな! 離せ馬鹿!!」

 

 わたしの作戦は、無事に成功。

 クリス先輩は鬼に捕まり、そのまま外へと引っ張り出された。

 そして行われるお仕置きは酷い物ばかり。ハネムーンの缶の一つで思いっきり頭を殴られて、その後にスリッパとハリセンの連撃。で、倒れている所にエルビス化が入って、更にケツバット。で、更に自転車通勤をさせられた後に思いっきりビンタをされた。

 うわぁ、痛そう。でも見てるの面白い。

 こうして最後は五人で笑顔になって無事この地獄を潜り抜けたのでした。

 

「……お前今度殺すわ」

 

 ひぇっ。

 

 

****

 

 

 訓練という名の鬼ごっこが終わってから、わたし達は無事控室に戻ってきた。

 あの苦しかった鬼ごっこは何とか終わったけど、わたし達は満身創痍。頭をシバかれたりお尻をシバかれたり自転車通勤されたりと色々とあったせいで精根尽き果てた感じで六人同時に椅子に座って天井を眺めた。

 いつもの訓練よりも疲れた気がするけど、まだこの企画は終わらない。一応食事は後で出るみたいだけど、もうちょっと先との事。

 で、控室という事は、もしかしたら引き出しの中の物が補充されてるかもしれない。

 

「……とりあえず厄介なモン先に片付けるか」

「そうだな……引き出しネタは疲れて笑えない内にどうにかしてしまおう」

 

 で、今は笑いたくても笑えない状態だから、引き出しのネタを先に片付けてしまって笑えるものは極力省いてしまおうという事になった。

 という事でまたわたしから引き出しを開けたけど、わたしと切ちゃんの引き出しには何も無くて、マリアの引き出しにも何も無かった。

 これはもしかしたらヌルゲーが開幕したんじゃ? と思った直後、響さんが引き出しを開けた後に表情を曇らせた。あー、何かあったんだなぁ……と察した後に響さんが取り出したのは、意外な物だった。

 

「割り箸と、頭巾だね」

「なんだそのチョイス」

 

 出てきたのは、割り箸と頭巾という、なんとも言えない物だった。

 これで一体どうしろと? と全員で顔を合わせていると、響さんがそれを無表情のまま手に取った。

 そして頭巾をしっかりと着けて、割り箸を割ってから自分の下唇と鼻の穴で固定して……

 

「…………」

「………………」

『……………………』

 

 ……誰か何か言おうよ。響さんが捨て身で女の子捨ててるんだから。

 

「……次、私が開けよう」

ひょろひくおねひゃいしましゅ(よろしくおねがいします)

 

 わたし達は響さんを無視して翼さんの引き出しに注目した。

 で、翼さんは何かを見つけてしまったのか、何とも言えない表情をしながら引き出しの中から何かを取り出した。

 それはスイカ割りをしている翼さん……なんだけど、そのスイカがウェル博士になっているっていう、なんとも言えない合成写真だった。

 

「……おい、私はこんな写真撮った覚えはないぞ」

「アレじゃねぇか? グレた馬鹿の世界のセンパイ。あっちのセンパイはこっちのセンパイとほぼ同じだったし」

ひょうだったん(そうだったん)……ヴぇっ!?」

 

 ぶすっ。

 

「いったっ!? いっだぁ!!? 割り箸が奥の方に刺さっいだだだだだだだ!!」

『ぶっ』

『翼さん、クリスさん、マリアさん、切歌さん、調さん、アウト~!』

「ちょっとぉ!!?」

「折角笑わずに堪え切れたのに何してくれてんだこの馬鹿!!」

「捨て身にも程があるデスよ!!」

「わ、割とマジで奥の方に……しかも鼻血が……」

「自業自得です!」

 

 どんな感じになったかは、響さんのために言わないけど、それはそれは間抜けな感じで鼻血を出していました。

 そしてわたし達は久しぶりにお尻をシバき棒で叩かれ、お尻を抑えながら軽く悶絶する羽目に。

 くそっ、響さんが余計な事をするからお尻を叩かれた……

 これでさっきまでの無の境地を捨てちゃったから、この翼さんとウェル博士の変な写真でも笑っちゃいそうという事で写真はそっと引き出しの中に戻した。

 その後に今度はクリス先輩の引き出しを開けたんだけど……

 

「はい嫌なモンが出てきた!」

 

 出てきたのはボタンだった。

 あぁ、切ちゃんのお尻がシバかれるか翼さんがガングニールキックされるボタンが再び……いや、もしかしたら違うのかな?

 

「マリア、押してみて」

「嫌よ」

 

 だから確かめるためにマリアに押してもらいたかったんだけど、マリアは押してくれなかった。

 ケチ。

 ボタンは押しても押さなくても自由だからこのまま押さないという選択肢があるんだけど……ただ、誰かに押させるという選択肢もある。

 故にクリス先輩はボタンを手にしてそっと響さんに近づき。

 

「おい馬鹿。握手しようぜ」

「え? うん、いいけど」

 

 握手しようぜと言って響さんが手を出したのと同時にボタンを響さんに押し付けると言うド外道行為に出た。

 

「はああああああ!!?」

「ざまぁ」

 

 まさか裏切られるとは思わなかったのか、鼻にティッシュを詰めた響さんは思いっきり声を上げたけど、クリス先輩はケタケタと笑う。

 そして告げられた罰は。

 

『クリスさん、アウト〜! 響さん、ハグ~!』

「嫌だ、ガングニールキックだけは……って、ハグ?」

「どうしてだよ!? クソがってぇ!!」

 

 まさかのハグ。

 どういうコト? と全員が首を傾げていると、ドアから急に奏さんが入ってきた。

 

「うっす」

「奏さん? はっ、もしかして!」

「そういうこった。罰だから思いっきりハグしてやる!」

「わーい! ご褒美だ~!」

 

 ボタンを押して起きたのは、まさかの奏さんとのハグ。特に羨ましいとは思わないけど、罰とも言えない罰があるなんて思わなかった。響さんと奏さんは笑顔でハグしているし。あれアウト判定にならないの……?

 で、それをジッと見つめるのが翼さん。

 きっと奏さんに甘えている響さんの事が羨ましかったんだと思う。で、翼さんの視線はクリス先輩の持っているボタンに行って、すぐに奏さんに行って。

 

「……雪音。ボタンをくれ」

「いいっすけど」

 

 そのままクリス先輩からボタンを回収。そしてすぐに自分で押した。

 結果は。

 

『翼さん、ガングニールキック~!』

「ざっけんな!!」

『クリスさん、調さん、アウト~!』

 

 本日二発目のガングニールキックだった。思わずそれにクリス先輩とわたしが笑ってしまったけど、翼さんの様子はそれどころじゃない。

 それが告げられてからすぐにドアからガングニールを纏ったグレ響さんが入ってきて、即座に翼さんを拘束した。

 あーあー、あれは痛いよぉ。

 

「反省しない人め……」

「おい待て! 二発目は流石にないだろう!? これは何かの間違いだ! そうだ、そうに違いない! 一度考え直せ! わたしはただ立花が羨ましかっただけでそれ以上の事もそれ以下の事も思ってなんか――」

「セイッハァ!!」

「いだあああぁぁぁああぁぁぁぁぁあぁぁっっっふっっふっふぐううぅぅぅぅぅぅぁぁあああぁぁぁぁあああ!!?」

「だっははははは!! なんだその情けない悲鳴!!」

『響さん、クリスさん、マリアさん、切歌さん、調さん、アウト~!』

 

 奏さんも大爆笑のガングニールキックだったけど、同じように笑ったわたし達にはお仕置きが。

 お尻をシバかれてヒリヒリするお尻を軽く擦りながら元の位置に戻ったけど、翼さんは本日二度目のガングニールキックがかなり堪えたのか、半泣きになりながら地面で横になっている。

 生身でガングニールキックなんて普通は受けないし、受けたとしても一撃でKOされる物だからね……そんな物を一日に二回も受けた翼さんのお尻がどうなっているかなんて、多分簡単に想像できると思う。

 もしかしたら明日以降、椅子に座れないんじゃないかな。今日は座らないと体力回復しないから意地でも座るだろうけど。

 

「もうやだ……おうちかえる……」

「まぁ、あと数時間だから頑張れよ! そんじゃあな!」

 

 幼児退行を決め込んだ翼さんを無視して奏さんが戻っていった。

 あの人、本当にハグするためだけに来たんだ……暇だったのかな?

 で、沈んだ翼さんをそのままにわたし達は暇だから適当にボーっとしたり携帯を見たりしながら次の企画を待つ事数十分。

 ダメージから回復した翼さんがようやく椅子に座ったところで唐突にドアが開いた。

 

「みんな、お疲れ様。お昼の時間よ」

 

 入ってきたのはワゴンを押す友里さんだった。

 そのワゴンの上には色んな料理が乗っている。アレがお昼ご飯かな? よかった、お昼ご飯は普通みたい。

 

「やったー! ようやくご飯だぁ!!」

「もう昼も二時近いから、本当にようやくだな。腹減った」

「そうね。お昼を食べて、後は一個や二個企画をしたら終わりかしら」

 

 まだ企画なんて一個や二個しかやってないし、まだここに来てから二時間も経っていないんだけど、凄く疲れた気分。殆どが待機時間だったハズなのに……あっ、待機時間も時々仲間割れしていたからだ。

 それじゃあご飯の方を……って思ったけど、何故か友里さんはご飯が乗っているであろうワゴンからご飯を出そうとしてくれない。

 ……ま、まさか。

 

「おっと。ご飯は確かにあげるけど、タダじゃあげないわよ」

「なんデスと!?」

「酷いですよ友里さん! 鬼の所業です!」

 

 切ちゃんと響さんが文句を言うけど、友里さんがすぐにご飯の事を口にしなかった時点で何かあるんだろうなぁとは思ってわたし含めた四人は露骨に嫌な顔。

 だけど友里さんは表情一つ変えずにどうやったらご飯を獲得できるのかを説明し始めた。

 

「みんなには、わたしが出すお題にそってその場で俳句を読んでもらうわ。その即席俳句の完成度が高かった人から豪華なご飯を出していくわ。最下位は初めに言っておくけど、おにぎり一個だけよ。あっ、勿論お題は直前に出してすぐに俳句を作ってもらうわ」

「そんなの翼さんが有利なだけじゃないですか! あの人普段から意味わからない俳句みたいな事を言い続けているんですから!」

「おい立花。今度喧嘩な」

 

 なんか響さんと翼さんの絆が若干壊れかけたけど、そんな事気にせず友里さんは手元のカードをシャッフルし始めた。

 うわー、アレでお題出してくるんだ……本当にその場で即席の俳句を言わないといけないとか、相当難易度高い……

 でも、やらないと経費で落ちる美味しいご飯が食べられない……やらないと……!!

 

「それじゃあ早速行くわよ! まずは響ちゃん!」

「げぇっ、もうですか!? ちょっと心の準備が!」

「考える暇すら与えないわ! という事でお題は……これ! 白米!」

 

 早速始まってしまった。

 トップバッターは響さん。でお題は白米。

 これは……いけるんじゃない? 響さんの大好物だし。

 

「え、えっと……ごはん&ごはん! ごはん&ごはん&! ごはん&ごはん!」

「誰が好物を連呼しろって言ったよこの馬鹿」

 

 駄目でした。

 クリス先輩に頭をシバかれた響さんは納得いかないような感じでクリス先輩を見たけど、その前に友里さんが動いた。

 

「次はクリスちゃん! 行くわよ!」

「げっ、嘘だろ!? もうちょっとテンプレを頭の中で用意させろ!」

「却下! という事でお題は……これ! あんぱん!」

 

 で、次はクリス先輩だけど、出てきたお題はあんぱん。

 大好物でもできないのが響さんの例で分かっちゃったし、多分これは……

 

「あ、あんぱん!? あんぱんあんぱん…………あんこをね! パンで包んで! 美味しいね!」

「クリスちゃんもダメじゃん!」

「お前よりはマシだこの馬鹿ッ!」

 

 い、一応製造過程だけどそれでいいのかな……? いや、美味しいねってただの感想だし……よく分からないや。

 採点基準は友里さんだし、これは採点結果が酷い事になってしまいそうな気がプンプンする。

 で、次は。

 

「次は翼ちゃん! 行くわよ!」

「よし、来い!」

 

 翼さんだった。さて、翼さんはどんな俳句を返してくるのか。

 

「お題は……これ! トムヤムクン!!」

「はぁぁ!!?」

 

 ごめん笑う。

 

「と、トムヤムクン!? 私食べたこと無いぞ!?」

「残り五秒で失格よ!」

「ふっざけんなよ!? くっ、適当に……と、トム君が! 病んで作った! トムヤムクン!」

「史上最悪の俳句ができあがった!」

「クソがああああああ!!」

 

 多分これ、奏さん辺りがいい感じに裏で翼さんを苛めるために暗躍してるよね。じゃなかったら翼さんの時にピンポイントでトムヤムクンが来るわけがないし。

 翼さんが勝ちを確信した表情から一転して崩れ落ちたのを見届けてから、次は誰かと構える。

 二課組が終わったから、今度はわたし達F.I.S組が来る。

 多分響さんと翼さんよりも酷いのはできないから何とかなる……ハズ!!

 

「次はマリアちゃん、行くわよ!」

「俳句なんて作った事無いけど……いいわ、来なさい!」

 

 よかった、次はマリアだ。

 さて、マリアは何が出てくるのか……

 

「お題は……これ! ステーキ!」

「す、ステーキ……ステーキだから……肉焼いて! ソースをかけて! 召し上がれ!」

「即席にしてはいい方なんじゃねぇの?」

「くっ、語彙力が……!」

 

 でも、比較的いい方なんじゃないかな。分かんないけど。

 で、こうなると次はわたしか切ちゃん。

 さぁ、どっちに来る!

 

「次は切歌ちゃん、行くわよ!」

「あたしデスか!? ば、バッチ来いデス!」

 

 友里さんが構えて切ちゃんも構えた。

 さぁ、どうなる。

 

「お題は……これ! ご飯にザバーっとかける物!!」

「それ食べ物じゃなくてトッピングゥ!!」

 

 まさかのトッピングが来たんだけど。

 

「と、トッピングデスか!? でも、やるっきゃないデス! …………ご飯にね! ザバーッとかけたら! デリシャスデス! いや無理デスよねこれ!!?」

「そ、そうよね……これ、テスト段階で抜いたはずなんだけど……」

「まさかの企画側のミスデスか!?」

 

 まぁ、うん。こればっかりはどうしようもないんじゃないかな……

 でも、切ちゃんが来たという事は、今度はわたしの番。

 ……さぁ、来い!

 

「じゃあ最後! 行くわよ、調ちゃん!」

「はい!」

「お題は……これ! わさび!」

「だから調味料とかトッピング出してくるの止めません!?」

 

 なんでわたしと切ちゃんのザババコンビは調味料とかトッピングとか、感想も言いにくい物を出してくるんですか!?

 でも、ここで頑張らないとご飯が……!

 ワサビワサビ……ワサビと言ったら……

 くっ、時間が無い! 言うしかない!

 

「練りわさび! わさび醤油に! 生わさび!」

「わさびの種類じゃねーか」

 

 言い終わってすぐにクリス先輩から頭をシバかれた。

 まぁこうなりますよねー。

 でも取り返しなんてつかないから、ここからは友里さんの独断によるお昼ご飯の配膳が始まる。お願い、一番は無理でも普通のご飯を食べさせて……!

 でもその前に。

 

『全員、アウト~!』

 

 一度全員一回は笑ったので全員でお尻をシバかれました。あーいったい。

 で、お尻をシバかれてから全員で席につき、お願いだからおにぎり一個は止めてと手を合わせながら待っていると、友里さんはまず響さんの横についた。

 

「じゃあまずは響ちゃん」

「はい!」

「響ちゃんのは、これよ」

 

 と言って置かれたのは、おにぎりが二つとお味噌汁。

 

「やった、ビリじゃない!」

「なんかもう察した……」

 

 喜ぶ響さんと諦めてしまった翼さん。

 まぁ、最下位争いは明らかにこの二人だったからね……で、次は翼さんなんだけど、翼さんのは勿論。

 

「はい、翼ちゃん。おにぎり一個よ」

「はい……」

 

 おにぎり一個。

 で、ここからは四人で一位争いになる訳だけど、果たして誰が一位になるのか。

 次はクリス先輩の所に。さぁ、クリス先輩は。

 

「クリスちゃんはこれよ」

「おっ、ラーメンか。ちょっと伸びてるけど、全然許容範囲内だな」

 

 クリス先輩はラーメン。それもチャーシュー麺だからチャーシュー大盛。

 これは結構点が高かったんじゃないかな?

 で、次はマリア。

 

「マリアちゃんはこれよ」

「ステーキにライスとスープ。完璧なランチね」

 

 これはマリアがトップだったんじゃないかな? ステーキ定食とも言える位には量があるし、鉄板もまだあっつあつだから美味しそうな匂いと音がする。

 これにはマリアもにっこり笑顔。適合率もちょっと上がるかもね。

 で、次は切ちゃん。

 切ちゃんはどうなるかな? あっち側の不手際があったらしいけど。

 

「切歌ちゃんのはこれよ」

「おぉ、野菜炒め定食デスね。普通に美味しそうデス」

「それと、お詫びもこめてプリンもあげるわ」

「もう最高のお昼デス! さっきの事はこれでチャラにしてあげるデスよ!」

 

 うん、普通のお昼ご飯。

 となるとわたしは……あー、もしかして結構下の方だったのかな? でも、あんまり量食べられないから、トーストと目玉焼きとかでも全然足りるし平気かな。

 おにぎり一個は流石にきつかったけど。

 さぁ、わたしのお昼はなんだ。

 

「調ちゃんのお昼はこれよ」

 

 と言って置かれたのは、真っ赤な具だくさんのスープと日本のお米とは違うちょっと細長いお米。

 うん、これは……アレだね。

 

「トムヤムクンとタイ米じゃないですか!!」

「あっつあつの激辛よ。とっても美味しいわ!」

「わたしでオチを付けないでくださいよ!!」

 

 これなら普通に野菜炒め定食とか焼き魚定食の方がマシだった!

 でも文句ばっかり言ってられないから、とりあえずトムヤムクンを一口。

 

「かっら!!?」

 

 めちゃくちゃ辛かった。

 あぁ、胃が熱い……

 

 

****

 

 

 水が無かったら即死だったよ。

 わたしと翼さん以外は満足な食事をしつつ、わたしだけは激辛料理と格闘しながら何とか昼食は終わった。

 タイの人はトムヤムクンをタイ米にぶっかけながら食べるのを知ってからはそこそこ楽だったよ。それまではめちゃくちゃ辛かったけど……いや、美味しかったよ? 具だくさんで海鮮物もお肉もお野菜も入ってたし、量もあったから。ただ辛いの。すっごい辛いの。

 まぁ、トムヤムクンについてはこの辺にしておこう。珍しいモノ食べられたしね。

 で、お昼を食べ終わってから暫くして、再び藤尭さんが部屋に入ってきた。

 

「おいお前ら。ウチの専属の発明家がお前達と顔を合わせるために時間を作ってくれたから、会いに行くで」

「嫌です」

 

 二課の発明家と言えば……あぁ、あの人。

 この世界だとフィーネじゃないけど、まぁ確実にあの人。で、あの人がノリノリでわたし達を笑わせてこないわけがない。

 つまり、行きたくない。

 

「……じ、時間があるからとっとと行くで」

「嫌よ」

 

 響さんの拒否に続いて今度はマリアの拒否。

 さぁ、どう出る。

 

「……その、来てくれないと俺が怒られるんで、来てもらえません?」

『ふふっ……』

『全員、アウト~!』

 

 まさかの素! 台本通りにいかないとどうしようもできない大根役者だと言う事が判明してしまって思わず全員でお尻を叩かれる羽目になった。

 お尻がいったいけど、流石に藤尭さんが可哀想だから六人で藤尭さんについて行く事に。

 さて、鬼が出るか蛇が出るか、それとも両方出るのか……両方だろうなぁ……

 で、ついて行った先は研究室と書かれた部屋。そこに藤尭さんを先頭にして入ると、その先に居たのはあのフィーネこと……

 

「どうも、サンジェルマンです」

「カリオストロよ」

「プレラーティだ」

『響さん、クリスさん、マリアさん、調さん、アウト~!』

「そこは了子さんじゃないの!? いたいです!」

「完全にフィーネがくるパターンだったろ! あだっ!!」

 

 まさかの面子にわたし達のお尻がシバかれてしまった。

 あー、もうこれは暫くスリーサイズに変動が起きるね……間違いない……

 で、わたし達を笑わせた張本人であるサンジェルマン達は一頻りわたし達がお尻をシバかれた所で話は続くことに。できる限り迅速に終わらせてくれると助かるかな……

 

「紹介の通り、私達は二課の技術職だ」

「だから、色んな物を作っているのよ」

「その一環として、こんなものを作ってみたワケだ。お前にやるワケだ」

 

 サンジェルマン達曰く、自分達で発明した物を何故かプレラーティが翼さんに渡した。

 あれは……袋? 布の袋みたいだけど、あれに何の意味が……?

 

「お、おう? 私か? ありがたくいただくが……なんだこの袋は? マリアの顔が書いてあるが……」

 

 あっ、ここからじゃ見れなかったけどマリアの顔が書いてあるんだ。

 だとすると、余計にどうしてそんな物をプレゼントしたのかが気になるんだけど……

 

「それの中心を押してみるワケだ」

「う、うむ。ポチっとな」

 

 古臭い言葉と一緒に翼さんが袋の中心を押した。その瞬間。

 

『ふはははははは!!』

 

 マリアの笑い声が響いた。

 あっ、これそういう……

 

『マリアさん、アウト~!』

「は? はぁ!? ちょっ、待ちなさい! 私が笑ったんじゃいっつぅ!」

 

 マリアが笑ったわけじゃないんだけど、袋を押した瞬間マリアの笑い声が響いた結果、マリアのお尻がシバかれる事となった。

 また不和の原因になりそうなものが配られてしまった……

 

「これは『マリア・カデンツァヴナ・イヴの笑い袋』なワケだ。使い道はお前達に任せるワケだ」

 

 そんな物を自由にしていいとか言われたら、今のわたし達はただの仲間割れにしか使わない。わたしだってアレを渡されたら何連射かはするもん。マリアがお尻をシバかれるの面白過ぎるから。

 でも今、笑い袋は翼さんの手に渡っているわけで、わたしは翼さんの動向に身を任せるだけ。笑わないようにしっかりと気を張っていればこの案件は完全にスルーする事が可能だからね。だからわたしは極力空気になる。わたしは空気。でも笑い袋を渡される時だけは人間。

 

「そうか。そうかそうか。ならもう一回……」

「させないわよ! それは私が預かる!」

「その前に雪音にパスだ」

「うっす。って事でもっかい」

『ふはははははは!!』

『マリアさん、アウト~!』

「雪音クリスァ!!」

 

 結果、笑い袋はクリス先輩に渡され、そのままクリス先輩が笑い袋を押してマリアがお尻をシバかれた。

 でもこれ以上マリアを弄ると企画とかそういうの抜きで最短で最速で真っ直ぐに一直線にぶん殴られそうという事で、クリス先輩はマリアに笑い袋を渡し、マリアはそれをガッチリと両腕でホールドして絶対に音が鳴らないように構えた。

 そんなに構えなくても、一度手放した物を奪いにかかるような野蛮な事はしないのに……しないよね……?

 

「それじゃあ、次の発明だが……」

 

 で、サンジェルマンが今度はいつものシバき棒よりも遥かに大きな、明らかにヤバい感じのシバき棒を取り出そうとした時だった。

 何故かカリオストロとプレラーティがサンジェルマンの手を抑えて、サンジェルマンの行動を阻害した。

 あれ? もしかしてあの二人って味方?

 

「そこはあーし達が発表させてもらうわ」

「サンジェルマンはそこで見ているワケだ」

「は? いや、そんな事台本には……」

 

 あっ、そんな事無さそう。完全にサンジェルマンだけを困惑させようと企画をぶっ壊そうとしている感じだ。

 で、二人はそのままサンジェルマンの動きを止めて無理矢理わたし達の横に移動させてきた。いや、サンジェルマンまでこっち側? 

 

「という事で、これがあーし達が作り出したお薬、その名も『農夫と神様』よ!」

 

 の、農夫と神様?

 それって……?

 

「あー……もう察したよ……」

「最新のネタをぶち込んできやがったか……!」

 

 あっ、でもわたしと切ちゃんとサンジェルマン以外の四人は何か察したみたい。

 えっと……どういうコト?

 

「この薬は飲んでからとある歌を歌う事により体の中で反応し、体にとある物を作り出すという薬なワケだ。これを実際にカリオストロが使ってみるワケだ」

「そういうコト。という訳でレッツイッキ!!」

 

 あっ、カリオストロがピンク色の薬を飲んだ。

 一気に飲んだカリオストロは「まずいッ!!」って叫んで瓶を投げ捨てて、何故かプレラーティはギターを持ってきた。何でギター? とか思う前にプレラーティは一人でギターのチューニングを始めてカリオストロはなんか一人で喉を調整している。

 で、カリオストロはそんな二人を見て目を点にしている。ほんとに何も聞いてなかったんだね……

 

「それじゃあ行くわよ!」

 

 あっ、始まるみたい。

 プレラーティがギターを弾き始めて、カリオストロが歌い始めた。

 

「あーしは貧しい錬金術師。あの人と突き合うため、薬を探しに森にやってきた~」

 

 あれ? 普通だよね?

 でもなんかちょっと付き合うの所のインストネーションが違ったような気がするんだけど……

 

「待っていたぞわたしが、悩める錬金術師を救う、この森に住む錬金術師だぁ」

 

 あっ、今度はプレラーティが歌った。

 っていうか、二人とも錬金術師なんだ。薬の名前は農夫と神様だったのに。片方が農夫で片方が神様役で歌うのかと思ったけどそんなことは無かったらしい。

 

「あの人を想うお前の、一途な心に胸打たれ、お前を助けにやってきたぁ」

「本当ですか! 信じられない、有難き幸せ!」

「お前の望み、一つだけ叶えてやろう~!」

 

 望み?

 なんだろう、その意中の人と付き合いたいから手伝ってくれとか、そういう感じかな? なんか笑わせるんじゃなくて普通に楽しませてくれるために歌ってくれているのかな? それならこの時間は全然楽に終わりそう……

 

「な~ら~ば~!」

 

 ならば?

 

「大きなイチモツをください!!」

 

 ぶっ。

 

「大きなイチモツをください!! ズボンを突き破る程の、大きなイチモツをあーしにくださいぃぃ!!」

「お前は何を言い出すんだカリオストロ!!」

 

 ちょっ、下ネタじゃん! 急に下ネタが来たから思わず笑っちゃったし!! しかもサンジェルマンが思いっきりツッコミ入れちゃったし!

 って、あれ? アウトにならない? もしかしてこれが終わった後に後で纏めてお仕置きされる感じ?

 

「そうじゃないだろう、話が違う。意中の人はどうした?」

「そうだ、そうだった! あの人を射止める事が一番大事~!」

「…………だよな? そうだよな? イチモツよりも優先すべき事がお前にはあるワケだな?」

 

 あっ、セリフ入った。

 で、ここからはしっかりと軌道が修正されるんだよね……?

 

「だ~け~ど~!」

 

 あっ。

 

「大きなイチモツをください! 大きなイチモツをください!! ベッドでサンジェルマンが二度見する! 大きなイチモツをあーしにください!!」

 

 あーもう!!

 意味が分かっちゃうわたしが嫌だし、響さんは大口開けて天井を仰いでなんとか耐えているけど、他の四人は全員腹抱えて笑ってるし! ついでにサンジェルマンがドン引きした感じの表情を浮かべてるし!

 

「もうやめてくれ、お前のために出てきたわたしが馬鹿だった」

「嘘です嘘です! あの人のハートを射止めてくださいぃ……おーねーがーいーしーまーすー!」

 

 もう滅茶苦茶だけど、なんとか纏まりそう……なのかな?

 なんかちょっと間が生まれてる。この間、絶妙すぎて笑いそうなんだけど……

 

「……だよな? そうなるよな? じゃあそういう方向で」

「つーいでーに!」

「は?」

「大きなイチモツをください! 大きなイチモツをください!! 乙女のイメージを壊す程の! 大木を薙ぎ倒す程の! 装者が赤面する程の! 大きなイチモツをください!!」

 

 これ収拾付かないでしょ。響さんもとうとう「がふっ」って声出して笑っちゃったし。

 ……で、ホントにどうするのこれ。そろそろ笑いすぎてお腹が捩れそうなんだけど。

 

「いや、あの……」

「あーしとプレラーティの二人に! サンジェルマンを泣かせるほどの! 大きなイチモツをください!!」

「おい」

 

 とうとうサンジェルマンが普通に声を投げかけたけど、二人はそれを一切無視してまだまだ歌い続ける。

 

「ならばいいだろう。お前とわたしに、大きなイチモツを授けてやろう」

 

 えっ。

 いや、そんな事言ってどうするの。

 ……って思ったらなんかカリオストロとプレラーティの股間の部分がなんか盛り上がってきた!? 普通に下品!!

 

「大きなイチモツをありがとう! 大きなイチモツをありがとう! サンジェルマンが引くほどの、サンジェルマンが泣くほどの! 大きなイチモツをありがとう!!」

 

 うーわ……普通に下ネタで終わったんだけど……

 ……っていうか、あの盛り上がった股間のアレ、まさか本当にイチモツじゃないよね……? 作り物だよね?

 あっ、プレラーティがギターを置いた。これで終わりって事だよね?

 

「と、いう事でサンジェルマン?」

「わたし達とベッドで夜戦開始するワケだ」

 

 あっ、はい……

 じゃあわたし達は退散しておきますね……

 

「するか!!」

「今のあーしにはサンジェルマンが引くほどのイチモツがあるのよ? これを無駄にはしないわ!」

「わたしとカリオストロの二人ならサンジェルマンを押し倒す事だって可能なワケだ!!」

「ふざけるな! おい、立花響他装者五名!! 見ていないで私を助け……」

『お邪魔しました』

「おい!!?」

 

 なんかサンジェルマンが悲痛な声を上げていたけど、それを無視してわたし達はそっと室内から出てドアを閉めた。で、中からすっごい音が聞こえてくるけど、それを意図的に無視して藤尭さんと一緒にちょっと部屋から離れてから。

 

『全員、アウト~!』

 

 全員でお尻をシバかれるのでした。

 なんというか……その……

 

「……普通に腹筋に悪いからやめてほしかったかな」

「アレで笑うなって方が無理だろ」

 

 全く持ってその通りです。

 

 

****

 

 

 控室に戻ってきたわたし達だけど、カリオストロとプレラーティが台本通りなのか台本通りじゃないのかよく分からない行動を起こした結果なのか、それとも仕様なのかよく分からないけど、引き出しの中には特に何も入っていなかった。

 よかった、これでまた腹筋崩壊レベルの何かが入っていたら笑っちゃいけない企画で腹筋が崩壊しつくすところだったよ。

 で、カリオストロとプレラーティの下ネタ攻撃で笑い疲れたわたし達は水を飲みながら暫く待機する事に。

 あー……こうやって仲間割れも笑いの刺客も何も無い時間が一番だよ……ずっと笑わされていたら流石に腹筋が持たないしお尻が座れないほど痛くなっちゃう。

 で、待つこと十数分程度。

 

「お前ら。今日の最後の仕事や」

「最後……? あぁ、ようやく終わるのか……」

「クッソ長かったデス……」

 

 藤尭さんが入ってきて早々、そんな事を口にした。

 最後の仕事。つまり、これが終わればこんな狂った企画から解放される。

 ……な、長かったぁ。ようやくこの狂った企画とはおさらばできるよ……

 

「それじゃあ、体育館の方に集合やから、ついて来るんやで」

 

 その言葉にはーい、と返事をしてから六人で体育館の方へと移動する事に。

 ようやくこの企画も終わりかぁ……長かったなぁ……

 

「次の仕事やけど、先輩装者との挨拶や。それが終わったら今日はおしまいやで」

「先輩装者? それって奏さんとかセレナちゃんとかですか?」

「そこら辺は着いてからのお楽しみや」

 

 着いてからのお楽しみって……それ絶対に奏さんやセレナじゃないって事じゃん……

 うわぁ……なんかオートスコアラーとか出てきそうでちょっと怖いんだけど……それで最後に肉体的にやられたらもうノックアウトされる気しかしない……

 そんな風に全員でげんなりしながら体育館に向かって、中に入ると、その先輩装者とやらは既に中で待機していた。で、一体誰が……って、あれ?

 

「普通に奏さんとセレナちゃんだ」

「うっす。さっきぶり」

「皆さん、お疲れ様です。わたし達とちょっとお話したら今回の企画はもう終わりですよ」

 

 な、なんだ……勘ぐって損した……

 それに、ちょっと話したら終わりって、相当楽だよね。さっきまでのわたし達のお尻をシバくための企画が無いって事だから、よっぽど楽だよ。

 

「いやー、しっかし、よく叩かれてたな。裏で見てたけど、めっちゃ面白かったぞ」

「特に風鳴さんのガングニールキックとか、わたし、お腹抱えて笑っちゃいましたから」

「忘れてくれ……」

 

 あぁ……あの忘れたくても忘れられないガングニールキックね。

 確かにアレはお腹抱えて笑うレベルだよ。わたしだって笑っちゃいけないっていう制限が無かったら絶対にお腹抱えて大爆笑していたもん。

 他にも面白い企画は色々とあったけど、笑っちゃいけないっていう縛りのせいでそれら全部が最早憎たらしく思える……!!

 

「っていうか翼。お前なんであのボタン押しちまったんだ? 押さない方がよかっただろ?」

「え? いや、それは……立花が奏に抱きしめられてて……その……」

「あはははは。役得ってやつでした~。まさか奏さんにああやって抱きしめてもらえるご褒美が待っているなんて、思ってもいませんでしたよ!!」

 

 まぁ、そうだよね。確かにあんなご褒美とも言えるような物が……

 ……うん? ご褒美? ボタンを押した罰で?

 ……そう言えば、こっちには未来さんも来てるはずなのに未来さん居ないような。こっち来てから一回も未来さんを見てないよね。ここの先輩装者ってもしかしたら未来さんなんじゃ……って、ちょっとは思ってたけど、結局いなくって……

 

『響ぃ……? 奏さんと、何をしたって……?』

 

 と、思った矢先だった。

 何故か未来さんの声が体育館に響いた。

 

「………………あっ、これわたしがあの役?」

「諦めろ」

「お前だけご褒美だったんだからな。甘んじて受け入れろ」

 

 響さんが泣きそうな表情でクリス先輩と翼さんの方を見て、二人はそっと肩を叩いた。

 その直後、体育館のドアが文字通り吹っ飛び、その奥からあの人が……紫のギアを纏った未来さんが現れた。

 

「げぇっ、未来!!」

「響ぃ……? わたしが居ない所で何してたのかなぁ……?」

「い、いや、ちゃうんすよ。これは企画で……」

「響ぃ!」

「ごめんなさいごめんなさい! どうして怒ってるのか分からないけど謝るから許して未来ぅ!!」

 

 ギアを纏った未来さんとギアを纏っていない響さんの身体能力の差なんて最早比べる程でもないくらいだったからか、響さんは一直線に突っ込んできた未来さんに胸倉を掴まれた。

 ……こ、これ、大丈夫なの? というかどこからどこまでが企画?

 

「許してほしい?」

「ゆ、許してほしいかなーって……」

「……わかった。じゃあビンタ一発で許してあげる」

「そ、そういうこと……ふふふふっ」

 

 あっ、マリアが笑った。ついでにクリス先輩と翼さんもお腹を抱えて笑ってる。

 わたしも何でか痴話喧嘩始めた二人に笑いそうだし、切ちゃんもなんとなーくこの後の事が想像できているのか笑ってる。

 

「ちょ、ちょっと待って! ギアは解こう!? ね!?」

「そんな事したらお仕置きにならないでしょ?」

「なるから! なるからギアはやめて! 死んじゃうから!」

「響がこの程度で死ぬはずないでしょ!!」

「どんなキレ方してんの!!」

 

 叫ぶ響さんと叫ぶ未来さん。

 これどっちがキレてるんだろう……既にわたしも切ちゃんも笑っております。

 

「いいから早く構えて!! じゃないと今すぐビンタするよ!!」

「そもそもわたしがビンタされる理由がどこにあるの!!?」

「わたしが響にイラついたから!! だからビンタする!!」

「それは別に分かったから!! ビンタしてもいいからギアは解いてって言ってるじゃん!!」

「嫌だ!!」

「嫌だじゃなくて!!」

 

 あーもう酷いよこの痴話喧嘩。どっちも怒鳴り合ってどっちもキレてるから収拾付く気配がないし。

 

「じゃあ響!! 奏さんに抱き締められてた時に全然役得とか感じていませんでしたってわたしに明言できるなら、ギアは解除してあげる!!」

「おー分かったよ言ってあげるよ!!」

 

 あっ、終わりそう?

 

「わたし、立花響は!!」

 

 ここで響さんが奏さんに抱き締められた時に特に何も感じませんでしたと言えばそれで終わる……けど、響さんは奏さんの方をチラッと見て、何か覚悟を決めたように歯を食いしばった。

 そして。

 

「正直あの瞬間、今日まで生きててよかったって心の底から思いましたッ!!」

「あははははははは!! 言いやがったあの馬鹿!!」

「なんで自ら勝機を取りこぼしに行くんだ……!! くっ、ふふふふ……!!」

「ははははははは!! 馬鹿でしょあの子!! はっははははは!!」

「何してんデスか響さははははははははは!!」

「ふ、くくく……!!」

 

 響さん、自分には嘘を吐けず。その慟哭に思わずわたし達五人が大笑いして奏さんとセレナも後ろの方でお腹を抱えて大爆笑。

 で、その結果は勿論。

 

「馬鹿ァ!!」

「ゴッパァ!!?」

 

 響さんはギアを纏った未来さんに思いっきりビンタされ、面白いように空中を回転しながら舞ってそのまま地面へと落下した。

 

「もう、響の馬鹿! わたしなら言われなくても抱きしめてあげるのに!!」

 

 で、響さんをビンタした未来さんはギアを纏ったまま体育館から出て行き、響さんは頬を抑えたままよろけつつもなんとか自分の足で立ち上がった。

 あーあ……真っ赤な紅葉が響さんの顔に……

 立ち上がった響さんは泣きそうな目でこっちと、ついでに奏さんの方を見て。

 

「……あの、もう帰ってもいいですか?」

『翼さん、クリスさん、マリアさん、切歌さん、調さん、アウト~!』

 

 割とマジな表情でそんな事を言い、そしてわたし達五人がお尻を最後にシバかれたのを企画の区切りとして、この笑ってはいけない地獄みたいな企画は終わったのでした。

 

 

 

****

 

 

「あっ、お帰りなさいみなさん! 今回の企画、どうでした? 皆さんの息抜きになればいいなって思って、この間テレビでやっていたのを参考にしてボクがプロデュースしてあちらの方で実行してもらったんですけど…………あの、なんでボクは両脇から抱えられてるんですか? あの、そのシバき棒はなんですか? いや、確かにボクもこの後来るであろう映像を楽しみに待ってる節はありますけど、息抜きにはなりましたよね? そんなので叩いたらボクのお尻が酷い事にあいったー!!?」

 

 この後滅茶苦茶エルフナインと他の装者を必要以上にボコった。




ネタに関しては幾つかの笑ってはいけないから引っ張ってきたので、どこからとか解説できません。ただ、結構青春ハイスクールから引っ張ってきてます。大きなイチモツとかね。
あと俳句の所は適当に食べ物を書いてから書いてる間にマジで即席で作りました。誤字の修正こそすれど書き直しは一切行わない男気執筆をしました。

それと、笑ってるシーンとか、草を生やすのは控えていたのでどうやって描写しようかめっちゃ苦戦しました。六人も出すのは正直やり過ぎたと後から思いました。あと、全員に不憫な目にあってもらおうと思って頑張りました。なんか罰が偏り過ぎてる気がするけどキニシナイ! ちなみに五回くらい書いてる途中でメモ帳が強制終了して萎えました。

と、いう事でいかがだったでしょうか、百話記念兼調ちゃんお誕生日記念の本話。ちょっとでも笑っていただけたなら幸いです。



で、話はちょっとだけ脱線しますが……ゴジラが終わってすぐにまさかのコラボが来たと思ったら進撃の巨人……
えー、ここで先んじて言っておきますが、進撃の巨人は全く見てないのでコラボ終わってもゲストでエレンとかは百パーセント出てきません。これは断言します。絶対に出しません。というか出せません。
エレンが巨人化した辺りで違う、そうじゃないって言って切ってしまったのでそこら辺はご容赦を。

あと、ゴジラコラボもとっくに終わりましたが、現在ゴジラコラボの話を書く予定を立てています。
コラボ対象はゴジラVSシリーズ……ではなく、恐らく平成モスラを題材にして書くと思います。なので、もしかしたら怪獣ギア装者&モスラVSデスギドラとかいうやべー戦いが始まるかも。
それをいつ書くかは未定ですが、今回みたいに一年後とかにはならないように頑張ります。

ではまた次回、お会いしましょう


P.S
GA文庫大賞12回後期で一次選考突破しました\( 'ω')/

 ▲ページの一番上に飛ぶ
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。