桜の国チェリンと七聖剣【百五十】
「ッ!?」
俺は反射的に地面を蹴り、大きく後ろへ跳び下がった。
「ひどいなぁ、そんな逃げないでください……よぉッ!」
凶悪な笑みを浮かべたディールは、たった一足で間合いを詰めてくる。
(は、速い……!?)
真装を展開した奴は、これまでとは比べ物にならないほどの加速を見せた。
「――そぉらッ!」
ディールが勢いよく右手を振るえば、奴の体を纏う大量の猛毒が飛び散った。それは瞬く間に十本の剣へ形を変え、凄まじい勢いで牙を剥く。
「こ、の……八の太刀――八咫烏ッ!」
俺は両目を見開き、眼前に迫る毒剣を撃ち落としていく。
(……五・六・七・八!)
八本の剣をコンマ数秒で斬り払い、空中で体を捻じってさらにもう一本を強引に回避した。
だが、
「ぐ……ッ!?」
残された最後の一本が、俺の脇腹を深く抉った。
俺は鮮血を垂らしながら、一歩二歩三歩と後ろへ跳び、ひとまずディールとの距離を取った。
「あららのらぁ、
奴はパンパンと手を打ち鳴らし、さも楽しげに微笑む。