クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」から埼玉県和光市の税務大学校に向け出発するバス(14日午後、横浜港)=共同
国内での新型コロナウイルスの感染拡大を受け、加藤勝信厚生労働相は14日の閣議後記者会見で、現在は原則として中国湖北省や浙江省に滞在歴がある人を対象に実施しているウイルス検査について「地域限定でない対応も考えていきたい」と述べ、対象拡大を検討する意向を示した。
新型肺炎では13日に神奈川県で国内初の死者が出たほか、14日も東京都や愛知県、沖縄県、北海道などで新たな感染が判明。拡大を食い止められるかが喫緊の課題になっている。
ウイルス検査は現在、湖北省と浙江省からの入国者やその濃厚接触者に発熱やせきなどの症状があった場合に実施している。のどの粘液や痰(たん)を採取して、ウイルスの遺伝子が含まれるかを調べる。
対象地域は当初、湖北省武漢市だけだったが、その後湖北省全域に拡大。13日には浙江省も追加した。両省と無関係でも感染が強く疑われる場合は柔軟に検査するよう求めているが、対象地域の基準自体は維持していた。今後は地域を限定せず対象とすることなどを検討するとみられる。
安倍晋三首相は14日の新型コロナウイルス感染症対策本部で、感染拡大防止策を検討するため、感染症の専門家を集めた専門家会議を設置したと表明した。「これまで以上に医学的知見を踏まえた対策の検討を進めていく」と述べた。専門家は20人弱の見通し。
新型肺炎をめぐっては、全都道府県に536の相談センターがあり、必要に応じて医療機関と連携して対応している。首相は「24時間体制で対応できるよう自治体に協力を求めている」と語り、症状に不安があれば相談するよう呼びかけた。
外務省は14日、浙江省温州市について感染症危険情報で渡航中止を勧告する「レベル3」に引き上げた。中国では湖北省だけがレベル3で、ほかは不要不急の渡航中止を促すレベル2だった。
横浜港で検疫中のクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」からは14日、一部の乗客が下船した。80歳以上で持病がある人などが対象で、船内に長期間留め置かれることで健康が悪化するリスクを考慮した。