東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 社説一覧 > 記事

ここから本文

【社説】

新型肺炎拡大 国内流行へ先手を打て

 新型コロナウイルスによる肺炎(COVID19)が拡大している。国内で感染者の死者が初めて出た。感染経路がはっきりしないケースも出始めた。国内で流行が起きていると想定し備えるべきだ。

 亡くなった女性をはじめ東京都内のタクシー運転手、千葉県の男性、和歌山県の医師の感染が次々と分かった。これまでと違い感染経路がはっきりしない。

 国内で感染が広がっている。そう考えて政府には拡大防止に先手を打つ対応を求める。

 まず、やるべきは情報の開示である。今国内がどんな感染状況なのか全体像が分からないからだ。

 加藤勝信厚生労働相は国内流行については「今の段階で根拠がない」と言うが、専門家は国内での感染が始まっていると指摘している。専門家の認識を前提に今どんな段階の感染状況なのか、その説明を聞きたい。その上での対策だ。

 クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客は、感染状況や検疫の見通しに関する情報が不足し不安を増幅させている。情報の重要性は自明だ。政府は通信機器の提供を始めたが遅すぎる。

 状況認識を国民も共有してこそ対策が進むと心すべきだ。

 患者増に備え治療態勢の整備は必須だ。政府は感染症に対応する医療機関の態勢強化を図るが、軽症者が集中しては重症者の治療に支障が出かねない。どんな状態の患者をどう治療するのか、一般の医療機関との役割分担など連携も迅速に進めたい。

 政府の緊急対策では簡易診断キットの開発と利用開始を本年度中に実施する方針だ。ワクチンや治療薬の早期の開発も待たれる。

 個人でもできることがある。感染が心配ならむやみに医療機関に行かず、厚労省の相談窓口や各地の帰国者・接触者相談センターに連絡してほしい。必要なら受診する医療機関を紹介してくれる。

 もちろん水際対策の重要性は変わらないが、乗客らの船内待機が続くクルーズ船について世界保健機関(WHO)は感染の「劇的な増加」がみられると、封じ込めを疑問視している。

 政府は乗客の健康状態の悪化に配慮して高齢者の一部の下船を決めたが、希望者は原則下船させるなど方針の転換が必要ではないか。感染防止と生活環境への配慮の両立を考えるべきだ。

 新型肺炎は高齢者や持病のある人の重症化は注意が必要だが、患者は軽症者が多い。正確な情報を得て冷静に対応したい。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報