日本より先にローカル感染が確認されたシンガポールの新型コロナウイルス対策

(写真:ロイター/アフロ)

日本でも、新型コロナウイルスの感染者が増えてきました。クルーズ船を除いた数字では日本よりも先に感染者が増えて行ってしまったのがシンガポール。早期から様々な対策を打ってきていますが、中国とのつながりも深く、感染を抑えられていません。

判明した感染者をマップ化したもの https://sgwuhan.xose.net/より
判明した感染者をマップ化したもの https://sgwuhan.xose.net/より

ただし、情報を逐一政府が更新し、不安に陥らないよう工夫しているなど、日本が学べる点もありそうです。シンガポール在住者として春節以降のシンガポールの動き、そして現在の状況について聞かれることが増えてきたので、2月13日までに政府が発信している情報をもとにまとめてみました。

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1月23日  武漢封鎖、シンガポールでの武漢からの旅行者の感染確認。シンガポールでは1月24日から休みの学校や幼稚園もあり、25,26日の週末前後がいわゆる春節の休み。この週末に一気にコロナウイルスのニュースが広まるが、すでに春節で来訪者や中国渡航者の動きは出ていたとみられる。

1月27日、学校が再開されるが、教育機関や医療機関で過去14日以内に中国(全土)渡航歴がある人は帰国後14日は自宅にとどまるように言われる。この時点で、感染が疑われる場合は専用ダイアルで移動手段(おそらく救急車、普通のタクシーなどでいかないように)を確保して、専用医療機関(子ども用と大人用で2か所に集約)に行くように促される。

マスクについての政府広告、1月31日の現地紙The Straits Times
マスクについての政府広告、1月31日の現地紙The Straits Times

1月31日  マスクの売り切れが続出し、政府が配布すること、具合が悪くない限りはつけないでほしいと広報。

2月1日以降中国からの入国禁止措置。シンガポール市民や永住権を持つ人の中国からの帰国は認めるが、帰国後14日間隔離。しかし、すでにシンガポールを訪れていた武漢出身者、武漢から避難してきたシンガポール人など、この日までに18ケース(いずれも武漢渡航歴あり)の感染が確認される。

2月2,3日と新たな感染者が出ず、マスク広報もあり、一時マスクをつける人は減った。

4日  中国旅行者が訪れた店で対応をしたシンガポール人2人の感染、そのうち1人の家で働くインドネシア人ヘルパー(住み込みメイドさん)、その旅行ツアーでガイドをしていたシンガポール人の感染が確認。この時点でも、まだこのような特定の中国人が多く訪問する店に立ち寄っていなければ大丈夫だろうという雰囲気。

5日  ローカル感染を受けて、渡航歴の確認、中国本土の渡航歴がある人の休暇、職場や公共機関の消毒レベル引き上げ。

6日   武漢渡航歴もそれまでのいずれの感染者との接触も認められない人の感染が判明。ここで緊張感が一気に高まる。この日までに30人の感染が確認、1人がICUに。

図書館に入るために体温などを検査、著者撮影
図書館に入るために体温などを検査、著者撮影

7日  中国本土の渡航歴がある人の休暇取得は義務になり、雇用者には支援金が支給される(9日に違反した企業への処分と当該外国人労働者のビザ没収、強制送還)。警戒レベルを4段階中、2番目に高いオレンジレベルに引き上げ。これにより、一時トイレットペーパー、麺類などの買い占めが起こり、配達業者も機能しなくなった(これは数日で落ち着きを取り戻し始める)。不要不急の大規模イベントの中止、職場での体温測定、学校での放課後などの活動の停止、就学前教育施設と高齢者施設への訪問者制限などが求められる。

Disease Outbreak Response System Condition (DORSCON)の4段階、シンガポールMOHより
Disease Outbreak Response System Condition (DORSCON)の4段階、シンガポールMOHより

8日 タクシー運転手などの感染確認。この日までに40人感染、2人が退院、4人がICU。交通機関、飲食店などの消毒強化。

10日  職場でリモートワークや訪問者の体温測定などが推奨される。タクシー運転手の体温測定、政府が運転手のためにマスクを用意。エアゾル感染についてはエビデンスがないと発信。

政府がこのような形で感染者の情報を更新
政府がこのような形で感染者の情報を更新

13日  この日までに58人感染、15人退院、7人ICU。感染経路については5つほどのクラスター(ホテルでのビジネスミーティング、教会など)が特定されるが、調査中のものも。金融機関の職場やレジデンスでの感染も確認され、配達業者にも体温測定を義務付ける建物も。

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現在のシンガポールの状況は、

・学校などの保護者の集まりや面談、カンファレンスなどがキャンセル。

・リモートワークにする人が増えている。不要不急の出張などキャンセル。

・訪問者に体温測定を義務付ける組織や建物が増えている。

・街中、飲食店などは普段より人が少ない。

という感じで、パニックにはなっていません。日常生活はほぼ平常通り送っていますが、気が抜けない状況ではあります。シンガポール出張などがある方は、訪問先が来訪者受け入れを中止していないか、会議が実行されるかを確認したほうがいいかと思います。

シンガポールでは情報が出ていること、ICUにいる人が懸念されるものの退院事例も出ていて、医療機関で検査してもらえることの安心感はあると思います。手洗いの徹底とともに、疑わしい症状がある人は出勤しない抵抗力の弱い人がいる施設の訪問はしばらく見送るなど、日本も渡航歴や接触歴に関わらず警戒するフェーズに来ていると思います。