自己陶酔型ナル男って
ときどき、女に生まれてよかったと思うことがある。
女性蔑視という言葉が多く使われるが、男性蔑視だってあると思う。
それは、男のくせにとか、カッコつけだとか、そういうところに集約される。
例えばだけどね。
男性が鏡にむかって1時間も髪型をいじっていると、やっぱり、そういう男をなんのかんの言っても、あまり見たくない気持ちってあるわけ。
清潔じゃない人も嫌がられるが、しかし、清潔通り越してナル男になると、やはりチョットいう女性は多いって思う。
ごめん、私もチョット派だから。ほんと、ごめん!
1時間の化粧タイムって、女性なら、これ、たぶん、私以外の女性なら、案外と普通の時間だ。ふふふ、究極の怠け者である私は昔からノーメークが主流。いばれることじゃない。母には何度も怒られた。
因みに、美人ほどメイクに構う時間が長いと聞く。
これを聞いて、私、絶望したね。最初の出だしから美人枠から外れてるって。
ま、でもね、世のほどほど女子よ。
それほど落胆したものでもないぞ、それでも世界は回っているし、案外と幸せな人生が待っている。
美人じゃなくても、いい男は寄ってくる。
たぶん、自分の男の美を女で引き立てたいのか。そこの心理はわからんが、ともかく、いい男が究極の美女を選ぶわけでもないって、これ、実感だから。
大丈夫だ、皆のもの。ノーメークでもいける!
えっと、そこじゃなかった・・・
ともかく、1時間ほどの女性のおしゃれタイムは別に変じゃないんだ。案外と普通。
だけど、これをする男性って、カッコ悪いなんて思われる。
ナル男が嫌われる理由が、これ。
デート中、ウィンドーに映った姿、いちいちチェックすな!
それ、女の仕事だから。
で、最近じゃあ、男前の女は、ウィンドーチェックさえしないぞ。
私だ!
もう男前で乗り切るしかない! そこんとこ辛いけどな。
さて、なぜ、ナル男の話になったかというと、竹中半兵衛なんだ。
竹中半兵衛は・・・、戦国時代の有名な軍師。
軍師って、知能的な策略で兵を動かしたり、大将に戦略を教えるって係で、半兵衛は中国の諸葛孔明と並び称されたりすることもある知的な男。
ま、あっちの方が断然有名だけど。
ともかく、超絶頭がよくて、そして、今でいう美形だったんだ。
当時の感覚なら、へなちょこした奴って思われた。容姿が女ぽかったようだ。たぶん、今的イケメン。
体毛が薄く、ヒゲが生えない体質じゃなかったかと思う。
スベスベお肌なんだね。
だから、半兵衛。けっこう仲間の豪傑タイプの髭面武士からイジメにあっている。熊みたいな髭もじゃのゴツい男たちの間で、頭の回転が早く、無口でプライドは高そうなイケメン、少し女性ぽい。こりゃ、嫌われたな。
ところで、このイジメが結構いやらしくて、顔に2階から尿をかけられたっていう陰湿なもので、これに対して半兵衛、きっちりお返ししているから。
お相手、殺された。
こ、怖い・・・ぞ、半兵衛。優しげな顔で結構やるんだ。
半兵衛みたいな男、たとえ容姿が華奢で女性ぽく弱く見えても、実際は恐ろしい男だから、身近にそんな男がいたら気をつけたほうがいい。
あなたの背中に、いつか必ずナイフが突き刺さる!
浅井長政をやっつけ、織田信長を救おう大作戦:序盤
私たち、オババと私、それから昭和初期から転生してきた弥助は、半兵衛の住む屋敷の庭に通された。
「ここでお待ちなされ」と、案内した下人が告げた。
下人が去るとき、二人の武将らしい男たちが庭先を走っていくのが見えた。彼らは私と目があうと、そっと顔を伏せ、それから、すっと消えた。
障子が開いた。
静かに廊下に現れた男は、細い顔立ちで、美しいと言ってもいいかもしれない。この戦国時代に確かに美形だ。
彼はふっと息を吐くと、「で?」と言った。
オババをみると、ぽか〜〜んと半分口を開けている。まるで、フィギュアスケートの羽生を追っかける女性ファンの顔付きだ。
おい、オババ!
プーさん、持ってくるべきだったか?
「信長公からの伝言とは」と、廊下で警護している供のものが聞いてきた。
弥助も、陶酔した顔のオババも何も答えない。
「あ、あの。誰も聞こえないところで、ご相談が」
私が告げた。
「どういうことじゃ」
「羽柴秀吉様のことです」
「織田信長公がお許しになったとでも言う知らせか」
「いえ、そういうわけではありませんが、このままでは大変、まずいことに」
半兵衛は神経質そうに眉の間を狭めると、それから、廊下で警護している男に向かって、はじめて口を開いた。
「ここに、誰も近づけるな。その方たち、入れ!」
「しかし、殿、彼らは」
「良き」
彼は障子を開けると、部屋に入った。
「中へ入れ」と、警護の男が言った。
私とオババが、慣れぬわらじに手間取っている間に、弥助は部屋の隅に座っていた。
「足裏を拭くものを貸してくれ」と、オババが言った。
「その方、なんという無礼な」
警護のひとりが気色ばんだ。
「私は、このような汚れた足で部屋に上がるような教育を受け取らん」
オババ〜〜〜!
ここで、それ必要?
今、大変なときなんだ。戦国時代で、秀吉が信長に謀反ってありえん歴史になっていて、それでも足裏の汚れ、気にする?
「ほれ、これを使え」
男が、いやいや懐から手ぬぐいを出して言った。
オババはそれを受け取ると、足裏の汚れを取り、私に手渡してきた。
もうね、泥で固まり、真っ黒になった足、乾いた手ぬぐいどろこじゃ取れないから。
「アメ」と、オババ言った。
「正念場じゃ、見出しだみが大事だ」
オババ、半兵衛の顔に惚れたな。だから、身だしなみって、
もうね、頭が痛む。
・・・つづく
#内容は歴史的事実を元にしたフィクションです。
#歴史上の登場人物の年齢については不詳なことが多く、一般的に流通している年齢などで書いています。
#歴史的内容については、一応、持っている資料などで確認していますが、間違っていましたらごめんなさい。
これまでのお話につきましては、下記の目次サイトに掲載しております。
ご参考になれば幸いです。
究極のナル男映画『ベニスに死す』
監督はあの耽美主義、貴族そしてLGBTであったルキノ・ビスコンティ。
彼が探し出し、究極の美をかもしだす少年は、ビョルン・ヨーハン・アンドレセン。金髪、透き通るような白い肌の典型的なスウェーデン人だった。
神話のナルシスは、こんな外見の少年だったんじゃないかって思う。ほんと完璧に中性的で美しい少年ですよね。
映画では、作曲家マーラーをモデルにした老齢の男が主人公。彼が美しい少年に恋い焦がれるというだけの話ですが、この顔を見ると、さもありなんって思ってしまう美しさ。
この少年がナルシストでも仕方ないなって、そう思う。
マーラー作曲、交響曲第5番の第4楽章「アダージェット」の曲が、なんとも美しく切ない映画でした。
そして、けっこう後味の悪い映画でもありました。