死者1万人超、アメリカで「インフル猛威」のなぜ

2年前はなんと6万人以上が亡くなっていた

アメリカでのインフルエンザによる今シーズンの死亡者数は1万2000人を超えた(写真:AP Photo/LM Otero)

2月1日までの1週間だけで罹病者数は400万人増え、今シーズンの罹病者は合計で2200万人。死者は1万2000人――。これは、今世界を震撼させているコロナウイルス肺炎の話だと思われるだろうか。いや、そうではない。実は聞き慣れた病気、「インフルエンザ」のアメリカでの現状である。

アメリカでは、1月半ばになって急にインフルエンザが猛威を振るい始めた。コロナウイルス肺炎の死者が1000人を超えたことでわれわれはパニックに陥っているのだが、アメリカ国内ではその10数倍もの人々が昨秋からインフルエンザによって亡くなっているのだ。新奇な病気に目を奪われているうちに、足をすくわれたような寒気がしないだろうか。

死亡者数は1万2000~3万人と推定

アメリカ疾病対策センター(CDC)は、昨年10月1日以降2月1日までの間に、アメリカ国内で合計2200万~3100万人がインフルエンザにかかり、来院は1000万~1500万件、入院件数は21万~37万人、死亡者は1万2000~3万人となったと推定している。数に開きがあるのは、「インフルエンザでは、罹病ケースを完全に監視することは不可能なため」という。

聞き慣れた病気だし予防接種もあるではないかと、インフルエンザは軽く見過ごされがちだ。だが、CDCでは、アメリカでは例年1万2000~5万6000人がインフルエンザで死亡するとしている。2017年〜2018年シーズンは悪夢のようなインフルエンザ流行に襲われ、何と6万1000人もの死者が出た。場合によっては、コロナウイルス肺炎よりも注意を要する病気と言える。

ニューヨーク・タイムズ紙は1月上旬から、「今シーズンのインフルエンザシーズンは悲惨になる可能性があるとCDCが警告」とする記事を掲載していた。インフルエンザ感染者が増え始めたのは昨年11月末と、例年になく非常に早かった。当初はテキサス州やジョージア州など南部を中心に感染者が増えていたが、その後カリフォルニア州で猛威を振るった。が、東部で感染者が爆発的に増えたのは今年に入ってからだという。

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  • cicero513b5170a733
    インフルエンザが騒がれていない理由として、新型コロナと比べると、どんなものかわかっていて治療法もあるから、という事なのだが、しかしそれで一万二千人も死んでいてはダメでしょう、と思う。罹患者が二十四万と聞いているけど、それだと死亡率は5%。コロナより高いよね。変異が心配とも言うが、それだってインフルエンザも同じ。
    やっぱり冷静に考えないとね。舐めてはいけないが、騒ぎすぎてもいけない。これから日本国内で、コロナ感染は加速すると思うし。
    up90
    down8
    2020/2/14 07:31
  • sskk49dbbd0fc6ca
    アメリカは医療受診のハードルが高いから、単純に致死率の高い感染症の方が恐ろしいってだけじゃないのか...?何せ盲腸1発800万円の世界だから...。
    対処方法が不明で薬がないのと、そもそも医療受診できないのって条件変わらないわな。
    人口ピラミッドが問題にならないのはそれはそれで恐ろしい実態があるという事だと思うけど...。
    up71
    down4
    2020/2/14 07:48
  • たう903fd78eb65c
    >治療法もある
    その治療受けるお金はないと。
    up29
    down3
    2020/2/14 09:49
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