貧困地域で過ごした幼少期、欧州と南米の選手の違い、心に刻むモウリーニョの言葉…レアルMFカゼミーロがすべてを語る

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(C)Getty Images

現在のレアル・マドリーにとって、唯一代えが効かない存在かもしれないブラジル代表MFカゼミーロ。的確なポジショニングから相手の攻撃の芽を潰すスペシャリストであり、彼が不在の試合では大小あれど攻守のバランスが確実に乱れることなり、大一番では絶対に欠かすことのできない存在だ。チャンピオンズリーグ三連覇の影の立役者であり、現在のチームの好調も支える同選手は、スペインのフットボールカルチャーマガジン『リベロ』とのインタビューで、南米より欧州向きである自身の選手としての特徴、幼少期の経験、レアル・マドリーで過ごす日々などを語っている。

カゼミーロはもはや、アンカーとしてプレーする選手にとっては絶対に参考にすべき存在であり、それは同ポジションの第一人者ともされるバルセロナMFセルヒオ・ブスケッツにとっても例外ではない。ブスケッツはカゼミーロに対する称賛をはばからず、またカゼミーロもブスケッツに対して深い敬意を表す。

「ブスケッツについて話をするとすれば、それはここ数年間、多くの人々が模範としてきた選手について取り上げることを意味する。彼とシャビ・アロンソの特徴はとても似ている。彼らはとりわけ、ボールタッチという面で偉大な選手たちだ。(バルセロナの選手で)いつも話題になるのはメッシ、ルイス・スアレス、ちょっと前ならネイマールだけど、自分にとってはブスケッツこそが最も重要な存在だ。彼は守備的MFとして、世界最高の一人なんだよ」

チーム選択

「確かに、自分と比較すればタイプが違う選手だ。おそらく、彼は僕のようなフィジカルを持っていないけど、ポジショニングが本当に素晴らしくて、いつも適切な位置にいる。それは本当に大切なことなんだ。彼は近年のバルセロナにおいて、自分にとってはメッシと並んで最も重要な選手だ。彼が僕を参考にしてくれているなんて、誇り高いよ」

レアル・マドリーの中盤の底で輝くカゼミーロは、同クラブの伝説的選手フェルナンド・レドンド氏と同レベルで記憶に残る存在となるのかもしれない。しかし、そうなる可能性を問われた本人は、レドンド氏に関してそこまで多くを知らないことを素直に告白している。

「レドンドのプレーはそんなに見ていなかった。昔のブラジルは、国外のフットボールを見るのが難しかったから。僕がアイドルとして憧れていたのは、ジダンだった。フットボールのビデオを見るのは好きだよ。妻は自分が中国のフットボールまで見ているから、いつも怒っているけどね。中盤の選手を見るのは好きだし、マケレレのプレーはかなり目にした。彼は僕とタイプが似ていて、体格は自分よりも小さいけれど、インテンシティーあふれるプレーを見せていた」

「マドリーはそうした中盤の守備的ポジションで、多くの素晴らしい選手を抱えてきた。例えば、シャビ・アロンソだ。彼と一緒にプレーできたのは幸運だったし、アンチェロッティから『シャビのことはピッチ内外問わずにずっと見ていろ』と言われたのを思い出す」

インタビューのテーマは、カゼミーロの幼少期にも及ぶ。ブラジル人MFは、レアル・マドリーでプレーするという未来を想像だにしていなかったことを明かした。

「6歳のときにモレイラ・フッチボールというスクールでプレーしていた。でも、ただプレーしているだけだったね。テレビで選手たちがプレーするのを見ていて、自分も選手になれたらと夢見てはいたけど、実現できるとは思っていなかった。サンパウロのトップチームに入って、国際大会でプレーするとかがせいぜいで、そこから先のことに考えは及ばなかったね。現代の子供たちは、そうした年齢からマドリーやバルセロナでプレーすることを考えているが、それは世界がずいぶんと変わってしまったからだろう。僕は家族を助けるため、貧乏な地域を抜け出すために、ちょっとしたお金を手にできればと考えていた。自分のフットボールでどんなことができるんだろうか、って思いながらね」

「僕はファヴェーラに住んでいたわけではなかったが、困難な地域にいたことは確かだ。僕たちのフットボールのピッチはハーフコートくらいの大きさで、まったくの土でできていたよ。自分は8〜9歳だったけど、良いプレーを見せられたから15、16、17歳と一緒にプレーしていた。彼ら年長者と一緒にプレーしていた唯一の子供が僕だったんだ。最初は同じ年齢の選手たちとプレーして、その後に年長者にピッチを取り上げられた。不満を言ったら、殴られるんだよ……。でも僕にはノーって、カルリーニョスはこのまま残れって言われるんだ。あの地域で、自分はカルリーニョスと呼ばれていた。あそこでは自分と同じ年齢と、年上と一緒にプレーしていた」

ブラジルでは20対20のフットボールも行われるが、カゼミーロもそうしたゲームに取り組んでいたのだろうか。

「いや。小さいピッチで、サンダルを置いて小さなゴールをつくって10対10でプレーしていた。思うに、あそこで行われた試合からは多くのことを学べた。あの頃を振り返って気づいたんだけど、子供たちにはそこまで大きな重圧を与えてはならないんだ。ブラジルの選手たちが持っている閃きは、ああした場所で生まれるんだから。子供の頃から難しい環境に置かれれば、そこでたくさんのものを学ぶことができる。それは今、僕が妻や子供にいつも言っていることなんだ。現在、僕が実行しているプレーには、8歳の頃を思い出させるものが多々ある。ワンタッチプレーやボールコントロール……、そういったことは子供だった自分を思い出させるんだよ」

ただしカゼミーロは、欧州で活躍するほかのブラジルのフットボール選手とは違って、フットサルをプレーした経験がない。本人によると、そうした経験の違い、趣味嗜好の違いは如実に表れるものだという。

「僕は11歳のときにサンパウロの下部組織に入団したけど、マルセロ 、ネイマール、ヴィニシウス、ロドリゴといった選手を見れば、彼らがフットサルをしていたこと、自分が一度もそれを経験しなかったことをひしひしと感じる。フットサルは、多分学校の中庭で、冗談半分に興じたくらいだ。フットボールのピッチで育った自分は30〜40メートルのロングボール、ライン間のプレー、ストライカーへのスルーパスなどを好んできた。股抜きとか違う側のフットボールは、好きになったことがないね。僕はもっと垂直なフットボールが好きだけど、それはどちらが優れていて、どちらが劣っているかという話ではない。僕がそういうタイプの選手ってことなんだよ」

サンパウロで順調に成長を遂げたカゼミーロは2013年冬、レンタル移籍でレアル・マドリーのBチーム、レアル・マドリー・カスティージャに加入。ほかの南米の選手と同じく欧州のフットボールへの適応には苦労を強いられたが、見事に試練を乗り越えている。

「いつだって自分に自信を持っていた。自分自身が信頼を置けない人間だったら、一体誰が信頼してくれるっていうんだ? 僕は欧州に残ることを考えていたし、(カスティージャ移籍)のチャンスは絶対に生かさなければならなかった。もし、マドリーが僕のことを望んでくれなかったら、ほかのチームが姿を現したかもしれないが、とにかく僕は欧州に残りたかった。ルイス・ファビアーノとリバウドが、僕が欧州の選手の特徴を有していると言っていたけど、当時はその真意を分かりかねていた。でも今はそれが垂直で、より真剣なフットボールのことを意味していたのだとはっきり分かる。戦術的に分析すれば、欧州のフットボールはブラジルよりも考えられていて、なおかつスピードがある」

「カスティージャ加入当初は、確かに辛かったよ。ボールがよく走る芝生の問題だけでなく、選手たちだってとても速かったから。加入から2週間ばかりして、家に帰ったときに妻に『ここじゃプレーできない』と吐き出してしまったことを思い出すね。でも彼女からは『落ち着きなさい。あなたはサンパウロで100試合以上に出場した選手よ。1カ月も経てば、うまくいくようになるわ』と言われて、実際にその通りになった。偉大な男性の背後には偉大な女性がいるという言葉があるが、僕の場合は真実だったね」

「僕はブラジル人の割に冷静にプレーできる? 確かにそうかもしれない。ブラジル人は即興プレーを実現するための閃きがあるが、欧州の選手はより冷静にプレーを選択できる。もっと、落ち着いているんだよ。だからここの人々は、マルセロやネイマールが南米人として簡単にやってのける即興的なプレーに感動を覚える。反対に欧州の選手は、トニ・クロースに代表されるように、よりゴールを奪うことや戦術に特化しているね」

カゼミーロがレアル・マドリーのトップチームデビューを果たしたのは、2013年4月のベティス戦。カゼミーロは当時トップチームを率いていたジョゼ・モウリーニョ現トッテナム監督が、ナーバスな感情も伴うデビューに際して、自身にかけた言葉を述懐する。ポルトガル人指揮官は「私はお前のことを知っている」という言葉を何度も繰り返したのだという。

「(カスティージャ監督の)トリルから『カゼ、聞け。トップチームか選手を一人必要としている。お前がトップチームでプレーするんだ』と言われた。それがモウリーニョの決断であったことは、まったく知らなかった。そうして参加した練習で、僕はとてもうまくプレーして、目立つことができた。するとカランカ(助監督)がモウリーニョに『彼は良いプレーを見せる』と話しかけ、モウリーニョが『ああ、そうだ。私はあいつのことを知っている。あいつはカゼミーロだ。多くの試合でプレーしてきた。ブラジル代表としてもプレーしたし、サンパウロでもプレーしていた』と返答したんだ。もちろん、僕に聞こえるように……」

「そしてトップチームデビューの日、自分は招集外になるかもしれないし、5分間だけでもプレーできればいいと考えていた。でもモウリーニョと朝食の前にミーティングをして、朝食を食べに行こうとすると、彼から『カゼ、私の部屋に来い』と言われたんだ。それで部屋に行くと、彼からこう話しかけられた。『カゼ、私はお前のことを知っている。お前がサンパウロで100試合以上に出場したことを知っている』。そうして戦術ボードを見やると、そこにはスタメンが記されていて、僕の名前もあった。『自分がスタメン?』と言うと、彼はこう答えた。『ああ。お前は多くの試合をこなしてきた。お前はとても良い選手だ。落ち着け。聞くんだ。最初のボールに、死ぬ気で食らいつけ。ベルナベウは死力を尽くす選手を好む。だから最初の15分間は、死ぬ気でやれ。そしてその後には、私が知っているお前の通りに、70メートルのロングボールを出せ。ベルナベウはそれが大好物だ。私はお前のことを知っている。落ち着くんだ』。それから部屋を出るときに、自分が世界最高の選手なんだと感じたことを覚えている。『モウリーニョが僕と話をした。彼が僕のことを知っていると言うのを聞きながら部屋から出てきたんだ』って思いながら、ね」

「そしてベルナベウのピッチに立って、僕はクリスティアーノ・ロナウドにロングボールを出した。試合終了後、モウリーニョからは『私がどれだけお前のことを知っているか、分かっただろう? おめでとうよ、小僧。お前はドルトムント戦の招集メンバーに選ばれた』と声をかけられたよ。そのドルトムント戦はレヴァンドフスキの試合になってしまい、僕たちはベルナベウで逆転勝利を逃した。でも、その日から人々は、僕がレアル・マドリーでプレーできることを理解してくれたんだ」

レンタル期間が終了した2013年6月、レアル・マドリーは移籍金500万ユーロの買い取りオプションを行使して、カゼミーロを正式に自クラブに加えた。2014-15シーズンにはレンタル移籍によってポルトで修行を積んだブラジル人MFは、ジネディーヌ・ジダン監督が就任してからレアル・マドリーで不動の地位を確立し、同指揮官とともに数多くのタイトルを獲得。カゼミーロは自身のアイドルでもあったジダン監督に対して、惜しみない称賛の言葉を述べる。

「ジダンと話し合うのは簡単だ。彼は僕のアイドルであり、クラブの伝説なんだから。彼は選手、監督としてクラブの記憶に刻まれることになる。彼は今、監督としての伝説を築き上げている真っ最中で、僕たちは今、このときを楽しまなければならない。彼が成し遂げたこと、成し遂げていることには、喝采を送るべきものだ」

カゼミーロはその一方で、今季のレアル・マドリーでブレイクを果たしたMFフェデリコ・バルベルデにも言及。現在21歳のウルグアイ人MFには、目を見張るばかりという。

「前にバルベルデがあと2年で世界最高の8選手に入ると言ったことがあるが、それは間違いだった。その成長のプロセスを早めているんだからね。彼は信じられないシーズンを過ごしていて、チームの重要な選手の一人で、試合毎に成長を遂げている。ただ、まだ21歳なんだから落ち着きを持って進まなくてはならず、大きな重圧をかけるようなことがあってはいけない。自分だって21歳の頃があったし、彼の頭の中でどういったことが起こっているは分かっているんだ」

「でも、僕が彼について好ましいと思っている部分は、とても落ち着いていて、人の話を聞けるところなんだ。ここまで素晴らしいパフォーマンスを見せ、重要な選手と示してきたけど、今なお地に足がついているのは素晴らしい、それはピッチ内外における大きな長所だ。一緒にプレーできることは誇り高いし、彼が隣にいることで楽しめている。というのも、ドレッシングルームで彼はすぐそばの15番のロッカーを使っているからね。フットボールについてよく話をするよ」

バルベルデはカゼミーロが欠場するときにはアンカーの役割を務めるが、ブラジル人MFにとってはインサイドハーフ向きの選手であるようだ。

「彼みたいに見事にボールを蹴ることができ、力強いフィジカルでボックス・トゥ・ボックスを実現できる彼がチーム内にいることは、とても素晴らしい。思うに、彼に最も適しているのは8番のポジションだと思う。そのクオリティーに鑑みれば中盤のどこでもプレーできるけど、両ペナルティーエリアを行ったり来たりすることが最たる特徴だろう。5番や6番ではなく、8番の選手だ」

「モドリッチやクロースみたいに? そうだね。各チームがプレーする形を有している。僕にとっては、試合をコントロールし、ストライカーにボールを供給し、ときにペナルティーエリアに飛び込むのが8番の役割だ。でも守備を助けることも頭に入れなくてはならない。たとえボールを奪うのが守備的MFの役割だとしても、守備でも存在感を示す必要がある」

元ブラジル代表MFマウロ・シルバ氏によれば、カゼミーロは幼少期に家事を手伝うなど家庭のことについて多くの責任を背負い、そのために中盤の選手として大成したのだという。カゼミーロはフットボール選手のピッチ上で振る舞う姿とピッチ外の人格が、ほぼ同じであることに同意する。彼は、ときに目立たぬ役割とも言われる守備的MFを真剣にこなすだけでなく、すべてに対して誠実に向き合う人間なのだろう。

「フットボールの選手の在り方はピッチ外でもピッチ内と同じなんだと、これまで言い続けてきた。80%はそうだね。マドリーについて話すなら、トニ・クロースはとても真面目で曲芸的なプレーはしないが、それはピッチ外でもそうなんだよ。自分という人間も大体は同じだ。真面目なのは子供の頃から変わっていない。自分のフットボールへの情熱はご存知の通りだけど、ピッチ外のことも心から、全力で行う。もしインタビューを受けるなら心から取り組み、オープンであろうと努める。妻や子供とすることだって、一緒だよ」

翻訳・文/江間慎一郎

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