2020年、数字だけ見るとものすごい未来のように見える年号だが現在だ。子供の頃にテレビや映画でイメージした2020年といえば車は空を飛んでいたし、人々はカプセルのような丸い家の中に住んでいた。もしくは人工知能に征服されかけ、必死でそれに抵抗しているている時代のはずだった。そんな期待を裏切った2020年に誰もが期待していなかった発明をしてしまった男がいる。Excelドラムマシンがバズった音系YoutuberのDylan Tallchief氏が、ついに完全なDAWをExcelだけで作ってしまったのだ!その名も“xlStudio”というなんだかありそうな名前で無料ダウンロード可能。ちなみに当然ながらExcelファイルなのでExcelは必須。
まずは信じられないほどちゃんとDAWとして機能するExcel DAW “xlStudio”のデモ動画を見てみよう。
前回発表したドラムマシンもよくできていたが、とはいえドラム。まぁExcelでこんなことやっちゃいました的なネタの要素が強かった印象だった。しかし今回、どうやらかなり本気を出したようで、相当に作り込まれたDAWを完成させてしまった。前回のドラムマシンと同様、音源は外部の音源を使用するので厳密に言うとシーケンサーと言うことになるが、出来ることとしてはかなり今日的なDAWに近いものだ。前回のドラムはもちろん、ピアノロールを駆使してメロディーやベースライン、コード進行などアレンジを行い、おまけにAbleton Liveプロジェクトファイルを書き出す機能までついている。
基本操作は前回のドラムマシンの利用方法を踏襲しており、Excelのセルのマス目がピアノロールのグリッドの役目となるので、そこでパターンを作ってそのパターンを並べて曲を作っていく。映像を見ていただくと分かる通り、Excelという単なる表計算ソフト上でDAWっぽく作業ができるようになっている。過去にさかのぼると何人かの猛者がExcelでMIDIシーケンサーを発表しているが、多くの場合は昔ながらの数字の羅列による打ち込み方式で、今日的なDAWとはかけ離れた使用感のものだった。DAWユーザー目線というより、Excelに詳しい人が合理的にMIDIシーケンサーを作ったと言う感じで、普通の人が見ても何が何かわからず、今回ほどインパクトもなかった。その点このxlStudioは左から右へ進むよくあるDAWの編集画面のようなデザインで、パターンを繋げながら曲を構築していくところや、ピアノロールで音楽的にmidiを入力できるところなど、DAW的な操作感にこだわっている。
特に注目してほしいのがピアノロールの出来。Excelを使ったCGアート的な作品はいくつかあるが、もはやこのピアノロールの出来はDAWファンのみならず、Excelアート界においても重要作品ではないだろうか。サステインやトランスポーズ、さらにはコード入力など、Excelの制約の中で本当によくここまでやったと感心させられる出来になっている。
もう一つ気になるのが動画”a-ha - Take On Me (Excel cover)”のサウンド。
YouTube上では様々な動画のブームがあったが、このExcelカバーもなんだか新たなカテゴリを作ってしまいそう。チープでナチュラルとは言えない機械的な打ち込みサウンドは何か変な中毒性があり、もっと聴きたいと言う気持ちにさせられてしまう。Excelでピアノロールを打ち込む作業も独特の中毒性があり、なんだか没頭して曲を作ってしまうのだ。
誰もが知っている退屈なビジネスソフトでここまでのDAWを作られてしまうと、あえてこのExcelとWindowsに標準搭載の音源だけで、曲作りに挑戦してみたくなってしまうのが正しいクリエイター魂。普通のDAWの無限の可能性に飽きてしまった方や、窓際(現在は妖精さんとよばれてる?)という最強の職に就いて、働いているふりをしないといけない方は、仕事用パソコンでExcelをひらいてトラックを作ってみては?!
written by Yui Tamura
source:
https://www.youtube.com/watch?v=RFdCM2kHL64&feature=emb_title
https://github.com/DylanTallchiefGit/xlStudio
photo:
https://www.youtube.com/watch?v=RFdCM2kHL64&feature=emb_title