ピル(経口避妊薬)は一昔前のものでは副作用等の問題のあるお薬でしたが、現在使用されているものは非常に安全性に優れ、副作用等もほとんど見られません。
避妊効果もコンドーム以上であるとされています。
ここではピルの基本となる情報を確認していただけます。
ピル(経口避妊薬)とは?
ピルとは2つのホルモンを配合した飲み薬です。
コンドームより高い避妊率があることが立証されています。
それだけでなく、月経前症候群(PMS/不快な状態)や、月経痛が軽くなる等の効果もあります。
また、更年期障害の軽減にも役立つ安全なお薬です。
開発当時(40年以上前)は、ピルの成分が高濃度で、副作用を引き起こす例もあったので、悪いイメージを持つ方もいまだに多いのですが、平成11年に日本で認可された低用量のピルはホルモン量が低めに抑えられているので副作用も少なく、安全に使用できます。
世界で1億人の女性が服用していますが、国家によって使用状況は大きく変わります。
アメリカでは1,200万人が使用し、イギリスでは16歳~49歳の女性の1/3が服用しています。
ピルは2つのホルモンが含まれたお薬です。
「エストロゲン(卵胞ホルモン)」「プロゲステロン(黄体ホルモン)」という2つのホルモンが含まれており、通常に妊娠した場合の1/20ほどのホルモンが含まれています。
ピルを服用すると血中の、特に黄体ホルモンが増えます。
通常黄体ホルモンが増えるのは排卵後で、そのため身体が「妊娠している」と誤認します。
それにより排卵を抑制し、避妊効果がでます。
正しい方法で服用している場合、ほぼ100%の避妊効果が出ることが実証されています。
また、服用をやめれば妊娠に問題はありません。
「ピルを服用していると妊娠したくてもできなくなるのでは? 」という心配はありません。
「ピルを服用していると太る」と思っている方もおられますが、ピル自体に肥満の作用はありません。
だた【ピルを服用して生活のリズムが整い、身体の調子が良くなったことによって食欲が増す】ということはあるかもしれません。
低用量ピルとは?
ピルに配合されるエストロゲンの量は20㎍(超低量ピル)から50㎍(中用量ピル)まであり、一般的なのは30㎍~35㎍で「定量ピル」と呼ばれます。
低用量ピルは1999年に厚生労働省が認可し、医師の処方のもとで10代から服用が可能です。
妊娠を望むようになったら中止すれば問題ありません。
中断し、もう一度始めても構いません。
低用量ピルは毎日1回服用することで排卵を抑制し、子宮頚管粘液を変えて精子の子宮内侵入を阻害。
また、子宮内膜を変化させて受精卵の着床を抑制します。
これら効果により、コンドームより高い避妊効果(ほぼ100%)が得られます。
ピルの有効性は「性交前に避妊が完了していること」が挙げられます。
コンドームは一定の確率で破損することがあり、ピルの服用より避妊の信頼度が低いわけです。
ただし、ピルにエイズ等の性病予防効果はありませんので状況に応じて適切な手段をとることが大切です。
低用量ピルには女性ホルモンの配合比率によって、3つのタイプに分かれます。
1相性ピルは、飲み間違えることがないのがメリットです。
2相性・3相性性ピルは、総ホルモン量が少なくて済みます。
ピルの服用方法
21錠入りのピルは、ワンシート21錠を飲み終えたら7日間休んで、また新しいシートを飲み始めます。
この7日間に卵胞が発育するので、妊娠しないためには次のシートの飲み始めはきっちりと行うことが前提となっています。
28錠入りピルは、28錠の内最後の7錠が薬の成分が入っていないプラセボ(偽薬)になっています。
これは、飲み忘れや服用のタイミングを誤らないためのものです。
効果としては21錠タイプと変わりないのですが、人間は間違える生き物。
7日間のプラセボというのはよく考えたものだと思います。
ピルを飲み忘れたら?
12時間以内に気がついた場合
すぐ1錠を飲みます。
服用忘れから12時間以内であれば、避妊効果には問題ありません。
1錠飲んだうえで、次の日の分も予定通り飲んでください。
1日に2回分になる場合もありますが、心配いりません。
12時間以降~24時間以内に気が付いた場合
すぐ1錠を飲みます。
その後、次の服用時間からもともと飲んでいた通りに飲みます。
この場合も避妊効果が低下することはほぼありませんが、ピルの種類・体質・使用時期により100%の安全性はありません。
できれば他の避妊方法を併用するのがよいでしょう。
24時間以上経過した場合(最後に飲んでから48時間以上)
避妊以外の効果を考慮しない場合は服用を一旦中止し、次の生理(出血)が訪れてから新たに飲み始めることが推奨されます。
2日以上飲み忘れた場合、妊娠のリスクは大幅に上昇します。
避妊効果がなかったことが分かるのは、「妊娠が成立した後」ということになります。
そのため、一旦服薬をリセットし、確実な避妊効果が得られるまでコンドームなど他の避妊方法を採るべきです。
この場合、中止したピルのシートは破棄してかまいません。
シートの1週目に飲み忘れた場合
ピルの避妊効果は「7日間服用した以降、その周期には排卵が行われない」という考えのもと成り立っています。
ですので、1週目に飲み忘れた場合、妊娠する確率は高くなってしまいます。
週目に飲み忘れた場合は、他の避妊方法と併用するか、性交渉を避けるべきです。
ピルの副作用
現在の低用量ピルでは副作用は起こりにくくなっています。
まれに表れる症状として「吐き気」「周期の途中に起こる出血」「頭痛」「倦怠感」「乳房の張り」「血栓症」などが起こり得ますが、飲み続けているうちに収まるケースがほとんどです。
ですが、気になったらドクターに相談するのが身体的にも精神的にも第一だと思います。
「血栓症」は、頻度は低いものの、重篤な副作用です。
血管の中に血のかたまりができる症状で、定期的な検診による管理が大切です。
モーニングアフターピル
コンドームが破れたり、外れてしまったという事態に、性交渉のあった時間から72時間(3日間)以内に中容量ピルを2錠、その12時間後に2錠ピルを飲んで、受精卵の着床を防ぐ手段を「モーニングアフターピル」といいます。
セックスの次の朝に飲む、ということからモーニングアフターピルと名付けられた方法です。
ピルを普段から服用していない状態でのセックスで、コンドームが破れたり、外れたりした場合、あるいはレイプにあった場合などの緊急手段です。
この「モーニングアフターピル」を飲むことによって、受精卵の子宮内膜への着床を防ぎ、妊娠を回避することができます。
できるだけ早く服用することが望まれます。
モーニングアフターピルの効果は100%ではありません。
正しく服用すれば98%の避妊効率があると言われますが、服用が遅くなれば遅くなるほど効果は低くなります。
ピルについての疑問
ピルを飲むと妊娠したくなってもできないのでは?
ピルは服用中は十分な避妊効果があり、妊娠を望むようになった時には服用を中止すれば問題なく妊娠が可能です。
不妊症になるのでは? などの心配は必要ありません。
もちろん、胎児への異常もありません。
いつ飲めばいいのか?
1日1錠を毎日服用します。
時間帯は特に決まっておらず、バラバラでもかまいません。
ただ、飲み忘れ防止という意味から、飲む時間を決めておいた方がいいかもしれません。
就寝前に服用される方が多いようです。
ピルの避妊効果が期待できるのはいつから?
確実に避妊効果が期待できるのは服用後8日以降です。
正しく服用していれば、2シート目からは第1日目から避妊効果があります。
アルコールを飲んでもいい?
特に問題はありません。
ただ、お酒の飲みすぎでピルの服用を忘れないように注意してください。
タバコを吸っててもいい?
アルコールと違い、これには注意点があります。
「35歳以上で1日15本」以上のタバコを吸う方はピルを服用してはいけないことになっています。
この点は気をつけてください。
ピルを飲むと本当に避妊できますか?
規定通り正しく服用すれば確実に避妊できます。
排卵がおこらないこと、子宮内膜の増殖を抑え着床しにくくなること、子宮頚管の粘液を変化させ精子が子宮に入りにくくなること、これらの効果で、ほぼ100%避妊が可能です。
まとめ
ここまで、ピルの基礎知識について記してきました。
ピルは、
- 正しく服用すれば確実な避妊効果がある
- 副作用もほとんど起こらない(飲み初めはいくらか確率は上がります)
- 服用を中止すれば正常な妊娠ができる
- 避妊効果以外にも効用がある(今回は触れていません)
- 21錠タイプと28錠タイプがあるが、どちらを選んでもよい
- 「モーニングアフターピル」という飲み方がある
という特徴があります。
メリット・デメリットを知ったうえで、ぜひ検討してみてくださいね。
女性の性の悩みや、ピルについて詳しい。通称ピル先輩。
相談事には優しくのってくれ、時には厳しいことも言ってくれるため
周りの女性からの信頼が厚い。