アフターピルとは、避妊に失敗した後に服用する「緊急避妊薬」のことを言います。
従来は「プラノバール錠」を使う「ヤッペ法」が中心でしたが、現在は「ノルレボ錠1.5㎎」を使う「ノルレボ法」が主流になっています。
アフターピル(緊急避妊薬)とは?
アフターピルは、避妊措置をとらずに性行為してしまった場合や、暴行を受けた場合など、避妊に失敗した「後に」飲む避妊薬として緊急的に用いるものであり、通常の経口避妊薬のように計画的に使用するものと異なります。
翌朝に飲むという意味から「モーニングアフターピル」とも呼ばれています。
国内では、医師の診察および処方を受けないと服用することができません。
ノルレボ錠1.5㎎とは?
ノルレボ錠1.5㎎は、アフターピルとして性行為の後に飲む「緊急避妊薬」として国内で承認・使用されています。
以前は0.75㎎錠という剤型が存在し1回2錠服用する形式でしたが、0.75㎎錠は製造中止となり、現在は1.5㎎錠を1回1錠服用します。女性ホルモンの一つである「黄体ホルモン」として「レボノルゲストレル」を有効成分としています。
避妊効果は、性行為後早ければ早いほど高くなる、と言われています。
アフターピルは、とにかく早く飲むことが大事です。
ノルレボ錠の避妊効果
(1)ノルレボ錠1.5mgが国内で承認されるために行われた臨床試験における妊娠阻止率は81%(性交後72時間以内)とされています。
引用:ノルレボ錠1.5mgインタビューフォーム(あすか製薬)
(2)同様の条件で行われた海外での臨床試験では、妊娠阻止率は84%(性交後72時間以内)と報告されています。
引用:Hertzen H., et al.:Lancet 360:1803-1810,2002
(3)国内における市販後の使用成績調査における検討では、妊娠阻止率は90.8%と報告されています。
妊娠阻止率って、少しわかりにくい言葉ですが、概ね「危険日(排卵日)付近での性交における妊娠を防ぐ確率」とお考えください。
「ヤッペ法」という緊急避妊法があると聞いたけど?
「ヤッペ法」は、ノルレボ法が登場する以前に使われていた緊急避妊法です。
あらゆる面でノルレボ法に劣るのですが、価格が安いことから、現在でも選択肢に入る方法です。
副作用として「吐き気」「嘔吐」がかなり出やすく、避妊効果もノルレボに比べて劣ります。
また、最初の服用後、12時間経ってから2度目の服用が必要となります。
2度飲まないといけないことと「嘔吐」の副作用の組み合わせは厄介です。
なぜなら、ピルは服用後2時間以内に嘔吐したり激しい下痢をした場合、効果が十分に出ないからです。
このような事情で、今はノルレボ法が主流です。
ノルレボ錠はなぜ「緊急避妊薬」として使えるの?
ノルレボ錠は”排卵を強力に抑制する”ことで避妊効果を発揮する、と考えられています。
ノルレボ錠はそれ以外に受精を阻害する作用、受精卵の着床を阻害する作用が考えられています。
引用:日本産婦人科学会 緊急避妊法の適正使用に関する指針 平成23年2月,IPPF Med Bull 2002; 36(6)
ノルレボ錠1.5mgインタビューフォーム(あすか製薬)
Van der Vies J., et al.:Arzneimittelforschung,33:231-236,1983
Oettel M., et al.:Contraception,21:537-549,1980
妊娠が成立するには、
(1)卵巣で卵子が成熟して放出される
(2)精子と卵子が出会い、受精卵になる
(3)受精卵が子宮内膜に着床する
(4)着床した受精卵が順調に成長する
という流れが必要となります。
ノルレボ錠は、主に(1)と(3)のところに働くことで避妊効果を発揮します。
妊娠が阻止できたか確認する方法
ノルレボで緊急避妊に成功したら「消退出血」があります。
ピルによって引き起こされた生理のことで、子宮の内膜が剥がれ落ちて、血液となって体外へ排出されることを指します。これが起これば避妊に成功したと言っていいでしょう。
しかし、ノルレボ錠を服用してもすぐに消退出血があるとは限りません。
本来の生理が近い時に服用すれば、3日くらいで消退出血が起こります。
前回の生理から何日も経ってないという場合は3週間ほど後の出血となります。
服用から3週間経っても消退出血が見られない場合は、妊娠検査薬などを使ってチェックをするか近くの婦人科を受診しましょう。
ノルレボ服用後の性交渉について
ノルレボ錠を服用した後すぐに性交渉を行った場合、避妊に失敗することが考えられます。
必ず消退出血を待ち、その間は性行為を控えるか、コンドームなど他の避妊法を使うようにしてください。
ノルレボ服用後同じ生理周期内に再度避妊に失敗した場合、もう一度ノルレボ服用したケースがあるため服用することは可能ですが、再度服用した場合の妊娠阻止率に関してははっきりとしたデータが存在していません。
ノルレボ服用後、低用量ピルを飲み始めるタイミングは?
ケースによって医師の指示が変わると思われますが、消退出血と思われる、ある程度の量の出血があってから低用量ピル(アフターピルでない普通のピル)服用を開始するケースが多いです。
ただ、時期によって飲み始めていいタイミングは少し異なります。
ノルレボ服用から1週間以内に消退出血があった場合、その次の自然な生理が起きた日から低用量ピルを飲み始めてください。
ノルレボ服用後、1週間以上を経てから消退出血があった場合、その日から低用量ピルを飲み始めることができます。
ノルレボ服用後は、体内のホルモン周期が崩れていることが考えられますので、医師の指示を守って服用を開始してください。
低用量ピル服用後1~2週間は性交渉をしないか、他の避妊法を併用してください。
ノルレボ錠はどこで入手できる?
国内では、医療機関にて医師による処方が必要です。医師による診断・処方を伴わないインターネット販売などは認められておりません。
婦人科、レディースクリニックなどで処方されることが多いお薬ですが、ノルレボ錠の処方は、診察代などを入れると15,000~20,000円程になります。
ノルレボ錠のジェネリックレボノルゲストレル錠1.5mg「F」が承認
アフターピルのジェネリック医薬品が国内で初めて承認されました。
これによりアフターピルが約1万円程度で処方してもらえるようになりました。
アフターピルを処方してもらう際には、アフターピルのジェネリックがないかどうか医師に確認してみてください。
ノルレボ錠で避妊に失敗する要因と対策
ノルレボ錠の効果は、「行為からの時間」に依存します。行為から服用までの時間が早めれば早いほど、その効果が高いことが報告されています。「できるだけ早い時点で服用する」というのが最も重要です。
- ノルレボ錠を服用しても吸収できないケース
ノルレボ錠服用後2時間以内に嘔吐したり激しい下痢を起こしたりした場合がこれに該当します。ノルレボの成分が十分に吸収されていない可能性があるからです。この場合、すぐに処方元の医療機関に連絡して指示を仰いでください。また、アルコールの同時接種嘔吐のリスクを高めるという観点から控えておいた方がよいでしょう。 - 服用直後の性行為
ノルレボ錠の服用により排卵日が遅れることがあり、(同じ生理周期の中の)次の性交渉で妊娠してしまう恐れがあります。消退出血があるまでは性行為を控えるか、コンドーム等の他の避妊法を併用してください。 - 飲み合わせ
ノルレボ錠と飲み合わせ禁忌の薬やサプリメントを同時期に飲んだ場合、避妊に失敗することがあります。
ノルレボ錠と同時に飲んではいけないもの
薬には飲み合わせによって、作用が減退・増強したり、重篤な副作用が出るという性質があります。
それはノルレボ錠でも同じです。
ノルレボ錠には「重篤な服作用が出やすい飲み合わせ」というものはあまり報告されていません。低用量ピルを服用する際に大きな問題となる喫煙についても、リスクを勘案して記載されておりません。
しかし、飲み合わせを控えるよう報告されている「薬」「サプリメント」「食べ物」はいくつかあります。
(1)基本的に酔い止めや吐き気止め、市販の風邪薬・鎮痛解熱剤などは問題ありません。
(2)ただし、風邪薬・鎮痛解熱剤のうち「アセトアミノフェン」が含まれているものは避けるようにしてください。
同時服用・摂取を控えるべき薬・サプリ・食物には以下のようなものがあります
鎮痛解熱剤「アセトアミノフェン」、向精神薬「フェノバルビタール」、抗うつ薬「三環系抗うつ薬」、「HIVプロテアーゼ阻害薬」、抗けいれん薬の一部、「非ヌクレオチド系逆転写酵素阻害剤」、「セントジョーンズワート(西洋オトギリソウ)」、バストアップサプリ、「プラセンタ」「チェストベリー」「チェストツリー」「ビタミンC」「グレープフルーツ」「大豆イソフラボン」などです。
これがすべてではありませんので、このほかにも血圧降下剤など、特別の病気を持っていて薬を服用している方は、事前に処方医師に相談してください。
ビタミンCについてだけ説明しておきます。
ビタミンCは、1,000㎎以上大量摂取しない限り問題はありません。
普通の食事で採る分には問題ないかと思います。
ただ、サプリメントを大量に採るなど(ビタミンCはサプリにかなり高用量で含まれています)は避けてください。
まとめ
ノルレボ錠は、現在国内で最もスタンダードな緊急避妊法です。
- できる限り早く服用することが何よりも重要です。
- 排卵を抑えることで避妊効果を発揮します。
- 避妊に成功したかどうかは「消退出血(生理)が、服用後2日~3週間のうちに来ることで判断します。妊娠検査薬によるチェックも行いましょう。
- 次回以降安心して避妊できるように、低用量ピルの服用も検討すること。
女性の性の悩みや、ピルについて詳しい。通称ピル先輩。
相談事には優しくのってくれ、時には厳しいことも言ってくれるため
周りの女性からの信頼が厚い。