「不快な広告」と「愛される広告」の決定的な差

「伊勢半の顔採用」が炎上しなかった理由

化粧品メーカー・伊勢半の「顔採用」というキャンペーン企画が炎上しなかった理由とは?(写真:伊勢半)

2010年代前半、広告業界を激震させたのが「ステマ」問題である。ステマとは実際は広告であるにもかかわらず、それを明示せず記事やブログを出してしまう行為である。当時は「まぁ、いいだろう」的な感覚でやっていたが、さすがに横行しすぎた感はある。

当時の一部メディアは、それほど罪悪感を持つことなくステマ記事を作り、ポータルサイトに平然と配信をしていた。しかし、某大手サイトのステマが発覚後、日本最大のポータルサイトであるヤフーが同サイトの記事を配信停止。結果、各メディアが「●●がヤフーとの契約を打ち切られた! これはマズい!」と一気にステマ記事の排除に動いた。

なぜ「ステマ」はご法度になったのか?

当時は、企業が「ネットでバズりたい」としきりに言っていた時代だ。SNSやホームページで面白い企画を作るより、人気メディアに制作してもらった記事がヤフーなどに配信されるほうが効率的だと考えていた。

だが、ネット民は「ステマ疑惑」を解明するのが大好きだ。最近も映画『アナと雪の女王2』のステマが特定された。さすがに今はどの企業もリスクを知っているし、広告代理店でもコンプライアンス意識の高まりとともに「ステマはご法度」という意識が定着している。

先日、私はとある生活雑貨メーカーのPRの仕事にプランナーとして参加した。その内容は、発汗効果がある入浴剤を大量に入れた銭湯にある芸人と25人の裸の男性が一緒に入り、その効果を確認し合うというもの。クライアントからは「サウナ好きでSNSのフォロワーが多い“インフルエンサー”的男性を20人呼んでほしい。5人は当社のツイッターIDで募集をします」というオーダーを受けていた。

久々にこの手の仕事をしたが、代理店とクライアントとの打ち合わせで「当日イベントに来る皆さんには“仕事としてやっている”とか【PR】などの表記をつけるよう伝えます」と言ったら「当たり前じゃないですか」という空気だった。「むしろそうしてもらわなくては困ります」という声もあった。10年前に比べて、企業もステマ扱いされることに対しては慎重になっている。

こうした空気が生まれたきっかけは、ステマのデメリットだけでなく、「広告だって面白ければ読まれるし、人の心を打つし、拡散するもの」という事実が明白になったからだろう。それを体現するのがライターのヨッピー氏である。ヨッピー氏は広告であることを堂々と明言するスタイルで記事を執筆している。

次ページ広告だからこそ面白い記事を目指す
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
  • 実践!伝わる英語トレーニング
  • ぐんぐん伸びる子は何が違うのか?
  • 今見るべきネット配信番組
  • 就職四季報プラスワン
トレンドライブラリーAD
  • コメント
  • facebook
3

コメント投稿に関する規則(ガイドライン)を遵守し、内容に責任をもってご投稿ください。

ログインしてコメントを書く(400文字以内)
  • 午後の牧神83220cd73851
    これは逃げですね。
    広告業にドップリと使っているから、ステマに対して怯んだということですね。

    > ステマのことを書こうかと思ったものの、最近、広告業界に再び深く入り始めた自分としては、こうした前向きな話を書いてみたくなった。
    up15
    down6
    2020/2/13 06:03
  • b31fc2e9370d
    ただ”ステマ”って最近言ってるだけの話で、以前からサブリミナル効果で問題視したCM、テレビ番組があったし。
    広い範囲で言えばドラマでスポンサーとしてついている会社の製品を使ったり、制作会社の親会社の製品を必要もないのに、ドラマで使ったりとか幾らでもネタはあると思うし、昨日今日の話でもないわな。
    up7
    down1
    2020/2/13 09:45
  • AJRAbdebf3631e11
    「広告だって面白ければ読まれるし、人の心を打つし、拡散するもの」という事実が明白になったからだろう。

    電通が赤字になったというニュースを見た。
    筆者の言う、そういう時代は終焉を迎えました。
    up1
    down15
    2020/2/13 09:18
トレンドウォッチAD
背水の陣で臨む手数料ゼロ<br>ネット証券5社の曲がり角

昨年10月末、SBIホールディングスの北尾社長が手数料をゼロにすると爆弾発言。以来、ネット証券は「無料化発表合戦」の様相となりました。大幅な収益減に立ち向かう秘策はあるのか。SBI、楽天、松井、auカブコム、マネックスの首脳を直撃しました。