近藤氏「抗がん剤は効かない」への反論II-⑥簡単には死ななくなったからPFSを導入 | がん治療の虚実
2011-01-28 12:46:44
テーマ:近藤誠氏への反論
文芸春秋2月号立花隆氏との対談への反論の続きです。
近藤誠氏は薬の認可の指標としてOS(全生存期間)はごまかしにくいが、最近代わりにPFS(無増悪生存期間)での認可がされてきていることを問題としている。これは医師の主観で結構左右されるのでいいデータを作り上げやすいという趣旨の発言をしている。
ベクティビックスのPFSが(最初に)投与群と非投与群で曲線が離れていて非投与群で前倒しされて検査されているから早く腫瘍増大を感知、つまりPFSの曲線が下がる。よって実際に厳密に検査間隔を守れば両群間の曲線の有意差がなくなるはずだと主張している。
しかしこれは前回ブログまでに言及したように、元の臨床試験がベクティビックス非投与群でも腫瘍増大が確認されたらベクティビックス投与が可能と患者さんも担当医もわかっているのが前提の試験で、実際に7割以上の患者さんが後治療で投与されていることを近藤誠氏は気づいていないのか(まさか!)、わざと隠蔽して持論を展開しているのです。
(しかしその後の文章でも「PFSの問題として増悪を抑えているのになぜOSがよくならないのかがわからない、寿命が延びないのは矛盾している」とまで書いているので本当に後治療ではベクティビックス投与が許容されているクロスオーバー試験ということに気づいていないのであろうか?)
試験に参加している医師、患者さんも症状悪化や腫瘍マーカー増大などの徴候があれば決められた範囲で検査を前倒ししたくなる理由もわかるというものでしょう(この部分は推測だが)。
そもそも抗がん剤による延命効果が発展してなければ、PFSを導入する意味がないのだ。
大腸癌の場合でも「化学療法が効いて乳癌と同じでなかなか亡くならない」という承認会議事録での発言があるようにOSでは時間がかかりすぎるようになっているからPFSが導入された。医学会では治療の発展に疑問の余地がない。
それに対しても近藤誠氏は「おそらく錯覚です。多数の臨床試験を積み重ねても結局証明されていない。長生きしているように見えるのは画像検査が発展して小さい転移が見つかるようになったため長生きしているように見えるだけ」とか単なる本人の意見だけで押し通しています(それについての反論はすでに当ブログで行っています)。
近藤誠氏の「抗がん剤は効かない」に対する反論まとめ<前編>
近藤誠氏の「抗がん剤は効かない」に対する反論II-①コメントへの回答
近藤誠氏のような専門家の意見はエビデンスレベルとしてはレベルVIで最も低いのに(これを書いている自分も同様であるが)、レベルI, IIクラスのメタ解析、臨床試験を怪しいと否定する。
科学的根拠についての超初心者向け解説⑤-1エビデンスレベルとは
だからこそ多くの専門家は相手にもしないのです。みな自分の患者さんたちを治療してきて実感している。発展著しく患者さんたちからのニーズは増える一方だから時間を取って反論する暇なんかないのだ。