日本の統計学史 落語で楽しく

文化往来
2020/2/11 2:00

幕末から明治にかけて日本に近代的な統計学が紹介され、発展していった歴史を、落語の演目に仕立てようという珍しい試みが進んでいる。統計学者、作家、落語家が手を携えて話の筋を練り、1月末にネタおろしをした。福沢諭吉や大隈重信、森鴎外ら歴史上の偉人がきら星のごとく登場し、統計学の導入が近代国家建設の一大事だったことが分かる。

新作の「統計早慶戦」をネタおろしする三遊亭円福(1月31日、東京・新宿)

新作の「統計早慶戦」をネタおろしする三遊亭円福(1月31日、東京・新宿)

「一回の表、慶応義塾の攻撃は……福沢諭吉、スタチスチック(統計)に『政表』の訳を付ける……」「五回の裏、早稲田の攻撃は……大隈重信、統計院院長に自ら就任する……」

東京・新宿の高層ビル街の一角。落語家の三遊亭円福が野球の場内アナウンスの声色をコミカルにまねると、観客から大きな笑いが起きた。

ネタおろしした新作の題名は「統計早慶戦」。慶応大と早稲田大、それぞれの創立者として知られる福沢、大隈が、統計という概念を西欧から紹介したり、政府機関に専門部局を設立したりするなど、統計学の歴史の中でも主役級の働きをしたいきさつを、野球の実況中継の体裁で語っていく。「政表」「知国」「綜計」など様々だった表記のうち「統計」を定着させるきっかけとなった作家・軍医の森鴎外の論争も「統計拳闘エキシビションマッチ」と題し、ユーモアを交えて紹介した。

統計学史を落語で紹介するアイデアは「統計学の日本史」(東京大学出版会)などの著作がある宮川公男・麗沢大名誉教授、作家の小田豊二氏らが発案した。国の統計で不正な調査の実態が明らかになり不信感が広がる中、「先人たちが新しい国づくりに欠かせない土台として統計を捉えていた歴史を改めて知ってほしい」(宮川名誉教授)という。演目自体は完成途上で、「これからもっと磨いて、若い人たちにも興味を持ってもらえる話に育てられれば」(円福)と期待する。

(郷原信之)

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