日本の「樽生ビール」時代遅れになりかねない訳

世界のビール会社は次々と樽を変えている

欧米では、イノベーションによって樽生ビールの流通に大きな変化が生まれています(写真:kai/PIXTA)

「樽生」というのは何ともいい響きで、仕事帰りに飲食店で飲む生ビールは何にも代えがたいものです。全国各地にクラフトビールの樽生専門店も増えていて、大手の生ビールだけでなく、さまざまなタイプのものを飲むことができるようになってきました。

さて、そんな樽生の世界におけるイノベーションによって、樽生ビールの流通が大きく変わろうとしています。その“主役”が「One way keg(ワンウェイケグ)」と呼ばれる樽容器で、これがビール業界のゲームチェンジャーになる可能性を秘めています。

ワンウェイケグを使うメリット

従来、ビールはステンレス製の容器に詰められて飲食店に運ばれ、使い終わるとメーカーに返して再び利用されます。対してワンウェイケグはリサイクル可能なPET素材などで作られており、ワンウェイという名の通り、メーカー側に返す必要はありません。すでに欧米では主流になりつつあり、キーケグ、ユニケグ、ペテイナー、ドリウムなど専門メーカーも出てきています。

ワンウェイケグを使うメリットはいくつもあります。1つは、ステンレス樽と違って使用後の回収・返送作業が発生しないため、物流コストを削減できること。再利用しないため、洗浄や管理コスト削減にもつながります。軽量かつコンパクトで積載効率がよく、出荷後回収しなくても済むことから国内出荷のみならず、海外輸出にも適しています。

ワンウェイケグの1つ、キーケグ(写真:筆者提供)

また、新鮮さを保持する能力も向上しており、ビールサーバー接続後、1カ月という長期にわたって品質上問題がないとしているものもあります。賞味期限切れや劣化による廃棄の問題もかなり軽減されるわけです。

こうしたメリットを生かし、欧米の新興クラフトブルワリーは積極的にワンウェイケグを採用し、大きな成果を生み出しています。例えば、スコットランドのブリュードッグ、オランダのデ・モーレン、デンマークのミッケラーなどは国内外問わずキーケグを採用しており、毎年すさまじい成長を見せています。

物流費や労務コストを削減し、その浮いた分をブランド体験促進のための直営飲食店出店や営業スタッフの増員、マーケティング予算に充てているのです。容器におけるイノベーションが物流を含む企業の活動を変えたわけです。

次ページ世界の大手も独自規格のワンウェイケグを開発
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  • といざヤす9fb97ee2a27b
    環境問題として、少々意外です。

    海外事情通の皆さんの中には「欧米先進国社会は『えころじ~』していますよ」といったことを喧伝する人が時々いらっしゃいますが、ワンウェイのプラのビール樽って、環境負荷としてよろしくないですね。
    リサイクル可能な素材を使うといっても、リユースはしないわけですから、完全にエクスキューズです。ペットボトルは化繊にして再利用できますが、ペットを化繊に作り替えるにあたっては、非常にエネルギーと手間を必要とします。

    グレタちゃんが「リユースもできないような容れ物を使うなんて、ワタシはオトナたちを許しません」と言えば、カンタンに廃止になりそうな気もします。
    そういった複眼の視点でもう少し掘り下げないと、記事としては物足りないですね。


    up23
    down1
    2020/2/13 06:17
  • Wittmann131931fa29f7
    これって要するに大きなペットボトルだよね。
    欧米の人ってプラのフォークとかストローとか小さいとかは気にすんのに、ペットボトルはOKなのかね?
    リサイクルすればOKなら、プラごみもそうだよね?
    その辺が矛盾。
    up8
    down0
    2020/2/13 08:11
  • 安吾a0bef95dddf4
    無理でしょ、取り扱いについて啓蒙しなければ、事故につながる可能性があるんですよね。
    居酒屋さんに「啓蒙」して、100%安全を担保できますか? 客としても、怖くて入れません!
    up5
    down0
    2020/2/13 06:54
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