【CTO・エンジニアマネージャー向け】成長フェーズ別エンジニア組織課題と取り組み事例まとめ

Findyの石川(@HRBizDev1)と申します。

2019年3月にFindyへジョインし、昨年まではFindy Freelanceの立ち上げ、今年からは先日、事前登録を開始したFindy Teamsの事業開発を担当しています。
(前職ではエムスリーグループの企業で医療機関の採用支援や新規事業を担当していました)

Findy Teamsではβ版リリースに向けて、上場企業から創業初期のスタートアップまで、様々なフェーズの企業数十社へヒアリングを進めている段階ですが、その過程でエンジニア組織において発生する組織課題は事業成長フェーズによって、異なることが段々と見えてきました。

そこで、今回はヒアリングを通じて見えてきた課題と取り組み事例をまとめてみました。
エンジニア組織運営の参考となりますと幸いです。

成長フェーズ別/エンジニア組織課題と取り組みまとめ(クリックで拡大)

はじめに

今回は企業の成長フェーズを5段階に分け、フェーズごとの組織課題を「採用」「育成」「配置」「評価」という4つの軸で整理しています。

概ねどのフェーズにおいても「採用」は常に課題の一つに挙げられますが、「育成」や「配置」「評価」は課題が顕在化するタイミングが異なってくるようです。

加えて、同じ組織課題であっても、課題内容はフェーズによって異なってきますので、現在のフェーズ+次のフェーズをイメージしていただきながら、ご覧いただければと思います。

(『今回のケースに書いてないけど、こういう課題もあるよね』というご意見お待ちしています!)

また、「採用」については弊社代表の山田(@yuichiro826)や末本(@sueHRpro)が以前に記事にしていますので、こちらも併せてご覧ください。

【エンジニア採用版】スタートアップの経営者・人事向け「成長フェーズ別の取り組むべき採用課題まとめ」

【エンジニア採用担当者向け】エンジニア採用を成功させる7つのステップ 〜100社以上の採用課題をまとめました〜

創業期

まず、創業期です。

創業期は、プロダクトのリリースおよび、プロダクトマーケットフィット(PMF)の検証を可能な限り早く実行することが大切な時期です。何よりも開発スピードが重要になってきます。私がFindyに入社したのは、この時期でした。

創業期のエンジニア組織における課題

エンジニア組織としては、CEOやCTOからの縁故で1-2名の正社員というケースが多い為、人となりやスキル面でギャップは少なく、エンジニア組織としての問題は発生しづらい状況にあります。

唯一、課題になるのは「採用」です。

開発スピードを上げていきたいものの、慢性的に人手が足りない状況になりがちです。また、採用競争力という観点からも正社員採用は難しいと感じておられる企業が多いようです。

対策として各社共通しているのは、社外人材の活用となります。

業務委託でフリーランスや副業人材の採用を行って、足りないリソースを補いながら開発を進め、検証を進めています。

弊社も創業期はCTO佐藤とエンジニアマネージャーの大原以外はフリーランスや副業メンバーで開発を行っていました。

Findy Freelanceにてフリーランス・副業エンジニアの紹介を行っておりますので、同じような課題を抱えている企業はお気軽にご相談ください。

※創業期のエンジニア組織課題まとめ

急成長期

次に急成長期です。全体の従業員数も10名を超え、初期スタートアップからの脱皮を目指すタイミングです。

PMFが見えてきて、事業成長に向けた投資の時期になります。この時期の企業あたりから「採用」の他に「育成」に対する課題を耳にする機会が増えてきます。

では、具体的にどのような課題を感じる企業が多いのでしょうか。

急成長期のエンジニア組織における課題

採用

採用は引き続き、即戦力クラスの人材を求めています。この時期は、ユーザーニーズをふまえたスピーディーな新機能追加や機能改善、ユーザー増に伴うインフラ環境整備といった今まで着手できていなかった領域へ手を伸ばすことになる為、創業期と同様にリソースが足りないという状況になりがちです。

ヒアリングを進める中では、CEOやEMを中心にリファラル採用を中心に据えつつも、フリーランスや副業人材のほか、採用媒体や人材紹介を活用するなどして、採用負荷が過度に増大しないようバランスを取るケースが見受けられました。

育成

採用は進めつつも、各ポジションに複数のエンジニアがいるという状況ではない為、CTOとしては個人依存の状態を如何に脱却するかというのが、この時期の悩みどころです。

また、採用媒体や人材紹介など、リファラル以外の経路からの採用が進み始め、バックグラウンドが異なるメンバーが徐々に増えてくる時期でもあります。その為、開発における考え方や方針において『今までは言わなくても伝わっていたのに・・・』とギャップが生まれやすくなることが懸念されます。

対策としては、開発方針などを言語化した社内ドキュメントの整備や、CEOによる1on1を開始するなどして、上記リスクを逓減する取り組みが多く見受けられます。

日本CTO協会が発表したDXCriteria内のチーム評価項目内にも同様の記載がありますね。

次のフェーズを見据えて、組織周りの改善をお考えならFindy Teamsへご登録ください。

※急成長期のエンジニア組織課題まとめ

安定成長期

この時期までくると、目先のリソース補填よりも、将来に向けた基盤づくりに注力される企業が増えてきます。

事業的にも数年以内の上場を見据えるようになり、エンジニア組織のみならず、会社組織としての整備が必要になってくる時期です。

安定成長期のエンジニア組織における課題

採用

これまでは手を動かせる即戦力が採用の中心でしたが、ここからミドルマネジメントとテックリード層の採用活動にもリソースを割くようになります。

このあたりの人材は、企業間での採用競争が激しい為、自社の認知度を高める為に積極的な対外情報発信(テックブログやSNSでの情報発信、外部イベント登壇等)に取り組む企業が増えてくる印象があります。

また、山田の記事のとおり、外部からの採用が増えることに比例して、既存スタッフのデモチが起こりがちなので、そうならないように配慮する必要も出てきます。

育成

前述の採用とリンクしますが、育成において起こりがちな課題はとしては2つが挙げられます。

  • 採用増による全体のスキル水準低下
  • マネジメント層で発生する目線のずれ

全体のスキル水準底上げについてはテックリード層を外部から採用するほか、内部のスタッフから登用する手段もあります。将来的に会社を牽引して欲しい人材を定義し、育成基準を定めるのが、この時期あたりから着手することです。

企業によっては、育成対象を数名決め、それらのエンジニアをCTO直下にするなどして、集中的に育成している企業ケースがありました。

また、マネジメント層が増えることに伴い、マネジメント層間での育成に対する目線のズレが起きやすくなります。前述の育成基準を定め、会社全体の方針を策定するほか、マネジメント層での定期的な目線合わせの場を設けたり、CTOが社内に対する発信頻度を増やすことでズレが起きにくい風土づくりを試みているケースが多く見受けられました。

配置

いよいよ、配置に関する課題が出てきます。この規模のCTOやVPoEの方々が口を揃えて仰るのは『自分だけでは、組織の細部まで見きれない』ということです。今までは、忙しいながらも、一人ひとりのエンジニアと、ある程度密にコミュニケーションを取れていたが、この規模になると難しくなってきたと感じた経験がある方も多いのではないでしょうか。

この時期には「採用」で書いたとおり、ミドルマネジメント層を採用することに加え、エンジニア組織の編成を見直す時期でもあるようです。今までエンジニア組織として一括りだったところを複数のチーム単位に分割し、チームごとにリーダーを配置することで、統制を図っています(分割する際の軸は様々ですが、概ねプロダクト毎か機能毎に分けることが多いようです)。

また、その際のチーム人数は、5-12名を一つの単位としています。

この点もDXCriteriaで同様の記載があります。

※安定成長期のエンジニア組織課題まとめ

変革期

社員数が50人を超え、安定的な成長基盤を構築できた次は、非連続な成長を目指す時期です。新規事業の立ち上げや、グローバル展開など、次の成長ドライバーを作るために組織としても大きな変化が起こりやすくなります。大きな変化の時期に発生する組織課題としては、どのようなものがあるのでしょうか。

変革期のエンジニア組織における課題

採用

この時期からは、これまでより更に高度な専門人材や、ビジネスサイドの理解が深いエンジニアの採用が課題になってきます。エンジニアリングスキルだけではなく、より経営・事業に近い部分に関わっていくプロダクトマネージャー(PdM)経験のある人材や、Vice President of Engineering(VPoE)、情報セキュリティ責任者(CISO)といった高度な役割を担うポジションのニーズが高まってきます。

ただ、これらの人材の市場価値は高く、採用は容易ではありません。

このあたりの採用が上手くいっている企業の特徴としては、採用ブランドが構築されている点が挙げられます。一部の人材が発信しているのではなく、組織全体で各人がそれぞれの視点で情報を発信しながらも、コアメッセージが統一されている企業ほど採用ブランドが構築され、外部の優秀な人材採用を推進するポイントになっています。

また、長期的な成長という観点では、新卒エンジニアの採用に取り組む企業が増える時期でもあります。前述のとおり必要な人材の採用難易度は高い為、『自社に必要な人材は自社で育成しよう、その為にポテンシャルのある人材を新卒で採用しよう』と考える企業が増えてきます。連続した成長を実現している企業は、社外からの採用と内部育成のバランスを上手くコントロールされている印象です。

育成

この規模になると、これまでよりも更に多様な価値観を備えた組織になっています。多様性は強みである一方、全体のバランスを保つことが難しくなる側面もあります。このフェーズの企業からは『エンジニア毎に求めるキャリアパスが異なり、会社に対して求めるもののズレが大きくなってくる』という声を多く聞くこととなりました。

取り組みとして見られるのは、これまでの全社一律のキャリアパスではなく、エンジニア組織としてのキャリアパスと、それに合わせた育成制度の設計です。

また、育成制度のほかに、現場のエンジニア自らが社内勉強会を企画・開催し、社内におけるロールモデルとなるべく活動するケースも少なくありません。

配置

配置において課題となるのは、既存事業の成長と新規事業への投資のバランス最適化です。事業部をまたいだエンジニア間の繋がりが希薄化しやすい為、既存事業を基盤としつつ、新規事業へ必要な投資を実現するのが全社的な方針でありながら、事業部間でのせめぎ合いが起こりやすいようです。

対策として見られたのは、事業部間の配置MTGの定期開催とスキルマップの作成・運用です。定期的にマネジメント層のエンジニア同士で全社的な目標を実現する為に最適な配置は何か、時間をかけてディスカッションしています。1時間で終わるものではなく、1日単位、あるいは週末に合宿形式で議論を交わしている企業もありました。

また、配置を検討する際には「誰が何を得意か」「誰が何をやりたいと思っているか」という情報が必要になってくる為、星取表のような形でスキルマップを作成するケースも見受けられます。

弊社では元々、エンジニア向けにスキル偏差値というサービスを提供しており、このあたりの仕組みもFindy Teamsへ展開していければと考えております。

評価

これまでのフェーズは会社全体としての評価制度をトライアルで開始し、評価制度がフィットするかを検証する段階の企業が多いのですが、変革期に入ると評価制度を本格運用をした後の課題が発生します。

特に評価と報酬が連動しているような制度の場合、全社的な評価制度に対する納得感の薄さと、評価に伴う報酬起因での会社に対する帰属意識の低下が見受けられます。

ビジネスサイド、例えば営業職であれば、受注件数や売上など、期初に立てた目標と実績との差分が数値で測りやすいです。

しかしながら、エンジニアの場合は、1週間や2週間単位でやるべきことが変わることは当然であり、そもそもの目標が立てづらい、且つ開発した機能の事業成長への貢献度が見えづらいことが少なくない為、評価制度の運用が難しいという実情があるようです。

営業力の強い組織であればあるほど、営業力で数字が伸びたのか、機能改善によって数字が伸びたのか分からないという声がありました。

その為、全社的な評価制度とエンジニア向けの評価制度を分けて運用することで、前述の課題を解消しようと取り組むケースが多いです。報酬制度も同様ですね。

具体的に何を評価するのかという点については、「事業成長にコミットしてほしい」「納期を守ってほしい」など企業の求める要件に合わせて、各社設計しています。

例えば、VOYAGE GROUP様のようにエンジニアの技術力評価を継続して実現されている企業もありますね。

評価周りでお困りであれば、Findy Teamsでお力になれるかもしれません。

※変革期のエンジニア組織課題まとめ

再成長期

変革を実行できた企業は、再度成長期に突入します。このタイミングでは変革期にコアメンバーが成長したおかげで「事業の多角化・複数運営」を実現できている企業が多いのではないでしょうか。また、M&Aによる統合など、より大きな単位での組織課題が発生しやすくもなります。

再成長期に差し掛かる場合の課題を見てみましょう。

再成長期における組織課題

採用

事業責任者の採用が重要な課題になります。事業全体のP/Lを担うエンジニア出身の事業責任者・・・非常に貴重です。また、複数の事業を運営する場合、各事業だけではなく、会社全体の組織や技術基盤を担う部門の存在や、R&D部門の立ち上げなども必要になってきます。

引き続き、外部からの人材採用と内部の育成を進める点は、これまでと変わりません。採用競争力として優位に立ちやすいポジションである為、応募が少なくて困っているケースは多くありません。ターゲットを絞って必要な人材を採用する方向へシフトする為、状況によっては他企業を買収し、会社ごと優秀な人材を獲得するような場合もあります。

育成

育成においては、部門別の育成制度構築や、M&Aに伴う育成基準や開発文化のすり合わせ、統合が課題になります。

育成制度では、特定領域のスペシャリスト人材向けといった、エンジニアという職種の中でも更に細分化された形での制度設計が求められます。Yahoo!JAPAN様の黒帯制度などが有名ですね。

配置

変革期と同様、事業部毎の状態に合わせた人的配置が悩みどころです。最近では、ZOZO様のCTO室設置のように、組織を横串で横断的に管轄する組織を既存組織とは別で運用することで課題解決にトライしているケースがあります。

評価

エンジニア向けの評価制度を運用したものの、今度はエンジニアでひとくくりの評価制度になっており、部門別やスペシャリスト人材向けの評価制度になっていないという課題が出てきます。また、人数が増えたことで、更に定量的な評価がしづらくもなります。部門別やキャリアパス別に細分化して評価要件を定義するほか、PeerReviewや360度評価を導入することで、マネジメント層と現場の認識ギャップが起こらないように取り組むケースが多いです。

※再成長期のエンジニア組織課題まとめ

以上、いかがでしたでしょうか。

長文にも関わらず、ご覧いただき、ありがとうございました!

とはいえ、今回書いたことが全てではなく、企業毎に千差万別の状況があると思います。

Findy Teamsでは、CTO佐藤が事前登録リリースで書いたように、フェーズに応じて適切な意思決定を行う支援を実現し、エンジニアと企業の双方がハッピーなれる世界を作っていきたいと考えています。

事前登録受付中なので、登録いただけると嬉しいです!

事前登録はコチラ(無料)

 

また、組織運営に関するお悩みについてもご相談を承っておりますので、お気軽にご相談ください!

お問い合わせはコチラ

 

引き続き、Findyをよろしくお願い申し上げます。

SNSでもご購読できます。