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【社説】

新型肺炎とデマ 偏見の拡大は防がねば

 新型コロナウイルスによる肺炎の拡大は、デマも広げている。感染症への過剰反応は不安をさらに大きくし偏見や差別を生みかねない。「正しい知識で正しく怖がる」心構えを持ちたい。

 感染症はデマやうわさが出回りやすい。ウイルスは未知の存在でしかも目に見えないからだ。だが、放置すれば社会の混乱に拍車をかける。

 SNSなどインターネット環境の進展でデマも瞬時に世界を駆け回る。二〇〇二年に発生した重症急性呼吸器症候群(SARS)や〇九年の新型インフルエンザの流行時とそこが大きく違う。

 だからこそ、デマなどに惑わされないことが重要になる。

 だが、既にさまざまなデマが拡散されている。「熱とせきがあった中国人観光客が関西空港から病院に搬送され、検査前に逃げた」

 こんな情報がツイッター上に投稿された。大阪府の吉村洋文知事は「デマだ」と否定した。差別に基づくデマは許してはならない。

 感染症に対する不正確な理解は子どもたちにも影響する。中国・武漢市からチャーター機で帰国し、感染が確認された邦人を受け入れた千葉県鴨川市の病院の職員から「子どもがいじめられている」と相談があったという。

 鴨川市教育委員会が市内の小中学校で実施したアンケートでは、「コロナ(ウイルス)にかかっている」などとからかわれたケースが五件確認された。病院関係者であることを理由とするいじめは確認されなかったが、いじめや差別の拡大は心配だ。学校関係者は知識の普及と子どもたちの様子に注意を払ってほしい。

 海外では中国人への差別など反中感情が広がる。フランスではベトナム人女性が車の運転手から罵声を浴びせられたといい、アジア人にも影響が及んでいる。

 クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客が、乗客全員の検査を求めた。乗客本人や下船後の周囲の不安を思えば当然だろう。政府は乗客乗員全員の検査を検討すべきだ。

 今後は、武漢市から帰国した邦人らが健康観察期間が終わり順次社会に戻る。迎える側も安心して支えられるよう感染症への正しい知識を得たい。厚生労働省や国立感染症研究所などがホームページで提供している。厚労省は電話相談窓口も設置した。活用したい。

 感染力が弱いにもかかわらず隔離政策が続いたハンセン病の教訓を忘れたくない。

 

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