説明可能なAIとは? Googleの「Explainable AI」に触れながら解説

AIが注目されている理由のひとつであるディープラーニングには、モデルがブラックボックスになるという問題がある。そこで、医療業界や金融業界を筆頭に、「説明可能なAI」への注目が集まっている。今回は、そもそも説明可能なAIとは何か?という部分から、最近Googleが発表した説明可能なAIを実現するためのツールの長短まで、株式会社HACARUSのデータサイエンティストである宇佐見一平氏に解説してもらった。

こんにちは、HACARUSデータサイエンティストの宇佐見です。

「説明可能なAI」という言葉はご存知でしょうか。

説明可能なAIとは、米国のDARPAの研究が発端の概念で、モデルの予測が人間に理解可能であり、十分信頼に足る技術、またはそれに関する研究のことを指します。

たとえば医療業界のように、診断の理由を患者さんに説明しなけらばならない場合には、説明可能で解釈性の高いモデルが必要です。このような業界にもAIの導入が進み始めている近年、説明可能なAIの必要性も増してきています。

そんななか、2019年11月21日にGoogleも「Explainable AI(外部サイト)」というツールを発表しました。そこで、本稿ではそもそも説明可能なAIとは何なのかを概観した後、GoogleのExplainable AIに触れながら、Googleがどのように説明可能なAIを実現しようとしているのか見ていきたいと思います。

説明可能なAIとは

近年AIが注目されるようになった要因の一ひとつとして、ディープラーニングの隆盛が挙げられます。

ただし、ディープラーニングは非常に強力な一方、モデルがブラックボックスになってしまうという問題点があります。つまり、AIの予測結果がどのような計算過程を経て得られたものなのかわからないため、精度が高かったとしても、その予測の根拠がわからなくなってしまうのです。

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とくにモデルのブラックボックス化が問題視される例としては、医療業界や金融業界などが挙げられます。医療業界では「なぜAIがそのような診断を下したのか」を患者さんに説明できなければ、診断にAIを採用することは困難です。また、AIが間違った判定を下した場合に、なぜ間違ったのかを検証することができません。

このような背景があり、説明可能なAIに注目が集まっています。実際、権威あるデータマイニングの学会として有名なKDDの昨年度の発表のひとつに、説明可能なAIをテーマにしたものがありました。また、GoogleのExplainable AIのみならず、富士通や日立も説明可能なAIに関するサービスを発表しています。

説明可能なAIを実現するための手法もさまざまなものが開発されています。たとえば入力の属性に注目した「LIME」「SHAP」「Integrated Gradient」、モデルが注目する概念をテストするような「TCAV」、個々の学習データの有無や、その摂動がモデルとその予測結果にどのように影響を与えるかを計るための「Influence Functions」などが挙げられます。

GoogleのExplainable AIでは「Feature Attribution」という値に注目して説明可能なAIを実現しようとしています。Feature Attributionsの詳細については後述します。

Googleが発表したツール「Explainable AI」

2019年11月21日にGoogleが発表したExplainable AI。これはGoogleが提供している「AutoML Tables」と「Cloud AI Platform」上の機械学習モデルに対して利用できるものです。

Googleの「Explainable AI」。サイトより編集部キャプチャ

Googleによれば、Explainable AIを用いると、どの特徴がモデルの予測結果にどれだけ貢献しているかを知ることができます。

使用する前には「Google Cloud Platform」のプロジェクトの作成とAPIの有効化、学習済みモデルを保存する「Google Cloud Strage」の準備が必要ですが、一度準備ができれば基本的にはどのようなモデルに対しても予測結果を評価することができるようになります。また、使用すること自体に特別な料金は発生しません。ただし、Cloud AI Platformの使用時間が増加することに伴って全体の使用料金が増加することはあります。

また、予測結果を評価することで、以下のように役立てることができます。

  • モデルのデバッグ
    モデルが明らかに異常な挙動をしているとき、たとえば不自然に精度が高すぎる場合を考えましょう。Explainable AIを用いてモデルが注目している部分を可視化すると、テスト対象がアノテーションされたような画像に対して予測していたので精度が高かった、というようなミスを発見することができます。

  • モデルの最適化
    モデルがどの特徴量を重視しているかを特定して、重要視されていない特徴を除くことで、予測精度を挙げられる可能性があります。

次章以降で、実際にGoogleのExplainable AIでモデルの予測結果評価に用いられているFeature Attributionについて説明していきたいと思います。

モデルの予測結果を評価する「Feature Attribution」

GoogleのExplainable AIでは、Feature Attributionという値によってモデルの予測結果を評価します。

Feature Attributionの計算方法には「Integrated Gradients」と「Sampled Shapley」があります。Feature AttributionはSharpley値という値を上記の手法を用いて計算したものになります。Shapley値とは、ある特徴量がどれだけモデルの予測に貢献したかを示す値になります。

Integarated Gradientsはbaseline(画像であれば画素値がすべて0の画像、テキストであればすべて0のembeddingなど)から入力までの勾配を積分することで得られます。なので、ニューラルネットのような微分可能なモデルや巨大な特徴量空間を持ったモデルに対して使用することが推奨されています。

Sampled Shapleyは真のShapley値の近似値になります。Sampled Shapleyは、アンサンブルツリーのような微分できないモデルに使用することが推奨されています。GoogleのExplainable AIの機能を用いることで、これらの値を計算することができます。

それでは、実際にExplainable AIのチュートリアルを実行してFeature Attributionを見ていきましょう。

Explainable AIの実行例

GoogleのExplainable AIにはチュートリアルが用意されており、Collaboratoryの形式で配布されているので、簡単に実行することができます。チュートリアルにはテーブルデータと画像データ用があります。

まず、テーブルデータ用のチュートリアルを実行します。データセットとして、ロンドンのレンタサイクルに関するデータとアメリカ海洋大気庁の気象データが用意されており、そのうちいくつかの変数を用いて、どれくらいの時間自転車が使用されたかを予測するモデルを作成することがこのチュートリアルの目的になります。その過程で、Feature Attributionを計算します。

下図がFeature Attributionを計算した結果になります。値の正負、大小によって、ある変数がモデルの予測に寄与しているか、していないかを評価することができます。

テーブルデータに対するFeatureAttributionの計算例

続いて、画像データに対するチュートリアルを実行してみます。用意されたデータセットは5種類の花の画像で、チュートリアル内容は花の画像の分類問題になります。予測モデルを作成したのち、画像に対してFeature Attributionを計算すると、予測対象の画像にモデルの予測にもっとも貢献した画素のトップ60%を表示することができます。

下の画像がFeature Attributionを画像に重ね合わせたもので、緑色に塗られた部分がこの画像をあるクラスと分類するのに貢献したトップ60%の画素ということになります。

画像に対するFeatureAttibutionの例

Explainable AIのメリット・デメリット

ここまででチュートリアルを実行し、Feature Attributionがどのように表現されるかを見てきました。そこで、簡単に私が感じたExplainable AIの主要な長短についてまとめたいと思います。

メリット:重要な特徴量を一見して評価することができる

ここまでチュートリアルで見てきたように、モデルの予測にどの特徴量が大きく寄与しているのかを可視化できるため、直感的にどの特徴量が重要なのかを一見して判断することができます。

テーブルデータであればどの特徴量がモデルの予測に寄与するかを見ることで特徴量選択に使えるかもしれませんし、画像データであればモデルが重要視した部分を見ることで、そのモデルが本当に意味のある部分に注目しているかどうかも確認できるかもしれません。

デメリット:Feature Attributionは必ずしもモデルの計算結果を反映するものではない

Integrated GradientsもSampled Shapleyもどちらもモデルの計算結果を近似して得られるものです。

なので、基本的にブラックボックスであるDNNなどを用いると、Feature Attributionはモデルの計算結果を反映しているとは限らず、またモデルがどのようにして計算しているかまではわかりません。

つまり、たとえば画像に対してFeature Attributionを用いてモデルが重要視した部分はわかりますが、なぜそこを重要視したのか、どのような計算をして重要視したのかまではわかりません。つまり、モデルは未だブラックボックスのままであるということです。

最後に

ここまでGoogleのExplainable AIについて述べてきました。

メリット・デメリットの項において書いたように、基本的にモデルにブラックボックスであるものを用いると、計算過程は未だブラックボックスであったり、Googleがドキュメントで“Limitations of AI Explanation”として述べているようにFeature Attributionはある特徴が予測結果にどれだけ影響を及ぼすかを表すのみで、モデルのふるまいを表すものでは無かったりといった問題はあります。

それでも、簡単に計算結果を近似値で評価できるのは非常に使い勝手がいいと思います。上記の点は「問題」であるとみなすよりも、そのような「特徴」を持った機能であるとして、GoogleのExplainable AIをうまく使っていければいいのではないでしょうか。

(執筆・宇佐見一平、編集・高島圭介)

千葉県・船橋市役所で職員の問い合わせに自動応答するAIを実証へ

株式会社マインドシフトと船橋市は2月4日、市役所内の問合せ自動対応による業務効率化に向けた実証実験を開始すると発表した。

この実験では、マインドシフトが提供するAI(人工知能)チャットボットサービス「LogicalMind」によって、市役所内職員からの問合せの対応を自動化して業務効率化検証を実施する。

画像は公式サイトより

労働時間の短縮と市民サービス向上を目指す

今回の実験では、簡単な質問はチャットボットで対応し、問い合わせ対応件数と対応時間、マニュアルで確認していたノウハウをチャットボットに置き換えられた件数などを分析する。これらによって、労働時間の短縮、作業コストや時間外労働の削減、ベテラン職員のノウハウを継承、作業量平準化、そして市民サービス向上に向け、導入の必要性や妥当性を検証していく。

もともと、船橋市では市役所内職員からの問い合わせ対応に時間を割かれる部署が多数あったそうだ。さらには、担当者不在時は回答の調査に時間を要し、業務時間を圧迫したり、業務のノウハウが属人化したりする課題があったという。

なお、将来的な利用方法として、市民からの問い合わせに自動応答を医療できるかを踏まえた効果検証もする。

>>LogicalMind

AIを導入する官公庁が増えている

ここ最近、官公庁が「AIを導入した」「AIを使うことを検討中」などのニュースが増えてきた。いずれも、作業時間などを減らすことで、市民サービスをよりよくすることを狙っている。

岐阜県大垣市役所にAI搭載「案内ロボット」

大垣市役所に導入されたのは、案内ロボット「ロボコット」呼ばれるもの。大垣市役所にはロボコットが3台設置され、各設置場所に応じた案内を提供するという。

来庁者に対して担当課を案内したり、住民票や印鑑証明書などの各種申請書の書き方を説明してくれたりする。また、総合案内も可能で、日本語だけでなく英語・中国語・ポルトガル語にも対応している。

青森県庁に議事録自動作成AI

青森県庁には、会議の議事録を自動で作成するAIが導入されている。単純作業にもかかわらず、議事録の作成は非常に時間がかかる。

発表時のプレスリリースによれば、青森県では今後、内部業務の議事録作成だけでなく、ろう学校、郷土館等の教育部門での学習・理解支援や観光客対応部門での外国語翻訳支援などの県民に対するサービスや福祉の向上にも活用し、音声や言語に関わる格差の解消という行政課題を解決することを目指しているという。

データの価値を守る。AI文脈で語られるブロックチェーンによる信用創造

第三次AI(人工知能)ブームと言われて久しいが、近いタイミングでブロックチェーンも注目されるようになった。AI(人工知能)とブロックチェーンは異なった技術ではあるが、一概に無関係な技術とは言えない。現在注目を集めるこの2つの技術は、これから世界のシステムを根本的に変えうるブレイクスルーの技術になりつつある。

AI(人工知能)文脈でブロックチェーンが語られることはあまりないだろう。ブロックチェーンとAI(人工知能)合わせるとどのような価値を生まれるのだろうか。

本稿では、KPMGコンサルティングでブロックチェーンのプロジェクトに携わるシニアマネジャーの宮原 進氏にブロックチェーンとAI(人工知能)の関係性について聞いた。

ブロックチェーンとは?暗号通貨ブームを巻き起こした新たなデータ共有技術

――改めて、ブロックチェーンとはどのような技術なのでしょうか?

――宮原
「ブロックチェーンとは、暗号資産(仮想通貨)の取引を自動処理して記録する技術として2009年に誕生したデータ共有の仕組みです。

不特定多数の参加者が存在する市場において、ブロックチェーン誕生以前には、セキュリティを強化した特定のサーバーにて中央集権的に取引データを管理するほかありませんでした。ブロックチェーンの誕生で、複数のコンピュータに分散して取引処理およびデータを保存することによって、特定の管理者を不要とすることが可能となりました。

さらには取引の自動処理とデータの共有化により改ざんの難易度を上げ、取引および保存されたデータに信用を置くことで、取引相手への信用が不要となることがブロックチェーン最大の特徴です」

ブロックチェーンの革新的な点は、不特定多数のユーザーが参加して記録をシェアし監視することで、不正を防止できること。従来信用の担保が難しかった個人間の金銭取引でも利用ができるようになるところだ。

金融分野におけるブロックチェーンは以下の3つのメリットがあるという。

1.データが改ざんできないこと

ブロックチェーンは分散して記録されるうえ、その記録は暗号化されている。そのためデータを改ざんしたとしても、分散して記録されたデータと改ざんされたデータとを照合すれば不正を検出することができる。

2.中央集権を不要とすること

一元管理される取引データを扱う管理者は、信用が担保された金融機関での取り扱いしか成立しなかった。すると、特定の金融機関に集権的にデータが集まるため、独裁的なコントロールが生まれるリスクがある。

さらには中央集権の場合、システムがダウンすれば利用不可となるが、ブロックチェーンだと共有者間で同じデータを持ち寄っているため、1つのデバイスが落ちても、その他デバイスで補完できるためシステム自体はほぼ影響を受けないというのが特徴である。

3.信用創造のコストを下げること

ブロックチェーンは仕組みから取引および保存データに信用を置くことができるため、取引相手に信用を求めない。そのため、従来はコストでありリスクであった取引相手との信用創造が不要となる。


これらのメリットをもれなく享受できたのが暗号通貨をはじめとした金融分野だが、ブロックチェーンはこれからますます活用の幅が広がると考えられている。

――宮原
「ブロックチェーンは、ビットコインなどの暗号通貨で使われる技術だというイメージが先行していますが、じつはさまざまな場面で使われています。

以下の条件下であればブロックチェーンの活用の余地があるといえるでしょう。

  • 価値あるものを多数の参加者間で取引する
  • その取引に不正の余地がある
  • 取引参加者全員が分散してデータを持ち、取引やデータ自体に信用を持たせることで、参加者に信用がなくても、データそのものの価値を守ることができます。

    もともとはフィンテックとして認識されている技術でしたが、ブロックチェーンの仕組みが注目され、幅広い領域で広く活用されるようになりました」

    ブロックチェーンのメリット。データそのものに価値を持たせる

    ――それではどのような文脈でブロックチェーンが使われているのでしょう

    ――宮原
    「サプライチェーンやシェアリングエコノミー、不動産登記、コンテンツビジネスなどでもブロックチェーンは活躍します。これらの取引のなかで、ブロックチェーンはデータの品質を担保します。

    たとえば物流、生産から小売までの流路をつなぐビジネスです。流路の途中で不正が入ってしまう、または疑いの余地がある場合、最終的な商品の価値は下がってしまいます。

    確実な流路であることをブロックチェーンによって証明することで、商品の価値を保つことができ、ひいては生産者の価値を上げることにつながります。消費者にとっても、安心して商品を手に取ることができます。ブロックチェーンは、物流における商流の質を上げることに一役買っているのです」

    また、eスポーツ分野ではゲーム内に登場するトークン取引にもブロックチェーン技術が使われているという。実際の金銭ではなくても、価値が変動しうる取引に活用できるのだ。

    では、これからの時代を代表する技術である「AI(人工知能)」と「ブロックチェーン」はどのようなシナジーを生んでいくのだろうか。

    ブロックチェーンとAI(人工知能)の関係。シナジーは間違いなくある

    ――ブロックチェーンとAI(人工知能)の関連性を教えてください。

    ――宮原
    「AI(人工知能)はデータを学習してデータを処理する、アプリケーションの発展版です。一方ブロックチェーンはデータベースの発展版だと考えることができます。

    既存のシステムがルールベースで処理していたものを、AI(人工知能)はより柔軟に処理できるようになりました。

    従来のデータベースは、一箇所にデータが集まっているため、不正を防止するためにはひたすらセキュリティを強化しデータを隠すことで品質を維持していましたが、ブロックチェーン技術を活用することで、データの共有と品質維持を両立することを可能にしました」

    AI(人工知能)とブロックチェーンは技術のレイヤーが異なるため、両者がもつ特徴をそれぞれ活かしてシナジーを効かせることが可能だという。具体的にどのような相乗効果があるのだろうか。

    ――宮原
    「AI(人工知能)の文脈で言うと、学習の質を高める際に大量のデータを必要とします。

    たとえば医療データを用いてAI(人工知能)に推論させる際、医療データは個人情報保護の観点から、患者が通う医院だけに閉じていて、十分なデータ量を確保できていませんでした。

    ブロックチェーン技術を活用し患者データのセキュリティを上げることで、個人情報を除いた形で多くの症例データを確保することが可能となります。それをAI(人工知能)に学習させることができれば、学習の質も飛躍的に向上します。

    つまりデータ量を確保し、AI(人工知能)に高精度な学習をさせるプラットフォームとして、ブロックチェーンを使うことができます」

    AI(人工知能)は精度が命である。その精度を向上させるにはアルゴリズム選定のほかにも、データの質・量が重要だ。データの質・量をブロックチェーンで担保することで、新たなAI(人工知能)の可能性を生み出しそうだ。

    ブロックチェーンの未来。真価が見えた先にあるブロックチェーンの可能性

    ――ブロックチェーンのこれからについてどうお考えですか?

    ――宮原
    「一時の熱狂は冷めたと感じています。以前はブロックチェーンもバズワードとなって、特徴や利点を鑑みずに導入検討、PoCが行われてきました。ふたを開けるとブロックチェーンである必要がないようなケースも多々ありました。

    現在はブロックチェーンの真の価値が見えつつある段階なので、それにふさわしいアプローチができればと思います。IoTの発展に伴って、データの価値が高まると言われています。いわゆる従来のビッグデータ基盤だけではなく、ブロックチェーンのようなデータを分散させるアプローチも重要度が増していきます」

    ――宮原さんとしてはブロックチェーンにどのような期待を寄せていますか?

    ――宮原
    「KPMGジャパンとしてブロックチェーンのビジネスへの活用に取り組んでいます。

    たとえば、監査とコンサルティング(アドバイザリー)ではアプローチの方向が異なっており、監査はクライアントのもつ暗号資産に対する会計監査やブロックチェーンシステムに対するシステム監査をどのように行うかに着目しています。

    一方、コンサルティングでは、ブロックチェーンの技術でいかにビジネスの価値を高めることができるのかという観点に着目し、活用した際に発生するリスクについても視野に入れて取り組んでいます。

    ブロックチェーンを可能性のある技術として多角的に捉え、課題解決に活用していこうと考えています」

    1枚のイラストからアニメーションを自動生成。深層学習エンジン「DeepAnime」

    株式会社AlgoAgeは、1枚のイラストからキャラクターの顔のアニメーションを自動生成する深層学習エンジン「DeepAnime」を開発、提供を開始した。

    深層学習
    深層学習とは、機械学習の手法の1つで、ディープラーニングともいう。複数の入力値を数値計算し出力値を導出するパーセプトロンという構造が複数接続されたものをニューラルネットワークといい、ニューラルネットワークの層を増やして学習するものが通常ディープラーニングと呼ばれている。

    イラスト1枚でアニメーションの自動生成が可能

    1枚のキャラクターのイラストをDeepAnimeに入力することで、「瞬き」「話す」といった動作が加わったアニメーションを自動生成できる。

    DeepAnimeは、単にイラストからアニメーションを自動生成するだけでなく、音声入力に合わせたアニメーションを生成も可能だ。

    デモ動画がこちら。

    入力された音声にあわせてキャラクターの口が動いていることがわかる。

    誰もが手軽にアニメーションを作成できるように

    通常アニメーションを生成するためにはコマ割りにしたイラストが複数枚も必要である。

    1枚のイラストからアニメーションを製作するためのツールも存在するが、顔の部位ごとにパーツ分けする、細かく設定を決めるといった作業が必要だ。

    一方DeepAnimeは、1枚のイラストを入力すれば自動でアニメーションを生成してくれるため、これまでの複雑な工程が簡単になり、アニメーション活用へのハードルが下がるだろう。

    DeepAnimeの具体的なユースケースとしては、

    エンタメサービス

    • 任意のキャラクターイラストに好きなセリフを話させるサービス
    • 任意のイラストをアバターとして用い、コミュニケーションできるサービス

    アニメーション製作

    • 動き生成の自動化によるクリエーターの手間の軽減

    ゲーム

    • キャラクターの話す、瞬きするなどのアニメーション自動生成によるコスト削減

    などが挙げられている。

    映画やテレビのアニメ、ゲームなど、至る所でアニメーションは活用されている。DeepAnimeのような技術により製作が手軽になることで、これまで以上にアニメーション活用の場は増えるかもしれない。

    AlgoAgeのAI製品

    AlgoAgeでは、DeepAnime以外にも画像認識、画像生成や音声認識のためのAIを開発している。

    リアルタイムモーションキャプチャ技術「AlgoPose」は、モバイル端末で撮影した人の姿勢をリアルタイムに推定できる。

    AlgoPoseは入力が画像情報のみのため、深度センサーなど別の機器を用意せずに、モバイル端末のみで利用可能。KerasやTensorFlowといった端末に依存しない技術を用いて開発されているため、幅広いデバイスで導入できるという。

    株式会社トライフォートが開発した、誰でもバーチャルタレントになれる配信アプリ「GooMe」にはこの技術が活用されており、自分の顔や体の動きをバーチャルタレントに反映させることが可能。

    人の姿勢をリアルタイムで推定可能なAlgoPoseの導入例として、

    • AIトレーナーによるスポーツトレーニングサポートアプリ
    • AIによる転倒検知・異常発見などの見守りサービス

    などがある。

    DeepAnimeやAlgoPoseといった画期的な技術を開発、提供してきたAlgoAge。公式サイト上ではすでに提供開始されている2つ以外の製品の紹介も掲載されている。今後どのような製品を開発していくのかも注目だ。

    source:
    https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000040318.html
    https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000040318.html

    トヨタ自動車へPreferred Networksの援軍動き出す。世界に先駆け「人間のパートナーロボ」実現なるか

    昨年の10月15日、Preferred Networksが「全自動お片付けロボット」を発表したのを覚えているだろうか。

    そのPreferred Networksは2019年8月7日、トヨタ自動車と共同でトヨタの「生活支援ロボット Human Support Robot(以下、HSR)」をプラット フォームとして研究開発することを発表した。

    トヨタ自動車にPreferred Networksが加勢し目指すのは、市場ニーズが高まる一般的な生活環境のなかでロボッ トが自ら学習し、さまざまなタスクを遂行できるレベルのサービスロボットの早期実現だ。

    HSRを数十台規模でPFNに貸与。今後3年で両社の技術を“ミックス”

    自ら学習し、さまざまなタスクを遂行できるレベルのサービスロボット」とは要するに、身体の不自由な方や高齢の方を支援するロボットだ。それ以外にも、単純に面倒な作業などをサポート(片付けなど)してくれるロボットと想像してもらえるとわかりやすい。

    そのようなロボットを早期に実現するため、両社は手を組んだわけだ。では具体的に何をしていくのだろうか。

    まず、トヨタ自動車が開発するHSRを数十台規模でPFNに貸与し、今後3年間で両社が連携して研究開発を行う。両社が持つ技術、知的財産、研究成果すべてをシェアし、自由に活用していくことで、開発スピードの加速を図る。

    トヨタの未来創生センター長の古賀伸彦氏はこのように語る。

    ――古賀伸彦
    「トヨタは、2004年頃より『人々の生活を支 え、共生する』をコンセプトに、主に身体の不自由な方や高齢の方を支援するパートナーロボットの開発に取り組み、2012年には生活支援ロボットとしての基本的なプラットフォームを有するHSRを開発しました。

    HSRはこれまで国内外13ヶ国、49機関で研究開発に活用され、プラットフォームロボットとして高く評価していただいております。今後、よりお客様のニーズに応えるサービスロボット開発を目指すにあたり、世界トップレベルの知能化関連技術を有するPFNと、共同で研究開発を行えることを楽しみにしております」

    トヨタPFNが手を組み、世界に先駆ける

    Preferred Networks代表の西川徹氏は以下のようにコメントした。

    ――西川徹
    「PFN は2014年の創業以来、深層学習技術を応用して 自動車や産業用ロボットなどのハードウェアの知能化に取り組んでいます。

    CEATEC Japan 2018では、HSRに深層学習技術を応用し、不定形の物をつかむ/置く、動作計画を立てる、人の指示に対応するなど、全自動で部屋を片付けるロボットのデモンストレーションを行いました。

    HSRは優れたプラットフォームロボットであり、開発元のトヨタと共同開発に取り組むことで、ロボットが人の生活空間で働くために必要な機能の開発を加速させ、世界に先駆けてサービスロボットの実用化を目指します

    今回のケースのような企業間連携は、技術の化学反応を起こす。各企業がそれぞれで競い合うのも重要だが、ときには手を組むことで開発スピードを加速することもグローバル、マクロ視点でみたときは重要だ。

    西川氏の言葉とおり、世界に先駆けてサービスロボットの実用化を実現してほしい。我々の生活にあたりまえのように入り込んでいる未来を楽しみに待ちたい。

    source:https://www.preferred-networks.jp/ja/news/pr20190807

    フェイクデータが本物以上の価値を持つように。データで生まれる新たな可能性。

    データの重要性が叫ばれる中、企業内に「使えないデータ」が蓄積されていることにも注目が集まっている。

    「使えないデータ」の大半が利用価値が見出されていないダークデータだと言われているが、データ自体の有用性がわかっていても、さまざまな事情により利用が制限されているデータも存在している。

    個人情報に関連するデータが最たる例だ。

    GDPR(EU一般データ保護規則)や米カリフォルニア州の消費者プライバシー法などが施行され、企業による個人情報に関するデータの利用が困難になっている。工場の稼働率や実験結果などのデータと違い、個人情報関連のデータは流出した際のリスクが極端に大きくなってしまっているのが現状だ。

    この現状に一石を投じるため、ディープラーニングを使用し、データの価値をほとんど失わないシンセティックデータ(フェイクデータ)を作り上げるシステムを提供しているMostly AIという企業がある。

    シンセティックデータ
    アルゴリズムにより人工的に作られたデータ。テストデータセットとして機械学習モデルへの応用が進んでいる。

    Mostly AIは2019年4月23日に経済産業省の後援を受け、日本経済新聞社が主催したグローバルイベント「AI/SUM」で目玉プログラムの一つだったピッチコンテスト「World 30」において、世界中の参加企業の中からSony Awardを受賞したオーストリアのスタートアップだ。

    本記事では、シンセティックデータの専門集団であるMostly AIのアレクサンドラ・エバート氏が語るデータ活用の未来の姿をまとめた。

    規制により注目が増すシンセティックデータ

    2010年代、ディープラーニングというブレークスルーとともにAIへの注目度が一気に増した。

    さまざまな業界の業務に組み込まれるようになり、世界経済に大きな価値をもたらし始めたAIだが、同時にデータ保護という大きな懸念も世界にもたらした。

    近年、GDPRや米カリフォルニア州の消費者プライバシー法などが施行され、各国が個人情報保護に向けて動き出している中、個人情報を含むデータを活用するには、データを加工し匿名化する必要がある。

    ──アレクサンドラ
    「従来の匿名化データは、オリジナルデータの持つ構造や時間データ、他データとの相関性を破壊し、ほとんど意味のないデータに変換してしまいます。例えば、クレジットカードの利用履歴を匿名化する場合、取引内容の多くが暗号化され、意味のないデータに置き換えられます」

    上来の匿名化に使われる方法ではオリジナルデータの持つ価値を保つのは困難だ。そこでMostly AIが開発した人工知能により作り出される高性能のシンセティックデータにより匿名化しつつ価値を保つことが可能になった。

    アレクサンドラ氏は、従来の匿名化データの抱える問題は、限られた情報からユーザーを再特定できてしまう現状からきているという。

    ──アレクサンドラ
    「銀行が保有する取引データは、わずかな原型が残っているだけで再特定のリスクが極めて高くなります。また、スマートフォンのような携帯端末においては、2箇所以上の移動データが残っていれば、約半数のユーザーを特定することが可能です」

    AIによるAIのための教師データ作成

    Mostly AIはディープラーニングを活用することで、ユーザーを再特定できないようデータに改変を加えつつ、オリジナルデータの持つ時間データやデータ同士の相関性をほとんど損なわずにシンセティックデータを生成できるという。

    アレクサンドラ氏は、高度なシンセティックデータを低コストで生成可能になったことは、データ中心の現代に大きなインパクトをもたらすという。

    アレクサンドラ氏の語るインパクトは以下の通り。

    • プライバシー侵害リスクの低減
    • オープンイノベーションの促進
    • データの収益化

    プライバシー侵害リスクの低減

    アレクサンドラ氏は、データベースに保管されているオリジナルデータをシンセティックデータに置き換えることで、プライバシー侵害のリスクを大きく低減できるという。

    ──アレクサンドラ
    「オリジナルデータの持つ価値をコピーしたシンセティックデータがあれば、オリジナルデータを保管する必要はありません。現時点で用途が見えていない個人情報を含むデータを抱えているということは、目に見えない爆弾を抱えているのと同じです。リスクはあっても見返りはないようなものですから」

    ある調査では、社内に蓄積されたデータの85%は不要なデータとの結論に至っている。

    たしかに、オリジナルデータの持つ価値を残したまま、リスクを取り払うことができれば「ホンモノを上回るニセモノ」が生まれることになる。

    オープンイノベーションの加速

    アレクサンドラ氏は、オリジナルデータをシンセティックデータに置き換えることで、データ活用は一気に加速すると語る。

    ──アレクサンドラ
    「膨大なデータを蓄積している企業や公的機関などは多いですが、うまく活用できている組織はいまだに少ないままです。組織内では有用性を見出せていないデータでも、他者にとっては宝の山かもしれません」

    Alexandra Ebert

    従来、個人情報を含むデータを使ったハッカソンやコンペティションは開催が困難だったが、シンセティックデータ化し、リスクを排除したデータであれば、公開リスクは極めて低いといえる。

    また、日本では公的機関が中心となってオープンデータ化を進めているが、個人情報を含むデータの取り扱いに関してはデータ活用先進国に大きく遅れを取っている現状だ。

    現状からの脱却に、シンセティックデータが役立つことは間違いない。

    データの収益化

    そのうえ、シンセティックデータにはデータ流通市場の創出という可能性がある。
    従来、データは組織内で利用するものだったが、近年のオープンデータ化の流れと相まってシンセティックデータは新たなデータ流通市場を生み出す可能性があるとアレクサンドラ氏は語る。

    従来の匿名化データでは、ビッグデータの増加に追いつけていなかったが、Mostly AIのシンセテックデータ作成システムが普及することで、流通可能なデータは大幅に増加する。

    つまり、2020年までに20兆円を超えるといわれるデータ分析市場がさらなる拡大を見せる可能性があるということだ。

     

    ──アレクサンドラ
    「データ関連市場は今後も拡大を続けることは明らかですが、データ保全のようなリスク回避に注ぎ込まれる投資から、データの売買のような流通にかかる投資に移り変わる未来を私たちは描いています。また、データの流通によってスタートアップや既存企業の競争力が上がり、自由度の高いビジネスが生まれていくのではないかと思います」

    Mostly AIへの問い合わせはこちら

    AI搭載たこ焼きロボ&ソフトクリームロボ、3~4人分作業を自動化

    「調理ロボットサービス」を開発しているコネクテッドロボティクス株式会社は、株式会社セブン&アイ・フードシステムズと提携し、ファストフード店「ポッポ」にてたこ焼ロボット(Octo Chef)とソフトクリームロボット(レイタ)を展開する。

    ディープラーニングを活用。圧倒的省人化をもたらす

    たこ焼ロボット(Octo Chef)とソフトクリームロボット(レイタ)は、アーム型の協働ロボットに、ディープラーニング等の最新技術を搭載している。

    これにより、通常3~4名で運営するたこ焼店舗を1名で運営できるよう省人化を実現したという。

    作業がロボットに代替されることで、

    • 熱い鉄板の前での作業を削減
    • 人件費の削減

    などが結果としてでている。

    カメラで鉄板を学習し続けることにより、絶妙な焼き加減をAIで判断

    たこ焼ロボット(Octo Chef)は、生地流し込み~焼き上げ、皿への取り分けまでをロボットが行う。焼きムラの確認もこなすという。食材の仕込みとトッピングは人が行う。

    カメラで鉄板を学習し続けることにより、絶妙な焼き加減をAIで判断する。調理中もうまく調理できていない部分があればサポート、学習すればするほど賢くなり、クラウドを利用すれば全ての店舗に賢くなったAIが導入できるという。

    ソフトクリームロボット(レイタ)は、注文受注から商品提供まで一通りを代替してくれる。1個あたりの提供時間:30~40秒だ。

    ロボットと人が一緒に調理を行う臨場感、エンタメ感

    コネクテッドロボティクスは、ロボットと人が一緒に調理を行う臨場感あふれるキッチンを通して、お客様により楽しくて創造的な食の喜びを提供していきたいとのこと。

    次はどんな調理ロボットが開発されるのか、そしてOcto Chefとレイタの名前の由来も気になるところだ。

    source:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000031342.html

    16歳高校生ら、AIで作った「モーツァルトの新曲」披露。作曲は現存する手紙、ビルボード10年分のデータから

    2019年6月5日、「宣伝会議 インターネット・マーケティングフォーラム2019」において、AIでモーツァルトの新曲を生み出す「Project Z」の成果が披露されました。

    日本HPの全面協力のもと、3人のクリエイターと18人の現役高校生たちが、AIをはじめとするテクノロジーを駆使し、現代にモーツァルトを蘇らせました

    出来上がったのは「AIが作り出すモーツァルトの新曲」に最先端の映像やオーディオを融合させた作品です。

    本稿では、プロジェクトに携わった高校生、クリエイターへの取材内容をお届けします。

    AIが作った曲を8K映像とイマーシブオーディオで表現

    イベントではクリエイターのほか、プロジェクトに参加した高校生のなかから代表者3名と日本HP マーケティング部 部長 甲斐博一氏 が登壇し、「Project Z」の内容と意義を語りました。

    クリエイター

    株式会社マリモレコーズ 代表取締役・音楽プロデューサー・作曲家 江夏 正晃
    株式会社マリモレコーズ 専務取締役・映像作家 江夏 由洋
    インタラクションデザイナー・映像演出家/VJ 中田 拓馬

    高校生

    開成高等学校 中澤 太良
    広尾学園高等学校 村田 有生喜
    広尾学園高等学校 森 彩花

    冒頭、甲斐氏はプロジェクトに使用した3つのテクノロジーを紹介しました。

    まず1つ目は、AI(人工知能)です。AIにモーツァルトの音楽を学習させ、「新曲」を作曲させるのが、本プロジェクトの目的のひとつです。

    2つ目、8K映像とリアルタイムレンダリング。出来上がった楽曲に、超高精細映像である「8K映像」とリアルタイムで映像を生成していく「リアルタイムレンダリング」を組み合わせた映像表現を実現しています。

    最後に、イマーシブオーディオです。縦・横・高さに音響機器を配置することで立体的なサウンドを実現する「イマーシブオーディオ」が採用されています。イマーシブオーディオは会場にて披露されました。

    ――甲斐
    「『モーツァルトを現代に蘇らせたらどんな音楽を作るか』をイメージし、AIにモーツァルトの楽曲を何千回と学習させました」

    完成したのは間違いなく“モーツァルト”のメロディーラインだった

    前述の技術をコアにして実際に制作されたのが、こちらの『Ten Million Nights』です。

    クラシック音楽界の巨匠である「モーツァルトの楽曲」としては、少々異なる趣向に仕上がっていると感じた方もいるでしょう。しかし、まさにこうした違和感を生じさせることこそがクリエイターたちの狙いだったと江夏氏は語りました。

    ――江夏由洋
    「音楽を監修した兄(※江夏正晃氏)は、『特に最初のフレーズがリズム・音ともにモーツァルトだった』と評価しています。

    現代音楽では聴けない、自分たちでは作り出せないメロディーラインでした。聴いた人がモーツァルトらしくないと感じるのであれば、それは歌も含めてモーツァルトを現代風にアレンジできているからで、むしろ私たちの狙いとしては大当たりです」

    普段歌い慣れている現代の楽曲とメロディーが異なるため、シンガーも歌うのに苦労していたそう。

    こうしたエピソードからも『Ten Million Nights』が、現代のポップスの曲では見られないメロディー、調の運びとなってることが伺えるでしょう。

    モーツァルトを選んだのは「新しい表現」を見せるため

    講演の後、クリエイターと高校生の方々にプロジェクトの道のりについてお話を聞きました。最初に尋ねたのは「音楽」というテーマを選んだ理由。

    ――なぜAIで作曲をすることにしたのでしょうか?

    ――中田
    「芸術や音楽は、AIで先行事例がある分野です。全く違う分野に挑戦する話も出たのですが、今回は高校生が制作に関わる前提があり、かつ時間的制約もあるので難しいだろうという結論になりました。

    そして音楽好きの高校生はたくさんいるはず、みんなが楽しめるものを作ろうと考え、『音楽』に落ち着きました」

    モーツァルトの楽曲が対象になったのは、 「テクノロジーを見せつけるだけのプロジェクトでは意味がない」「クラシック音楽の時代まで遡り、現代の音楽の手法や楽器、テクノロジーまで立体的にストーリーをつないで、新しい表現をすることが大事」という共通認識があったからだそうです。

    その結果、パブリックドメインであるモーツァルトの楽曲を扱うことになったのです。

    「100曲のメロディーライン」から学習用データを作った

    制作工程のうち、クリエイターたちが映像制作と音楽の監修を、高校生たちはメロディー制作の部分における「AIの学習データの収集および学習」を担当しました。

    しかしプロジェクト開始当初、高校生たちは、

    ――中澤
    「AIについてインターネットや本で調べたことがあるけれど、ほとんど知らない状態

    だったと振り返ります。そうした状態から学習データを集めていく過程には、様々な苦労があったようです。

    ――村田
    「学習データは、最初にいくつかモーツァルトのMIDIをいただき、くわえてインターネットからも素材をダウンロードしました。膨大な楽曲のなかからコンチェルトに絞り、主にメロディーラインを使いました。

    データを入れ、AIに『次にどんな音が来るか』を予測させることでモーツァルトの曲ができあがるのですが、調を揃えないと曲がぐちゃぐちゃになってしまいます。

    なので、100曲ほどのメロディーラインを抽出し、転調する(※曲中で調が変わる)ところを切ったりして80個ほどのストリーミングデータを作りました。非常に時間がかかり、泥臭い作業でした」

    膨大な学習データが必要だったのはメロディーだけでなく歌詞についても同様でした。

    ――江夏由洋
    歌詞の作成には現存するモーツァルトの手紙を利用しました。彼は奥さんや親戚にすごい量の手紙を書いていたんですね。手紙の内容が書かれた英語の本を入手し、写真で撮り、ドキュメントデータを抽出しました。

    くわえてビルボード(※全米の音楽ヒットチャート)10年分の歌詞を抽出し、モーツァルトの癖と現代の世相も含めて学習させました。出力結果は、1万字ほどの文字列で、文法的にはめちゃくちゃでしたが、全く手を加えず私たちが『おもしろい』と思う文字列をピックアップしました」

    「AIを引き受ける世代」がAIに触れる意義とは

    プロジェクトを終えた高校生が揃えて口にしたのは、「案外、AIは期待に応えてくれない」ということ。

    ――中澤
    「AIは予想よりも自分の思うように動かないものでした。モーツァルトの曲を生成するために作ったはずのAIでも、イメージ通りの出力結果がでないなど、すごく難しかったです。

    実際に触れることで、AIはまだ発展途上であると分かりました」

    一方で、苦労しつつも「音楽」というテーマに挑戦したことは、彼らにとって良い体験となったようです。

    ――森
    「私は音楽とテクノロジーは相反するものと考えていました。ですが、プロジェクトを通じてその2つを融合させていくことで、徐々に面白さを感じるようになりました」

    またクリエイターたちは、高校生たちがAIに対して持つ認識を次のように指摘しました。

    ――中田
    「『AIは果たして道具なのか』という根本的な部分の考え方が私と違っていましたね。

    たとえば『思った通りの楽曲ができないからAIは未成熟の分野』と中澤くんは言っていましたが、それはAIを道具としてのみ捉えたときに言える見解です。

    AIにデータを与えてアウトプットが生成される過程は、人が先人の音楽に影響を受けながら自分たちの音楽を作り出す過程と似ています。これを考慮すると『AIを道具として捉えるのが本当に正しいのかどうか』という疑問が出てくる。

    ここは今後AIとの付き合い方を考えていくうえで重要になるでしょう」

    またクリエイターたちは、高校生たちが今、AIに触れたことは大変大きな意味を持つとも語っていました。

    ――中田
    「今の高校生たちが、AIの社会実装を引き受けていく世代になるのだろうと思います。

    AIが注目を浴びているのは、人材不足、人件費や海外への外注費の高騰といった問題をAIが解決してくれるんじゃないかという社会からの期待があるからです。

    今のAIはまだ社会の課題を解決するためにしか向いていません。しかし、若い世代は社会をより楽しくする方向、それを実現するためにAIを使っていくのかなと」

    ――江夏正晃
    「いつかAIなしでは生きていけない日が来ると思います。ただ、今のAIは『中学2年生』。やっとコーヒーを飲めるようになった、洋楽を聞き出したというような、とても生意気な存在です。

    そんなAIとお友達になれたのが高校生の彼らだと思うのです。

    社会の今後を考えたときに一番重要なのは、彼らが一番上手にAIと付き合っていくこと。今回HPさんが提供された最先端の環境は、その試金石となったはずです」

    AIが実現するのは、「豊かに」というよりも「楽しい社会」であってほしい。それがクリエイターたちに共通する思いでした。未来を担う高校生たちが、今後AIを用いてイノベーティブな社会を実現することに期待が高まります。

    メルカリ 不正取引ユーザーを機械学習、ネットワーク解析で検出

    ユーザー間の取引がサービスの大きな要であるメルカリ。当然、不正取引は悩みの種だ。

    そのメルカリは2019年5月、増田直紀上級講師(英ブリストル大学)、小舘俊(東北大学)と共同で、機械学習と「ネットワーク解析」と呼ばれるデータ解析方法を用いて不正取引を検出する研究成果をネットワーク科学の主要な国際会議である「NetSci 2019」で発表した。

    ネットワーク科学とは

    ユーザとユーザの取引関係はネットワークとして表すことができます。同様に、他の人間関係、経済現象、インターネット、交通網、生態系、遺伝子と遺伝子の関係など、様々な現象やデータはネットワークという共通言語で表すことができます。ネットワーク科学は、「つながりの科学」であり、ネットワークとして表されるデータから有用な情報を引き出したり、社会や科学などにその知見を応用することを目指す研究分野です。

    「ネットワーク解析」を用いて不正取引を検出

    メルカリはすでに、AIを活用した利用規約違反の商品・取引を自動検知する監視システムを導入している。さらに、カスタマーサービスによる目視により出品や取引を常時監視し、偽装品や盗品など出品禁止物の排除に努めているという。

    機械学習と「ネットワーク解析」と呼ばれるデータ解析方法を用いて不正取引を検出する研究では、ネットワーク科学の第一人者である英ブリストル大学増田直紀上級講師のチームと共同で、ネットワーク解析の手法を用いて、不正取引を行ったユーザの検出を試みたという。

    不正取引を行っているユーザの周りのネットワーク(取引関係)から不正取引ユーザーを検出する研究だ。

    ネットワークから12個の特徴量を計算、機械学習

    半年間の分析の結果、高い精度(※)で、あるユーザが不正取引ユーザーであるか、一般ユーザーであるかを分類、抽出できたという。

    その際、テキストや画像の情報を使わなかったという。つまり、言葉通りネットワーク解析によって不正取引ユーザーを検出しているということだ。

    研究開発チームまず、不正取引を行っているユーザの周りのネットワーク(取引関係)は、通常の取引を行っているユーザーの周りのネットワークとは異なっている場合が多いという仮説を立てた。

    そして個々のユーザーの周りのネットワークから12個の特徴量を計算。これらの特徴量をもとに機械学習を行った。

    その結果、平均取引回数や他のいくつかの特徴量は、一般ユーザと不正取引を行っているユーザーでは値が異なる傾向があり、それらの特徴量を用いた機械学習モデルは不正取引ユーザの同定に有効であることが判明したのだ。

    メルカリから、共同研究成果を発表するなどのアカデミックな情報発信は初となる。

    次々に新しい技術がが出てくる一方で、技術を使った“高度な不正”が増えるのは目に見える。そこに対して従来の手法で対応していては限界がくる。そこに対して企業も技術で対抗していくのは必須だろう。

    紹介した研究論文は下記にて公開されている。
    >> https://arxiv.org/abs/1906.07974

    ※誤検出の少なさと見逃しの少なさとのバランスを示す指標であるReceiver operating characteristic AUC, precision recall AUC ともに 0.94-0.99。
    source:https://about.mercari.com/press/news/article/20190624_collaborative_research/

    アマゾン、AIバーチャルメイク機能を導入。これは便利

    AmazonのモバイルサイトおよびAmazonショッピングアプリにて、バーチャルにメイクアップアイテムを試せる新機能「バーチャルメイク」が導入された。

    AIを活用し、自動的に製品の色などを瞬時に分析し読み取り、得た情報をもとにARによって実際にメイクしたような仕上がりを画面上の顔に投影し、再現してくれる。

    購入前の口コミチェックに加えて、新たなチェック手段がユーザーに提供された。

    AIバーチャルメイク機能の実力はいかに

    Amazonは、Eコマースでメイクアップアイテムを購入する際の「試せない」というハードルを少しでも解消することを可能にした。

    では実際どれくらい便利になりそうか。Amazonショッピングアプリを使い、試してみる。

    1. メイクしてみる → 「試す」をクリック

    対象商品(日本ロレアル、資生堂、カネボウ、コーセー、花王)の計18ブランド、890点以上のリップアイテム)のページを開き、商品の下に表示される「試す」をクリックする。

    2. メイク方法を選ぶ

    スマートフォンのカメラや写真アルバムと連携させ、以下3つのメイク方法が選択可能だ。

    • カメラをライブモードで利用して動画で体験する方法
    • 写真を撮影してアップロードする方法
    • 既存のモデルの写真を利用する方法

    3. 複数カラー試す

    今回は自身の顔を撮影し、機能を試してみた。

    画面に顔が表示されたら、アイテムをバーチャルに試せる。一度撮影してしまえば、ほかのカラーを選択して試すこともできた。

    人工知能(AI)技術と拡張現実(AR)の融合、その可能性

    筆者自身は女性ではないので、正確な意見は述べられないが、素直に便利な印象だ。

    現在はメイクにフォーカスされた機能だが、カツラや服など、技術によりさらに便利になる未来は容易に想像できる。今後は、対象カテゴリーおよびブランドをそれぞれ拡大していく予定だそう。

    似たような機能は今後増えていきそうだが、重要になるのは、自然さだろう。今後、その競争を見れるのは楽しみだ。

    【de:code】トヨタ、自動車点検・修理にMicrosoft HoloLensを展開。Mixed Realityの新たな取り組み

    5月29日〜5月30日の2日にかけて開催されている、日本マイクロソフト主催のテックカンファレンス「de:code 2019」にて、トヨタ自動車のMixed Reality(MR)の取り組みが発表された。

    整備作業のマニュアルを3D化。Microsoft HoloLensで整備士の作業の質を上げる

    従来自動車の整備士は、車種ごとの手順書、修理書の紙やWebマニュアルを参照しながら作業を行なっていた。つまり、整備士は紙またはデバイスに片手を塞がれながら、2Dの画像や文章をもとに整備作業せざるを得ない。

    そこでトヨタ自動車では、Microsoft HoloLensを活用したMRで、整備士が作業の手順を直感的に理解できる3D作業手順書、修理書を作成し、整備士が両手で作業できるアプリケーションを開発。社内で検証を進めているという。

    Microsoft HoloLensを装着して自動車の前に立つと、その車種を特定し、その後3Dで作業手順が表示される。手順に沿って作業を進めれば未経験の整備士でもすぐに作業を習得できる。

    新人教育や作業レベルの平準化、品質の担保にも寄与するソリューションだ。

    de:code 2019では、HoloLens 2の年内での国内発売も発表された。それに合わせトヨタ自動車も年内にはHoloLens 2を導入し、トヨタ販売店に順次展開する予定だ。

    Microsoft HoloLens活用事例からみるAI活用

    トヨタ自動車ではさらに、同取り組みのなかでAzure AIも活用しようとしている。

    自動車の3D CADデータから自動で学習モデルを生成する手法で、これにより作業ミスや作業漏れを検出できる。現在はマイクロソフトと共同開発、検証段階だが、おそらく近いうちにHoloLensの3D手順書、修理書と合わせて展開されていくだろう。

    製造業におけるHoloLensの活用は、デバイスの進化に伴なってますます広がっていくに違いない。AIとの親和性も高いため、今後も注目のトピックだ。

    どんな車も一瞬でコネクテッドカーに変貌。MaaS、自動運転時代に向け「移動の進化」が始まる

    • Collaborator:

    「MaaS」という言葉が世界的に大きな注目を集めています。「Mobility as a Service」の略で、車、バス、タクシー、鉄道など、さまざまな交通手段による移動を1つのサービスとして捉える、新しい交通システムです。「交通手段が馬車から車に変わった100年前の再来」という声まであり、日本でもセミナーが満員になるなど、AIやIoTのような熱量でブーム化しています。

    本稿で紹介する株式会社SmartDrive(スマートドライブ)は、車に設置するデバイスから走行データを取得し、AIで解析する、MaaSの実現に欠かせない技術を持っています。その技術的な背景やビジネスモデルについて、同社の取締役、元垣内 広毅氏に話を聞きました。

    元垣内 広毅
    大阪大学大学院基礎工学研究科博士後期課程にて統計解析を専攻。博士号(工学)取得。有限責任あずさ監査法人にて、会計監査及び内部統制監査等に従事した後、グリー株式会社に入社し、各種データ分析業務を担当。2015年1月にスマートドライブに入社し、執行役員を経て、2018年12月より現職。現在は、データプラットフォーム事業を中心に、データ解析領域の技術開発及び事業開発を担当。

    センサー搭載デバイスで車の挙動をビッグデータ化

    ――MaaSや自動運転など、交通関連の技術革新に注目が集まっています。SmartDriveはどのようなビジネスを展開しているのでしょうか?

    ――元垣内
    「MaaSの要素技術として、CASE(※)という言葉がよく使われます。最初のCがConnected。当社は工事不要で、どんな車でもコネクテッドカーに変えるデバイスをキー技術とした事業を構築しています」

    ※Connected(繋ぐ)、Autonomous(自動運転)、Shared(シェア)、Electric(電動化)の頭文字を取った用語

    これまではコネクテッドカーを実現するには、特別な組み込み工事や改造工事が必要でした。しかし、同社は、デバイスをシガーソケットに挿すだけで済むといいます。

    ――元垣内
    「2013年の設立から1年ほどで総務省のICTイノベーション創出チャレンジプログラム『I-Challenge!』の第1号案件に採択されるなど、プロトタイプ開発段階から引き合いがありました。

    我々のプロダクトは、たった数秒でデバイス自身が傾きや進行方向を認識できるのが大きな特徴です。シガーソケットの穴が縦向きでも斜めでも後ろ向きでも問題なくて、ただソケットに挿せばいいんです

    ※スマートドライブの事業案内資料より

    車をスマートフォンやインターネットに繋ぐことで、さまざまなデータが取得、活用できるといいます。

    ――元垣内
    「最新のデバイスであるLTEモデルには、

    • GPS
    • 加速度
    • ジャイロ

    3つのセンサーが搭載され、内蔵されたSIMカードが直接サーバーに走行データを送信しています。データの計測粒度は細かく、0.1秒刻みで、3次元加速度および3次元ジャイロのセンサー値を計測できます

    ――データ分析はサーバーで行うのでしょうか?

    ――元垣内
    「すべてをサーバーで行うと処理負荷とコストが上がります。なので、エッジ(※)でも解析やデータ変数を統合する処理などを行っています」

    ※モノ側(エッジ)でAIを動かすエッジAIコンピューティング

    データによって車の挙動を細かく認識でき、ドライバーの運転の特性がひと目でわかるそうです。

    ――元垣内
    「どこで急発進、急ブレーキをしたかだけでなく、水平面上の360度のどの向きにどれくらいのGがかかったかなど、すべてがデータとして表れます。荒い運転をするとGの動きが散漫になるなど、独自のアルゴリズムを使ったAIで解析しています」

    毎秒レベルでデータを取得し、さまざまな軸で運転の特性を表現するこのデータ解析基盤技術。SmartDriveが独自に開発し、特許も取得しています。

    データの取得、活用するスマートドライブのビジネスモデル

    ビッグデータやAIで解析した結果を活用し、スマートドライブでは3つの領域を組み合わせて、さまざまなサービスを展開しています。


    ※上記同資料より

    スタートアップ企業には珍しく、スマートドライブは早くからマネタイズに取り組んできました。

    ――元垣内
    「我々は早い時期から、世界最大級の保険グループに属するアクサ損害保険と業務提携しています。当社のデバイスとデータ解析により、たとえば安全運転度によってコーヒーなどに交換できる特典が提供されるなどのサービスを実施中です。

    また、保険加入者の方の運転傾向や事故のリスクに応じて保険料を変動させる『テレマティクス保険』を共同開発しています」

    スマートドライブのデバイスとデータ分析システムを法人向けに提供する「SmartDrive Fleet」も好評です。デバイスを挿した車両の現在地や走行距離、走行時間といった車両の動態をリアルタイムに把握できます。加えて、ドライバーの運転特性もわかるとのこと。

    ――元垣内
    「現在、物流や介護をはじめ、さまざまな業界からご契約をいただき、数台から数千台まで、台数規模もさまざまなお客様にご活用いただいております。

    たとえば物流の場合、それぞれの車がどこを走っているかがわかれば、荷主に精度の高い到着時間を提示でき、近い車に集荷指示できますので、ご好評をいただいています」

    また、データによる安全運転の指導も行えるうえ、記録に残るという抑止力もあって、事故が減ったという企業が多いそうです。年間で20~30%も減少したケースまであると、元垣内氏は言います。

    ――元垣内
    「サービスをご利用いただいてる電気工事の企業は、工事手配の効率が上がり、スタッフが1日に対応できる件数が増えたことによって、結果的に売上が上がったそうです。さらに事故が減り、保険料も下がり、早く帰れるようにもなったと喜んでおられました」

    ほかにも介護や営業車でのセールスを行う会社からは、日報を自動化できるメリットも挙がっているといいます。たしかに精度と信頼性の高い日報が作成できそうです。

    個人向けには、コネクテッドカーをリースする「SmartDrive Cars」、家族の運転を見守る「SmartDrive Families」が続けてリリースされました。

    ――元垣内
    「走行データが集積されるSmartDrive Platform上のAPIを利用して、走行データを活用したコネクテッドカーサービスをBtoB、BtoBtoC、BtoCにて展開しています」

    データと分析システムを他社に開放するプラットフォーム事業も

    自社のサービスで活用しているSmartDrive PlatformのAPIを3rd partyに提供することも開始し、既に3rd Partyのサービスとしてローンチしているものもあります。

    事故リスク分析や最適ルート提案など、AIや数理モデルを活用した機能もSmartDrive Platform上に揃えていきます。


    SmartDriveコーポレートサイトより

    さらに、パートナー企業の保有データや、別途センサー等で取得したデータを加えることも可能です。

    ――元垣内
    「プラットフォームには、ドライブレコーダーやカメラの画像データ解析、温度センサーや湿度センサー、重量計などから取得できるさまざまなタイプのデータをインプットできます。

    AIは汎用性の高さを考えてアルゴリズムを開発しましたので、データの異種混合を柔軟に行って分析できます」

    サービス開発の容易さにもこだわったといいます。

    ――元垣内
    「SmartDrive Platformのデータとシステムを使うことで、どれほど簡単にサービスが立ち上げられるかというテスト的な意味合い含め、まずは内部で運転見守りサービスの『SmartDrive Families』開発しました。

    合宿という形でしたが、主な部分は3日で完成しています」

    2019年4月には物流大手、日本GLPのグループ会社であるモノフルがSmartDrive Platformを利用して新サービス「トラック簿」を立ち上げています。トラック簿は、物流施設や工場などで大きな問題となっているトラックの長時間待機問題解消に向けたサービスです。

    SmartDrive Platformが車両の最新の位置情報や走行経路、ジオフェンス(仮想境界)に出入りした場合の通知機能などを提供しているそうです。

    参考:スマートドライブ|プレスリリース

    車だけでなく「移動の進化を後押しする」企業へ

    2013年10月、代表と委託エンジニアの2人で始まったスマートドライブ、今や社員数は50人近くまで増えています。株主も3メガバンクのベンチャーキャピタルをはじめ、iPhone製造などでも知られるFOXCONNやSONY、住友商事など、錚々たる顔ぶれです。

    この成長ぶりの要因はどこにあるのでしょうか。

    ――元垣内
    「当社の優位性は、まず、スタッフの約7割がエンジニアであること。そしてデバイス周辺、データハンドリング、AI、API、アプリ、SaaSアプリといった幅広い専門家が集まり多様性があることです。

    さらに、大手の事業会社等の大組織から出資を受ける際でも、我々のオープンなプラットフォームとしての思想をご理解いただき、特定の企業が独占するのではなく、業界横断で、様々なデータやノウハウが集積される構造をとっていることだと考えています」

    オープンプラットフォームとしてのスタンスが、技術的競合優位性を生む源泉にもなっているとのこと。

    ――データのセキュリティ面ではどのような対策を行っているのでしょうか?

    ――元垣内
    「個人情報を心配される企業も多く、情報の取り扱いやセキュリティには気を配っており、ISO27001(ISMS)も認証取得しております」

    ――今後さらに成長していくなかで、現在抱えている課題はありますか?

    ――元垣内
    「以前はデバイスを提供する関係からIoT企業だと思われていました。その印象は払拭できましたが、いまは車の走行データ分析会社というイメージで、見せ方として、車を前面に出し過ぎていたという反省があります。

    これから3年、5年かけて、『移動』全体にまつわるセンシングデータプラットフォーム企業であると広く知られるよう、事業を推進していきます」

    同社のビジョンは「移動の進化を後押しする」ことです。移動するのは車やトラックだけではありません。電車、飛行機、船、バイク、自転車といった運ぶ手段はもちろん、ヒト、モノ、ペットなど、運ばれる側への応用も考えられます。

    強力なプラットフォームで各社のサービス立ち上げを後押しすることも期待できます。同時に、デバイスやAIアルゴリズムの開発力もあり、まさにモビリティ進化の先頭を走っているのではないでしょうか。AI、ビッグデータ、MaaS、自動運転など、熱いキーワードが交差する絶好のポジションにいることは間違いありません。