ロイター
【ニューヨーク=中山修志】ニューヨークの連邦地裁は11日、ソフトバンクグループ(SBG)傘下の米携帯通信4位スプリントと同3位TモバイルUSの合併を認めた。ニューヨーク州などが求めていた差し止め請求を退けた。合併計画は司法省と米連邦通信委員会(FCC)の承認を得ており実現が近づいた。
合併によりスプリントはSBGの子会社から外れる見通し。SBGは投資会社の様相がいっそう強まる。
地裁は合併が市場の適正な競争を阻害しないと判断した。ただ、差し止め訴訟を主導したニューヨーク州のレティシア・ジェームズ司法長官は「合併は全ての米国人にとって損失だ。上訴を含めて対応を検討する」との声明を出しており、不透明な要素は残っている。
11日の米株式市場でスプリント株は取引開始直後に70%以上急騰。Tモバイル株も約10%上昇した。合併後の契約件数は約1億3000万人となり、ベライゾンとAT&Tの2強に迫る。経営権はTモバイル親会社のドイツテレコムに譲る。
スプリントとTモバイルは同日、「合併が米経済と消費者にとって有益だという我々の見解が裏付けられた。2020年4月にも合併手続きを完了し、低価格で高性能な通信サービスを提供する」と声明を出した。
合併でSBGの出資比率が下がり、4兆円を超えるスプリントの有利子負債が連結債務から外れる。米シェアオフィス大手ウィーカンパニーの企業価値の激減などで痛手を負ったファンド事業の回復に注力することになるが、同事業に収益を依存する体質も強まる。19年3月期には、スプリントからの収益は2803億円でSBG全体の営業利益の1割超を占めていた。
スプリントとTモバイルは18年4月に合併を発表。ただ、司法省とFCCの審査に時間がかかり19年半ばを予定していた合併手続きを延期。両当局は19年10月までに条件付きで合併を承認したが、差し止め訴訟により、合併を実現できないままだった。