米ソ冷戦の時代も、宇宙は「戦い」の舞台だった。両国はどちらが先に宇宙船にネズミを、サルを、そして人間を載せて打ち上げられるか争った。冷戦の時代は、大国が地上での戦争の代わりに宇宙で技術を競い合う「代理戦争」に明け暮れていたのだ。いわば「運動会のかけっこ」のようなものであり、オリンピックで金メダルの数を競うことと同じだった。
しかし、1980年代に異変が起こる。米レーガン大統領が、宇宙を戦場として想定する「スター・ウォーズ計画」を立ち上げた。今回のトランプ大統領による宇宙軍発足は、その再来とも言われている。
実のところ、当時のスター・ウォーズ計画は現実的なものではなく、いわばハッタリにも近いものだった。これを真に受けて焦ったソ連が、宇宙戦争対策に傾注するあまり軍事力の増強を進めた結果、国力を消耗してソ連崩壊の一因になるという「戦果」をもたらしたのだ。
そして冷戦終結後、宇宙は国際協調の舞台へと変わった。実際、宇宙空間に関する条約は、1967年の「宇宙条約」から1979年の「月協定」までの5つしかなく、これらの国際宇宙法で定められているのは「月は国家の領土とならない」といった規定だけであり、宇宙での戦闘行為を想定したものとはいえない。
しかし、現在進んでいる米中宇宙戦争は、ただの代理戦争ではない。現実の脅威なのである。
そして、意外かもしれないが、ここ十数年の宇宙戦争は中国がリードし、米国が追いかける形になっている。この米中宇宙戦争を理解することは、中国という国家の考え方や目指すもの、安全保障の戦略を知り、そして米中関係の今後を占うためにも重要なことであるため、ここで詳しく説明したい。
米国がいま、危機感を強めている中国の「新兵器」がある。それが、「極超音速滑空飛翔体」、通称「ウェーブライダー」である。