新型肺炎による大きな混乱に見舞われている中国。そうした状況下でも、中国空軍の戦闘機は2月に入って台湾海峡や宮古海峡上空を飛行し、周辺国に対する牽制に余念がない。
近年、中国が水面下で粛々と進めているのが「宇宙戦争」を想定した軍備、そして米軍にも予想外の「新兵器」の開発だ。2040年代までの長期シナリオで世界の覇権を掴もうとする中国にとって、決定的に重要な意味をもつその知られざる実力を、『潜入中国』著者で朝日新聞記者の峯村健司氏が解説する。
「宇宙は未来の戦場だ。(中国は)『制天権』を奪取しなければならない」
これは米国のシンクタンク関係者が入手した、中国軍の内部文書「空軍軍事理論創新研究」(2010年)に記されている言葉である。
これに対して2019年1月、米トランプ大統領は「ミサイル防衛見直し」、すなわち宇宙空間におけるミサイル迎撃システムの構築を発表した際、こうブチ上げた。
「宇宙は新たな戦闘領域だ」
そして現実に、同年12月20日、トランプ大統領は「第6の軍隊」米宇宙軍を正式に発足させた。
米中対立の歴史を考えた時、2010年代は「宇宙戦争」の黎明期だったと位置づけられる。そして2020年代に入り、その争いはますます熾烈になっている。目下、中国では新型コロナウイルスが大騒動を起こしている。しかし、日本に暮らしていると想像もつかないような「SFのような現実」が中国では他にも進行しているのだ。
筆者は、激しさを増す米中の貿易での対立、安全保障面の駆け引き、官民両分野におけるサイバー戦争は、「摩擦」や「鍔迫り合い」ではなく、世界の覇権をかけた「新冷戦」であると考えている。そして、その新冷戦の枢要を占めるのが「宇宙戦争」である。