如何にして自分の存在をアピールするか?
-学会は自分の宣伝の場である-
Be a expert propagandist!!
はじめに
初めての学会発表.とても緊張するものです.今でこそ少し慣れてきましたが,それでも,私もいまだに発表前はじんわりと汗をかいて緊張します.また,研究者になろうとすると,普通の就職活動はほとんどする機会がありません.
ちょっと待って!学会は研究発表の場であるだけでなく,「あなた」という人間を発表する場でもあるのです.その人がどんな人かわからなければ,採用しようとは思いませんよね.そんなことを考えていた僕が,まず,どう自分を覚えてもらうか?研究生活の中で行ってきたことを紹介します.もちろん,これはやらなくてはいけないことではありません.えげつないなぁと思うこともあるでしょう.もしやれそうで,気に入った方法があったら試してみてください!
(基本編)学会でやれること
「き」学会に出よう!
発表しなくても良いから,今自分が行っている研究に近い学会に行ってみよう!
学会参加のメリット
自分の研究に関する最新の研究を(論文発表前に)見ることができる.
研究をがんばろう!という気になる.
今まで考えてこなかったアイディアが浮かぶ・もらえる,
共同研究ができそうな人が見つかる.
先輩や後輩が頑張っている姿を見てあせる(メリットか?).
「ほ」学会で発表しよう!
まずはとにかく,今やっている研究に新しい成果・発見があったら,それらが小さくても良いから学会で発表しよう!
学会発表のメリット
自分の研究を発表できる.
近い(&遠い)研究者から意見をもらえる.
新しいアイディアが浮かぶ・もらえる,
共同研究ができそうな人が見つかる.
「ん」懇親会に出よう!
飲み会,お酒やおしゃべりが苦手な人にはちょっと辛いもの.僕もそうでした.でも,たかが飲み会と侮るなかれ!こんなこともあるかもしれないよ.
懇親会参加のメリット
研究に関する詳しい話を大御所からだって聞ける.
自分の研究に関する意見をじっくり考えてもらえる.
ぶっちゃけた話ができる⇒覚えてもらえる.
研究に対しての熱意を伝えられる⇒覚えてもらえる.
先輩や同年代の人たちと自分の不安について話し合える.
(応用編)学会中・学会後でやれること
「お」学会で質問しよう!質問されよう!
大御所や先輩方の発表で,質問をするのはものすごく勇気のいること.でも,自分の研究に近いことや,ぜんぜん違った内容でも,疑問を残したままにするのはもったいない!発表中でなくても良いから,発表者がその辺をぶらついているとき,飲み会の席,いろいろなチャンスを狙って,質問してみよう!
同業者に質問をされること.これってとても重要.今まで会ったことのない研究者と知り合えるチャンスです.そのために,「こんな質問をしてくるだろう」とあえて発表内容に質問を促す「わな」を仕掛けておくのもひとつの方法.しっかり質問に答えられれば,あなたの印象UP間違いなし!?
質問をされるということは,学会発表での喜びの一つだと思います.自分の研究に興味を持ってくれた人がいる!ということを確認でき,さらに問題点を指摘してくれれば,研究の改善にも役に立ちますよ.
「う」学会で面白い発表をしよう!
私が学会発表を見ていて感じるのが,「面白い研究をしている人は面白い発表をする」ということ.人へのアピールもうまいし,笑いもとって,退屈させない.なにより発表者本人が楽しそう.そういう発表を目指しましょう!まずは,自分のやっている研究をしっかり消化して理解することが大切.そうすれば自然に発表も上手になります.でも笑いをとろうと狙いすぎるのは禁物ですよ.さらに,発表後に自分の論文の別刷りを配るのもgood!読んでもらうチャンスです.
「よ」Excursionに参加しよう!
学会開催地の代表的な地質地域に連れて行ってもらえて,そこに発達する構造の説明を聞けるチャンス.自分に関連した土地ならもちろんそのメリットは大きいです.引率してくれる人のほとんどがその地域の代表的な研究者.その人に自分の存在をアピールできる千載一遇のチャンスです.
「う」学会後も質問しよう!
私は学会期間中に質問をした人,質問してくれた人,飲み会で一緒になった人から,必ず名刺をいただいたり,e-mailアドレスを教えてもらうようにしています.そして,研究室に戻ってから,お礼のメールをします.内容は学会での質問に対するさらなるコメントや,新たに浮かんだ疑問点を質問したり,自分の研究内容の紹介,今考えている研究計画などなど.学会で1回質問したきりでは覚えてもらえません.何回もメールを出して,やり取りしていると覚えてもらえるかも?
そして,できる限り自分の名刺も用意しておきましょう.できるならありきたりの名刺じゃなくて,もらったら一発で顔や研究内容が覚えてもらえるようなちょっと工夫したものを自分で作るのも良いですよ.
(番外編)学会以外でやれること - 番外が一番多いのはどういうこと?という突っ込みは無しで -
「ば」研究室に遊びに行こう!
研究発表をしました.人にも質問しました.されました.いろいろな人に知り合えました.さあ,それで終わりにしちゃう?もったいない!
「あなたの研究室のゼミで発表させてくれ!」と頼んでみるのもまたひとつのアピール方法.自分の研究を聞いてくれる人がいれば,全国どこでも行っちゃうよ!くらいの勢いを持つのも良いのでは?
もちろんそこに行くのにはお金がかかります.でも長い目で見れば,ひょっとしたらそこで新たな人と出会うかもしれないし,研究者として雇ってくれるかもしれない.先行投資です.
「ん」Home Pageをつくろう!
自分の就職活動でも,いろいろな研究室のHPを見ることが多いと思います.こんな研究をしているのかぁと参考になることがたくさんありますよね.じゃあ,なぜあなたも作らない!?
現在いろいろなところで無料でHPを作成することができます.ブログも作れます.自分の研究内容をまとめて,わかりやすく紹介する.しかも,世界中に!こんな手っ取り早い方法はありません.最初は大変だけれども,一度作ってしまえば,時々Up-Dateするだけでも十分です.ブログをこまめに更新すれば,あなたの人柄もわかります.
就職活動のときは研究内容の紹介・研究業績などを提出することになります.そのとき,自分のHPの原稿をうまく使ったり,(文字数制限のために)書ききれなかった内容をHPに書いておくこともできます.履歴書にHPのアドレスを載せておけば,ひょっとしたら,そのHPを見てくれるかもしれません.万に一つのチャンスかもしれませんが,それが決め手になることだってあるかもしれませんよ.
「が」国際学会に参加しよう!
日本語だって満足に使えないのに,英語で発表なんて,さらに大変.まじ勘弁!なんて言わないで行ってみましょう.教科書や論文でしか見たことのない研究者に会えるチャンスです.たいてい海外での学会は1週間程度.自分の発表なんて長くて30分.ちょっとの我慢です.でも,短い1週間をうまく使えば海外にあなたの名前をとどろかすことができるかも!?
学会での発表はもちろん,質問でも大変ですが,研究内容に興味があれば,下手な英語でも一生懸命聞いてくれます.就職は国内限定!?そんなこと言わないで,海外での就職にも目を向けてみましょう!
「い」外国人研究者と仲良くなろう!
海外で日本人とつるむのはもったいない!それは日本の学会でもできるよ!!
近い年代の人や,研究がかぶっている人,いろいろな人に覚えてもらいましょう.そこで出会った人が将来どのようにあなたの研究人生に絡んでくるかわかりません.
私は海外で行われる学会などに参加したときは,「日本人と極力食事に行かない」というルールを作っていました.夕飯時にホテルの出口で研究者が通るのを待ち構え,夕飯に誘う.そして,食事をしながら,研究の話や雑談をする.通じなくても,そんなことをする日本人は少ないから,確実に覚えてもらえます.まあ,「あいつは日本人と仲が悪いらしい…」という噂が外国人研究者の中で広がり,心配されたりもしましたが…
「へ」サービスしよう!
学会で一緒だった人にいろいろアピールする方法はまだまだあります.私は写真を撮ったり,お絵かきをするのが好きなので,学会で撮った写真やイラストを送ってあげたり,「今度の学会に出る?」ってメールで聞いて食事の約束をしたり.
日本で国際学会が行われているのならば,外国人研究者のお世話をしてあげるのもひとつのアピール方法.お土産を買うのを付き合っても良いし,どんな食事が食べたいのか聞いて,そこに連れて行ってあげるのも良いです.お土産屋でお勧めなのは100円ショップ!意外と和風のものがたくさんあって喜ばれました.
仲良くなっておけば,英文校閲を頼んだり,一緒に国際的な研究をすることが気軽にできるようになりますよ.
「ん」超番外編!
受からなそうでも良いから,自分の分野に近い公募があったら積極的に出しましょう!自分の研究のまとめにもなるし,こういう研究をしているやつがいるんだな,と覚えてもらえるチャンスです!もちろん,手を抜いた書類作成は禁物.研究内容や今後の研究計画がしっかり書けていればアピール度が高いですよ!
論文が掲載されたらすぐに学会のお偉方や近い研究者に別刷りを配ろう!これも覚えてもらう良い機会です.なにより,学会の評議員をやっているような人があなたを雇う可能性が高いのです!郵送費だってあなたの宣伝費です.
学会に出ない!徹底的に出ない!でも論文を書きまくる!月に1本掲載されるくらいに書きまくる!
私の知り合いで(地質関係ではありませんが),「学会が苦手だ」という理由でこれを実行し,見事任期なしの職を手にした人がいます.さすがに毎月同じ名前を見れば覚えてもらえます.これもひとつの自己アピール方法?
先輩も後輩も,果ては教授だって「研究という土俵の上ではライバル」です.その人たちを超えていかなくては,職はつかめないかもしれません.分野が違ったってライバルになるかもしれません.周りにいる人たちに負けない!と思ってがんばりましょう.
結局,学会参加の最大のメリットは研究内容と,顔を覚えてもらえる,ということに尽きると思います.が,これはつまり採用してもらうときに最も必要なことではないでしょうか?もちろん,論文数,良い発表,良い研究,それに見合う努力(とちょっとした才能,つまりは人柄)も必要です.
学会以外の場所でも自己アピールする方法はきっとこの他にもたくさんあります.あなたのアイディアと努力しだいです.
24時間365日毎日就職活動中なのですよ.大切なのは楽しんで研究をしていること,自分をアピールする努力を続けること,自分自身を磨くこと.さあ,がんばりましょう!
(注)このページは2007年1月に行われたニューイヤースクールで私がポスター発表をした内容を加筆・修正したものです.同じように若手研究者の不安を共有し,問題に感じてくれて,さらに発表の機会を与えてくれたニューイヤースクール事務局メンバーに感謝したします.