@chablis777
シャブリ

---------------------------

----S----111------------
----c-----------------------------
----a-----------------------
----r-l-e-r-t--------------
-----------------------------------
-----------------------------------
---------------------------------------------------------------


京都の美大を卒業した武志が信楽に帰ってきました。
(武志)これや!(大輔)おっ? お~!(学)お~!
(武志)「オールガールズTV」。(学)たまらんでえ。
名作テレビドラマシリーズもあるで。これ。
たまらんの2乗やん!おう! なあ?
せやけどさ ビデオデッキあんのけ?
ないけど 先輩が餞別にくれた。いや ないって… どうやって見んねんな。
(笑い声)(喜美子)おはぎ出来たで。
(2人)お~!おはぎ!頂きます!
頂きます!
うまい! めっちゃ うまいな これ!
うまい!うまいか。ありがとうございます。
なあ。ほんまにおいしい。
ゆっくり食べや。
♪~
♪「涙が降れば きっと消えてしまう」
♪「揺らぐ残り火 どうかここにいて」
♪「私を創る 出会いもサヨナラも」
♪~
♪「日々 恋をして 胸を焦がしたい」
♪「いたずらな空にも悔やんでいられない」
♪「ほら 笑うのよ赤い太陽のように」
♪「いつの日も雨に負けるもんか」
♪「今日の日も涙に負けるもんか」
荷物 いつまで そこに置いてんの。はよ持っていきぃ。
なあ。うん?
あかまつ行こうや。えっ。あかまつ。
もうカレー作ってるで。帰ったら食べるさかい 明日も食べるし。
飲もうや 2人で。
(赤松)はい お待ち遠さん。ありがとう。
あんま飲めへんで。
2人で飲むの初めてやな。初めてや。
成人式にも帰ってきぃひんかったしな。
あんなん ただの集まりや。(赤松)はい。
よう飲むん?まあ 誘われたらな。
強いん?どやろ。
おじいちゃん覚えてる?ああ…ウ~!覚えてるん?
正直 覚えてへん。百合子叔母ちゃんから聞いた。
お酒が好きな人やったんよ。
卒業おめでとうやな。
はい。
ほな おめでとう。ありがとう。
ほんで… 何や こんなふうに呼び出して。
うん…。
俺 おばあちゃん亡くなった時にしか帰ってきぃひんかったやん。
三回忌ん時も課題提出に追われて話できひんかった…。
うん…。 何の話?
うん…。
何の話や。
お母ちゃん 学校行きたかったんやろ?
中学卒業して 一人で大阪行って女中やりながら お金ためて。
なあ ほんまは学校行きたかったんのやろ?
行くで。はっ?
連れてったる。
疑似体験や。疑似体験?うん。
俺が お母ちゃんの分まで楽しんできた学生生活を 今から話して聞かせたる。
学生なった気分で よう聞けや。
はい。
まず入学式。そんな最初っから話すん?
ほな 終わってからや。
桜の木の下 校内を歩く新入生たちにチラシが渡される。
もう 次から次へと。チラシ?
サークル活動や 歓迎コンパ。
怖い顔した先輩や奇抜な格好した同級生やら…。
ふ~ん。ヘヘッ。
クラスは 陶磁器専攻科や。階段上がって右手行くと教室があってな秋には 窓からキンモクセイの香りが…。
掛井先生いう先生が 釉薬の専門で…。
その掛井先生から釉薬の専門知識を とことん教わった。
伝統技法も学んだで。
研修いうて掛井先生と一緒に陶磁器の工場見学にも行った。うん。
もの作りの心得も たたき込まれた。
著名な芸術家を呼んで集中講義いうんも受けた。
ほや! ジョージ富士川先生も特別講習で来てくれはってん。
へえ~!ヘヘヘッ びっくりしたなあ あれ。
すごいやん!すごかった。何 学んだ?
何かな… こう作ってくれるの見せてくれて… 皿を…。
その夜 夢を見ました。
学生になった夢です。
なぜか サニーでセーラー服を着て…。
(照子)あ~ 試験の範囲広すぎるわあ。(信作)訳 分からん…。
どっから手ぇつけよう…。
試験勉強かあ… うれしい。
うちも うれしい。
うん。
うち 先生が特別講師をされている美術の学校へ通います!
(ジョージ富士川)フッ 川原さんは もう こっち側の人間や。えっ。
教わるより 教える側の人間や。
えっ…。
せやから サイン頂戴!
はあ…。
ほんで掛井先生がな…。また 掛井先生の話…。
これ 運んどいてな。美大から信楽窯業研究所に移らはってん。
えっ?この春から。
ほな 窯業研究所に通うことにしたんは…。
掛井先生がいはるからや。掛井武蔵丸いうて。
むさしまる…。
掛井先生を追っかけて信楽に戻ってきた。釉薬のことをな もっと学びたいねん。
せやから…お母ちゃんの穴窯を継ぐつもりはない。
穴窯はやらんで 俺は…。
ごめんな。
アホ!
誰が穴窯 継げて頼んだ。
ほやけど俺がやらんかったら どうなるん?
どないもせんわ。お母ちゃんで おしまいにするん?
そんなん武志が考えることやない。せっかく造った穴窯やん。
「家庭菜園 穴窯」でもやるわ。ほっといて。
ほな ええんやな?
こっからは お母ちゃんやのうて掛井先生に…。
分かったから。 しっかり頑張りぃ。
おう!おう。
(ノック)
失礼します。はい。
あの 掛井先生は どちらに…?あ… 掛井先生でしたら研修室の奥の方にいらっしゃいます。研修室… ありがとうございます。
こんにちは。
失礼します。
信楽窯業研究所は地元の産業を支援する機関です。
陶芸全般の技術支援 研究開発人材育成などを行っています。
武志は ここの研究科に1年通う予定です。
ほな 失礼いたします。
照子。行きますよ 竜也君。
照子の長男です。
以前は くりくり坊主の野球好きの少年でした。
竜也 あんななってしもた!
「家庭菜園 照子」に夢中になってる間にあんななってしもた!かわいい竜也が…!
(ドアを蹴る音)
蹴ったで…。おい! 先 行くな! 待たんか こら!
・(照子のどなり声)
失礼します。
掛井先生ですか?(掛井)はい。
川原武志の母です。
ああ! 聞いてます 武志君から。すいません お食事中でしたか。
いや… はい。 食べ損ねてしもてて。すんません。 どうぞ お掛け下さい。
あっ ご挨拶に伺っただけですから…。いや どうぞ どうぞ。 どうぞ。
すんません…。
川原喜美子さんですよね 陶芸家の。はい…。
穴窯の 自然釉の。はい。
掛井武蔵丸と申します。初めまして!
初めまして。 武志が お世話になります。
先生の作品 拝見させて頂いてます。
昨年の秋の個展も 入り口入って左に行った所にあった あの…。
ここが入り口やとすると こっち行ってこうして ここ曲がってからの ここ!
ここ! ここに展示されてあった花瓶!花瓶です。 こういう感じの。
家内と「ええなあ」言うて…「いつか お金ためて買おなあ」言うて…。
もう びっくりしたで。握手して下さい言うからな差し出したらこう… お母ちゃんの手ぇ見て「この手ぇが この手ぇからあのすばらしい作品が!」言いやってなもう言葉詰まって 涙目や。ハッハッハッ…。
いや 笑い事ちゃうで。おう。
掛井先生はな 普通の人やねん。うん。
初めて会うた生徒には必ず 言わはんねん。
「先生は 子どもの頃から 何かが飛び抜けて うまかったわけやない。絵がうまかったわけでも文章が得意やったわけでもない。集中力も普通。想像力も普通」。
 回想 特別なことは 何一つない。
それでも こうやって陶芸の道に進むことができた。
こうやって人に教えるまでの人間になれた。
努力する方向を間違えさえしいひんかったらなりたいもんになれるで。
ええ先生やな。うん ええ先生や。 普通の ええ先生や。
あっ 煮詰まってしまうで。 はよ食べえ。おう。
頂きます。
武志は 自分の足で歩いていきたいと翌週から部屋を借りました。
♪~
昼間は窯業研究所に通い 夕方からはアルバイトをする生活を始めたのです。
いらっしゃいませ!
喜美子は再び 1人になりました。
♪~


via Twishort Web App

Made by @trknov
Tweesome!