政府が「ない」としていたデータが存在していた。新基地建設ありきで、不都合な情報を隠そうとする政府の姿勢がまたしてもあらわになった。
名護市辺野古の米軍新基地建設の埋め立て予定地が防衛省の想定に反し、70メートルより深い海底でも地盤が「軟弱」であることを示すデータが明らかになった。
これまで防衛省が実施していないとしていた水面下70メートルより深い地点の地盤の強度試験について、同省の委託業者が土質が軟弱であることを示す調査データを2018年にまとめていた。
昨年3月に防衛省が国会に提出した辺野古の軟弱地盤に関する調査報告書(約1万ページ)にデータは含まれていた。軟弱地盤が水面下90メートルに達すると指摘される地点「B27」について委託業者の調査では、70メートルより深い地層が、地盤工学会が示す指標で6段階中2番目の軟らかさに相当する結果が出ていた。
だが昨年3月の国会審議で当時の岩屋毅防衛相は水面下90メートルに達する地点のボーリング調査について「そのものはやっていない」と答弁した。
データの存在が明らかになった10日の記者会見でも河野太郎防衛相は「沖縄防衛局として求めていたものではない」と述べ、委託業者が自主的に調査したものにすぎず、地盤強度を判断するデータとして「検討に適する試料ではない」と説明した。
データがないと受け止められてもおかしくない国会答弁があるにもかかわらず、昨年の国会で資料が提出されていることから「隠蔽(いんぺい)ではない」とも言う。不都合な事実が明らかになり、言い訳を重ねているようにしか見えない。
防衛省は、これまで水深70~90メートルの地盤は「非常に固い」との判断を示し「70メートルまで地盤改良すれば施工可能」と主張していた。その根拠は150~750メートル離れた「B27」とは別の3地点での実測値を基に、水面下70メートルまでの地盤改良で安定性が確保できるとしていたためだ。
それだけに今回明らかになったデータは、70メートルを超える地盤も軟弱であることを示し、防衛省の設計の前提を根幹から覆す可能性がある。
防衛省は「船上で行う簡易的で信頼性が低い試料で、設計に使われることはない」と言う。しかし不利なデータに目をつむって建設を進めれば、無理に無理を重ねることになろう。B27の地盤強度についても防衛省は、別の3地点での実測値の類推から導き出したにすぎない。しっかりとした根拠とは言いがたい。
施政方針演説で安倍晋三首相はこれまで言及してきた「普天間の早期返還」や「辺野古移設」などに触れなかった。今思えば軟弱地盤問題などがクローズアップされるのを避ける意図があったのだろう。新基地建設はもはや取り繕える次元にはない。設計の根拠が崩れたとも言えよう。無理な計画は即刻断念すべきだ。