創業53年の「カレーショップ フジ」は宇都宮市街地のシンボル的存在。今も多くの人が訪れる人気店です。(とちぎの時間充実マガジン「月刊twin」)
Yahoo!ライフマガジン編集部
店主の愛情が詰まった昔ながらのカレーライス
栃木を代表するお店のカレーと言えばフジのカレー。宇都宮市街地にあるアーケード商店街「オリオン通り」にオープンしてから50年以上、街並みは変わっても、ここは決して変わることなく昔ながらの味を守り続けています。
50年以上、日本の味を提供し続けるレトロなカレーショップ
- 店主 大橋さん
- 店主 大橋さん
- 「外観も内観もですが、カレーの味も変わっていないので皆さん『懐かしい』と言って来てくださいます」
昭和40年、当時多くの人々で賑わっていた繁華街でオープンしたこちら。今も昼時になると、サラリーマンや主婦、子育てファミリーなどさまざまな人で店内がいっぱいに。当時学生だった60代~70代の人たちが孫を連れてくるなど、親子3世代で通う人もいるそう!
子ども心を呼び戻すノスタルジックな味わい
銀座にある文明堂のグリルで修業を積んだという店主・大橋好守さん。地元である栃木県宇都宮市に戻り、ご両親が営んでいた定食屋の跡地で妻・恵子さんとカレーショップを開きました。子どもからお年寄りまで食べられる日本のカレーライスにこだわり続け、どんなに時代が変わろうともカレーの味を変えることはなかったそうです。
- 大橋さん
- 大橋さん
- 「今は欧風、インド、タイなどさまざまな種類のカレーがありますが、日本人にとってなじみ深い家庭のカレーライスを提供するというのがうちの店のポリシーです。味にはこだわっていますが、一番のスパイスは笑顔。こちらが笑顔になれば、お客様からも笑顔が返ってきます。それが味の決め手ですね」
その言葉通り、常に笑顔を絶やさない大橋さん。その温かみのある人柄を映しているような甘口のカレーは、どこかほっとするやさしい味わいです。当時はカレーとコーヒーのセットを100円で提供していたとか! 現在はベーシックな「カレー」(550円)をはじめ、「カツカレー」(750円)、ハンバーグなどのおかずをのせた「カレーセット」(800円~)などメニューも豊富です。
- 大橋さん
- 大橋さん
- 「実はね、うちの店、最初はハンバーガー屋だったんですよ! 栃木で本格的なバーガー店をやろうと思い、バンズもパン屋に注文してスモークチーズやキャビアなんかも扱っていました。けれど当時はハンバーガーが珍しく、お恥ずかしい話ですがお客さんがなかなか来なくて。そこで親しみやすいカレーを提供してみようと思い立ったのです」
その転機が功を奏して街中の人気店に! 元ハンバーガー屋だけあって、自家製の手ごねハンバーグはとても柔らか。ハンバーグがのったプレートは、午後には売り切れてしまうこともあるとか。
「カレーだけじゃ物足りない」という人のために考案したというカレーセット。大きなプレートにはカレー、ハンバーグ、チキンなどがのり、見た目はまるで大人のお子様ランチ! どんな大人も童心に返ってしまいそう。セットは全部で3種類あり、ビジュアル・ボリューム共に同店の代名詞ともいえる人気メニューです。
人気の秘密は、変わらない味と店主の人柄にあり!
- 大橋さん
- 大橋さん
- 「カレー屋にもかかわらずいろいろな方が来てくれて、昔は街中のコミュニティスペースのような場所になっていました。学生さんが店を宣伝するために手書きのPOPを作ってくれたり、ここで出会ったお客さん同士で結婚した方もいたり。雑誌やテレビでも取り上げてくださって……本当にありがたいですね! 長年続けてこられたのは、皆さんの支えがあったからなんです」
人気店になっても驕ることなく、謙虚な姿勢を崩さない大橋さん。思わず「ただいま」と言いたくなるような変わらない笑顔とカレーの味は世代を超えてたくさんの人々に愛されています。「懐かしんで来てくれる人のためにも店の味を守り続けたい」と話す大橋さん。時代が目まぐるしく変化している今、いつも温かく迎えてくれる「カレーショップ フジ」は人々にとって、タイムカプセルのような存在なのかもしれません。
取材メモ/カレー専門店が増えるなか、昔ながらのカレーライスが食べられる貴重なお店。子どものころ、誰もが一度は口にしているどこか懐かしい甘めのカレーは、まさに日本の国民食です。
取材・文=金谷有美子 撮影=金谷有美子、黒川円
次週、9/22(土)はカレー編 第2弾を掲載!
地元人が通う、全国の一度は行きたいカレー店。次週9/22(土)は福島、茨城、富山、熊本などの料理人とその人が作るカレーを紹介予定! お楽しみに‼︎