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(武志)桜…咲きました! やったで!
(喜美子)おめでとう!(マツ)でかした!
ようやった! ようやった!
あ~ ようやった!(マツ)あ~!
美術大学に合格した武志は学生寮に入るため明日 京都へ旅立ちます。
こんにちは。(大輔)こんにちは。
夕日が きれいなとこまでたどりつけへんかった。
ええ? タヌキの道 行った?(武志)行ったけどな足元 悪うて途中で引き返してきた。え~。
それより それよりこのあと 武志お借りしてええですか?
(学)明日には おらんようなるぅ。やめろや…。
あんたらかて…。学は あさってから大阪。 大輔は名古屋や。
今日が3人で集まれる 最後の日や。
ほやから 大津まで繰り出そう言うてんねん。
ええけど 9時までには 帰ってきぃや。
9時ぃ?高校生やで。
卒業したで。10時。
(3人)もう一声!
最終の1つ前までには帰ってきなさい。
(3人)ありがとうございや~す!
やった。ほな ちょっと待ってて。おう。
(マツ)あ~ ありがとう。
寝るには ちょっと早いけどな遅なるで 先 敷いとくな。
♪~
♪「涙が降れば きっと消えてしまう」
♪「揺らぐ残り火 どうかここにいて」
♪「私を創る 出会いもサヨナラも」
♪~
♪「日々 恋をして 胸を焦がしたい」
♪「いたずらな空にも悔やんでいられない」
♪「ほら 笑うのよ赤い太陽のように」
♪「いつの日も雨に負けるもんか」
♪「今日の日も 涙に負けるもんか」
♪~
♪「やさしい風に吹かれて」
♪「炎は再び舞い上がる」
翌朝。
ほな 行くな。えっ。
(マツ)気ぃ付けて行きや。あ… これ これ持っていき。
いらんし。そんなん食べてる人 いやらへん。
いや そんなこと… そうなん…?ってか 靴は? 靴 靴。
あ… 靴。靴 はよ はよ。
はい。ありがとう。
ほやけど入学式 ほんまに行かんでええの?
行かへんの? ええの?ええ ええ。 ほな。
行ってらっしゃい。行ってらっしゃい。
(戸の開閉音)
食べようか…。
(武志)忘れてた!えっ?
俺の代わりに 今日からおばあちゃんの布団 敷いたってな。
おばあちゃんのこと 頼むな?
布団 敷いてあげられやんで ごめんな。
体 大事にしぃや?
ほな。
武志!
楽しむんやで? 何でも楽しみなさい。
つまらんなぁ思うたらつまらんなぁいうことを。
しんどいことがあったらしんどいなぁ言うてしんどいことを楽しみなさい。
お母ちゃんに会いたいなぁ思うたら…。
そら ないわ。
会いたいなぁ思うたら会いたいなぁいう気持ちを楽しみなさい。
うん。
なあ お母ちゃん。もうええから はよ行き。
ありがとう。
大学行かせてくれて ありがとう。
行ってきます!行ってらっしゃい。
♪~
武志の大学資金は八郎が 毎月 欠かさず送ってきたお金を使わせてもらいました。
十代田さんに お礼言おう思うんよ。
♪~
℡(呼び出し音)
あっ…。
女性の声がしました。
え…。
あの…。
(くしゃみ)
(照子)来たでえ。どこの農家の奥様かしら。
家庭菜園 照子でとぅ~。かわはら工房 喜美子でとぅ。
気色悪いな。ほんまやで もう40過ぎてんで。
40って でっかいよなあ水が はじかんようになった。
ほんで また 何持ってきてくれたん。
無農薬や 収穫したばっかりやこのままでも食えるで。
どんどん本格的なってんちゃう?こういうの食べなあかんで。
成人病の予防と対策。
ほやけどな うち もう2人やで。あ…。こんな ぎょうさん もろても…。
武志 行ったんか。行った。
そうか…。 ありがとう言うた?
去り際に「大学行かせてくれて ありがとう」。
いや 武志やのうて ハチさんにお礼。
毎月忘れんと 養育費送ってくるなんて別れた亭主のかがみやで。
女がいた。え…。
うちかて けじめや思うて電話したんよ。
ほしたら 女が出よった。
キャベツ食べきれへんかったらあの 酢漬けにしたらええわ。
ほなな~。
聞いてほしいんちゃうのん。いや ええよ 別に。
いや~ 聞いたるわ しゃあないなあ もう。
何? どういうこっちゃ。ほんまに女? 何 言われたん。
一方的に向こうが しゃべりだしよった。
嫌な女やなあ。悪口言うたらあかん。
うちは ただびっくりしただけや。思わず 受話器を耳から離してしもて…。
何 言われたか分からんの?冷たい声で 抑揚のない言い回しや。
悪口やん。
回想 ℡(女性)「はい」。あ…。「十代田です。お電話ありがとうございます。ただいま 留守にしております。発信音のあとに お名前 ご用件ご連絡先を お願いいたします」。
あの…。℡(発信音)ピー。
ピィ~いうからまた びっくりして ヘクションや。
ピィいうたんか。うん?
ピィいうてたんか。ピィ~。
もっと世の中 知っとけ!えっ。
今 何 はやってるかこれから何が出てくるか!
半径10メートル以内で生活してるからもの知らんのや!
何 言うてんの。もっと外に目ぇ向けえや!
うちかて はやりもんくらい知ってんで。
ピンクフィーバーズ!
もう解散したで。
(直子)留守番オンナや。留守番オンナ?
(鮫島)留守ん時に 代わりに応対してくれるいうのがあるんです。
(留守番電話のまねで)お電話ありがとうございます。ああ!
そうそう そうそう!それ それ それ それ それ!
ああ そうか 留守番オンナか…。
(マツ)ほな 女の人がおるいうんは間違いなんやな?
間違いかどうかは分からへんで。かけてみる?
今度は 留守番オンナやのうて本物オンナが出るかもしれへん。
何や 本物オンナて。
お礼言うんやろ?うん… 気が そがれたいうか…。
(マツ)え…。(百合子)あかんよ お礼は言わな。
無事 大学合格しましたいう報告もな。報告は武志がしてる。
母親としてそういうこと きちんとしとかなあかん。
百合子に叱られてやる~。お礼状にしとくわ…。
住所 分かんのん?信作が知ってんのやろ?
うん… 東京出張やし…。もう 忙しなあ。
帰ったら聞いとくわ。さあ 分けたでえ。
ありがとう。 うまいでえ 百合子の…。
パウンドケーキ。そう それ。
何 飲む? 何 飲みます?あっ ええよ ええよ。 やる やる。
コーヒーでええやんな?(鮫島)うん。お母ちゃん お茶?
うん 何でもええよ。桜ちゃんと桃ちゃんは ジュースな。お姉ちゃんはコーヒーやろ。 百合子もな?うん…。
お砂糖いらんやんな。ああ。
えっ 何? みんなして黙って。
2人で よく旅行に行ってるんやろ。
商売も夫婦仲も上々やもんなあ。
旅行は 行ったさきざきで必ずお土産買うて→
送ってきてくれるしなあ。武志にもな ありがとう。
いえ。 寂しいですよね武志君 京都行ってしもうて。
もう そういうこと言うたら あかん。ほら 持っていき 鮫島。 運んで。
はいはい。ちゃっちゃとせえ。
しおらしくなったんか思うたら。
あんなあ 肉じゃががうな重に変わるわけないやん。
何や その例え。うな重! ええなあ 晩ごはん…。
うな重 食べたい。
高いで。食べたい。
高い高い。高いよなあ… 食べたいなあ…。
そんなん 誰が出すん。あの 僕 出しますよ。
ありがとう! 鮫島~!(直子 百合子)ありがとう!
♪~
しゃべらへんのん?
しゃべり尽くした。
食べすぎた…。お母ちゃん 眠たないの?
久しぶりに そろたもん寝んのんもったいないわ。
ほな お母ちゃんもこっち来てしゃべりぃ。
うん 何でも聞いたる。
はあ…。
ほな… あれ言おうか。うん?
幸せな死に方。やめえ。
何?聞きたい。
お母ちゃんの幸せな死に方はなあこうやって 楽しくおしゃべりしてるうちに ゆら~っと…。
やめえ やめえ それ もう。
そういうこと言うてる人ほど長生きするもんやで。
誰の編んでんの?お母ちゃんのんや。
え… そやったん?うん… 若すぎるやろか?
いや ええんちゃう?
うん。 ええなあ。
ええなあ。
ええな。
母と娘たち 久しぶりに しゃべり尽くした楽しい一日でした。