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(陽子)やっと完成したんかいな。
わあ! ええやん すてきに出来てるやん!
なあなあ あんた 見て見て 見て見て。ほら ええの出来てるやんなあ。
(大野)ああ ええけどえらい季節外れやな。
今 着るんやないんよ。うん?
いつかな 天国のジョーさんにこれ着て会いに行くんやて。
あ~。これで 捜してもらうんやて。
ジョーさん 喜ばはるな。なあ! ええなあ。 うん?
マツさん 寝てしもた。
(陽子)あっ ほんまや。(大野)ハハッ しゃべり過ぎたんちゃうけ。
(陽子)よう笑てたからなあ。(笑い声)
(大野)マツさん!
マツさん! フフフフ…。
♪~
♪「涙が降れば きっと消えてしまう」
♪「揺らぐ残り火 どうかここにいて」
♪「私を創る 出会いもサヨナラも」
♪~
♪「日々 恋をして 胸を焦がしたい」
♪「いたずらな空にも悔やんでいられない」
♪「ほら 笑うのよ赤い太陽のように」
♪「いつの日も雨に負けるもんか」
♪「今日の日も涙に負けるもんか」
母が亡くなって 3年と半年が過ぎました。
母のいない生活にも慣れました。
一人で食べるごはんにも 慣れました。
♪~
℡
(喜美子)はい 川原です。
「十代田です」。 久しい声が聞こえました。
(照子)嫌や言うてるやん。
(住田)嫌や言うてる場合やない言うてるんです。展示会もあるし 個展の話も来てる。先生は 今年もまた忙しいんです。
ほやから 先生は…。川原さん。 ほな 川原さんね後援会会長として いや 美術商としていや 住田いう一人の人間としてはっきり言わしてもらいますわ。川原さん もう 若うないやん。
若いでえ! いうてもな住田さんから見たらうちら ピッチピチやで!
一人で あれもこれも やるんは大変やいうんです。
通いでええから弟子を2人か3人入れてそないな雑用は任せはったら どないです。
掃除も洗濯もごはんも こしらえてもろて…。
弟子はいらん言うてるやん!
無理して 体 壊さへんか心配で言うてるんです。
こう見えて 体は丈夫なんです。
せやから それは 今までの話や。
もっかい言わしてもらいますけど若うはないんですよ?
もっかい言うけど ピチピチやあ!
お宅かて川原さんが一人でおられるの心配してちょこちょこ来てはるんでしょ。あんなあ… お客さん来んねん。
ほら お客さん来る言うてるやん。
えっ 珍しい お客さん?悪いけど。
(戸が開く音)
アホや渡しに来たのに持って帰ってしもた。
ほんまやな。
ほんで… 引き返したとこで会うた…。
(戸が閉まる音)
(八郎)こんにちは。
あっ お久しぶりです。
お久しぶりです。
手ぇ合わせに来たらしいで お母さんに。
お声かけんで すいませんでした。いえ 僕も仕事忙しかったんで…。
奥です。 分かりますよね?はい。
・何年ぶり? 10年? もっとたつか。・そやな…。
あ… ちょちょちょ…塗ったら?ええ?
いや… 少しはな どうでもええけど少しは きちんとしとき。
あっ 口紅ないのん?何で今から塗るん もう顔合わせたやん。
気ぃ付かへんよ 向こうかて年や。
今からグ~ッと きれいに塗ったれ。
分かるて。 手ぇ合わせて戻ってきたら唇 真っ赤っか? なに待ち構えてんねん。
おかしいやん そんなん。おかしないで 同窓会行ってみみんな やたらめったら化粧 塗りたくってるで。
これ 同窓会か?ちゃうな。
ちゃうで。そうか…。
ほな…。十代田さん! 帰りますぅ。
はい また。またな。
またな。 ありがとう。うん はいはい。
(戸の開閉音)
お茶いれますね。 座ってて下さい。はい。
あれは いつやったか…。
大学の寮に電話したんです。
そしたら武志に 「何?」言われて。 フッ。
明るい張りのある声で「大丈夫や 心配いらん 楽しい」言うんで「ほな 困ったことあったらいつでも言うてこいな」言うて電話切りました。
そっからは僕を頼ってくることもなく…もう あっちゅう間に卒業や。 早いな。
早いです。はい。
あっという間や。はい。
陶芸家 目指す 言うてます。はい。
大学出たからいうて はい 今日から陶芸家いうわけにはいきません。
僕が昔 そう言うた。
ほんで どこかに弟子入りするいうことも考えたはずや思うんですけど。
信楽窯業研究所に通うことになりました。
そこで実践を学ぶんか…。
そう言うてます。
何を あれしたいんやろな。
どんなふうに考えてんねやろ。
詳しいことはまた戻ってきたら話す言うてました。
いつでも言うて下さい。
名古屋におります。
そう遠いことないし 何か相談事があれば。いえ。
卒業後の 進む道が決まったんできちんと お伝えしておこう思うただけです。
改めて きちんと お礼言わせて頂きます。
長い間 毎月欠かさず武志のために ありがとうございました。
お世話になりました。
5年ぶりに会うた時…武志と5年ぶりに会うて「おう」「おう」言うて…。
2人で 小さな店です。
たぬきそば…。ああ 聞きました?はい。
入って 並んで食べました。
いや 食べようとしたんやけどね…すぐには食べられへん胸が グ~ッと こう詰まってしまって…。
箸を持つ手ぇが止まってしまったんです。
そしたら 武志は待ってくれました。
僕に合わせてくれた…。
黙って ゆっくり…もう えらい時間かけて食べました。
最後はもう2人で顔見合わせて笑いました。
ええ子に育ててくれて…頭下げなあかんのは こっちの方です。
僕が至らんかったばっかりに…。やめようや。
もうやめましょう。そんなん言うたら うちかて…。
ごめんな うちが頭下げたからやな。すいません。
お互い もう済んだ話や。
終わった話です。
せやな。
はい。
ほな…。
はい。帰ります。
はい。お邪魔しました。
お母さんの好きやった味です。お供えしてもらえたら…。
すいません 喜ぶ思います。はい。
あの 「ヘックション」は川原さんですよね?
回想 あの…。℡(発信音)ピー。
(くしゃみ)
アハッ ヘックションだけやったんで…あん時 折り返した方がよかったんやろか…。
あ… いや 違います。 うちやありません。
川原さんやな。違います。
フフ…。
ほな 失礼します。はい。
お元気で。
十代田さんも お元気で。
さようなら。
さようなら。
「ヘックション」。違います。
(足音)
(足音)
(大輔)こんにちは おばさん!(学)こんにちは~。
あ~ こんにちは 久しぶりやなあ。(学)久しぶりです。
(大輔)あれ 武志 まだですか?荷物が 先 来た。
ええ!? もう あいつ…。中に武志いません?
いや おるわけないやん…。ああ 手伝いますよ。
ああ ありがとう。ああ 俺も手伝います。
ありがとうな。学 かけて。
あんたらも戻ってきたんやなあ。
(大輔)僕は 信楽やなくて 大津ですけど。先生なるんやろ。
小学校の。
こんなんが小学校の先生ってどないや。
ハッハッハッハッ。(学)そんなん言うたらこんなん米屋の店先におったらどうです?
あっ 後継ぐんやろ? お父さん大丈夫か?
なんとか歩けるまでには回復しました。よかったなあ お母さん 心配してたでえ。
僕が帰ってきたんで 喜んでます。また一緒に暮らせる言うて。
はしゃいではったな?和室を無理やり洋風に変えてベッド買うてもらいました!ベッド!
しかも おばさん ダブルベッドやで。シングルや。
でかかったやん。部屋が狭いからや。
ええなあ ベッド。武志にも買うてやろうかなあ。
(学)おばさん和室にベッドは 空間が ゆがみますよ。
(武志)ただいま。
(学)おお! 武志や~!(大輔)武志!何 何 何 何…!
武志!久しぶりやな!
(笑い声)
ただいま。
お帰り。