パンター戦車の操向装置について記述してきたわけであるが、操向装置の種類を「ダブルディファレンシャル」と種類分けしたわけなのだが、「8輪装甲車」さんの所でも3号戦車とパンター戦車の操向装置の類似性を指摘していたように、パンター戦車の操向装置は3号戦車の操向装置に操向駆動機構を足したものになっている。
としたら、一般的には「クラッチブレーキ」とされている3号戦車の操向装置は「ダブルディファレンシャル」なのか?
という疑問が出てきた。
実は、パンター戦車の操向装置は「ギアードステアリング」という資料もある。
同様に、97式中戦車も「ギアードステアリング」としている資料もあるのだ。
両者、というか、3号戦車、パンター戦車、97式中戦車のすべてに共通するのは「遊星歯車機構:プラネタリーギヤ」である。としたら3号戦車もギアードステアリングなのか?
日本語資料は全てにおいて不明確であり、読めば読むほど?????である。
「操向変速機」と、「変速操向機」そして「変速機」がごっちゃになって意味不明の資料もある。
そこで、「タンクテクノロジー」(著:林磐男)でも引用している世界的な戦車の権威であるリチャード・M・オゴルキィウィッチ(Richard M Ogorkiewicz)氏の著作に何かあるのジャマイカと思って調べたら、あったね。
「Technology of Tanks I -II」
著:Richard M Ogorkiewicz
発行:JANE'S INFORMATION GROUP
発行年:1991年
なるほど。
3号戦車は「クラッチブレーキ」
パンター戦車は「ギアードステアリング」
97式戦車も「ギアードステアリング」
ティーガーは「ダブルディファレンシャル」
やっと納得できる回答を得られた。
ほぼ同じ構造の遊星歯車機構も3号戦車は「クラッチ(エピサイクリッククラッチ)」として、パンター戦車と97式中戦車は「操向変速機」として、ティーガー戦車は「差動機(ディファレンシャル)」として機能するわけだ。
ややこしいな。
ただ、パンター戦車の操向装置である「マルチプルギアードステアリング」の説明が間違っているような気がするのは気のせいなのだろうか?
戦車界の重鎮に意見できるような立場ではないのは重々承知だが気になった。