最新記事

新型肺炎:どこまで広がるのか

新型コロナウイルス:「ゴーストタウン」北京からの現地報告

REPORTING FROM A GHOST TOWN

2020年2月10日(月)11時15分
齋藤じゅんこ(ジャーナリスト)

北京中心部の企業街からも車と人がほとんど消えてしまった(2月3日) KEVIN FRAYER/GETTY IMAGES

<感染を恐れ、市民が外出を控えた街はまるでSFの世界。厳戒態勢下の市民生活を在住ジャーナリストがレポートする。本誌「新型肺炎:どこまで広がるのか」特集より>

北京の常住人口は2154万人。東京の約1.5倍が暮らす大都市だ。なのに、人の姿がほとんど消えた。道路にも、バスにも、ショッピングモールにもいない。
20200218issue_cover200.jpg
2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)のときを含め、20年以上この街に暮らしてきたが、こんな状況は初めてだ。感染を恐れ、また政府の呼び掛けに応え、市民は外出を控えている。

北京市民が新型肺炎の深刻さを認識し始めたのは春節(1月25日)直前で、それまではほぼ平年どおりだった。その後もまだ、春節前夜には中国版紅白歌合戦の「春節聯歓晩会(春晩)」をのんびり見ていたし、初日には「家で何もせず、ゴロゴロすることで社会に貢献できるときが来た。この機を大切にしよう」というジョークがSNSの微信(WeChat)で出回る緩い雰囲気があった。通常、春節が始まると親戚巡りで忙殺されるからだ。

ところが27日、筆者の自宅のすぐ近くに住む企業幹部(50)の北京初となる死亡例が報告されると、新型肺炎は北京市民にとって一気に身近な脅威になった。

日に日に増える患者数とともに、予防意識も高まる。今では階数ボタンでの感染を恐れて、エレベーター内にはボタンを押すためのティッシュや場合によってはつまようじまでが常備されるようになった。

毎年、北京の春節は人口の約半分が帰省するためひっそりとする。だが今年は春節前に出掛けた1000万人のうち800万人がまだ戻っていない(2月4日発表時点)。今もゴーストタウンのように不気味に静まり返ったままだ。

筆者が住む居住エリア内の地元スーパーは通常どおり営業しており、客もいる。だが3本の地下鉄が乗り入れる交通拠点で、普段ならにぎやかなIT企業・大学エリアである西直門の大型ショッピングモールは閑散としている。店舗の約半分がシャッターを下ろし、モール入り口前の駅前バス停にも人影はない。空の2両編成の路線バスが入ってきたが、止まらずに走り去った。

モール入り口や地下鉄改札口、集合住宅の入り口など至る所で体温検査が行われている。モール1階の英系大手コーヒーチェーンのカフェに入ったが、いつも満席でにぎわう夕刻前にもかかわらず、来客は1テーブルだけ。まるでSFの世界に入り込んで幻を見ているようだ。

ニュース速報

ビジネス

日経平均は続落、米国株安 休日控えで手仕舞い売り優

ビジネス

ドル109円後半、中国企業の活動再開ぶり注視

ワールド

NZ、新型肺炎の経済的影響は不可避だが対応可能=首

ワールド

太平洋島しょ国の開発支援で豪州と連携へ=インドネシ

MAGAZINE

特集:私たちが日本の●●を好きな理由【韓国人編】

2020-2・11号(2/ 4発売)

日本のさまざまなカルチャーに惚れ込んだ韓国人一人一人の知られざるストーリー

人気ランキング

  • 1

    「歯肉から毛が生えた」という女性の症例が世界で初めて報告される

  • 2

    ヒヒにさらわれ子どもにされた子ライオンの悲劇

  • 3

    マスク姿のアジア人女性がニューヨークで暴行受ける

  • 4

    新型コロナウイルスはコウモリ由来? だとしても、…

  • 5

    BTSと共演した韓国人気子役がYouTubeで炎上 虐待さ…

  • 6

    「武漢はこの世の終末」 チャーター機乗れなかった米…

  • 7

    冗談なの? 20年後のデスクワーカーの姿を予測した人…

  • 8

    新型コロナウイルス 世界に広がる東洋人嫌悪   

  • 9

    「脳性麻痺の息子がもうすぐ死ぬ」 新型コロナウィ…

  • 10

    新型コロナウイルスから身を守る10の方法(科学ジャ…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

英会話特集 資産運用特集 グローバル人材を目指す Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
CCCメディアハウス求人情報
ニューズウィーク日本版プレゼント
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
CHALLENGING INNOVATOR
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

絶賛発売中!

STORIES ARCHIVE

  • 2020年2月
  • 2020年1月
  • 2019年12月
  • 2019年11月
  • 2019年10月
  • 2019年9月