現在、NHK総合テレビにて放送中のTVアニメ『映像研には手を出すな!』が大きな話題になっている。
3人の女子高生がアニメ制作に情熱を傾ける姿を描いた作品で、現実と空想が入り混じり、豊かな想像力を駆使した作風が多くのアニメファンの心を捉えている。
原作は、『月刊!スピリッツ』にて連載している大童澄瞳先生による同名漫画。高校時代は映画部に所属して自主映画を撮り、独学でアニメーションを学んだ体験を活かし、これまでにない独特の漫画スタイルを築き上げている。
そんな大童先生に、映画的と言われる自身の漫画スタイル、放送中のTVアニメ版の魅力、アニメーションの動きの面白さについてなど、存分に語ってもらった。
トランスフォーマーの“あの動き”が好き! 映像的な作風が生まれた理由
――大童先生の漫画は絵コンテを彷彿とさせますが、絵コンテの描き方を本格的にどこかで学んだのですか。
大童:いえ。細田守監督の『時をかける少女』や宮崎駿監督の『ルパン三世 カリオストロの城』の絵コンテ集を読んで、独学で学びました。それと高校で実写映画を撮っていて、その時にどうやってカットを割ればいいかをさんざん考えたので、その経験が活きているんだと思います。
高校での撮影は、放課後の数時間で撮影しないといけませんから、限られた時間でスムーズに撮影するにはコンテを作った方がいいんです。
――『映像研~』の、浅草氏が寂れた部室内の2階から落下するシーンは、原作でも切り返しのカットがきちんと描かれていて、こだわっているなあと思いました。
大童:ありがとうございます。僕は漫画を描いた経験がほとんどなくて、自分が知っている表現手法は、実写かアニメか、あるいは絵コンテぐらいだったので、その手持ちのカードで描かざるをえなかったんです。
――大童先生は実写映画についても詳しそうですね。小学校時代にキャロル・リードの『第三の男』を観まくっていたという話は聞いたことがありますが。
大童:実写も格好いい映像のある作品は好きです。リュック・ベッソン脚本・原案の『YAMAKASI』とか好きですね。単純に飛んだり跳ねたりするシーンが多くて楽しいです。
あとマイケル・ベイ監督の『トランスフォーマー』も好きです。子供って、よく手で「キーン、ドーン」みたいなことやって遊ぶじゃないですか。ああいうのは未だにやってしまうんです(笑)。
『トランスフォーマー』1作目の砂漠のシーンで、サソリみたいなやつが砂の中からドーンと出てくる時の動きを真似したりしていました。胸を張り出して殴る前のポーズで出てくるんですよ。斜めに腕を振り上げている感じを真似してみて「これな」とか思ったりしています(笑)。
――「これな」ですか(笑)。
大童:「これな」ですね(笑)。あと、オプティマスプライムが地球にドーン!とやって来て、ある住宅のプールに落ちるんですが、プールサイドにゴーン!と足を着くカットがあるんですけど、そこの踵周りの動きが格好いいんです。
ストーリー的には『ミスト』やヒッチコックの『鳥』、『トゥモロー・ワールド』みたいな作品が好きです。ディストピアっぽくて、世界の謎は最後まで解けないみたいなものが好きですね。
『映像研~』にはそういう側面は出していませんが、自分の手綱をしっかり握っていないと、暗いものを描いてしまう自覚はあります。
――ご自身の中の暗い面を制御しているんですね。
大童:そうですね。人が死ぬ映画が好きなんです(笑)。最近、面白いと思ったのはクエンティン・タランティーノ監督の『ヘイトフル・エイト』です。
――どこかのインタビューで、吹き出しに立体感をつける手法を『探偵はBARにいる』を引き合いに出して説明していて、それがすごく印象に残っているんです。
大童:それは順を追って説明すると、あの吹き出しの演出は最初、同人誌でやったんです。俯瞰のカットだったんですが、背景が吹き出しでほとんど隠れてしまい、それだと俯瞰であるインパクトが削がれてしまうので、吹き出しにパースをつけてみたんです。
そうしたら、台詞という「音」がその空間に馴染んでいるような印象になるという別の効果にも気が付いたんです。マイクが環境音を拾って音が空間に定着しているイメージですね。その例えとして『探偵はBARにいる』を例にしてお話したんです。
――なるほど。音の空間を意識するのはすごく映画的な発想ですね。
大童:そうですね。僕にとって吹き出しは邪魔なんです。アニメでも実写映画でも基本的に存在しませんし、絵をレイアウトで見せたいのに、何だか知らないけど変な楕円が被さってくるなあと思ってしまって。
背景が真っ白な時などは吹き出しがあると助かるのですが、僕がやりたいことからすると邪魔だと思うことが多いです。
――やはり常に空間を作ることを意識されているんですね。
大童:そうですね。レイアウトを作る時も常に空間を表現することが重要だと思っています。
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