数年先、この少年はきっとナゴヤドームで躍動する。キャンプ前におぼろげに見えた輪郭が、デビュー戦でまた少しクリアになった。ドラフト5位の岡林(菰野高)だ。4回の守備から登場し、裏の打席ではカウント2-2からのストレートを力強く引っ張った(一ゴロ)。
「緊張? いえ、それほど。振ってこいよと(コーチたちに)言われていたので振れたのはよかったです」。平然と話す度胸がいい。特Aクラスの強肩と俊足。体幹の強さも感じさせる。
僕が読谷を訪れたのは岡林を見るためだが、同時に大島を取材するためでもあった。「1番・中堅」。自分を脅かすかもしれない新星と、同じキャンプ地で調整を進めている。
「もちろん見ていますよ。いい選手です。まず肩が強い。(打撃を)遠くから見たら、最初、根尾と間違えました。僕とは16(学年)違います。でもね、今のままじゃまだ負けませんよ」
中日のドラフト史には当たり5位の歴史がある。東の横綱は通算219勝の山本昌。西の横綱はベストナイン5度、ゴールデングラブ賞7度の井端弘和。そして大関が通算1442安打の大島だ。ドラフト当日、自分は日大に進み、教員を目指すと決めていた山本昌は「人ごとだと思って」ラジオ中継を聴いていた。いつまでも名を呼ばれず、あきらめた井端は「パチンコを打っていたら」朗報を知らされた。大島もそう。
「阪神の上位と聞いていたので、それがなかった時点でああダメだと…」。事前の指名約束などなく、取材陣もまばらな“ドラ5あるある”。そこから金色に輝くサクセスストーリーを紡いでいったのだ。
大島から定位置を奪い、岡林も栄光の系譜に名を連ねるのか。大島がはね返し、他のポジションに回るのか。そもそも、なぜそんな逸材が5位で取れたのか。