2016年11月13日大学・一般数学方程式・不等式大学・一般数学
ルドヴィコ・フェラーリが発見した4次方程式の解の公式とその証明、またその発見までの経緯について紹介します。
①歴史
②解の公式と証明
③例
①歴史
1545年、ジェロラモ・カルダノが著書『アルス・マグナ』で3次方程式の解の公式について初めて述べました。この『アルス・マグナ』の中で、実は4次方程式の解の公式についても載せています。
4次方程式の解の公式を発見したのは、カルダノの弟子であるルドヴィコ・フェラーリ。フェラーリは、タルタリアのヒントから3次方程式の解の公式をカルダノと探っているうちに、4次方程式の解の公式を見つけました。
フェラーリはその後、3次方程式の解の公式の発表でカルダノと揉めたタルタリアと、数学試合(互いにいくつか問題を出し合い、期限までに解いた数が多いほうが勝ち)を行い、勝利しています。
※「2次方程式の解の公式」はこちら。
※「3次方程式の解の公式」はこちら。
②解の公式と証明
4次方程式解の公式
4次方程式
ax4+bx3+cx2+dx+e=0
を変形してできる4次方程式
(x2+l)2=(mx+n)2
から、この方程式の解は次のように求められる。
x=−m±√m2−4(l+n)2,m±√m2−4(l−n)2
解の公式を得られるまでの式変形が大変ですが、この手順を踏むことで4次方程式の解が確実に求まります。では、どのような式変形を施せばよいのかを証明の中で見てみましょう。
証明
4次方程式
ax4+bx3+cx2+dx+e=0
の両辺を、aでわると、
x4+bax3+cax2+dax+ea=0
となり、それぞれの係数を文字で置き換えて、
x4+Ax3+Bx2+Cx+D=0
とできる。ここで、y=x+14A で置き換えて、式変形していくと、
(左辺)=(y−A4)4+A(y−A4)3+B(y−A4)2+C(y−A4)+D=y4−Ay3+38A2y2–116A3y+1256A4+Ay3−34A2y2 +316A3y–164A4+By2–12ABy+116A2B+Cy−14AC+D=y4+(38A2–34A2+B)y2+(−116A3+316A3−12AB+C)y +(1256A4–164A4+116A2B–14AC+D)
この式のカッコの中をさらに文字で置き換えることにより、どんな4次方程式も y4+py2+qy+r=0
と変形することができる。この式を移項して、
y4=−py2−qy−r
とし、両辺に2ty2+t2 を加えると、
y4+2ty2+t2=−py2−qy−r+2ty2+t2(y2+t)2=(2t−p)y2−qy+t2−r
となる。ここで使った t はどのような数であれば良いかを考える。 左辺が2乗の形になったため、右辺も(my+n)2の形になれば、
(y2+t)2=(my+n)2(y2+t)2−(my+n)2=0(y2+my+t+n)(y2−my+t−n)=0
となり、2次方程式が2つの形となる。 右辺が(my+n)2の形になるための条件は、(右辺)=0の判別式D=0となればよいので、
q2−4(2t−p)(t2−r)=0
をみたすtを決定すればよい。 そのようなtを決定することで、4次方程式は
(y2+my+t+n)(y2−my+t−n)=0
となるため、2次方程式の解の公式から、最終的な解として
y=−m±√m2−4(t+n)2,m±√m2−4(t−n)2
が得られる。
4次方程式
の両辺を、でわると、
となり、それぞれの係数を文字で置き換えて、
とできる。ここで、 で置き換えて、式変形していくと、
この式のカッコの中をさらに文字で置き換えることにより、どんな4次方程式も
と変形することができる。この式を移項して、
とし、両辺に を加えると、
となる。ここで使った はどのような数であれば良いかを考える。 左辺が2乗の形になったため、右辺もの形になれば、
となり、2次方程式が2つの形となる。 右辺がの形になるための条件は、の判別式となればよいので、
をみたすを決定すればよい。 そのようなを決定することで、4次方程式は
となるため、2次方程式の解の公式から、最終的な解として
が得られる。
③例
3次方程式の解の公式と同様、様々な式変形が必要であることがわかりました。 では、証明と同様の手順を踏んで、4次方程式を1題解いてみましょう。
例題
次の4次方程式を解の公式を用いて解きなさい。
x4−12x3+49x2−78x+40=0
解説
まず、y=x+−124=x−3で置き換えると、4次方程式の左辺は、
(左辺)=(y+3)4−12(y+3)3+49(y+3)2−78(y+3)+40=y4+12y3+54y2+108y+81−12(y3+9y2+27y+27)+49(y2+6y+9)−78(y+3)+40=y4+54y2+108y+81−108y2−324y−324+49y2+294y+441−78y−234+40=y4−5y2+4
よって、例題の4次方程式は
y4−5y2+4=0
と変形できた。この式を移項して、
y4=5y2−4
となる。ここで、両辺に2ty2+t2を加えると、
y4+2ty2+t2=5y2−4+2ty2+t2(y2+t)2=(5+2t)y2+t2−4
となるため、右辺の判別式D が 0 となるように、t を求めると、 −4(5+2t)(t2−4)=0
t=−52,±2
となる。どのt の値を使ってもよいため、計算しやすさからt=2 を採用して、 4次方程式に代入すると、
(y2+2)2=(5+2×2)y2+22−4(y2+2)2=9y2(y2+2)2−9y2=0(y2+3y+2)(y2−3y+2)=0(y+2)(y+1)(y−2)(y−1)=0
y=−2,−1,1,2
であり、最初にy=x−3と置き換えていたため、最終的に求めたい解 x は、
x=1,2,4,5
となり、解は求まった。
まず、で置き換えると、4次方程式の左辺は、
よって、例題の4次方程式は
と変形できた。この式を移項して、
となる。ここで、両辺にを加えると、
となるため、右辺の判別式 が となるように、 を求めると、
となる。どの の値を使ってもよいため、計算しやすさから を採用して、 4次方程式に代入すると、
となるため、あとはこれを因数分解する。
であり、最初にと置き換えていたため、最終的に求めたい解 は、
となり、解は求まった。
実際、例題の4次方程式を因数分解すると、
x4−12x3+49x2−78x+40=(x−1)(x−2)(x−4)(x−5)
となるため、この4次方程式の解の公式で、確かに求められていることがわかります。
☆参考文献
・Bertrand Hauchecorne , Daniel Suratteau(2015)『世界数学者事典』,pp399-400,熊原啓作訳,日本評論社.
3次方程式ほどではないけど、解の公式が複雑・・・。(・□・) 解の公式というか、解を求めるマニュアルですね。