静かに苦境に耐え、誰より人のことを思いやる。前出の政光氏も、こう証言する。
「生前の姉は、どうすればファンの方々の心に残る演技が出来るのかを模索していました。
同時に、ファンとの交流も大切にしていたんです。毎週何百通ものファンレターが事務所に届くのですが、そのすべてに目を通していました。ときには筆を取って返信することさえもあったんです。
ファンレターの中には、姉に人生の悩みを赤裸々に打ち明けるものもありました。『生きていても良いことがない。自殺したい』と綴られた手紙が届いたこともある。
そんな時、姉は『いまは辛いかもしれないけれど、必ず報われる日が来ます。一緒に生きていきましょう』と直筆の手紙で励ましていました。それを他の人に言いふらしたり自慢することもない。そっと苦しむ人の傍に寄り添う、そんな人だったんです。
姉の死後、『大原さんの手紙のおかげで、自殺を思いとどまったんです』というお礼も随分いただきました」
月日は流れ、時代は変わる。それでも女優・大原麗子の輝きは色あせない。ときどきでいい。あの優しい声に、もう一度癒やされたい。
「週刊現代」2020年1月25日号より