姑の勝負と嫁のぶっこみ
オババは決意した!
いやもうね、姑の決意って、困ったもんだから。
嫁の立場で納得できるものってないから。
たとえば、家のインテリアから、玄関マットの色まで、ことごとく反対意見になるのが正当な嫁と姑の関係。
で、もって、1573年晩夏の戦国時代に。うちの姑、オババが決意した。
だから、私は反対である。
断固、反対したい。
なにがなんでも反対する!
なぜって?
だって、聞いてよ、奥さん!
おじさん、おばさん、お子さんに青年たち、ついでにJKもJDも。
歴史では、明日、小谷城を攻めるはずの秀吉が信長に捕らえられたって、だから、代わりに自分で攻めるって言うのですよ。
ないよね、それないよね。
普通の主婦だから、料理のおばあちゃんの知恵的なことならオババでも。
というかディズニーランドとディズニーシーをいかに攻略するかって戦いなら、戦略から情報、オババの右に出るものなし。
それは言える。
たとえ嫁でも、そこんとこは認めておく。
でもね、戦国時代に特攻していくなんて、そりゃ、ありえんから。
孫子の兵法
戦いに勝つための孫子の兵法にこんなものがあるんだ。結構、意訳してるけど。ま、そこは、アメリッシュなんで。
ひとつ、負けない備えをする
ひとつ、勝算を相手より上にもつ方法を考えよ
ひとつ、戦いの場では常に平静を保ち、相手を油断させよ
ひとつ、優秀なものを使え
なんか、結構当たり前なこと言ってる。
でも負けない備えなんて、最初からないし。
どことっても、勝てる要素、ないから。
ぜったい76歳オババの手に余るって、体だけは若く戦国時代の女に乗り移っているけど、結局のところ、おばあちゃんだから。
でね、言ったよ、私。
「無理!」って。
「いや、秀吉を取り戻そう」
「それこそ、不可能だろう、な、弥助」
昭和11年の未来から、やはり過去に飛んできた元青年軍人の弥助に同意を求めた私。
「無理であります」
弥助も弥助で、すっかり昭和初期の軍人言葉で対応していて。
そんな、バカな会話が何度も何度も繰り返された。
いい加減、会話に疲れたところで、オババが聞いた。
「で、秀吉の配下はどこにいる」
「へぇ、こっちでさ」
未来から過去へきて1年間。弥助は下人が板についてるのか、だから、伸びた背筋を曲げると、再び信長の下人に戻った。
その時、私は、ふいっと妙案が浮かんだんだ。
そうか、竹中半兵衛、彼がいる。
稀代の軍師、秀吉の参謀にして、この時期は横山城で浅井の家臣団を調略していたはず。
彼はどうなったんだろう・・・
「オババ、竹中半兵衛だ。彼なら、私たちの話を聞くかもしれない。弥助、半兵衛はどこにいる」
「竹中半兵衛? 誰だ、それは?」
ええい、軍人、使えねぇ。
昭和11年の軍人、真正面からの真っ向勝負ならいいが、こういう時にはからきし使えない。
未来から来てるのに、何も知らないのか。1年もいて竹中半兵衛と会ってないのか。信長が惚れた軍師なんだよ。
私のイメージじゃあ、身体は弱いが、めっちゃ頭の切れる男のはずだ。
現代なら、きっと東大首席だから。たぶん・・・
弥助は鼻をこすると、髭面の日焼けした顔でニッとわらった。
「それほど遠くはない。2里もなかろう」
「2里とはなんじゃ」と、オババが聞いた。
弥助の時代はまだ庶民は距離に里を使っていたんだ。たしか、1里は正確には覚えてないけど、4キロ弱だったはず。
ということは、8キロもない距離ってことか。
「オババ、ここから歩いて2時間もない。馬なら、もっと早い」
「行くぞ、アメ」
「オババ、馬に乗れるの」
「ふん、若いころは乗馬クラブの女神と呼ばれておった」
嘘やろ!
女神のところは、さっぴいても、ほんと、うちの姑、なんでも手を出すから。馬を乗りこなせても、私は驚かない。
「よし! 行こう」
「弥助、ついてきて」
「おう、わかった」
・・・・・つづく
Netflix海外ドラマ『ストレンジャーシングスStranger Things』
『ストレンジャーシングス』については、なんと書いていいのか迷う。
ネットフリックスを見ているなら、とりあえず、この番組って、そんなドラマなんであります。
見れば、確実に夢中になるけど、ちょっと質の違うドラマで。
正統派でもないし、ときどき笑いもあって、ミステリーぽいSFで、ついでにノスタルジィを感じる、そんなドラマです。
時は、1983年のアメリカの平和なホーキンスという片田舎の町で起きる事件。
ストーリーも素晴らしいが、日本でいうと昭和58年という時代。
ファミコンが出始め、バブル景気の前、「ET」「ジョーズ」「スタンド・バイ・ミー」など80年代の名作映画を彷彿する世界観がいい。
自転車に乗った少年たちの姿が、まさに「ET」そのもの。
彼らの底抜けに明るい姿がなんとも清清しいドラマです。
物語は少年たちの仲間が行方不明になるところからはじまります。
ボナーラ(id:bonara)さんも、おすすめしてましたよね。
やはり、面白いね!