医療機関や薬局が、治療や薬の対価として受け取る診療報酬の改定内容が決まった。
昨年末、薬価などを引き下げつつ、医師の技術料や人件費などにあたる部分を引き上げる大枠が決まっており、全体的に医療機関への報酬を手厚くする項目が目立つ。その1~3割を、患者が負担することになる。
何のための負担増か。患者にとってどんな利点があるのか。国民にわかりやすく、安全で質の高い医療の実現につながる改定としたい。
柱の一つが、医師の働き方改革に向けた取り組みの強化だ。勤務医にも24年度からは残業時間の上限規制が適用され、病院は新たな人手の確保や業務の見直しなどを迫られている。
このため、救急搬送を年間2千件以上受け入れていて、勤務医の負担軽減や待遇改善のための計画を作っている病院に入院する際の報酬を手厚くする。今は医師が担っている事務作業について、補助する体制を整えた場合の加算も引き上げる。
勤務医の過重労働は、医療の安全にも関わる。長時間労働の是正は患者にとっても望ましい。ただ、増えた収入をどう使うかは病院次第だ。本当に勤務医の激務の緩和につながるか。中央社会保険医療協議会(中医協)などで、しっかり検証・評価する必要がある。
前回改定で「妊婦税」と批判された妊婦加算は今回、姿を消した。新たに、妊婦かどうかにかかわらず、患者を継続的に診ている医療機関が本人の同意を得て、治療の留意点や検査結果などの情報を別の医療機関に提供することを評価する仕組みを設ける。連携を促し、配慮が必要な患者が安心して受診できるようにする狙いだ。
負担だけが増えたと反発を招いたことを反省し、現場では丁寧な説明を心がけてほしい。
紹介状なしで大きな病院を受診すると、1~3割の窓口負担とは別に、初診で5千円以上、再診で2500円以上の追加料金が必要となる制度の対象は、今の400床以上から200床以上に広げる。大病院への患者集中の是正は長年の懸案だ。
だが、いくら負担を増やしても、「大きな病院の方が安心」という心理を払拭(ふっしょく)できなければ、患者の行動はなかなか変わらないだろう。
信頼できる「かかりつけ医」を育成し、地域に増やす。同時に、そうした医者を患者自身が探して選べるような環境も、整えなければならない。
都道府県ごとにインターネットで医療機関を検索できる仕組みはあるが、あまり知られていない。わかりやすい情報提供のあり方にも、知恵を絞りたい。
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