Twitterで質問箱を公開していることから頻繁に「プロカメラマンになれますか」「写真家を目指しています」という質問をいただきます。フォロー5000人程度の私のアカウントで頻繁にくる質問なので、できるならカメラマンとして生きていきたいと夢を持っている人が少なからずいるのかなと感じました。
Twitterの中での短い文字数ではお答えできないのでその質問にこちらで答えます。ただこれは私が知っているカメラマンや写真家の話であって、数多あるフォトグラファーのスタイルの1つでしかありません。
WEBからきた質問なのでWEBをメインの活動しながらどうやってきっかけを掴めるのかな、というお話です。
ここではフリーで写真を撮ることで収益を得る仕事をすることを目標にしている人を「カメラマンになりたい人」「写真家になりたい人」とします。
学歴は必要ないけど勉強ができる適正は必要
意外であり本質をついていた質問が「学歴はいりますか?」。じつはこれはカメラマンを目指す人にとってかなり重要な考え方なのです。
いわゆる学力偏差値的なものが求められることは少ないですが、学生なら勉強しておいた方が無難です。
まず学力があるということは中学・高校・大学とよーいどんで一斉にスタートしたものの中での競争に勝ったということです。当たり前ですがほとんどの人は勉強なんてしたくありません。けれども「やるべきこと」と割り切って成果を出した実績です。
そして短くない期間の努力を経た上での成功体験でもあります。このような経験が豊富な人は何をやらせても成功しやすいです。
今現在のスキルとは関係なしにこれからの成長の期待値が高いということの証明の1つです。ここでは学業の例になりましたがスポーツでも美術でも同じことが言えます。
カメラ業界は日進月歩の分野で、5年前の撮影技術が今はまったく通用しないということもありますし、InstagramなどのSNSに向いてる撮影方法なども写真の価値の1つとして認知され始めていています。そこに適応していかないといけません。
それが自分のやりたいこととは真逆なことでも「私のしたいことではありません」と突っぱねるのではなく、必要ならばできるという適正は重要です。
カメラマンとして成り立つビジョンを明確に持てているのか
どうやってカメラマンが収益を立てているのかもわからないままこの職業に飛び込んで来ようとしている人が多いように思います。もう少し考えた方がいいなと常々思うのがどうやって収益を出すのかという考え方。
- 写真を売る
- 写真を撮影する
- セミナー・ワークショップをする
- カメラや機材の記事や本を執筆する
日本で知り合ったカメラマン(WEBでは有名な人達)さんや私のお仕事はだいたいこの4つになります。…これをコネなし経験なしで仕事をもらって生活していくのは無理じゃないかなと思います。フォトコンなんかを受賞したら瞬間風速的に食べていけることもあるでしょうけれど、それを数年維持するっていうのはやっぱりむずかいしかな…。
それでも写真撮影にこだわるなら次の選択肢が出てきそうです。
実績なしから写真撮影で収益につなげる方法
- 企業に入ってカメラマンをする
- ブロガーになり広告収入・企業案件を得る
- SNSのフォロワーを増やしインフルエンサーになる
会社のカメラマンになる
カメラマンという職業の中で一番スタートが切りやすい、かつ将来性があるのはどこかの企業に入ってカメラマンをやることです。それでも一般職の就職試験並の能力が問われるので決して甘いものではありませんし、写真への適性を見られることもあります。
自分の機材を使用することと日給8000円レタッチ込みという内容ならほぼ無条件でカメラマンができる場もあったりします。クライアントががっかりする可能性が高いので個人的には好きではないのですが、そういう場所でカメラマンとしての経験と技術を積めるというのは確かです。
有名な写真家に弟子入りするということも選択肢としてはありますが写真学校卒などの子たちと戦うとなると厳しくなると思います。ただこちらも業界や仕事先とのコネクションは期待できます。……それまでアシスタント業務に耐えられれば。
写真ブロガーになる
カメラマンに限らず個人で仕事をするときに求められるのはプレゼン力と商品力。
「私はこんなことができます。これで御社の問題を解決します」というものです。自分の能力を客観的に判断し、適切な商品を提供し、クライアントの悩みを解決する必要があります。これは写真も同じです。
企業の中に入り、企業の看板を使った仕事をしていると中々身につかない技術と考え方です。組織ではなく個人で価値を創造しなければなりません。そういう意味でブログというのは個人でできる情報発信と価値提供の練習としては最適です。
魅力がなければユーザーに見向きもされませんし、間違ったことをかけば指摘してくれますので自分の価値観や技術を客観的に見るには優れた指標です。
自分の知識が正しいのかを改めて調べることになりますし、言語化することで更に理解が深まるという利点もあります。
アフィリエイトやPV数といった成果を出すためにはブログのコンテンツの組み方、記事の書き方、掲載する写真…いろいろなものをすべてひとりで考えて実践しなければなりません。そこから更に上を目指すならPHP・HTML・CSS・Photohsopなどを勉強してWordPressなどのCMSでブログを運営してみてもいいかもしれません。
そんなの無理だよ…と思った人に知っていただきたいのは、写真業界第一線でカメラマンとして活躍している人でそれを実践している人がゴロゴロいるということです。
やたらと高品質なフリー素材サイト作って月間500万PV出しているマーケティングセンスの塊のような運営者のあの人なんてほぼ個人運営なのに日本を代表するような大企業とコラボしたりしてますからね…。当たり前ですけど撮影技術もとんでもなく高いです。
このように個人で写真撮影をソリューションとして提供できるととんでもなく強くなれる可能性があります。こういうプロのカメラマンもいます。
SNSのインフルエンサーになる
実績がない中で写真が評価されやすいのがSNS。頑張って撮った写真にたくさんのいいねがつけばモチベーションを維持できると思います。
プロカメラマンはいいねよりも売上が欲しいのでネットに写真を上げることは少ないですし、クライアントに写真を売っている立場から同等の品質の写真をたくさんアップすることは人によってはハードルがあります。
そういった意味では競合も少ないです。
クライアントの利益を出す・悩みを解決する・交渉術などのスキルが要らないため、SNSのトレンドをおさえたいい写真をたくさんアップすればファンが増えて企業からお声がかかり、プロへのステップになる可能性は十分あります。インスタグラマーから飛躍した人もたくさんいますしね。
ただここからつながるお仕事は基本的にフォロワーへの影響力目当てで声をかけられるので立ち位置を間違えるとカメラマンとしての将来を一瞬で潰される可能性があります。
企業としてみれば1人のインフルエンサーを使い潰したら次の人を見つけるだけでいいので消耗品扱いされるという気持ちで接した方がいいと思います。
会社員として写真撮影をこなしつつ、WEBメディアやSNSで自分の価値をアピールする。これは写真家になるチャンスを作る上で有効的だと思います。
当然誰もがリスクなしで行える活動はなので競合はたくさんいます。その中でトップランナーになることは必須ですね。
これらはWEBを利用した一例ですが、フリーのカメラマンになるためにいろいろのところに種を撒いておくことが必要です。一番確実なのはオフラインでの人と人との信頼関係を強固にすることです。
しっかりと市場分析しよう
まずカメラマンの総数で言えば飽和状態。売上が伸びている人と、売上が落ちて食べていけなくなって行く人の比率でいうなら間違いなく後者です。よってただ写真撮影が好き、他のプロと比べてもうまく撮れる自信があるという理由では難しい市場です。
よって基本的にはよっぽど動機が強くない限りはオススメしかねる職業です。生活を犠牲にすることに少しでも躊躇するのであれば会社員を目指したほうが安定します。
撮影機材は関係ないし、こだわりを持つべきでもない。
フルサイズのボディでなければダメ、APS-Cだと辛い、マイクロフォーサーズは趣味用…なんて文言を時々目にしますが、それは仕事で撮影するカメラマンにとっては関係のない話です。カタログスペックの視点での高画質を求めるのはプロよりむしろアマチュア。
もちろん最高画質を求められるシーンもありますが、基本は必要なときに必要な機材を使い分ける考えが一般的で機材に依存することは使い勝手の悪いカメラマンとして敬遠される可能性すらあります。
カメラのPRをするカメラマンという仕事もある
アーティストとして飛び抜けてしまえばどのようなスタンスでも仕事に影響はありませんが、スタートも切っていない状態で「フルサイズじゃないと」みたいなことを常々口にしてるとAPS-Cやマイクロフォーサーズの規格を作っているメーカーからは心象が良くないですよね。
たとえば写真が企業の目にとまって活動支援する代わりに自社製品を使って作例を撮ってほしいなんてことも仕事としてありますし、単発でもレビュー依頼なんかがあるかもしれません。
こういった属性のプロへのステップアップの機会を自ら潰すということで写真家としての大成の可能性を低くすることになりかねません。
コネがないと最初の仕事は見つけにくい
カメラマン市場は基本的には飽和状態。そんな中でカメラマンに仕事をお願いしようと考えるくらいの体力のある企業は大体顔見知りのカメラマンがすでにいます。
そこでの信頼関係がある中で実績のないカメラマンが食い込んでいくことは困難です。よって無難なのが売れているカメラマンさんが忙しい時の代わりとして紹介してもらうなどのコネクションから仕事をえること。
私もありがたいことにお仕事がたくさんきて回し切れないので撮影を誰かに回すことが多いです。そういうカメラマンさんは聞いた限りたくさんいるのでそういったコミュニティに入ることも大事です。
ただ当然紹介するからには最低限の技術がないとできませんのでしっかりと技術は蓄えてないと無理な話です。
自分の立ち位置をしっかり見極める
スタートも切ってない状態から「これら自分の作風です・スタンスです」みたいなことが危険なのは前述したとおりですが、もう1つ大事なことが今自分がどのレベルにいるかということ。
業界に入れたとしてもはじめは自分の好きな撮影ができることなんてほぼ皆無です。そこでの撮影に不貞腐れずに自分の糧にできるかは大事です。「本当はこんな撮影やりたくないんだけど生活のためにやっている」と口にするカメラマンさんはかなり多いです。
あとは一般認知としてカメラマンは何でも撮れるという見方をされます。そこでストロボライティングができません、ブツ撮りができません、では話になりませんし成長の機会も仕事につなげるチャンスも失います。
それだけこの環境に耐えるのが難しいということと、そういうことを口外するカメラマンさんに新しい撮影を依頼するかとなると、無理な話です。
ここでも自分の意向に沿わなくても必要なことはしっかりとこなすメンタリティが求められます。
チャンスを掴むために技術を磨いておく
アマチュアの方がプロになるためのチャンスは意外とWEBに転がっている気がしています。まさにSNSドリーム時代。ただあくまでチャンスでしかないので、まずは撮影技術を磨く必要があります。
好きなことばかりやっていては見聞が狭まるだけなのでどんどん機会を失っていきます。
私も今はネイチャーフォトに特化していますが、ブツ撮り・スタジオ・ポートレート・ブライダル・広告とほとんどのジャンルの経験がありますし、やれと言われれば今でもやれる自信はあります。
経験則ですが飛び込みたい業界にアンテナを張って活動していると数年に一度はビッグチャンスがあります。それをものにできるかどうかは日頃の写真に対する姿勢ではないでしょうか。
新しい価値観を武器にする
カメラの性能が上がったのでプロとアマの差がなくなったという意見があります。それを確信できたのであれば撮影の技術はそこそこにしてプロデュース力を磨くという選択肢があります。Instagram出身のカメラマンの得意手法ですね。
「写真家は写真力で勝負するべきでフォロワー数やマーケティング力で採用するべきではない」という意見もあるということは企業はそういうカメラマンを選択する流れがきているということです。
こういう新しい価値は経験の長いフォトグラファーほど参入しにくいのでチャンスであることは間違いありません。
そういう状況を見て戦略を練り、そこで使い潰されずに自分の実績として形にしていくバランス感覚があれば次に繋げやすいですね。
とにかく動いて経験すること
「写真家になれますか」という質問に関しては「なれるかはわからないけれど、やるべきことは山ほどあるよ」という回答になります。
撮影して、情報発信して、分析。市場を見て自分の立ち位置を理解して戦略を練る。その繰り返しができれば写真家になれるかどうかはわかりませんが、写真を撮ることで生計を立てることはできるようになります。
それで生活に困らなくなったら余ったリソースをカメラマンになるための作業に当てればさらに可能性は高くなります。
とにかく今すぐ行動に移す。けど考える。ということでした。
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