ニコン Z 7とZ 6。ニコン使いのネイチャーフォトグラファーが感じた良いところと悪いところ

ついにNikonから待望のフルサイズミラーレスが発表されました。高画素機のZ 7、低画素機のZ 6。すみ分けはSONYのα7シリーズと同じ模様です。Nikonは何かと最新の規格に乗り遅れるので今回のフルサイズミラーレスの発表を待ちわびていたユーザーの方も多いのではないでしょうか。

そして発表された後は色々な意見が飛び交いました。私もかなり複雑な気持ちです。

NikonユーザーがみたNikon Z7

仕事では生粋のNikon使いであり、おそらくは世界でも有数のレベルの厳しい環境でカメラを使っている中でNikonの一眼レフには多大な信頼を置いています。Nikonがなければ私は今の仕事を続けていなかった可能性もあるくらいです。

そんなハードコアNikonユーザーの立場から、今回のNikon Z 6/ Z 7の雑感をまとめました。なおスチール專門なので動画機能に関しては割愛します。

Nikon Z 7とSONY a7RⅢのスペック比較

  Nikon Z7 SONY α7RⅢ
実売価格 ¥368,109円〜 ¥290,499円〜
画素数 4575万画素 4240万画素
手ぶれ補正 イメージセンサーシフト方式5軸補正 イメージセンサーシフト方式5軸補正 
手ブレ補正効果 5段 5.5段
常用ISO感度 64〜25600 100〜32000
ローパスフィルター なし なし
AF
形式 像面位相差AF/コントラストAF 位相差検出方式/コントラスト検出方式
フォーカスポイント 493点 ワイド:399点(位相差検出方式)
425点(コントラスト検出方式)
顔認証
瞳AF
ファインダー
解像度 369万ドット 369万ドット
視野率 100% 100%
倍率 0.8倍 0.78倍
背面モニター チルト式3.2型TFT液晶モニター  
背面モニタ解像度 約210万ドット 約144万ドット
シャッター
シャッター形式 電子制御式縦走りフォーカルプレーンシャッター  電子制御式縦走りフォーカルプレーンシャッター
シャッタースピード 1/8000秒〜30秒 1/8000秒〜30秒
連続撮影 9コマ / 秒 10コマ/秒
フラッシュ同調速度 1/200秒 1/250秒
バッテリー
電池寿命 ファインダーのみ使用時:約330コマ
画像モニターのみ使用時:約400コマ
ファインダー使用時:約530枚
液晶モニター使用時:約650枚
本体充電
USB給電
メディア
  XQD メモリースティック PRO デュオ、メモリースティック PRO-HG デュオ、メモリースティック マイクロ(M2)、SDメモリーカード、SDHCメモリーカード(UHS-I /II対応)、SDXCメモリーカード(UHS-I /II対応)、microSD メモリーカード、microSDHC メモリーカード、microSDXC メモリーカード
スロット数 1 2
その他
寸法 約134×100.5×67.5mm 126.9x 95.6x 62.7mm
質量 675g 657g
動作環境
使用温度 0℃~40℃ 非公開
使用湿度 85%以下(結露しないこと) 非公開
Wi-Fi IEEE802.11b/g/n/a/ac IEEE802.11b/g/n/a/ac
Blutooth Ver.4.2

Nikonの新型フルサイズミラーレスを考える上でまず確認したいのが、対抗機種とのスペックの比較。Nikon Z7の対抗はSONY α7RⅢになります。

まずカメラのハードウェアを見るとバッチリ最新のミラーレスの仕様に合わせてきています。それでいて何気にNikon Z 7の方がちょっとだけ優れている印象です。しかしα7RⅢの発売からだいぶ経っているいるためそこにNikon技術力の高さが理由と捉えることはできません。

ソフトウェア面に関しては瞳AFのあるSONYに軍配があがる、という雑感です。しかしハードウェア設計ではNikon。D850同等の堅牢性をα7RⅢとほぼ同じ重さで実現してるのは驚異だと感じます。

Nikon Z 6とSONY α7Ⅲの比較

  Nikon Z 6 SONY α7Ⅲ
実売価格 ¥229,500〜 ¥213,990〜
画素数 2450万画素 2420万画素
常用ISO感度 100〜51200 100〜51200
AF
フォーカスポイント 273点 693点(位相差検出方式)
425点(コントラスト検出方式)
ファインダー
解像度 369万ドット 236万ドット
視野率 100% 100%
倍率 0.8倍 0.78倍
背面モニタ解像度 約210万ドット 約92万ドット
シャッター
連続撮影 12コマ / 秒 10コマ/秒
フラッシュ同調速度 1/200秒 1/250秒
バッテリー
電池寿命 ファインダーのみ使用時:約310コマ
画像モニターのみ使用時:約380コマ
ファインダー使用時:約530枚
液晶モニター使用時:約650枚
本体充電
USB給電
メディア
  XQD メモリースティック PRO デュオ、メモリースティック PRO-HG デュオ、メモリースティック マイクロ(M2)、SDメモリーカード、SDHCメモリーカード(UHS-I /II対応)、SDXCメモリーカード(UHS-I /II対応)、microSD メモリーカード、microSDHC メモリーカード、microSDXC メモリーカード
スロット数 1 2
その他
寸法 約134×100.5×67.5mm 126.9x 95.6x 62.7mm
質量 675g 650g

Nikon Z 7に比べて Z 6はフォーカスポイントが少なく、電池寿命はさらに短いみたいです。低画素によるISO感度の最大値の高さはα7Ⅲと同レベルです。システムは考えずボディだけを評価するのであれば、α7Ⅲとの価格差も少なく、ファインダーや背面液晶の解像度が高く、カメラとしての剛性はNikonの方が上だろうという期待値もあることから健闘できそうなスペックです。

期待できる点

防塵防滴仕様

Nikonと言えば堅牢性。私がNikonを使い続けている理由はとにかく故障率が低いからです。その設計思想はZ 7 / Z 6にも受け継がれているらしくD850と同等のシャッターユニット、豊富なシーリングと信頼ができそうな内容となっています。

レフ機のフラッグシップであるD3 / D3S / D4Sは北極・エベレスト・カンチェンジュンガなど極地でもエラーを出したことがないという実績があるので、この点に関してはとても期待しています。

カメラとしての機能性

Z7の操作性
Nikon | Z 7 – 製品特長

Nikonの強みといえば機能美。ボタン配置からシャッターフィーリングまで撮影していて楽しいと思わせる作り込みがあります。発表会に参加したジェットダイスケさんの動画を見る限り従来のNikonのレフ機並みの操作性をとフィーリングが期待できるのではないかと思います。

カメラはただ小型軽量であればいいというものではなく、大事なのはレンズとのバランスやグリップ感。それが理由でAPS-CのミラーレスはFUJIFILMのX-H1を使用している経緯があります。

特にはじめてカメラを買う人は操作感やシャッターフィーリングを大事にした方が長い趣味として楽しめるため、そこがカメラとしての完成度が高そうなNikon Z 7とZ 6の強みになる可能性があります。

ネイチャーフォトでは日没近くの暗さの中で素早く最適な設定を作るのが大事で、画面を見ることなく感覚による操作で絞り、シャッタースピード、ISO感度を合わせれれば最高ですね。

タイムラプス機能の標準搭載

SONYがα7Ⅲシリーズになってから不評だったタイムラプスの機能削除。このあたりはNikonはかなり力を入れているように感じられました。特に測光の低輝度限界を拡張できる「サイレントインターバルタイマー撮影」には注目しています。

絞り優先オートで適正露出を保ちながら撮影できるのであればとても作業が捗ります。私が現在使っているNikonのD4Sも基本的なインターバル撮影のモードはあるのですが、夕暮れなど露出が変わっていくシーンではISO感度オートや感と経験での露出の切り替えを行う必要があります。それを簡易化できるのであれば山岳写真撮影においてかなりのメリットです。

期待できない点

悲壮感溢れるプレゼン

これからの100年を作る、ニコンクオリティ、驚異的、新次元。強い言葉を使っていながら「何ができるのか?ユーザーにどのようなメリットがあるのか?」というソリューションが画質以外でまったく提供されないプレゼン。ボディに関することにはほとんど触れずにZマウントの素晴らしさと新設計のレンズの画質の良さのアピール。

今後の展開を語ることはワクワクするけれど、9月発売のZ 7を手にするユーザーにどういう価値を提供できるのかを教えてほしかった。

新設計のレンズが揃うまではFマウントレンズを使うことは仕方ないので、マウントアダプタを使用したときの性能や画質検証をプロにやらせてその場でレビューしてもらうなどしてほしかったな…。D850がとても評判が良かったと言うのであれば同じFマウントレンズを使った画質の比較なんかやったらD850を検討中のユーザーがZ 7に傾いたかもしれない。

結局自分でオフィシャルサイトを見ないとZ 7 / Z 6の強みがわからない内容でした。テザーサイトで場を温めておいてライブ配信がであの内容だったのは正直がっかり。

綿密な打ち合わせの上で行った中であの内容っていうのはマーケティングがアレなのか、経営陣があれなのか…いろいろと考えてしまいますね。

Z 7/Z 6を購入しにくくするレンズのロードマップ

Zマウントのロードマップ

Nikon | Z7 関連製品

同時発売のレンズは3本。24-70mm F4・50mm F1.8・35mm F1.8。本格的なレンズが出始めるのは2019年以降でプロが業務で使用しやすいレンズとなると2020年以降というロードマップ。これを見てまず感じたのが「どうせ2020年に真のプロ用のフルサイズミラーレス出すんでしょ?」ということ。

さらに発売と同時に出るレンズを揃えても数年後には買い替えなければならない点。24-70mm F4がどれだけ素晴らしいレンズであったとしても、翌年の24-70mm F2.8に叶う可能性は低い上に1段明るさも違う。それは非常に困る。なんで24-105mm F4や24-120mm F4ではなくて24-70mmという画角を選択したのか…。

このロードマップだと仕事で撮影するNikonのカメラマンも他のユーザーも購入する理由を見つけるのがとても難しいです。せめて24-120mm F4あたりの画角があればサブ機で試しに買ってみようか…と敷居が少し下がったかもしれません。

あとマクロレンズがない(‘A`)。

マウントアダプターFTZによるFマウントレンズの使用

Nikon FTZ

Nikon | マウントアダプター FTZ

FTZの仕様

  1. Nikon一眼レフと同等のAF・AF・画質
  2. Z 7/Z 6同等の防塵防滴

Nikonのアナウンスを信じるならばマウントアダプターを使用すればNikon一眼レフと同等の動きと画質が得られ、故障リスクも少ないということです。これでほっとしたNikonユーザーは多いと思います。

しかしマウントアダプターは所詮アダプタなのでボディとレンズの間に1つ部品を噛ませるということは故障リスクの増加を意味します。ほとんどのユーザーには関係ない話ではあるのですが、ボディもレンズもガンガン壊れている極地でのネイチャーフォトの撮影で使用するのは不安しか無い。

NikonはZマウントを「これからの100年を作る」と言葉にしました。現状のレンズのロードマップを見るからにプロのフォトグラファーが実務で使おうとするなら2020年以降になるので、それまではマウントアダプターFTZを使わざるを得ないということです。

仕方ないとはいえ、それまでは過去のレンズに頼らざるを得ない状況は残念です。

それで思うわけです。「数年Fマウントのレンズ使うことが前提ならD850でいいのではないか」と。

マウントアダプタの存在と、数年間実戦投入できないレンズのロードマップが組み合わさってZ 6とZ 7は今買わなくてもいいという着地をしてしまいそうです。

プロ仕様ではありえないXQDカードのワンスロット

誰もが耳を疑ったのがこの仕様だと思います。実売価格44万円のボディのメディアがXQDワンスロット。「プロフェッショナルの使用に耐える高い機動力と信頼性の両立」との製品特徴からだいぶ乖離しています。

メディアの故障率で言えば年数回あるかないかのレベルですが、ブライダル撮影なんかで撮れませんでしたなんて言ったらその後のお仕事はもらえなくなりますし、カメラマンとしての信用もなくなります。仕事で使うならメディアのバックアップができるデュアルスロット以外の機種はありえない選択です。

ここで私の中で仕事で使うという考えは消失しました。

XQDはNikonのハイエンド機あたりから採用されている高価格のメディアなので、ほとんどのユーザーがNikon Z 7 / Z 6を買おうとすると新しく購入する必要があります。このあたりも購入への敷居を上げている1つの要因です。

不安の残るバッテリーと撮影枚数

  Nikon Z7 SONY α7RⅢ
バッテリー
電池寿命 ファインダーのみ使用時:約330コマ
画像モニターのみ使用時:約400コマ
ファインダー使用時:約530枚
液晶モニター使用時:約650枚
本体充電
USB給電

最低で330枚の撮影枚数になります。もちろん撮り方次第では2倍くらい撮れる可能性もありますが、現段階では理論値通りの枚数と思っておいた方が心穏やかです。この撮影枚数だとバッテリー交換が安易にできないアウトドアフィールドでの使い勝手は非常に悪くなります。

現在使用しているFUJIFILMのX-H1は310枚と公式で書かれていますが、実際にそのとおりの枚数でバッテリーが尽きます。その際に問題になるのがタイムラプスなどの長時間撮影がバッテリーグリップがないと事実上不可能という問題。

しかもNikon Z 6/ Z 7はUSB給電に対応していませんので、タイムラプスを始める前にフル充電のバッテリーに入れ替えるか、グリップをつけるかの選択を迫られます。小型軽量がウリのミラーレス一眼がバッテリーグリップ使用前提というのはプロダクトとして破綻してるな、とX-H1で感じたのでNikonにはそのならないように期待しています。

Zマウント情報のサードパーティへの提供はなし

Zマウントのサードパーティはなし

これの意味するところは「サードパーティのレンズには協力しない」ということです。発表会でも「リバースエンジニアリングによる他社製品は否定できない」と言っていました。そうなるとユーザーは高価格帯のNikon純正レンズを買わざるを得ないというこです。

シグマ・タムロンがZマウントレンズを出さないということは考えづらいのですが、協力体制で開発しているEマウントに比べて開発がスムーズにいくとは考えづらい。センサー情報も非公開ということであり、どこまでもクローズドを貫く雰囲気があります。

シグマのArtシリーズのファンとしては少なからずショック。

レンズの選択肢が増えるということは新規ユーザーの敷居を下げ、既存ユーザーにも新しい可能性を提供できるため積極的にやって欲しいなと個人的には思いました。

ターゲットがよくわからないカメラ

Nikonが作ったボディということで操作性やフィーリングに関しての期待値は高いです。Zマウントの光学技術も写真を新たな次元に押し上げる可能を感じました。ただそれらが上手くシナジーを起こすのは数年後の未来の話です。

スペックに関しては正直すごい頑張ったなー、と関心しましたがそれはあくまで絶対値であってSONYとの相対評価をすると期待はずれと取られても仕方ないかと思います。SONYがダントツで突き抜けている中、これから頑張っていきます的な内容だとユーザーはどうしても今強いSONYを選んでしまうのではないかなと。

仕事で撮影している立場からすると、メディアがデュアルスロットでない時点で候補から外れ、さらにバッテリー容量が不安、レンズはFマウントに頼らざるを得ないという点が重なって、どうしてもD850が光り輝いてきます。

では撮影に責任を伴わない、楽しさを求めるユーザーにはどうなのだろうかと考えるとNikon Z 7が393,660円(マップカメラ)、SONY α7R3が327,910円の価格差があります。またNikon Z 7の性能を最大限発揮させるためにNikon Z 7 + マウントアダプタFTZ + 24-70mm F4の組み合わせで481,140円の初期投資となります。

どう考えても趣味用と言い切るには難しい価格帯で、このボディに手を出せる人は当然プロスペックを要求してくると思います。対してSONY α7R3はプロも仕事で使っている実績十分のボディ…。ちょっとどころかだいぶ分が悪いと感じました。

そうなると必然的にレンズが揃ったときに出るであろうプロ仕様のフルサイズミラーレスを待つニコンユーザーが出てくることが予想できます。

しかしそのプロ仕様のボディを開発するにもプロもアマも関係なくたくさんの人の手に渡らせて大量のフィードバックを受ける必要があります。それなのに手を出しにくいレンズ群、サードパーティとの協力体制なし、SONYよりも高い価格設定…かなり不安です。

どの層がNikon Z 7/ Z6のボディを求めるのか…Nikonが好きなひと?

Nikonの新時代への挑戦に共感した人向け

結局のところカメラは自分の好きなものを選べばいいと思っています。Nikonが好きな人なら当然購入検討すべきボディですし、カメラとしての機能を求める人にも向いている可能性が高いです。…だからこそNikonの世界に引きずり込むくらいのプレゼンだったらなぁ…。

私自身もNikonのカメラの堅牢性には全幅の信頼を寄せているので、将来的にはNikonのフルサイズミラーレスを使うことなると思います。ただ今回のZ 6/Z 7に関しては単純にプロ仕様でないため実務で使うことはありえないと着地しただけです。かといってプライベートで使うには過ぎた性能だしな…という現段階の評価です。

結果として今現在出ている情報の中からNikonから仕事用のカメラを選ぶならD850になります。

ただ山岳写真という特殊な仕事をしていることから可能性を感じるものがあればロケハンやプライベート登山での導入を検討しています。その例がFUJIFILMのX-H1。なぜならプロユースとはなにか?というコンセプトをとことん掘り下げた製品(X-H1開発秘話 #1 -フレーム Pt.1-)という開発者の熱量がわかるカメラだからです。

実際にはまだまだ改良の余地があり、実用的かどうかと言われれば疑問が残りますがそれでもプロがプロとして使うための仕様はきっちり形にしています。

このような可能性を感じるカメラは積極的に使っていきたいと思っているので、今後出てくるNikon Z 6 /Z 7の情報の中でこのボディにしかできない何か、ネイチャーフォトや山岳写真を変えていける可能性を感じたら導入してみたいと思いました。

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