本日で2018年は多くの人の前に立つことが多い年となりました。
日本に帰ってきてから色々なことで市場の分析不足を痛感することが多かったため、今年は日本の登山や写真に関わる情報にたくさん触れ状況を俯瞰できることを目標にしていました。
実際に自分の目で見て行動し、理解しない限りは歪んだ認識になるという海外で受けた薫陶です。
よって本職の山岳写真撮影とは別の活動が多くなりました。新しく行なった仕事・事業、それによって感じたことや課題、来年の目標をまとめます。
ブログでの製品レビュー
メーカーや代理店から商品を提供されて記事執筆を行う、いわゆる企業案件というもの。賛否両論あるマーケティングです。以前は断っていたのですが自分が行うことでどのようなメリット、デメリットがあるのかを確認しました。
案件として頂いたのはBenQさんの4KカラーマネジメントモニタSW271、SynologyのNAS DS3018XSです。
いくつかの案件をやってみて良かったと思うことは開発メーカーの技術者の方と直接コミュニケーションが取れるということ。特にPC周辺機器は色々な機能があるため、自分では気づかないところを教えてくれます。
メーカーの中の人とお話するのはとてもおもしろいです。
もう1つが良い商品、コンテンツをブログで情報発信できること。多くの人に知ってもらうことができます。これは企業さんの目的の1つです。
逆にデメリットはモラルが求められること。例えば実際に自分が使うわけでもない商品をレンタルして数時間触ってレビューしても実際に購入する人ほどの真剣味があるかどうかと言われると自信がありません。これを発信力のあるメディアが行うと多くの人を不幸にしてしまいそうです。
よって製品レビューはメーカーとのコミュニケーションは必要不可欠で、自分の得意としているもの、やりたいこととマッチしていない限りは難しいなと感じました。
BenQさんやSynologyさんはCP+で会話したり会社に伺って色々と打ち合わせしたりしてお互いのスタンスを確認してからお仕事させていただきました。
レビューするものは必ず買い取る(もしくは報酬の代わりに提供してもらう)、これを徹底するのであればブログのユーザーを裏切らない内容になるのではないかなと思います。今後もこの方向性で続けていこうと思います。
山岳写真セミナー
日本って山岳写真のセミナーほとんどないよね…と思い、なぜ行われていないのか。それは集客ができないからか、需要自体がないのか、他に問題があるのか…。
それを確認するために自分で行なってみました。
セミナーをするに当たり下調べをした結果、山岳写真の撮影の技術を発信していいような土台ができていなかったためfinetrack tokyo baseのマネージャーでもあり、マウンテンガイド協会の協会長でもある山岳ガイドの平川さんと共同のセミナーという形を取りました。
4Kカラーマネジメントモニタを使用したレタッチ講習
6名全員がカラーマネジメントモニタを使い実際にレタッチをしてみるという内容。もちろん前半の1時間は山岳写真におけるリスクのお話です。
業務で使用しているレタッチ方法やLightroom操作などを私が撮影した山岳写真のRAW画像を元に行い、受講者の方にはファイルも提供しました。
銀一での山岳写真における色彩学セミナー
今までは登山領域の人たちを対象にしていたセミナーだったので、今度は逆からのアプローチで写真領域の人たちに山岳写真のことを知ってほしい。そこでタッグを組んだのがプロショップの銀一さん。
セミナー専用ブースも完備されていたのでとてもやりやすかったです。
noteの収益でセミナー費用を捻出
セミナーでのスライドと口頭説明だけでは体系的な山岳写真の知識が身につかない、そう思ったので教科書を作成しました。最初のセミナーで18P、2回目以降は38Pフルカラーの冊子です。セミナーに来てくださる方々にこのくらいの手土産を用意できないのであれば教育者としては失格。
DTPデザインの経験浅いということもあり勉強も兼ねてすべて自分で制作しました。しかしこれを印刷するのにかなりの金額がかかります。そこでnoteで収益化するという手法を考えました。
そして第一回セミナー内容である「山岳写真を撮るための登山知識と撮影技術」を1冊1200円で販売。
この収益で印刷費や交通・宿泊費、デザイン作業によってこなせない本職のルーティーン(データ分析)の外注などに当てることで、なんとかギリギリ4回のセミナーを継続できました。
今後の山岳写真のセミナーは未定
日本での山岳写真セミナーはCSR(社会貢献)としてやっています。この現状を放置すると写真撮影目当てで山の知識がない人が冬山に入ってしまうと思ったからです。
ですので金銭面は持ち出しが基本で結構しんどいです。お金がないと色々大変、かといって利益も出したくない、そういう微妙なバランスで継続してきましたが、4回やってきたセミナーの倍率が平均850%という数値からして規模的にそれも限界。
私は写真を撮ったり研究するのが本職なのでどうしても需要を満たすほどの回数をすることができません。
正直なところ、私が行なってきた山岳写真の技術のセミナーはマトモな山岳写真家なら誰でも話せる内容です。それをやってくれる人もチラホラ出てきているので、来年からは私である必要はありません。
たまたま満席になったのは私がどうこう、という問題ではなくただの需要過多です。
ある程度の山岳写真専門のセミナーをやってわかったことは、山岳写真セミナーが少なかった理由は関係者の認知がない、情報発の手段が少なかったということ。
丁寧にコンテンツを作れば多くの人が興味を持ってくれるという実例は作ったので、アウトドアメーカー・写真メーカー・販売店さんが独自に山岳写真家を探してセミナーをする流れができつつあるように感じます。
ここからは日本の写真家の方々の出番。日本のことは日本の方たちで盛り上げるのが一番美しい。
私はここで引っ込んで、私にしかできない内容のときのみセミナーをするという感じにしようと思っています。
……大人の事情で何かやることはあるかもしませんけれど。
大学での身体障害者と山との関わり合いの研究と講師
私の本職の撮影と研究を組み合わせた仕事に近いアカデミックの仕事。今年で一番私らしい仕事かもしれません。
身体障害者の方が楽しめるアウトドアフィールドの発見と、それを集客しツアーをする地元観光協会との連携事業。そして足が動かず、介護が必要な彼らが自然を楽しむための手段としての写真撮影。
その調査と写真の分野における研究と講師をはじめました。国交省から観光庁までが絡むのでカメラマンとしては動きづらく誰もやりたがらないでしょうから、CSRで動ける私の適職かなと思っています。
登山メーカーやメディアでの撮影
写真にクレジットを入れないことを条件に撮影をちょいちょい引き受けています。支障のない範囲で出せるやつだとSUUNTOさんのブツ撮りとか。SUUNTOのAmazon ECページやFacebookなんかで使われていますね。
山に登るのを仕事にしていて元スタジオマンということもありブツ撮りは時々やってました。危険な山でもサクッと登って撮って来れるので使い勝手が良いのかもしれないです。
あとはまだリリースされていない地方創生でのロケでの山岳写真の撮影など。
カメラメーカーやアクセサリーメーカーとの意見交換
山岳写真=登山という認識だったのでカメラメーカーさんにはあまり興味がなかったのですが、今年の目標は情報収集だったので色々なメーカーさんと意見交換しました。
ヒマラヤで写真撮ったりアウトドア側で写真の情報発信していたりとカメラ業界側からみると尖った存在みたいです。
ちなみに私はカメラにおいては好きなものを使い、好きなことを言えるフラットな立場でいたいので、プロ契約は最近全部解約しました。今はプロサポすら入ってません。残っているのはスイスにあるアウドドアメーカー1社です。
山岳写真がっつりやりますよ!なんて男気あふれるメーカーさんとならフィードバック作例もガンガン撮りますけどそんな変態企業ないです…。
内容に関してはほとんどが出せない情報ですが、私といえば山岳写真の話しかありませんよね。BenQやSynologyさんもそうでしたが実際に製品を作っている側のお話はとてもおもしろいです。
2018年で写真と登山の情報収集してわかったこと
今年は「多くの人が山岳写真を安全に楽しむためにはどうすればいいのだろう?」ということの市場分析に当てた年であったと言えます。結果良いデータを取ることができました。
すごく嬉しかったのが山岳写真への興味を持っている人がたくさんいたこと、写真撮影が目的であっても勉強する機会があるなら積極的にセミナーなどに参加したいという人が多かったことです。
現在需要に対して供給が追いついてないですが、それなりにプラットフォームを作った自負があるのであとは他の写真家さんがたくさんセミナーしてくれると嬉しいです。
逆に困難だなと思ったのがカメラメーカーとアウドドアメーカーの情報断絶。その間にある山岳写真は良くない意味で聖域であると感じました。
カメラメーカー側にも、登山メーカー側にも共通言語がない状態です。カメラ側は登山のことがわからないし、登山側はカメラのことがわからない。
そのど真ん中に立っている私としてはあちこち動いて橋を作らないとなとは思うのですが、お互いのコミュニケーションの通訳するので精一杯な現状です。
2019年の目標は教育とリレーションシップを作ること
海外の同僚から散々突っ込まれていることの1つに「山岳写真家を探すより育てた方が早い」というのがあったので、この課題に着手します。
一緒に山に登って技術をレクチャーし、それを企業案件やフォトコンにぶつけてみて欲しいと思っています。当然私の方からのオファーなので正式にお賃金をお支払いして教えさせていただくというものです。
既に数人の候補は絞っていて、彼らがどのように成長していくのかが今から楽しみです。
地方自治体支援やユニバーサルツーリズムの研究
元々BtoBで業界の裏側の人間が好奇心から表舞台に出てきたのが2018年。2019年は本来の仕事に戻り、写真撮影はCSRをメインに「社会的意義があるもの」を最優先に考えています。
私でなくてもできる仕事が全体の90%以上で、それはやはり日本のフォトグラファーさんがやるべきだと改めて感じました。
それは彼らに任せて時間を作り、資金もコンテンツもなく困っている人の支援に回ろうと思います。
山岳写真家の育成と、地方と身体障害者への写真での支援の2つが来年の目標です。
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