二年に一度改定される公的医療のメニューと新価格が決まった。二〇二〇年度から実施される。超高齢社会を支える医療の提供体制整備が課題だが、限られた人材を活用する工夫が必要だ。
診療報酬は、医療を受けると公的保険などから病院や薬局に支払われる。どんな診療や薬にいくら払うかメニューと価格を国が決めている。ニーズがあって増やしたい医療は価格を上げる。取り組む医療機関を増やす狙いからだ。
医療も介護も団塊世代が七十五歳以上となる二五年に向け、高齢者に必要なサービスをどう提供していくのかが課題になっている。
前回、一八年度の診療報酬改定は、三年に一度改定される介護サービスの公定価格である介護報酬と同時改定だった。医療と介護の連携を進めるメニューを増やした。それに比べれば今回は踏み込んだ対応はなかった。
ただ、注目したいサービスがある。医療の中心は医師だが、実は他にも多彩な人材が医療現場で働いている。地味だがそれぞれの技能を生かす医療だ。
食べ物をのみ込む力が弱り胃ろうなどで栄養補給している患者にリハビリを行う場合、管理栄養士や言語聴覚士など多職種で取り組むと報酬が加算される。
退院した患者が自宅に戻っても食事の管理は重要である。入院していた医療機関と、在宅を担当する医療機関や介護施設が栄養管理の情報共有を図る取り組みの報酬を新設する。このサービスも医師とともに管理栄養士が担える。
誰でもできる限り口から食べたい。それができれば生きる力もわく。だから高齢期は病を「治す」だけでなく、生活の質(QOL)を「支える」医療も大切になる。今後は各職種の裁量を増やし専門人材の活躍の場を広げたい。
医師は地域や診療科の偏在で不足している現場がある。負担が大きい医師の働き過ぎの防止は今回の改定の重要項目だ。対策に消費税財源が充てられる。
過酷な勤務環境となっている救急医療について、看護師や事務スタッフなど多職種の役割分担や、医師の負担軽減を図る計画をつくるなどした医療機関に報酬が新設される。
医師の負担減は医療の質確保に欠かせないが、政府は実効性があるのか検証もしっかりすべきだ。
どこに住んでいても安心して必要な医療を受けられる。そのための医療提供体制を整えたい。
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