改組 新 第6回 日展東海展
2020年1月29日~2月16日
愛知県美術館ギャラリー
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光と影の画家 カラヴァッジョ(4)逃走の果て 謎の襲撃 九死に一生
マルタ島で高位の騎士を負傷させたカラヴァッジョ。マルタを脱出し、かつての画家仲間が住む隣のシチリア島にたどり着く。そこでも危険を感じたのか、島内を転々とした末、マルタに行く前に滞在した南イタリアのナポリに二年ぶりに戻った。 だが一六〇九年十月、ナポリの居酒屋の前で男たちに襲われる。当時は三十万の人口を誇り、ローマをはるかに上回る大都市だったが、追っ手は立ち回り先をつかんでいた。 襲ったのは誰か。「マルタの騎士の報復とも考えられます」とローマ大のクリスティーナ・テルツァーギ准教授。体だけでなく、名誉も傷つけられた騎士は、執念深く相手を追っただろう。でも、と准教授は続ける。「証拠がないので、はっきりとは分かりません」 カラヴァッジョを襲った人物は謎のまま。一方、襲撃の場となった居酒屋「チェリーリオ」とされる店は、現代のナポリに復活していた。建設業を営む夫婦が二〇〇四年、路地裏の廃屋を購入。倉庫に使うためだったが「片付けをしていたら、古い泉が出てきた。それで歴史の本などを調べて、ここがチェリーリオだと分かったんです」。妻のアンジェラ・ディ・パスカーレさん(54)が語る。 アンジェラさんによると、元の居酒屋は宿屋も営み、カラヴァッジョ以外にも多くの文化人が訪れたが、十九世紀に閉店した。いわれを知った夫妻は十年がかりで準備。一四年、店に再び灯がともった。ナポリの伝統料理をそろえ「とても好調。日本人の団体客も来ましたよ」。カラヴァッジョへの興味がきっかけで訪れる人が多いという。 カラヴァッジョの時代のメニューは見つからなかったというが、店を訪ねると、当時も提供していた可能性がある料理を作ってくれた。出てきたのは、タマネギと肉の煮込みに蒸したムール貝。こんなぜいたくな食事が、追い詰められた画家をほんのひととき、慰めたのかもしれない。 襲われたカラヴァッジョは死を意識しただろうが、命は助かった。その後に自画像を描いたとされる「ゴリアテの首を持つダヴィデ」という作品がある。ダヴィデに首をはねられた巨人ゴリアテは額に大きな傷痕があり、表情にも恐怖が刻まれているようだ。 そしてカラヴァッジョは、恩赦を求めてローマに戻ることを決意する。襲撃から九カ月後、自作数点を抱え、船でナポリを出た。それが、何度も窮地をくぐり抜けた画家の最後の旅となった。 ◇ カラヴァッジョや影響を受けた画家らの作品を展示する「カラヴァッジョ展」(中日新聞社など主催)は名古屋市美術館で10月26日から12月15日まで開かれる。前売り券は一般1400円、高校・大学生800円(当日券は各200円増し)。中学生以下無料。問い合わせは、名古屋市美術館=電052(212)0001=へ。 PR情報 |
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