改組 新 第6回 日展東海展
2020年1月29日~2月16日
愛知県美術館ギャラリー
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光と影の画家 カラヴァッジョ(1)ならず者の天才 迫真「最初の写真家」世界中からの観光客でごった返すイタリア・ローマ。有名な「トレビの泉」から歩いて十分ほどのところに、多くの見物人が訪れる教会がある。お目当ては、イタリアの天才画家、カラヴァッジョの代表作「聖マタイの召命(しょうめい)」と「聖マタイの殉教」。薄暗い教会の中、ほのかな明かりに迫真の絵画が照らし出される。 描かれているのは、収税人だったマタイがキリストに導かれて弟子になる場面と、教会で説教をしていたマタイが刺客に殺害される場面。「色の使い方が素晴らしい」と、ウクライナから訪れたエレナ・イバンチェンコバさん(41)。スペイン北部から家族と来たサベサ・ゴンサレスさん(11)も「リアリティーがある。こんな絵を描きたい」と目を輝かせた。 二つの作品がお披露目されたのは、四百年余り前の一六〇〇年。瞬く間に大評判となり、多くの人が教会に詰め掛けた。 ローマの美術史家、ダニエレ・ラディーニ・テデスキさん(33)は「それまでの宗教画が理想像を描いたのに対し、彼は、今ここで起きている現実をいかに描くかを追求した」。巧みな筆による写実的な表現を挙げ「最初の写真家だ」と評する。 西洋美術に革命をもたらしたといわれるカラヴァッジョ。だが皮肉なことに、自作に描き込んだ光と影をなぞるかのような生涯を送った。 北イタリアのミラノに生まれ、二十代でローマへ。カトリック教会で高い地位にある枢機卿に見いだされ、マタイを描いた二点で一躍脚光を浴びた。 だが、サクセスストーリーは長続きしない。とんとん拍子の出世に浮かれたのか、もともとの粗暴な性格が出てしまったのか、悪行が目立ってくる。 警官に暴言を吐き、飲食店員には皿を投げつける。口論した相手を剣で襲い、けがをさせたことも。当時の文書には、天才画家を巡る警察ざたや裁判の記録が多く残っている。 そして一六〇六年、大事件が起きる。以前からいがみ合っていた地元の男たちと乱闘になり、カラヴァッジョが相手の一人を剣で殺害してしまったのだ。 カラヴァッジョはそのままローマを抜け出し、南イタリアでの逃亡の旅が始まった。欠席裁判では、誰でも見つけ次第、殺してもよいとする「死刑宣告」が出された。それでも絵筆の才を支えに、波乱に満ちた人生を駆け抜けていく。 ◇ 名古屋市美術館で二十六日、「カラヴァッジョ展」(中日新聞社など主催)が始まる。十二月十五日までの間、日本初出品を含むカラヴァッジョの作品約十点や、影響を受けた画家の作品などを展示する。開幕を前にイタリア各地を訪れ、カラヴァッジョの足跡をたどった。(この連載は日下部弘太が担当します) <ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ> 1571~1610年。イタリアを代表する画家の一人。ルネサンス期の後に登場し、ローマで活躍。殺人事件を起こし、ナポリやマルタ、シチリアを転々としながら制作を続けた。ローマに戻る途中に38歳で病死。現存する作品はわずか60点ほどとされる。高い写実性と強い明暗を生かした作風はレンブラントら後世の画家にも影響を与えた。 PR情報 |
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