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【社説】

スペースジェット 崖っぷちの日の丸機

 三菱重工業が、開発している国産初の小型ジェット旅客機の初納入時期を延期すると発表した。延期は六回目となるが、新しい納入期限を明示できず、事業はまさに崖っぷちに立たされた。

 三菱重工の子会社、三菱航空機(愛知県豊山町)が開発中の「スペースジェット(SJ、旧MRJ)」は、今年半ばにもANAホールディングスに初号機を納入する計画だった。商用飛行には、安全性を証明する「型式証明(TC)」を国土交通省から取得する必要があるが、審査に欠かせない最新試験機の導入が設計変更などで半年ほど遅れたため、延期を余儀なくされた。過去の延期も検査体制の不備などが原因で、またしても基本的な開発能力の弱点をさらした形だ。

 新たな納入時期を示さない理由について、会見した三菱重工の泉沢清次社長は「安全第一の姿勢で試験に集中し、高品質の航空機を開発していく。やれると思うスケジュールでやっている」と説明し理解を求めた。しかし、納入の時期が分からなければ、契約をした航空会社は事業計画さえ立てられない。度重なる延期で、不信感は募るばかりだろう。

 SJは、日米などの航空会社から、最大で四百四十七機の受注を獲得していた。しかし、一八年一月までに、米イースタン航空が四十機をキャンセル。昨年秋には米トランス・ステーツ・ホールディングスが百機の購入をキャンセルし、受注機数は三百七機にまで減少した。さらなるキャンセルの拡大が懸念される。

 開発の大幅な遅れで深刻な影響を受けるのは、SJの量産を見越して先行投資してきた部品メーカーも同じだ。航空機の機体組み立てを担う東明工業(同県知多市)は、ラーメン店の運営会社を買収して飲食業界に参入。量産開始で事業が安定するまで、異業種で現金を得る苦肉の策だ。多くの部品メーカーが「早く量産してもらわないと設備も人員も維持できない」と悲鳴を上げる。

 三菱側はSJを東京五輪で聖火輸送に活用することを想定し、初納入を今年半ばに設定していた。今回の延期でその願いは絶たれたものの、関連企業が集積する中部地方では「航空機を自動車に次ぐ第二の柱に」という希望はまだ消えてはいない。しかし、やがて忍耐の限界はやってくる。量産化の道筋を早期に示さなければ、今度こそ取引先との信頼関係が崩壊する事態を招きかねない。

 

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