仮想通貨の無断採掘、逆転有罪 東京高裁

仮想通貨
社会・くらし
2020/2/7 11:16

閲覧した人のパソコン(PC)端末の処理能力を無断で使って暗号資産(仮想通貨)を採掘(マイニング)するプログラムをウェブサイトに設置したとして、ウェブデザイナーの男性(32)が不正指令電磁的記録保管罪に問われた事件の控訴審判決が7日、東京高裁であった。栃木力裁判長は男性を無罪とした一審・横浜地裁判決を破棄し、罰金10万円の有罪とした。

判決で栃木裁判長はコインハイブについて、一審に続いて閲覧者の意図に反するものと認め、「社会的に許容すべき理由は見あたらない」と指摘。一審判決を「法律の解釈を誤った不合理なもの」とした。被告人の行為について「自己の利益を得るため、社会一般の信頼を裏切る悪質なもの」と話した。

不正指令電磁的記録保管罪はコンピューターウイルスを「(端末利用者の)意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録」などと定義し、保管などを禁じている。公判では男性が設置した、他人のPC端末の処理能力を使って仮想通貨をマイニングするプログラム「Coinhive(コインハイブ)」がこうしたウイルスに該当するかどうかが大きな争点だった。

2019年3月の一審判決などによると、男性は17年10~11月、自身のウェブサイト上に閲覧者の許可を得ずにコインハイブを設置したとされる。閲覧者の端末で仮想通貨「モネロ」を無断で採掘させ、男性は報酬としてモネロを得ていた。コインハイブのプログラムは17年9月~19年3月にかけてインターネット上で提供され、誰でも利用できた。

一審判決はコインハイブについて「閲覧者の意図に反するプログラムに該当する」と認定。一方、▽採掘はウェブサイトの質向上のための資金源になり閲覧者にも利益がある▽採掘による消費電力の増加や処理速度の低下などの影響は軽微だった、といった理由から不正なウイルスとするには「合理的な疑いが残る」とし、男性に無罪判決を言い渡した。

また一審の判決理由では、捜査当局に対し「事前の注意喚起や警告などもない中でいきなり責任を問うのは行き過ぎの感を免れない」と指摘し、検察側が控訴していた。

控訴審で検察側はコインハイブについて「(閲覧者の)意図に反する動作を指令しており、PCの使用権や管理権が侵害されている」としてコンピューターウイルスにあたると改めて主張。男性側は「不正なウイルスには当たらない」と訴えた。

男性は神奈川県警に摘発され、18年3月に横浜簡裁から罰金10万円の略式命令を受けたが、無罪を主張して正式裁判に移行していた。

警察庁によると、他人の端末を使ったマイニングを巡り、18年に全国で計21人を不正指令電磁的記録保管などの疑いで摘発した。同庁はホームページで「マイニングツールを設置していることを閲覧者に対して明示せずに設置した場合、犯罪になる可能性がある」と警告している。

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