「面倒見のよさ」を勘違いしている
一昔前は、パワハラ上司が問題でした。
そして今、猛威をふるい始めているのが、「いい人と思われたい上司」です。
これが、職場で人が育たない一番の原因、と言っても過言ではありません。
このタイプの上司は、大抵、「優しくて面倒見のいい上司」と思われています。それはたいへん結構なことじゃないか、と思われる方も多いかもしれません。
「面倒見がいい」とは、どういうことでしょうか。
私たちが提唱するFFS理論(開発者 小林惠智博士、詳しくはこちら)では、「面倒見のよさ」は、人の個性を構成する5つの因子のうち、「受容性」の高い人に見られる行動と解釈しています。
「受容性」の大きな特徴として、「相手が喜ぶことや、相手が元気な状態に貢献できることが一番の喜び」ということがあります。
例えば、元気のない人を見かけると、気になって「なんとかしてあげよう」と行動に移します。それで相手が元気になると、「元気な姿を見るだけでいい」とか、「自分もうれしい」などと喜びます。
ただ、それは同時に、自分が役に立っている実感を伴うので、「自らの存在を確認できている」という側面もあるのです。
この実感を求めすぎると、面倒見のよさが裏目に出ることもあります。
相手から反応がないと、それがストレスの原因となり、相手の役に立とうと過剰にお世話したがる。つまり、お節介になるのです。相談されてもいないのに、つい手を差し伸べたり、相手に肩入れしたりします。
私が問題だと思うのは、自らの存在を感じるために、「優しい上司」や「面倒見のいい上司」、さらには「お節介な上司」に陥っているケースが多いことです。最近は360度評価の導入も進み、上司も部下からの評価を気にすることも、「よい人と思われたい上司」が増えている一因かもしれません。
成長のために一番必要なことは何か
例えば営業の場合、難しいお客さんを抱えた部下を心配して、上司が一緒について行きます。あるいは、クレーム処理に同行し、部下と一緒に頭を下げたりします。
また、開発部門のエンジニアなら、部下の仕事を手伝ってあげます。場合によっては、上司が自分で仕上げることもあります。
ミスをした部下の気持ちをおもんぱかって、部下は何も言っていないのに「そうだな、反省してるんだな」と好意的に解釈して、終わらせてしまいます。
こうした上司の「優しさ」が、なぜ部下育成には逆効果なのか。マネジメント経験のある方ならおわかりと思いますが、理由をまとめておきましょう。
1つは、成長するには「自らの限界を知る」という経験が必要だから、です。
営業なら、難易度の高い交渉事に直面して初めて、頭脳に汗をかく経験ができます。どうすれば相手の首を縦に振らせることができるのか、必死に考えるでしょう。
どんな仕事であれ、壁にぶつかって追い込まれたときに、自分でどう乗り越えようかともがき苦しむ経験が重要です。追い込まれた状況を振り返り、反省したり内省したりするのも、自己と対峙する貴重な機会です。
しかし、上司が「優しさ」を勘違いしてお節介を焼けば、その機会が失われてしまうのです。
コメント21件
がわ
”日ごろから自分の力の70%しか使わずに過ごしている人は、・・・”
ってあるけど、100%がわからないなら、70%もわからないよね
ていうか、いつも自分で「今70%の力で動いています」って
わかるのかな?自分はいつでも100%ですよ(その
時の)...続きを読む会議室でお弁当食べる系
新人時代から「そういう育成を受けた経験がない」上司が
他人から聞いた他人の手法でうまく育成できるわけもなく。
学生時代から「そういう育成を受けた経験がない」部下が
無いものをねだったってそんな育成を得られるできるわけもなく。
それがセッ
トになったって、うまくいくわけもなく。
...続きを読むその構図を分かって賢く立ち回れる部下が賢く立ち回ると、
「そういう育成を受けてはいないがそういう教育ができる上司」に
なれるのでしょうかね。
古野俊幸
株式会社ヒューマンロジック研究所 代表取締役
今回、けーしーさんの突っ込みがないのが寂しいですね。
ところで、ストレス負荷論の話ばかりですが、テーマは「本当の優しさとは」なんです。こちらへのコメントがないみたいですが、ちゃんと読み込んでいただけているかなぁ? と。
通りすがりの...
論文は数値化されてないと話にならないから100%だ70%だって書いているけど、要はあるところに限界を決めて、常にそれ未満でいる限り、それ以上に伸びることはないという話でしょ?
限界を超えた結果、身体を壊してしまっては元も子もないけれど、限界
と決めたラインが本当に限界なのかどうかは超えてみないとわからない。常に限界一杯でやり続ける必要があるとは思わないけれど、守りに入ってしまったら伸びないというのはその通りだろうし、時々は限界まで振り切れないと、限界自体が下がってくるのもその通りなんじゃないかな。
...続きを読むこれは運動能力でも精神的なものでも同じなのかもしれない。
話のポイントはそれを強制・強要せず、本人に気づかせるよう仕向けられるのが良い上司ってことなんじゃないの。
毎日限界超えてやらせるのはブラックってことで。
Take.Haya
「相手から反応がないと、それがストレスの原因となり」という部分、実際の仕事の場面を考えると違和感を覚えました。反応がなければ、放って置かれるのでは。管理職はそれほど暇ではありません。暇な管理職であることが、要因の一つと思います。
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