76:エロゲ業界の暗い話題と明るい話題
■業界の中でも去年は特に厳しいと感じる雰囲気だったりエピソードだったりがあるのでしょうか?とはいえ暗い話ばかりもなんですので、明るいエピソードもあれば合わせてお伺いしたいです。
前も話したが、売れるところと売れないところの二極化が進んでいるのは強く感じている。
ゆずソフトみたいな売れる側のメーカーは、
売れる→次回作にも予算をふんだんに使える→ゲームをしっかり作れる→広報にも力を入れられる→次回作も売れる
と、いいサイクルを作り出せている。
しかし売れないメーカーは低予算で作るしかないし広報にも金をかけられなくて次回作もやっぱり売れず、どんどんじり貧になっていく。
とはいえ、随分前から「やばいやばい」と言っているメーカーが自転車操業ながらも潰れずにゲーム制作を続けているので、言うほど絶望的な状況ではないのかもしれない。
ただ俺個人としては、やはりこのままでは厳しいだろうなと感じている。
これも前に話したが、エロゲってゲームジャンルの面では確実に退化しているんだ。
昔もアドベンチャーメインではあったが、そのアドベンチャーでも様々な工夫があった。だが今は選択肢は極力減らしてシンプルな構成にする傾向にあるから、「アドベンチャー……?」という状態だ。
対して、同人はジャンルがめちゃくちゃ豊富だ。
昔懐かしのドット絵風やFlashゲーっぽいもの、RPG、SLG、アクションなどなど、さまざまなジャンルのゲームが大量に存在する。
もちろんクオリティ的に微妙なものもあるのだが、商業を凌ぐレベルの作品も少なくはない。しかも商業に比べて安価。
既に同人の勢いに負けている実感はあるのだが、いつか完全に駆逐される日が来てもおかしくない。
なぜ商業がアドベンチャーばかりなのかと言うと、プログラマーがいないためだ。
プログラマーを抱えているメーカーなんて、1割にも満たないんじゃないだろうか。
だから、開発が容易なアドベンチャー……というか、単純なノベルゲーを作るしかない。
あと今はライター複数で書くことが当たり前になっているから複雑な分岐を作りにくい、という事情もある。単独ライターだとしても、複雑な分岐・フラグ・その他システムを管理できる人もあんまりいないんじゃないだろうか。
つまり乱暴にまとめてしまえば、あらゆる面でコストがかかるから単純分岐のノベルゲーしか作れない、となる。
そりゃユーザーも飽きるわな。同じジャンルばっかり作り続けてたら。
しかも約一万円。
コンシューマーだったら、あらゆる面でクオリティの高いゲームがもっと安価で買えたりする。
ただまあ、値段を下げるわけにもいかんのよな。
これも前に話したことだが、そもそもコンシューマーと市場規模が違う。そしてフルプライス作品だとそれなりのボリュームを求められるから、声優へのギャラも跳ね上がる。
テキスト量の多いコンシューマーゲームは、パートボイスが結構当たり前なんだ。予算が潤沢にありそうな作品でも、フルボイスじゃなかったりする。人気声優を起用すればするほど、マジで洒落にならないくらいコストが膨れ上がるから、予算を考えればボイスは真っ先に削りたいんだ。
しかしエロゲはフルボイスが当たり前。ただの紙芝居でシステム周りにお金がかかってなさそうでも、ボイスにかなーーーーーーりの予算を割いている。
以上のような理由で、個人的にフルプライスのエロゲは限界に来ているように思える。
これからはローからミドルの価格帯が主流になってきそうな気配もある。
そうなると、人気ライターが1人で書くことになって俺みたいなのには声がかからなくなるだろうからかなり怖い未来予想ではあるが、単独ライター作品が増えればクオリティは上がるだろうから、ユーザーにとっては明るい未来かもしれない。
無理矢理明るいエピソードに繋げてみたが、これだけなのはいかがなものかと思いながらも、他に思い至らない。
エロゲの売り上げは回復傾向にあると聞いたことがあるが、俺が売れるメーカーと仕事をしないためか、いまひとつ実感がない。まあ俺みたいなのに仕事があるんだから、最悪の状況ではないことは確かなのだろうが。
ただし、繰り返しになってしまうが売れるメーカーはまじで売れているから、今すぐエロゲ業界が滅ぶことはないだろう。
売れずに潰れるメーカーや見切りをつけて畳んでしまうメーカーが増えることでこれからも業界は縮小していくかもしれないが、ただちに滅ぶ危機に瀕しているというわけでは決してない。
なんだかんだでエロって強いからな。抜きゲーは話題に上がりにくいが、実は売り上げめちゃくちゃ好調、なんてことが結構ある。
抜きゲーは既にロープラが主流になっていて同人よりも塗りやキャラデザがいい(ことが多い)から、食い潰されずに戦えているのだろう。
ラノベやアニメなどとがっつり食い合う萌えゲーは、このまま【ただのノベルゲー】を続けるのならばかなりきついんじゃないだろうか。
去年ぬきたしが話題になったのも、エロゲでしかできないドギツイ性表現を真っ向からぶつけてきたからじゃないか、と俺は勝手に分析している。
といいつつ(ファンに怒られそうだが)おっさんの感性では受け止めきれず俺はプレイを断念していたりするのだが、若い人に訴えかけるのであればあれくらいの剛速球が必要なのだろうなとしみじみと感じる。
ゆずソフトのような新規と古参が安心して楽しめる作品がある一方で、ぬきたしのような古参を唸らせ新規を呼び込む若い感性の作品も出ているわけだから、縮小傾向にありつつも今のところはお先真っ暗というわけでは決してない、ということだろうか。
さて、暗い話が大半になってしまったが、今回はこの辺で。
質問に関してだが、受付は2月いっぱいまでとさせていただく。
3月以降の質問に関しては返答いたしませんので何卒ご了承のほど。
それでは次回があればまた次回。
なければ今回でさようなら。
とあるエロゲシナリオライターの日常 ひょうろくだま @hyo-rokudama
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