クレアボヤンス・ブログ
「ラグはマジで勘弁」というのは、全世界共通の認識です。常にpingの急上昇やラグ、さらには回線の切断という最悪の事態に悩まされているプレイヤーの数は少なくありません。もしもそんな接続関連の問題を一発で解決できるとしたら…?一部のプレイヤーにはそれが可能かもしれません。無線(Wi-Fi)から有線(イーサネット)に切り替えることで、ゲームプレイが劇的に改善されるかもしれないのです。
注記:
解析に必要なデータがまだ足りないため本記事に日本サーバーのデータは含まれていませんが、世界的な傾向として、この情報を皆さんと共有させていただきたいと思います。
僕はライアットのライブ・サービス・チームでプロダクトマネージャーを務めているViscariousです。半年ほど前に、ラグのせいで酷い目に合い、なんとかしなくてはと強く思いました。それは振り分け決定戦の最後の試合での出来事で、僕はサポートソナをプレイしていました。味方ジャングラーはギャンクを仕掛けようとまさにボットレーンに突入している最中で、相棒のジンクスは敵(レオナとエズリアル)に見事なダブルトラップを決めていました。ファーストブラッドは約束されたも同然だったのです。ですが、僕がアルティメットで追い打ちをかけようとした瞬間、ラグ神のスマイトが炸裂しました。接続が元に戻るとジンクスは死に、相手のエズリアルはスノーボールしていました。僕はルーターを蹴り飛ばしたくなる衝動を抑えながら、仲間に謝ることしかできませんでした。
僕は考えました:もしも無線接続がこの問題の原因だったとしたら?もしも有線接続に切り替えるだけでチャレンジャーの頂点に君臨する神ゲーマーになれるとしたら?できるだけ深くこの問題を理解するために(そしてこのクレアボヤンス・ブログの記事のために)、僕はデータの分析を始めました。
全世界のリーグ・オブ・レジェンドプレイヤーのうち、無線接続しているプレイヤーの平均pingは、有線接続しているプレイヤーの平均pingよりも6.7msから11.7ms高いことが判明しています。
ですが、この事実はpingが常に高いことを表しているわけではありません。pingの増加は、多くの場合pingの急上昇によるものです。短時間にpingが大きく上昇し、少しの間を置いて元に戻るのです(その頃には味方は全員死に、敵のマスター・イーがこちらのネクサスの周りで踊っていることでしょう)。上のグラフは膨大な試合数から計算された平均ping差を示しているだけで、急上昇の度合いや持続時間は示していません。
同様に、無線接続しているプレイヤーは有線接続しているプレイヤーに比べ、平均して1.9~3.7%ほどパケットロスの値が高いこともわかりました。これは大したことではないようにも見えますが、次の2点を考慮しなくてはなりません:
1. プレイヤーのコンピューターとライアットのサーバーの間でパケットが失われた場合、そのパケットを求めるリクエストが再度行われます。パケットロスの割合はできるだけゼロに近いのが理想的です。なぜならパケットロスが発生したタイミングによって、ラストヒットを逃したり、アルティメットスキルの発動に失敗したり、バロンにスマイトを撃ち損ねたりするからです(ジャングラーの皆さん、そうですよね?)
2. 先ほどのpingのグラフと同様、このグラフではパケットロスの度合いと持続時間を確認することはできません。プレイヤーは通常、パケットロスが急激に増加した際にラグを体感します。1.9~3.7%という値は、多くの試合から計算された無線利用プレイヤーと有線利用プレイヤーの平均差に過ぎません
好奇心から有線と無線の利用者層を調べてみたころ、興味深い事実が判明しました:
一部の地域は、他の地域よりもはるかに無線の利用率が高いのです。韓国では試合の9割が有線接続でプレイされているのに比べ、北アメリカとオセアニアでは半分以上が無線接続によるプレイでした。
これについては、韓国では有線接続のPCを備えたPCバンの人気が高いことも要因のひとつでしょうが、やはり僕ら北米プレイヤーがあまりにも“パンピー”すぎるということなのでしょう。
そして、ランク戦ではランダムミッドやノーマルよりも有線接続傾向がわずかに強いことが全地域で確認できました。
ですが最も興味深かったのは、ティアごとの有線と無線の利用率の違いです。全地域で、高ティアの試合ほど有線接続が使用されていました。有線接続でプレイすることとランクを上げることの関係性を証明することはできませんが、高ティアのプレイヤーが有線接続を利用する割合が高いということは明確です。あくまで僕の仮説になりますが、高ティアのプレイヤーは、記録に残るような栄えあるステージ上の有線接続PCでプレイするためなら、できることはすべてやるということなのでしょう。
これまでに2つの点が明らかになりました: 1) 無線は接続品質に悪影響を及ぼすこと、そして、2) Fakerはおそらく無線でプレイしたことなどないであろうこと。ですので次の疑問は、あなたの無線接続や有線接続が、あなたのゲーム内のパフォーマンスに明確な影響を与えるのかどうかです。
この分析で考慮したゲームプレイの要素は:倒したミニオンの数(CS)、獲得したゴールド、K/D/A、マスタリーグレード、そして勝敗率です。分析対象は、ランク戦で分析期間中に同じチャンピオンを無線接続と有線接続の両方で使用したプレイヤーとしました。これは同じプレイヤーの有線接続プレイによるフィズのマスタリーグレードと、無線接続プレイによるフィドルのマスタリーグレードを比較することを避けるためです(参考:一部のチャンピオンは他のチャンピオンよりもpingの影響を受けやすいからです(英語))。
データを精査しても、無線接続がCS、K/D/Aやマスタリーグレードなどに悪影響を及ぼしているという決定的な証拠は見つかりませんでした。
ここまでpingの急上昇による悪影響が懸念されるような要素しか見つからなかったにもかかわらず、分析の結果は驚くべきものでした。どんなにデータを精査しても、無線接続がCS、K/D/Aやマスタリーグレードといったパフォーマンスに悪影響を及ぼしているという決定的な証拠は見つかりませんでした。
これについてはいくつか仮説があります:
1. 無線接続から来るラグはゲームに悪影響を及ぼしているものの、それによるはっきりとした効果は途切れ途切れにしか現れないため、試合経過の中でその影響を分離するのは困難である(ノイズに紛れたシグナルを判別するのは難しい)
2. 無線でプレイしているプレイヤーは、増加したpingやパケットロスに適応している可能性がある(つまりそれらが発生した際の影響を最小化するようなプレイをしている)
3. 同じチームには他に4名のプレイヤーがいるため、特に相手チームにも無線を利用しているプレイヤーがいた場合には、1名の無線利用プレイヤーの行動は試合の結果に大きな影響を及ぼさない可能性がある
無線でも有線でも同じチャンピオンを使用しなくてはいけないという制約をなくしたところ、有線における勝率は無線に比べて1.1~1.7%高かったのです。
驚くべきことに、無線でも有線でも同じチャンピオンを使用しなくてはいけないという制約をなくしたところ、有線における勝率は無線に比べて1.1~1.7%高かったのです。この現象はどの地域でも確認できました。どうして同じチャンピオン使用の制約を取り払っただけでこの結果になったのかは分かりません。ひとつ仮説として挙げられるのは、接続タイプを跨いだチャンピオン制約を課すことで、僕らは同時に、プレイヤーがメインに使うチャンピオンにより注目していたのではないかということです。メインで使っているチャンピオンであれば、無線接続によるpingの急上昇への対処にも慣れているかもしれませんが、使い始めたばかりのチャンピオンであれば、pingの急上昇による影響をより受けやすくなります。
昇格戦で壊滅的な敗北を喫したその夜、僕はインターネットで15メートルぐらいのイーサネットケーブルを購入しました。ケーブルに絡まってしまった猫を助けてから、ネットワーク診断をかけたところ、自宅の無線接続と有線接続にとても大きな違いがあることがわかりました。
| 接続診断要素 | 無線の サンプル |
有線の サンプル |
| 平均ping | 62.4ms | 38.2ms |
| 平均パケットロス | 3.9% | 0.0% |
| ジッター | 33.7ms | 0.21ms |
| Pingの「急上昇」( > 最低ping × 2) | 19 | 0 |
| パケットロスの「急上昇」( > 15%のパケットロス) | 9 | 0 |
確かに、無線接続ではより高いpingとパケットロス、そしてより多くの接続問題が発生していました。特に興味深かったのは、ラグの発生の仕方です。ゲーム中において接続が安定している時間がある一方、pingもパケットロスも急激に大きくなる、短い時間があるのです。そうした瞬間に、もっとも酷いラグに遭遇しました。
僕の体験は極端なものですが、コメント欄で皆さんにも聞いてみましょう:それぞれの接続方法を使った際の体験はどのようなものでしたか?接続を改善するために、どんなことをしましたか(15メートル以上のケーブルを買いましたか)?そして、この記事を読んだ後で有線に切り替えようと思った人は何人いるでしょうか?