ブルペンで投げる中田の球を、福留が打席に立って見ていた。矢野監督、清水ヘッドに井上、新井、久慈、筒井の各コーチ。山本昌臨時コーチは、高知県の2軍キャンプに出張中なんだとか。これがうわさの「阪神ドラゴンズ」か…。
沖縄の1軍で練習をやっていたのは宜野座だけ。ランチタイムの特打では、左のボーアと、右のサンズが打ち、右腕のガンケルが投げていた。気の早い在阪マスコミから「バースの再来」と呼ばれているボーアは、手袋をつけず素手で飛ばしまくっていた。
「タイガースが一番求めていたタイプの打者だよね。実戦が始まってみてどうかだけど、長打力が並外れているのは間違いない。確実性がありそうなサンズとのコンビは要注意だよね」
宜野座を訪れていた山崎武司さんも目を丸くしていた。昨季、リーグワーストの得点力不足に泣いた阪神の大補強。確かに脅威だが、すぐ後ろには落とし穴もある。「4番・一塁」のボーアで1枠。野手のもう1枠を左翼のサンズで使えば福留が余る。マルテを三塁で使えば、今度は大山が出られない。投手もそうだ。ガンケルとガルシアで先発の1枠。エドワーズとスアレスで救援の1枠。戦力層は厚いが、持て余すリスクも大いにある。
「そこなんですよ。外野は近本、福留、糸井、サンズのうち3人。どう使っていくのか。そこをうまく回すのが僕の仕事だと思っています」
ベテランへの配慮、外国人のプライド…。意外とタテジマがお似合いだった井上打撃コーチも、激しい競争が不満の種とならないよう心を配っている。新任コーチの発案で、今キャンプでの「1日キャプテン制」を取り入れた。日替わりで全選手が務める。チーム一丸となれば中日にとってやっかいな敵となる。僕の予想では両方がAクラスになるとは考えづらい。つまり、どちらか。中日ドラゴンズにとって「阪神ドラゴンズ」は、いろんな意味で絶対に負けられない相手ということだ。