今日はクリスマスイブ。
午前中の出会い喫茶からはじまり、昼は結婚相談所、夕方には婚活パーティーに3つ出席し、ついさっきまで相席バーにいた。
時刻は午前3時。
やっと最後のステージだ。
これからハプニングバーへ向かう。
今回行ったハプニングバーは歌舞伎町のCだ。
システム紹介
①来店
予約等は不要。度胸さえあればいい。
②会員登録
身分証明書の提示が求められる。担当者から会員規約の説明を受ける。
下記のような禁止事項が細かく設定されている。
・仮眠目的、泥酔状態の入店
・会員同士の連絡先交換
・携帯電話使用
・デジカメなどの撮影
・デートクラブ等の勧誘行為
説明がすべて終わったら、ハンドルネーム(店内で使用する名前)を決め、会員証を受け取る。
入会金は女性だと1000円で、利用料金は無料。
一方、男性は入会金3000円、利用料金は12000円と、段違いである。
カップル(男女)だと入会金が4000円、通常料金が6000円と割安になる。
※2016年12月時点の料金
③店内案内
ビール、シャンパン以外は飲み放題で、店内は絨毯が敷かれた居間のような10畳ほどのラウンジとカウンター席があり、シャワールームも完備してある。
奥にはカップルルームという、いわゆるプレイルームがある。部屋は4畳半程度だが、2名から最大10名まで入場可能。スタッフに声をかけてリストバンドをもらわなければ入室できない。
プレイルームは外からのぞき窓を通して見れるが、中の人に外から声をかけるのは礼儀としてやってはいけない。
ケータイ所持や使用は禁止だが、緊急時に入り口近くで1分程度の使用は可能。
④ハプニング開始?
あとはバーと同じように酒を楽しみながら客同士で交流を深めていく。
相手の了承を得れば、プレイルームへ移動し行為を楽しむ。
間違ってもハプニングを強要する場ではない。
体験談
クリスマスイブのハプニングバーはどうなっているのか
相席バーの男性に見送られ、無事ハプニングバーに到着。
雑居ビルの一室で中の様子は全くわからない。
私はハプニングバーをはじめて知ったときのことを思い出していた。そんな過激で狂った場所がこの世にあるのかと存在を疑った。当然、自分が行くなんて思いもしなかった。でも変な使命感にかられて自分で行くことを決心したのだが、内心怖くて仕方なかった。
ドアの向こうから聞こえる猟奇的な笑い声が恐怖心を煽る。
緊張しながらインターフォンを押した。
しばらくすると「いらっしゃいませー」と、露出度高めの千秋似のお姉さんが現れた。
艶やかな姿から、夜の世界をすべて知り尽くしているようなオーラを感じた。
「はじめてですよね?」と笑顔で聞かれ、お姉さんは会員規約を丁寧に読み上げていった。ありがたいのだが、丁寧に説明してくれるのが逆に怖い。遊園地の絶叫マシーンは危険度が高いほど注意事項が詳細だ。
入会金1000円を支払い、会員証を渡された。今日一日で出会い喫茶とハプバーの会員証ができてしまい、絶対に財布を無くすまいと誓う。
「1名様ご来店でーす!」
お姉さんが威勢よく声をあげ、私は体を丸めながら未知の世界へ足を踏み入れた。
ラウンジを見ると…
男だ。薄暗い中、カラオケの大部屋サイズのラウンジに20~30人くらいの男が蔓延っている。しかもほぼ全裸の男性も混ざっている。
いや、よく見ると女性もいたが、たった2人だけだ。
部屋の大きな壁にはプロジェクターででかでかとAVが流れていて、表情が強張っていくのが自分でわかった。
「見るからに男祭りなんですけど怖くないから大丈夫です」とお姉さんは言うが、「うちのワンちゃん、噛まないんで安心してね」と同じに聞こえた。中の人がそう言ってもこっちは全く信用できない。
通常の男女比を聞くと、少なくてもいつもは男7:女3らしい。今日は9:1。男性の新規が多いようだ。クリスマスイブのハプバーとはほぼ男しかいないようだ。ハイエナの群れに囲まれたシマウマのような境遇だった。
一通り店内の案内を受ける。プレイルームを案内されたとき、これがあのプレイルームかと妙に感慨深く、もう目にするだけで十分な刺激だった。
お姉さん「わらわらと寄ってくるかもしれなけれど嫌なことあったらすぐ言ってください」
ハプバーとはそういう場所だ。
わかってはいたが、これから起きることに私は耐えられるのか、嫌だと思ったことに逃げられるのか…。
警戒心をマックスに上げた。
お姉さん「怖くないからね(ニコッ)」
いや、怖い。どう考えても怖い。
お姉さんは、場に馴染めるように常連客の男性を紹介してくれた。
常連客は別次元
テキーラが転がった机を囲む、常連客と若い新規客5人の輪に入れてもらった。もちろんすべて男性だ。
常連客の男性は一般的にはおじさんといえる年齢だと思われるが、肌のハリや筋肉がその辺の若者に負けていない。恰好は肌着にパンツ一丁だった。常連客は服を脱いでいるのが普通のようだ。そういう民族なんだと認識することにした。
私「いつも来ている人からすると今日の雰囲気はいかがですか?」
常連客「今日は男の人が多くてねー。いつもは女性もいてハプニングしていることも多いんですけど、今日はそういう流れじゃないですねー」
意外だった。男性が多すぎると、ハプニングの展開が薄まるというのか。
これは助かった…と少し安堵した。
私「今日はいつからいらっしゃっているんですか」
常「今日は10:30からいるよ」
早!まさかの午前中から。常連客の常連レベルがハンパない。
常「昨日もきてたんだけど、昨日はずっとプレイルームが埋まってたよ」
昨日も!?どんだけハプバー好きなんだ…。
常「女の子は今日行けても行かないみたいね。クリスマスイブはさすがに嫌なんだよ。だから、前日の天皇誕生日に集中するんじゃないかな」と常連客は分析した。
なら私は何なんだ。
時刻は午前3時が過ぎたころだ。
眠気が襲いグダつく空気も漂う中、常連客は慣れたように話題を提供してくれた。
常「性癖フェチとかありますか?」
パッと回答が思い浮かばす、考え込んでしまった。
その間に、新規客が、匂い、脚、髪など一通り答えていき、Aさんは何ですかと聞いてみた。
「僕はね、肩フェチ」
肩!?
肩フェチなんてあったのか。奥が深い…。
理由を聞くと肉付きのラインがそそるらしい。
この人ハプバーで散々すごいプレイしてきているはずなのに。
グルメな人が、「一番好きな食べ物は白いご飯です」とか言っちゃうのと同じだ…。
ほかにも「複数人とかやったことありますか?」「ああいう派手な下着持ってますか?」と、いままで聞いたことないセクシャルな話題があくまでも自然に出てきた。
該当しなかったため全く話が広がらず、ただたじろぐばかりだった。
どんな人がきているのか
・23歳の女性
ここの元スタッフで、幼馴染の女の子同士でスタッフをやっていたらしい。
ハプバーが仕事なんて普通幼馴染に隠したいはずなのに、一緒に働くとは仲が良すぎる。
「失礼ですが、そんなにエッチが好きなら風俗で働こうとは思わないんですか?」と聞くと、「風俗は相手を選べない。ハプバーは自由だから。タイプじゃないけどプレイはよかったっていうこともあるし」
なるほどなぁ。
・20歳の男性
今日がはじめてという男性は、ちょうど入店可能となる20歳の誕生日を本日迎えたばかりだという。
ネットでハプバーを知って、前々から二十歳になったら絶対に行こうと決めていた。
「なのに、行ったら男ばかりでショックです…」と嘆いていたので「それは残念でしたね…」と精いっぱい同情したが、オチとしては最高と思ってしまった。
今日のお客がほとんど新規の男性なのは、『寂しいクリスマスに男友達とハプバーに行ってみよう!』と発想した人が複数いた結果だった。極端な案に思えて意外と被るものだ。
意外なハプニング
その後もいろんなお客さんと交流していった。
30代くらいの男性が「どぴゅです」と名乗った。
なんて身もふたもないハンドルネームなんだ…。
あれ…?なんかどこかで、会ったことのあるような。
「もしかしてお会いしたことありませんか…?」
「え、いやーないと思うよ」
「そうですか…。んーでもどこかで…。あ!ロフトプラスワンとか行きますか?」
「あーーー!!!」
数か月前共通の知人を通じてイベントで挨拶をしていた人だった。
クリスマスイブにハプニングバーで知り合いに会うとは…。
こんなハプニングは誰も予想できなかっただろう。
プレイルームの光景を見ている隙に
今夜はハプニングは特に起きないみたいだと緊張感が徐々にほぐれていった頃、プレイルームがざわついていることに気付いた。
「いまヤっている人がいる!」
誰かが言った。
新規の男性が飛びつくようにプレイルームに集まっていく。
私もせっかくなので自分の目で見てみたいと、のぞき窓に駆け付けた。
のぞき窓からみると、2つの肌色の人影が見えた。
「わっ!いる!!」
壁に腰かけた男性が足を開き、女性がモノを咥えている。
のぞき窓からみる他人の行為は全く現実感がなかった。
もっとショッキングかと思ったのだが、変な感覚だ。
のぞき窓が、動物園の動物を見ているような気にさせたのか、直感的にウミガメの出産シーンが思い出された。
いつの間にかプレイルームののぞき窓辺りの人口密度は満員電車さながらの状態になり、私はプレイルームに群がる男性の中でもみくちゃになっていた。
「ちょっと、大丈夫?」
常連客が見かねて私に声をかけ、救出してくれた。
聞くと、私がのぞき窓に夢中になっていた隙に身体を触られていたらしい。
確かに腰回りに違和感があったが、気のせいだと思っていた。
「新規だからわかってないんだよね、急に触ろうとする。のぞいている隙に勝手に触るっていうことがよくあるんだよ」
常連客が口調を強めて言った。
「普通に嫌じゃない?せっかく来てくれたのに嫌な思いはしてもらいたくないんだ」
意外にもハプバーには秩序があるようだ。
その後も常連客は新規客に対して「せっかく来ているのにあんなふうに寝たらダメだよね」「こういう場で職業を聞くのはご法度」と苦言が止まらない。こんな無法地帯のような場でも新参者は厳しく言われてしまうようだ。
鞭打ち体験
朝方になり、帰ろうとしていた頃、こんな提案をされた。
「鞭、打ってみない?」
普段ならまず拒否したが、客同士ですっかり打ち解け、目の前でプレイを見たこともあり、大したことない気がしてしまった。
せっかくなので記念にやってみよう。
常連さんが鞭打ちの見本を披露したあと、手取り足取り教えてくれた。
常「鞭は一度先をお尻に垂らして、何度か空打ちをして助走をつけてから打つ。上から叩くのではなくて内側から弧を描くように。打ち終わったらサラサラっと撫でてあげる」
私「こ、こうですか?」
「 じゃあやってみよう」と実践に促されると、叩かれ役の全裸の男性がひざまついてお尻を向けてきた。
目に入った瞬間、「これやっぱ無理」と口に入れたものを吐くような感覚があった。
だが観衆が見守っている。
もう逃げられない。
自分を奮い立たせた。
私「よし!」
変な汗をかきながら、手のスナップを効かせて尻に向かって鞭を打つが、パサっと張りのない音がした。カスってしまったようだ。
私「…意外とむずかしいなー」
もう一度男性にアドバイスをもらい再チャレンジする。
パチン!!
「おおお~!いい音なったじゃん!」と周りに称賛され、なんとか合格をもらえたみたいだ。
体中がザワザワした。
快感はないが、やりきったという変な達成感があった。
人生で全く味わう必要がない達成感だ。
その直後、急に話しかけてきた男性に「電マを股間にあてて、それをお姉さん(私)に踏んでもらう。1分以内にイかなかったら勝ちね」と、全く意味のわからない試合を持ち掛けられて、限界だった。
帰りどきだ。
常連客は「またきてよ!」と言ってくれたが、その予定はそうそうないだろう。
ハプバーの人と話せば話すほど、自分は極端な経験も性欲もないノーマルな人間だと思い知らされ、自分の感性につまらなささえ感じた。
だが、よくよく考えてみれば、ハプバーに行ったことがあるだけで異端である。
あの変態たちが詰め込まれた箱に長時間いたせいで、私の感覚はイカれてしまったようだった。
総評
費用:0~1000円(※女性の場合)
女性はお金がほぼかからないので金銭的な損はしないが、違う何を失うかもしれない。とはいっても、ハプニングバーは思っていたより本人の意思が尊重される場であった。ただし、今回行ったお店は比較的アットホームで秩序があるところで、お店によっては雰囲気が違うらしいのでご注意を。男性は高額を払っている分それなりにいい思いをしたければ、くれぐれもクリスマスイブに行かないように。天皇誕生日がおすすめのようです。
【エピローグもお読みください↓】