NEWS / HEADLINE - 2020.2.4

伝説の美術学校「ブラック・マウンテン・カレッジ」の知られざる資料3000点がデジタルで公開

アメリカのノース・カロライナ州にわずか24年間しか存在しなかった伝説的な美術学校「ブラック・マウンテン・カレッジ」。その知られざる資料をデジタル化するプロジェクトを同州にあるアッシュビル美術館が発表した。デジタル化された3000点以上の資料を一般公開することで、同校が美術史に残した遺産を探求する。

マルセル・ブロイヤーとヴァルター・グロピウスが設計したブラック・マウンテン・カレッジのキャンパス・ビルの図面(1938) 出典=ウィキメディア・コモンズ 

 アメリカのノース・カロライナ州のアッシュビルで、1933年〜57年のわずか24年しか存在しなかった実験的な美術学校「ブラック・マウンテン・カレッジ(以下、BMC)」。その知られざるコレクションが、デジタル化され公開される。

 BMCは、ジョン・アンドリュー・ライスらが1933年にアッシュビルに創立し、実験的な芸術を基礎にしたリベラルアーツ教育を行った学校。同校の講師には、ウィレム・デ・クーニング、ジョン・ケージ、ヨゼフ・アルバースなど、生徒には、ロバート・ラウシェンバーグ、サイ・トゥオンブリー、ルース・アサワなど、アメリカの美術史に大きな影響を与えたアーティストがいた。

 今回のプロジェクトは、図書館情報資源振興財団(CLIR)から助成を受けた、「隠された特別コレクションとアーカイブをデジタル化する賞(Digitizing Hidden Special Collections and Archives Awards)」プログラムのひとつ。24ヶ月にわたるプロジェクトでは、これまで発表されたことがないBMCのアーカイブや文献、アート作品、家具など、3000点以上の資料をデジタル化して一般公開することで、同校から影響を受けたアーティストやその作品、アイデアなどを通して、それが美術史に残した遺産を探求する。

 同プロジェクトを手がけるアッシュビル美術館の館長パメラ・マイヤーズは、「私たちのコレクションをできるだけ利用しやすいものにすることは、我々にとって重要であり、このプロジェクトはその中心的な役割を果たす」とコメントしている。

 なおプロジェクトが完了した後、同館はウェブシンポジウムを開催。世界各地の学者による新たにデジタル化されたBMCの資料に関するプレゼンテーションを行い、学術分野や国境を超えたコラボレーションを実施する予定だ。

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NEWS / HEADLINE - 2020.2.5

新型コロナウイルスでフェア開催に危機感。アート・バーゼル香港「あらゆる可能な選択肢を検討」

大規模デモや新型肺炎の拡大で開催への懸念が高まっている「アート・バーゼル香港」が、出展ギャラリーに送付したレターの内容が判明。フェアのディレクター陣は、「あらゆる可能な選択肢を検討する」としつつ、「可能な限り速やかに解決策を提供する」と表明している。

アート・バーゼル香港2019の様子 (C) Art Basel

 大規模デモや新型肺炎の拡大で開催への懸念が高まっている、アジア最大級のアートフェア「アート・バーゼル香港」。1月30日に同フェアの主催者が最近香港の情勢をめぐり、241の出展ギャラリーに送ったレターの内容が判明した。

 アート・バーゼルのグローバル・ディレクターのマーク・シュピーグレル、ディレクター・アジアのアデリン・ウーイ、ディレクター・アメリカズのノア・ホロヴィッツが署名したレターの全文は以下の通り。

 親愛なる出展者の皆様
 アート・バーゼルとMCHの指導部は、新型コロナウイルスの発生と拡散を非常に深刻に受け止めており、皆様、当社のギャラリスト、パートナーから寄せられた懸念を共有していることをご承知ください。

 現在は我々全員にとって挑戦的な時期です。我々のチームは、あらゆる可能な選択肢を検討して懸命に取り組んでいます。言うまでもなく、準備するのに丸1年かかるこの規模のイベントを延期または中止することは、多くの要因と複数の利害関係者に関わる複雑なプロセスです。

 皆様、皆様のチーム、我々のチーム、そして関係者全員の健康と福祉が最優先の関心事であり、我々は差し迫った多くの期限を同様に理解しています。事態の緊急性を十分に認識しており、可能な限り速やかに解決策を提供します。

 昨年6月以来、香港では反政府デモが多発し、政治的緊張が高まっている。この状況のなか、10月に同フェアは2020年の出展者リストや、設立50周年の節目の年を記念する一連のプロジェクトの計画を発表。当時、香港をめぐる混乱な情勢について、同フェアは「引き続き状況を注意深く観察し、すべての出展者と緊密に連絡を取り続ける。今後もスタッフ、出展者、来場者の安全をつねに最優先事項にしていく」とコメントしていた。

アート・バーゼル香港2019の会場風景より、塩田千春《Where Are We Going?》(2017-18) (C) Art Basel

 今回のフェアには、242のギャラリーが出展する予定だったが、昨秋には2つのギャラリーが出展をキャンセル。今年1月中旬には、SCAI THE BATHHOUSE、ルクセンブルク&ダヤン、タイラー・ローリンズ・ファイン・アートもキャンセルを申し出たという。

 また、リッソン・ギャラリーやレビー・ゴルビー・ギャラリー、Blum & Poeなど24の国際的なギャラリーは、来場者の減少と表現の自由への懸念が高まるなか、出展料の50パーセントディスカウントも要求。しかし、この要求は同フェアによって拒否された。

 「ブルームバーグ」の報道によると、1月下旬、中国本土を中心に新型コロナウイルスによる肺炎の感染者が爆発的に増加していることに対し、一部の出展ギャラリーは今回の開催中止を主催者に求めていた。

 ロンドンのギャラリスト、リチャード・ナギーは主催者へのメールで、今回のフェアが「致命傷を負った」としつつ、「海外の顧客は誰も(今年のフェアに)行かない。フェアがまだ開催されようとしていることに驚いている」と述べている。

 いっぽう、香港を拠点とする45のギャラリーからなる「香港アートギャラリー協会(HKAGA)」は同フェアにレターを送って支持を表明。

 「artnet」によると、HKAGAはレターのなかで、現在香港の状況について海外メディアによる報道は視野の狭いものであり、世界一流のギャラリーがフェアの主催者に対する不満を募らせていると指摘しながら、フェアの主催者は「香港の特殊な立ち位置を理解しつつ、慎重かつ考慮してきた」と記している。

 今回のフェア開催まであと約40日。新型肺炎の動向を含め、アジア最大級のアートフェアはこの未曾有の事態にどのように対処するのだろうか。