D.カーネギー氏の名前を、ここ数年で知った人は多いのではないでしょうか?
日本では、内容を要約した解釈本が大量に出版されました。これほど多くの派生本が出版されたのはやはり、「内容が濃いから」「教訓が万人に受け入れられる」以外に、「時間をかけて作られたものだから」を考えずにはいられません。
今回は名著『人を動かす』、D.カーネギー氏の著書を紹介します。
この本はデール・カーネギー氏によって書かれた本で、1936年に初版が発行されました。1981年にカーネギー協会が現代の事例を付け加えた改訂版を発行します。その50年のうちに、全世界で1500万部の売り上げを記録しました。
私もこの本を読み、人に動かされるのではなく、"人を動かす"側の人間になれました。
デール・カーネギー氏は、アメリカで作家、教師、人との関わりのスキルをトレーニングするプログラムを開発して有名になった方です。著作には「人を動かす」の他に、「道は開ける」「話し方入門」などがあります。
どの著書も、1ヶ月に1回は読み直すほど忘れたく無い内容です。
この本の執筆には、たくさんの時間がかけられています。執筆する際にカーネギー氏は、話術と人間関係の講習会をアメリカ・ヨーロッパで行いました。
初めは講習会の準備のために、要点をまとめた小さなカードを作流のみでしたが、講演会を重ねるごとに、書き加えたい内容が増えていったそうです。
要点をまとめたものが本として出版できるほどの量になったのは、講習会を開始してから15年が経った頃です。それまでにたくさんの吟味や実験が繰り返されたことでしょう。初版がベストセラーになったのは、これだけ時間をかけて練られたものだからではないでしょうか。
また本書は、その内容を愛する人々が守ってきたとも言えます。
訳者のあとがきで明かされていることですが、1999年に新装版を出版しようというときにも内容の精選が行われました。過去の改訂により削られてしまった項目を、再録するかの議論が行われているのです。
あと20年で100歳を迎えるこの名著は、圧倒的に多くの読者に読まれ、意図をきちんと汲み取られ、精選され続けてきた本は他にないでしょう。
そして、『人を動かす』を愛する読者、編集者、訳者の方々の手により内容が守られてきました。これはまさに20世紀最大の文化遺産とも言えるのではないでしょうか。
人を動かす秘訣は、みずから動きたくなる気持ちを起こさせること、これ以外にない。
この文は、D.カーネギーによって述べられた言葉です。人を動かすための大原則を、端的に言い表しており、最初から最後までこの原則なしには始まらないと言っても過言ではありません。
本文の始まりにはさらに「人を動かす三原則」が続きます。
人を動かす3原則
- 盗人にも五分の理を認める
- 重要感を持たせる
- 人の立場に身を置く
1.盗人にも五分の理を認める
非難するかわりに、相手を理解するように努めめませんか。およそ人を扱う場合には、相手を論理の動物だと思ってはなりません。相手は感情の動物であり、しかも偏見に満ち、自尊心と虚栄心によって行動するということをよく心得ておかねばなりません。
2.重要感を持たせる
人間の持つ性情のうちで最も強いものは、他人に認められることを渇望する気持です。
3.人の立場に身を置く
成功に秘訣というものがあるとすれば、それは、他人の立場を理解し、自分の立場と同時に、他人の立場からも物事を見ることのできる能力。
人を説得する12の方法
- 議論を避ける
- 誤りを指摘しない
- 誤りを認める
- 穏やかに話す
- イエスで答えられる問題を選ぶ
- しゃべらせる
- 思いつかせる
- 人の身になになる
- 同情を寄せる
- 美しい心情に呼びかける
- 演出を考える
- 対抗意識を刺激する
1.議論を避ける
議論に負けても、その人の意見は残念ながら変わりません。
2.誤りを指摘しない
相手のまちがいを頭からきめつけるやり方は、効果がないどころか、結局は、相手の自尊心を傷つけ、みんなからも敬遠されて、話し合いもできなくなる結果となります。
3.誤りを認める
すみやかに自分の誤りをこころよく認めることにしよう。この方法には予期以上の効果があります。
4.穏やかに話す
相手の心が反抗と憎悪に満ちている時は、いかに理を尽しても説得することはできません。しかし、やさしい打ちとけた態度で話しあえば、相手の心を変えることも可能に。
5.イエスで答えられる問題を選ぶ
人と話すときに、意見の異なる問題をはじめに取りあげてはいけません。まず、意見が一致している問題からはじめ、それを絶えず強調しながら話を進める。互いに同一の目的に向って努力しているのだということを、相手に理解させるようにし、違いはただその方法だけだと強調しましょう。
6.しゃべらせる
相手を説得しようとして、自分ばかりしゃべる人がいる。相手に十分しゃべらせるのだ。相手のいうことに異議をはさみたくなっても、我慢しましょう。相手がいいたいことをまだ持っているかぎり、こちらが何をいってもむだです。友達同士の間柄でも、相手の自慢話を聞くよりも、自分の手柄話を聞かせたいものなのです。
7.思いつかせる
つまり、彼が自主的にそれを考えついたと思わせるようにすることが重要です。
8.人の身になる
他人にものを頼もうとするときには、まず、目を閉じて、相手の立場から物ごとをよく考えてみようではないか。「どうすれば、相手はそれをやりたくなるだろうか」と考えてみるのだ。
9.同情を寄せる
われわれが交渉を持つ相手の四分の三は、みな同情に飢えています。同情をすることによって格段に変わります。
10.美しい心情に呼びかける
相手の考えを変えるには、美しい理由をつけたがる気持ちに訴えるのが有効です。人をごまかすような人間でも、相手に心から信頼され、正直で公正な人物として扱われると、なかなか不正なことはできません。
11.演出を考える
現代は演出の時代です。単に事実を述べるだけでは十分ではありません。事実に動きを与え、興味をそえて演出しなければなりません。
12.対抗意識を刺激する
優位を占めたいという欲求、対抗意識、負けじ魂、男の気迫に訴えます。
人を変える9の法則
- まずほめる
- 遠まわしに注意を与える
- 自分の過ちを話す
- 命令をしない
- 顔をつぶさない
- わずかなことでもほめる
- 期待をかける
- 激励する
- 喜んで協力させる
1.まずほめる
われわれは、ほめられたあとでは、苦言もたいして苦く感じないものです。
2.遠まわしに注意を与える
遠まわしに注意を与える方法は、直接批判されることに強く反発する神経質な人たちには、おどろくほど効果を発揮します。
3.自分の過ちを話す
人に小言をいう場合、謙虚な態度で、自分は決して完全ではなく、よく失敗をするがと前置きをして、それから相手の間違いを注意してやると、相手はそれほど不愉快な思いをせずにすみます。
4.命令をしない
命令を質問のかたちに変えると、気持よく受け入れられるばかりか、相手に創造性を発揮させることも。命令が出される過程に何らかの形で参画すれば、だれでもその命令を守る気になっちゃいます。
5.顔をつぶさない
たとえ自分が正しく、相手が絶対にまちがっていても、その顔をつぶすことは、相手の自尊心を傷つけるだけに終ります。相手の人間としての尊厳を傷つけることは犯罪です。
6.わずかなことでもほめる
たとえ少しでも相手が進歩を示せば、心からほめようではないか?それに力を得て、相手はますます進歩向上します。
7.期待をかける
相手に美点を発揮させたければ、彼がその美点をそなえていることにして、公然とそのように扱ってやるがベストです。良い評判を立ててやると、その人間はあなたの期待を裏切らないようにつとめるでしょう。
8.激励する
大いに元気づけて、やりさえすれば容易にやれると思い込ませ、そして、相手の能力をこちらは信じているのだと知らせます。そうすれば相手は、自分の優秀さを示そうと懸命になります。
9.喜んで協力させる
新しい責任と肩書きを与えられるとその人の仕事ぶりはガラリと変り、自分の任務を完全に遂行するようになります。
人に好かれる6原則
- 誠実な関心を寄せる
- 笑顔を忘れない
- 名前を覚える
- 聞き手にまわる
- 関心のありかを見抜く
- 心からほめる
1.誠実な関心を寄せる
我々は、自分に関心を寄せてくれる人々に関心を寄せます。
2.笑顔を忘れない
笑顔など見せる気にならない時は、どうすればよいのでしょうか。それは笑顔でいることです。オススメの方法は好奇心を高めることです。私も好奇心が高いので笑顔は多いと言われます。その理由は子どもたちと触れ合うことが多く参考にしてるからです。子どもは新しい発見を頻繁にします。会話をしている時も相手の新しい所を発見すると会話が弾みます。
3.名前を覚える
人に好かれるいちばん簡単で、わかりきった、しかもいちばんたいせつな方法は、相手の名前を覚え、相手に重要感を持たせることです。
4.聞き手にまわる
あなたの話し相手は、あなたのことに対して持つ興味の百倍もの興味を、自分自身のことに対して持っているのです。よく聞く言葉で聞き上手は"モテる"この事です。
5.関心のありかを見抜く
人の心をとらえる近道は、相手がもっとも深い関心を持っている問題を話題にすることだ。相手自身のことや、得意にしていることを話させるように仕むけます。
6.心からほめる
小さいながらも、自分の世界では自分が重要な存在だと感じたいのです。
まとめ
本文のほとんどが実例になっています。原則があえて別の言葉で説明されることはありません。つまり実例をいくつか読んで、原則の「裏付け」を取るスタイルです。
メンター本として使いましょう。
この実例が紹介されるスタイルは、実は賛否ありますが、こひー書店は本書はとても実践しやすい内容だと考えます。
人間の記憶には、エピソード記憶というものがあります。エピソード記憶は定着率も高く忘れにくいです。悩んだときにふっと本書のエピソードを思い出すと、冷静になれます。
現代のビジネス書は、多くが懇切丁寧に説明してくれるものでしょう。論理的に不明な展開がないように、実例よりも論理の展開を綺麗に敷くことにページが割かれている印象も少なくありません。そんな中、実例のみが列挙されていく文章に抵抗を覚えるのも無理はないでしょう。
本は読むだけではなく、内容を実践するものです。
本書は多くの内容が詰まっている名著であり、いろいろな方法が取れるでしょう。ぜひひとつひとつの名言と向き合い、どう実生活に反映できるか楽しんでみてください。